曇り顔が見たくて死んでみたら、結構大変な事になっちゃったって話   作:せみふぁいなる

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評価してもらったのになんだいこの更新ペースは!死にな!と脳内のマリーザに言われています。

ちょくちょくUAが普段の2倍・3倍になる現象はなんなんでしょう?いえ、とても嬉しい限りなのですが。気になる……。

是非是非、お気に入り・感想・評価・ここ好き等お願い致します。作者のモチベーションに繋がります。


着々と“歩み”を進めて。

 

 

 

 

 調子を取り戻した一行は、更に森の奥へと進んでいく。

 

 しかし、伊達にここは“死沼の森”とは呼ばれていない。その調子もすぐに失せる事となってしまった。

 

 

 深く潜れば潜るほどに、一層光は無くなっていく。一度(ひとたび)正気を失ってしまえば、正体不明の“ナニカ”によって底の見えない暗闇の沼へと引きずり込まれる。

 ただの言い伝えであり、子供を森に入れない為のお話ではある。しかし、決して嘘は言っていないとこの森から生還した者全てが語ると言う。

 

 生えている植物には生気を感じられず、魔物がいると脳内では理解していても、それでもとても生物が居られるようには到底思えない、濃密な()()()()が辺りに漂っている。

 

 霧も濃くなっていき、自らが来た方向すら次第に分からなくなっていく。時間が経てば経つほど生存の可能性が著しく下がっていく。

 

 

 魔の側では無い生命の尽くを、まるで最初から何も居なかったかのように沈めて喰い尽くす。

 

 “死沼の森(ココ)”はつまり、そういう場所なのだ。

 

 

 さて、そんな危険すぎる中腹部分へと着いたメンバー達も、この想像していた以上に異様な雰囲気に徐々に勢いは落ちて行き、最終的には多少なりとも足が竦んでしまっている様子だ。

 

 怖がりな綺羅は勿論、その他のメンバーも()()()()()()()()……とでも言おうか。ソレにやられている。

 人間としての……いや、生物としての“本能"が警鐘を鳴らしているのだ。“ここはヤバい”、“これ以上進むな”と。

 

 勿論颯斗も例外ではなく、前を見つつもやはり少し怖がっている────かのように見えるが、当然のように演技だ。下見をしていたとは言え本能的恐怖が相手だというのに、内心何も怖がっていない。無敵か?

 

 怖がりつつも勇敢に前へと進んでいく(ように見えるだけの)颯斗を見て、メンバー全員も心を強く持ち、確かに前へ前へと進んで行く。

 

 彼に受けた恩を返すためにと。着いて行くと決めたから、と。

 それぞれが様々な想いを胸に(かか)えているからこそ、この森で歩みを止めずに()()()()()

 

 一般ギルドの戦闘員なら、もう既に5回は正気を失っているような場所だ。むしろ想いと覚悟だけで足を動かしている彼らはとんでもない心の持ち主と言えるだろう。

 

 

 

「……ね、まだ着かないの? もう限界なんですケド……冗談じゃなく」

「えーと、まだ半分くらいですね。残念なことに」

「嘘だぁ……いや、はるちが言うなら嘘じゃないんだろうけどさぁ……」

「大丈夫よ綺羅さん、全員割と限界が近いから」

「だいじょぶくないよひなち!?」

 

 それはそれとして怖くはあるので、綺羅は我慢出来ず残りの距離を聞いてしまったようだ。

 

 中々に緊張感の無い会話だが、綺羅の言う通り何も大丈夫くは無い。寧ろピンチと呼んで差し支えないだろう。

 心が限界という意味でも、体が限界という意味でも。又はその両方を含んでいたとしても、結局全部のパターンがヤバいのだ。

 

 なんせここは敵地のド真ん中、更には森の中である。いつ殺られてもおかしく無いのに限界ともなれば、それはもう大層美味しそうな獲物に見えるだろう。

 更には、これまで見たこともないような俊敏さを持った魔物と先程遭遇している、という経験もしてしまったのだ。

 遥輝が探知系の能力とは言え、いつ襲撃されてもおかしくないこの状況下でこのペースの会話を続けられるのは強がりなのか、それとも素なのか。

 

 

「だが、実際の所まだ半分でこの有様って言うのはマズイんだよな。……いやいや、真の漢はこの程度じゃビビらねぇ、自信を持て俺!」

 

 パンパンッと自身の頬を叩き、気合を注入している様子の大牙。

 それを見て、梨花も自分なりの誤魔化し方を探す。そこで目に付いたのは陽奈の姿。これだ!とすかさず飛び付いた。

 

「私も、こういうのに耐性あるとは言いましたけど、流石に心にキテますよ……。日沢先輩、しがみついて良いですか?」

「手を繋ぐ、とかじゃなくてしがみつくな辺りが本当に限界なんだろうなって感じね。……颯斗と大牙君はいざって時に動けないといけないし、仕方ないわよね。いいわよ、但し背中ね」

「日沢先輩優しいっ! ではお言葉に甘えて、失礼します!」

 

 ガバッと陽奈に抱きつく梨花。便乗して綺羅も梨花に抱きつく。

 背中に顔を埋めて、相手が歩くのを妨害しないようにと少し前傾姿勢になっている事から、ムカデ人間マイルド版のような状況になっている。

 もう少しオブラートに包んで言えば電車ごっこか。

 

 その光景を見て大牙と遥輝は苦笑いするが、正気を保つ為の行動だと思えば依頼中だろうが許せるようだ。

 

 そんなこんなで可愛らしいムカデ人間(?)が出来上がって暫くした頃だ。

 ここらで、全員が疑問に感じていた事に遥輝が言及する。

 

「……あの、颯斗さん。少し良いですか? 足は止めないでいいので」

「遥輝君、どうしました?」

「えと、皆さんもきっと感じてる事だと思うんですけど……あの後、()()()()()()()()()()()ですよね? 流石におかしいと言うかなんというか……。何か、嫌な予感がするんですよ」

 

 ──そう、警戒を怠らず歩き続けてきたと言うのに、一度たりとも他の魔物とエンカウントしていないのだ。

 探知に引っかからないどころか、痕跡すら無い始末。当然、気配の一つもしない。

 

 もし本当に生息しているんだとしたら、相当に隠密マスターな魔物が生息している事になる。そんな奴が存在していたら、今すぐ全滅してしまったとしても何もおかしくは無い。そのレベルなのだ。

 

「──本当に生息していないと仮定して。じゃあ、あの狼は一体何を食べているのか? そして、この不毛の地で魔物の食べ残し等の養分になるような物が無い中、どうやってこの木々はここまで巨大に、かつ広大に分布して行ったのか? そこが気になるんです」

 

 今のこの森は、きっと()()()()()()()。そう思うくらいには何も無かったのだ。

 

「もし、もしです。元々居た魔物を痕跡ごと……いや、()()()()()()()()ような何かが居るんだとしたら。それは、今回の目的である“『問題児』”……この線が、かなり濃いと僕は思ってます」

 

「……だとしたら、この森に元々居た全ての魔物より強いって事に……? あわわわ、先輩先輩大丈夫ですよね私達消えないですよね!?」

「はいはいはい落ち着いてください梨花ちゃん、陽奈さんから俺に乗り換えないでください。頭をグリグリしないでください肋のいい感じの所に入っちゃってます痛い痛い痛い痛い」

 

 梨花は目を『><』にして陽奈から颯斗へ標的を変え人間ミサイル(突撃)する。

 刺さった後に追加で傷口を抉り離れないその様子は、抜けないように返しが付いたドリルだ。

 

 ミサイルでありドリルでもある惨い兵器と化した梨花を颯斗に任せ、他のメンバーは話を続ける。

 

「つまりなんだ。そんなヤバい奴の可能性が出てきた以上、『問題児』の攻撃に掠ったらもう終わりかもしれないから一発も当たっちゃダメだってか?」

「そんなの無理くない!?」

「あれか、前世で言うオワタ式ってやつか。全部初見で避ければ勝つって、机上の空論じゃないか?」

 

 全攻撃が即死攻撃とは、死にゲーもいい所である。ア〇ワナみたいな物だろうか。

 初見クリアは不可能に近い。

 

「でも、そういう能力だとしたら対策がそれしか思い付かないんですよね……。僕の知識不足です、すみません」

「どうして遥輝君が謝るの? 悪いのはそんな馬鹿げた能力を作っちゃったこの世界の神様よ。……居るのかは知らないけど」

「そだよー、ひなちの言う通り! それに、着くまでに皆で考えたら何か良い案が出るよ! 何時もの会議と同じ同じ!」

「……それだとダメだろ」

「あ゛」

 

 確かに!と声を上げる綺羅。それでいいのだろうかとも思うが、大体は颯斗が悪いのでまぁいいのだろう。

 

 だが考えない事にはそもそも案は出ないと、着くまでの間になんとか捻り出そうと4人は考えを纏める。

 

「梨花後輩、いつまでもドリルしてないで離れてあげなさい。皆で話し合うわよ」

「はーい、今行きます!」

「颯斗も参加して……出来る?」

「な、なんとかって所です……」

「は、はやち、お疲れ様……ひっ」

「俺を見て何で怖がるんですか?」

 

 膝を着いて胸を抑える様子は、まるで銃で撃たれたかのようだ。刑事ドラマで見た光景だ。

 ヨロヨロと近づく姿は、森の雰囲気と合わさって凄くゾンビに見えてしまう。

 怖いのが苦手な綺羅は、その姿を見て少し顔を青くしている。また陽奈が盾になる時が来たらしい。

 

「……それで、対策でしたっけ? こういう能力は前世のバトル物でよく見たような気がするので、多分何かしらは出てくる……と、思います」

「まぁ、あるあるな気はするよな」

 

 先程まであんなに怖がっていたというのに、またまた自分達のペースに戻ったようだ。今はそんな事よりも、目の前の脅威に対してどう生き残るか頭を回す事の方が大事だと考えたらしい。

 

 正しい選択だろう。

 

 

 勿論警戒を辞めることは無く、話しながらも進む一行。

 結局、この後も魔物と出くわす事は一度たりとも無かった。

 

 

 さて、こんな危険すぎる可能性が出てきたのに颯斗は何もしないのか、という疑問が残るが。

 

 颯斗はオワタ式では無いと下見した段階で理解している。()()()()()()()ではあるが。かつ皆に被害が行かないように、自分だけが満足する結果で終わらせる方法も考え付いている。

 自分だけが命を失う結果にしたい颯斗なら、本当にオワタ式だった場合、ここまでの間で既に何か案を出していただろう。

 

 彼のそこに掛ける情熱は強火も強火、ここまで来ると太陽とかで例えられるような大きさなのだ。

 その上で、今の彼は全てをやり遂げられる確信を持っているらしい。余裕、と言った心境だ。

 

 

 彼の言う愉悦(絶望)まで、もう少し。

 

 

 

 






『問題児』には殺されません!繰り返します、『問題児』には殺されません!
あとこんな森を最深部までちゃんと攻略した上で少しでも情報を持って帰ってきた国の人達、かなり優秀では無いですかね……。


何回も何回も作り直してますが、それでも“この表現いる?”とか“ここ冗長だなー”とか感じましたら、遠慮なく申して頂ければと思います。あと気付いてない矛盾点や違和感等もありましたら、ご指摘お願いします。
誤字報告も助かっております。

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