元チート転生者のTS珍道中   作:有機栽培茶

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ぎ、ギリ毎日投稿セーフって事で。


#19 星降りの魔女

 

 少女を産み落としたのは愛に溢れた優しい母親などではなく、情など欠片もあるはずがない硬い金属の棺桶であった。

 

 

「……失敗作か」

 

 

 初めて聞いたその声を、今でも彼女は思い出す。

 己がこの世界に生まれ落ちたことを祝福するのでもなく、ただ失望に満ちた冷たい声を。

 

 少女は愛を知らなかった。

 己が存在する理由も知らなかった。

 なぜか提供される食事で腹を満たし、鉄の檻の中生かされ続けるだけの日々。

 

 少女の心にはポッカリと穴が空いていた。

 

 

「失敗作、仕事だ」

 

 

 だからだろうか。

 己の穴を埋める代わりに、知りもしない愛を見よう見まねで注ぐ事に生き甲斐を見出したのは。

 

 

「……お姉様」

 

 

 全く同じであると言えるほどに瓜二つの顔を持った三人の少女。白衣の男たちが成功作と呼ぶ少女たちの世話を彼女は任され、次第にそれを生き甲斐とするようになった。

 

 少女達の……成功作と呼ばれる彼女達の世話をしている間だけは自らが存在して良いと世界に認められているような感覚を得る。認められていると勘違いする。

 

 少女はそれがひどく心地よく感じた。

 

 そして次第に彼女は三人の少女達に依存していった。

 それこそ少女達が『失敗作』の烙印を押され、処分されると聞いた時。自らの命を賭してまで彼女達を連れ、未知と危険に溢れた外の世界へ駆け出したほどに。

 

 しかし失敗作と呼ばれた少女は運の良い事に魔法の才能があった。それは荒野を三人の少女を連れて横断するに留まらず、魔法使い(コード・トーカー)として二つ名を得るに至るほどの才能。

 

 彼女はその力を用いて、安住の地を求め彷徨い歩いた。少女達を守るため、白衣の魔の手が届かない場所に逃げるため。

 

 だがその運の良さもそこまでであった。

 漸く見つけたと思った安住の地をは火の海に沈み、頼れると思った大人は翌日非業の死を遂げた。

 

 そして彼女が逃げ続けてきたはずの巨悪は、すでに彼女の背に触れていた。

 

 

「上がうるさいのよ。あの爺婆、技術漏洩がどうのこうの〜ってさ。別にアタシもマザーも、失敗作のことなんてどうでも良いのにね〜」

 

 

 だが天はまだ彼女を見離してはいなかった。

 

 

「でもさ、ウチってほら、やりたくない事やらない主義なわけじゃん?だからさぁ〜取引っ!」

 

 

 護るべき少女達と同じ顔を持つ悪魔は嗤う。

 死神の鎌を少女の首をかけながら、甘言と共に救いの糸を天より垂らす。

 

 

「アンタが仕事してくれたら、ウチらはアンタと他の失敗作3体に手は出さないって約束するよ」

 

 

 少女はそれに頷くことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「死んで!死んで死んで死んで!死んでください……!私の、私たちのために……!!」

 

 

 少女は壁より杖を振る。

 その度天は輝き、星は大地を打ち付ける。

 

 

「どーすんだこれ……!!!」

 

 

 俺たちはそれに対抗することもできず、原型の残っている建物に身を潜めるしか無かった。

 

 

「お嬢!これじゃあ目標ポイントに辿り着けない所か後ろから挟み撃ちにされちまう!」

「どうする!?術者っぽいやつがいるのは壁だ!昇降装置がねぇと辿り着けねぇってのにそれも抑えられてる!」

「このままじゃジリ貧だぞ!?どうすんだよお嬢!?」

「だーーー!!私だって聞きたいわよ……!レイ!アレなんなの!?」

 

「……私は、百科事典じゃ、ない……知ってるけど」

 

 

 星降りの魔女、リュミエ・ステラ。

 魔法使い(コード・トーカー)の一人であり、【流星】の魔法の使い手。空から流星と見紛うほどの魔力弾を降らせることで敵を殲滅する飽和攻撃を得意とする。

 

 俺が資料と実戦で得た彼女の情報はその程度。

 魔法の弱点も、他に使用することができる魔法を保有しているのかさえわからない。

 

 少なくとも回路が焼き切れるのを待つのは無理そうだ。

 

 この世界の魔法は大気中の汚染物質を体内の魔術回路を通して魔力へと変換し、それによって奇跡を起こすっつー仕組みだからな。魔法を使いすぎても魔力切れってやつは滅多に起こらないが、その回路が焼き切れることはある。

 

 だがあの様子じゃ、彼女のソレが焼き切れるのを待つよりも先に俺らが瓦礫の山に埋もれちまいそうだ。

 

 

「つまり、あの女を殺せば良いんですね?」

 

 

 そう返したのはアルマだ。

 

 そして俺は気づく。アルマの魔法は【変速】。

 それを用いた狙撃であれば、わざわざ敵に辿り着かなくともこの窮地を脱することができるのではないか、と。

 

 

「何するつもりよ?」

「レイ様、銃の類は……」

「……拳銃しかないけど、いける?」

 

 

 差し出すは俺がTSして以来ずっと愛用している名も無き拳銃。第六隊長を倒すために活躍し、遺物発掘の時も魔導炉の時も、役に立たなかった物の御守りとして常に持ち歩いていた思いで深き品。

 

 それを受け取った彼女は自信満々に笑みを浮かべる。

 

 

「お任せを」

「ちょ、ちょっと!?顔を出したらやられるわよ!?」

 

 

 物陰から躍り出た彼女は一瞬で敵へ狙いを定める。

 

 凄腕のスナイパーとして警備部隊第一隊長にまで成り上がった彼女の腕は超一流だ。その実力は拳銃でスコープもなしに何kmもの狙撃を成功させることができるほど。

 

 故に彼女が狙いを定めた銃口から放たれる銃弾は、魔法によって加速され光の尾を引きながら正確にステラの元へ飛んでゆき………。

 

 

 ………途中で消失した。

 

 

「……加減ミスりました」

 

 

 余りの速度に弾丸は耐えられず空中で蒸発したのであった。

 

 

「ばか……!!」

「つ、次は必ず……!コツは掴みました!」

「銃身、みろ……!!」

「あ……」

 

 

 おそらく彼女がかつて愛用していた狙撃銃と同じ感覚で魔法を使用したのだろう。銃身はドロドロに溶けて崩れ落ちていた。

 

 

「わ゛た゛し゛の゛……ッ!!!」

「ごごご、ごめんなさいぃ!!!」

「アンタらコントしてないで早く隠れなさい!狙われるわよ!?」

「ひぅ!?」

 

 

 しかしふざけている余裕はない。

 今尚こうしている間も爆撃は続けられており、俺たちが隠れている建物ももう持たなそうだ。

 

 

「お嬢!ノラが潰れたかぼちゃみてぇに!!」

「どうしろっていうのよ……!どうする!?みんなで万歳して突撃でもする!?いいかもね!?」

「お嬢!?しっかりしてくださいお嬢!」

 

「レイ様、どうしま……レイ様?」

 

 

 打つ手なし。

 降り注ぐ流星に、自然災害同然のそれに人のみで叶うわけがない。人々はただ祈り、神に救いを求めるしかない。

 

 この俺を(英雄)を除いては。

 

 

「アルマ」

「は、はい」

【貸して】

「───よろこんで」

 

 

 彼女が笑顔で首を垂れたその瞬間、視界が入れ替わる。

 

 

「レイ!?……アルマ?あんた、何を……」

 

 

 視界良好。

 五感の同期に問題なし。

 動作にかかるラグも最小限。

 四肢の動作及び仕込み武器等内部構造の把握及び動作確認完了。

 

 問題はない。

 

 

「シア」

「っ!レイ、魔法を使ったのね!?」

「そう……シア、あれは私が───」

 

「───いや、俺が片付ける」

 

「れ、レイ……?ま、待ちなさい!?」

 

 

 意識をこちら側の肉体に割くためにシャットダウンし、気を失っている己の肉体を今の肉体に縛り付け、俺は駆け出した。

 

 天を覆い尽くすほどの星々。

 その全てが我々に向けて落下する。

 

 その速度は恐るべきもので、その密度も合わさり人が目視で避けることなど不可能と言える。

 

 だが俺は違う。

 英雄は違う。

 不可能を可能とするが故の英雄だ。

 

 

「【変速:加速】」

 

 

 肉体の動きを限界まで加速させる。

 それでも全盛期の俺の動きには遠く及ばない。

 だがこれでいい。この程度でも、俺に反射神経と戦闘経験から導き出される未来予知染みた弾道予測が状況の打開を可能とする。

 

 

「な、なんですか!なんなんですか!?こな、来ないで!抵抗しないでください!」

 

 

 弾幕の密度は徐々に高くなってゆく。

 だが、当たらない。

 

 降り注ぐ魔力の雨霰も、着弾時に生じる破片の一欠片でさえ俺の体を傷つけることはない。

 

 星降りの魔女。

 彼女の魔法は強力無比であるが、所詮は雑魚狩り専用だ。いくら威力が高くとも当たらなければ意味がないのだから。

 

 その名の通り、彼女の使用する【流星】の魔法は天から降り注ぐように直線状の攻撃しか行うことができない。そんな単調な動きで(英雄)を捉えられるはずがないのだ。

 

 

「死んで!死んでくださいよぉぉ!!!」

 

 

 流星の雨を避けきた俺が辿りついたのは壁の根本。

 術者であるステラちゃんがいるのはこの上だ。

 

 だがそこへと昇るための昇降装置は抑えられ使うことができない。そこを守護する警備部隊を掃討する時間はなく、そもそもそんなものでのんびり上がろうものなら撃ち落とされるだけだ。

 

 だったら、使わなければいい。

 

 

「は、は!?はぁ!?なん、なんなんですかぁぁっ!!!」

 

 

 俺は壁を蹴り上がり、追撃しようと迫り来る流星を足場に空を駆け上がる。

 

 

「あ、ああ!あああ!落ちろ!落ちて!落ちてくださいぃ!」

 

 

 一歩、二歩、三歩。

 しかしそれ以上の足場はなく、俺は空中に投げ出される。

 

 だがここまで距離を詰められればそれで十分だ。

 

 

「なにを………っ!?」

 

 

 俺は意識を失っている俺本体の肉体を掴み、投げ上げる。余りに軽すぎる俺の肉体は簡単に空を舞い、術者であるステラちゃんを見下ろすにまで至る。

 

 

「あ、あああああああ!!!!」

「無駄」

 

 

 意識を回復させた俺はそのまま、涙目で抵抗を試みるステラちゃんを押し倒し、馬乗りの状態でナイフを首に突きつけた。

 

 

「捕まえた」

 

 

 勝敗は此処に決した。

 




【企業】
『都市』や『国家』に連なる人類の組織。
多くの企業が存在し、『企業連』として表向きには協力関係である事が多い。しかし裏では利益を求め日々争っている。
大企業と呼ばれる企業のほとんどは旧文明由来とされる独自の技術を独占しており、それを用いた製品を販売している。それらの製品は人々の生活を豊かにし、同時に新たな戦争と発展を生む。

また『企業連』が掲げる目的の一つに『人類の保護と発展』が存在し、そのためであれば如何なる行為も辞さないという過激な一面を持つ。
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