曇り顔が見たくて死んでみたら、結構大変な事になっちゃったって話 作:せみふぁいなる
遅れました。すみません。
お気に入り・評価・感想・ここ好き等、お願いします。
親から告げられた、衝撃の告白。
それを聞いてからの颯斗の行動は、実に早かった。
その場では内心を隠し、「全然気にしてないよ。むしろ、いっぱい迷惑掛けてごめんなさい」と取り繕い。
「でも、その『問題児』? っていうのは知っておきたい。自分も転生者である以上、知っておかないといけないと思うから」と、さりげなく隠されていた本も見せてもらえないか画策した。
どんな風に差別されているのか、何故差別されるに至ったのか、この世界の歴史を詳しく知りたい、と。
親達には綺麗事のように言葉を紡いだが、颯斗の目的は当然、更に上質な曇り顔を求めての事だった。
知れば知るだけ、その知識を活かして
そんなの知るしか無いじゃないか、と。
親の心なぞ知らぬとばかりに、颯斗は欲望に忠実だった。
親から苦い顔で許可を貰った颯斗は、早速本を漁ると、自分の部屋に篭り始めた。
隠されていた宝の山、その内の一冊に颯斗は手を伸ばす。表紙には『問題児だと分かる10の行動』とあった。
早速開いてみると、本にする為の文字数稼ぎなのか、何故『問題児』が差別されているのかの説明まで丁寧にしてくれていた。
都合のいい本に感謝しつつ、自分の脳にインプットする為に内容を読み上げながら理解しようと文へ目を滑らせる。
「────えーっと……? 『問題児』と言われる所以は、過去にやらかした転生者がかなりの数居て、しかもそのやらかしが全て世界を巻き込む規模だったから……?」
颯斗は困惑しつつも、更に内容を読み上げていく。
「色欲のままに世界中の女性を我がものにしようとした転生者、どう得たのか分からない力に溺れて世界征服を試みた転生者、建国したと思ったら魔力の根源である『世界樹』を独占しようとした転生者……。────なにこれ、転生者の恥さらし?」
颯斗は、思わず額に手を置いてしまう。
早速もう読みたくない気分にさせられたが、颯斗の曇り顔を見たい欲はこの程度では止まらない。
ページを捲る手を止めることは無かった。
「ついには、魔物を従えて世界を壊そうと目論見た者までいた……。この全ての転生者は強大な力を持ち、例外なく欲に溺れた為に、現代では『問題児』だとして差別されている、ねぇ……」
見つけ次第殺されないだけ温情しか無いだろう、と颯斗は過去の転生者に呆れ返るが、“欲望に溺れている”という点においては颯斗も同じ穴の狢な為に、そこまで強くは言えないでいた。
自分に比べてコイツらはやり過ぎでは、とも思っていたが。
ともあれ、『問題児』と呼ばれるルーツを把握した颯斗は、次の本へと手を伸ばす。
『問題児』を見破るという内容に関しては……大方、幼いのにヤケに頭が良いだの、子供の割には大人しいだの、お風呂には絶対に入りたがるし口うるさいだの、そういう“転生者のテンプレ”的な事しか書かれていないだろうと、そう察していた為、あまり興味が無かった。
次に手に取った本の表紙には、でかでかと「1時間で理解出来る!〜世界の歴史〜」と書いてあった。
小学生の時にこういうの読んだなぁ、と少し懐かしい気持ちになりつつも、颯斗は目次が無いか1ページ捲ってみる。
「……??」
ペラ、とページを捲ると、確かに目次はあった。
あったのだが、明らかに数ある章の内の最後、それの文字が太いしデカイ。
しかも書いてある言葉は“必ずお読み下さい”。その一言だけが書かれていた。
「……何だこの目次、怪しすぎる」
見た事のない、その目次とも言えない目次に思わず混乱してしまい、颯斗の動きが一瞬止まる。
しかし目的の為にも今は止まってはいられないと、他のページの一切を無視して、颯斗は太線の文字で綴られた該当のページを開く。
彼はショートケーキのイチゴは最初に食べる派だ。
「えーと、なになに……?」
またまたつらつらと音読し、内容に目を通していく。
「最後にまとめとして、分かりやすく何故各国が互いに平和を築き上げられたのかを解説します。ここまで読んでくださった方ならお分かりかと思いますが、全ては『問題児』のお陰とも言えるのです……? ──あぁ、もしかしなくても……」
大体の察しがついた颯斗は、それでも一応と続きを読んでいく。
「……『問題児』達が世界を巻き込んだ大事件を起こす度に、各国は協力体制を築いてきました。そうして何回も協力していく内に、世界の真の敵は『問題児』であると、そう各国は結論付けたのです……。────あぁうん、だよね。共通の敵が居ると仲良くなれる〜ってヤツだよね」
予想通りの内容が書いてあり、颯斗はため息を1つと、しかしコレを知れたのは大きいとウキウキもしていた。
“共通の敵が居る間は手を繋げる”。ありがちだが、人類の習性のような物としてはきっと正しい。
オマケに、この世界では『問題児』達はいつ産まれてくるか分からなければ、どのような人物で、問題を起こす様な人物なのかも一目では測れない。
過去の『問題児』……いや、『転生者』達のやらかしが、この世界では特段多すぎたのだ。
故に、『世界の敵』と結論付けられた。
良心があったのか、前の世界でいう“基本的人権”のような物はあり、生活は出来るようだが。
故に、『転生者』達は『問題児』と括られ、差別されるようになった。
国が、世界が、仮に“世界の敵”だとは本気で思っていなかったとしても、そちらの方が簡単に世界平和を実現出来るからだ。
故に、国同士での仲の良し悪しはあったとしても、戦争はほとんど起きない平和な世界となった。
「さっきの本の補足みたいな内容になってしまったが……いや、本当にいい情報を貰えた。つまり、『問題児』同士の仲間意識は強いって事が予想出来るじゃないか。ワクワクしてきた……!」
『問題児』同士の仲間意識が強いと言う事は、つまり自分が『問題児』である事を知ってもらい仲間に入れて貰えれば、それだけ悲しんで貰えるという事だ。
イコール、颯斗の言う“上質な曇り顔”に繋がる。
仮に何度も死ねる事が発覚したとしても、それはそれで颯斗にとっては好都合。
最早無敵の存在だ。色々な意味でだが。
「しかし夢が広がるとは言っても、そもそも『問題児』の集まりなんてあるのか、という問題があるな……。現状『世界の敵』なら、当然そんな奴らが集まる事は阻止するはず……」
自分の欲しかった情報を得られて満足したのか、一度本を読む手を止めて思考に没頭する颯斗。
客観的に見ると、幼い子供が難しい本を前に首を傾げている可愛い構図なのがなんとも言えない。実際に考えている事は邪悪そのものである。
「まずは『問題児』のコミュニティがあるのかの確認。仮にあったとして、集会などの集まれる場所……この世界風に言うと“ギルド”か? それがあるのかも調べよう」
ブツブツと独り言を言いながら、『やりたいことリスト』のメモ欄に目的の為にしないといけない事をメモしていく颯斗。
表紙だけこの世界の文字で、中身は颯斗の使いやすいよう日本語で書かれているのが少し小賢しさを感じるようである。
「ギルドが無かったらどうするか……『問題児』と言う事はつまり、俺と一緒で転生者なんだから、精神年齢も実質三十路とかなのが大半なはず……。そもそも実際に会話をして親しくなる所から難易度が高い……」
そう、そこも問題だろう。
身体に精神年齢が多少引っ張られる事はあっても、それでもその年齢相応まで下がるような事は今の所は無かった。
だから颯斗は、他の『転生者』もきっと大体は同じなはずだとアタリをつけていた。
……実際の所は、颯斗が曇らせに気を取られすぎているから引っ張られていないだけで、ちゃんと普通に引っ張られるのだが。
それは今の颯斗は知る由もないだろう。
そうして颯斗は思案していき、気付けば日を跨いでしまっていた。
そこまで長い時間頭を使った颯斗は、そろそ寝るかというタイミングでふと思い付き、手をポンっと拳と手のひらを合わせて叩く。
“何故こんな事も思い付かなかったんだ”と自分を責めながら。
「俺がギルドを作って、『問題児』を纏めればいいじゃん……?」
颯斗にとっての問題は解決したが、将来関わり合う人達にとっての問題が生まれてしまった瞬間だった。
こうして、化け物で怪物なヤベー奴の曇らせが幕を開き始めたのだった。
あーあ。
キャラクターの曇り顔が無いこの小説は、例えるなら“クリームとイチゴが乗っていないショートケーキ”。又は“具材の入っていない味噌汁”のような物だと思っているので次回から時を大幅に飛ばします。
ご了承ください。
過去の問題児達も、こうやって欲望のまま行動したんでしょうね。