曇り顔が見たくて死んでみたら、結構大変な事になっちゃったって話 作:せみふぁいなる
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紫雲颯斗は“
元々は現代日本で高校生をしていた、至って健康的な普通の青年だった。
ところが、転生する直前に見た曇り顔によって色々と捻じ曲がってしまい
過去の転生者達から何も学んでいないその姿はもはや逆に天晴れである。
さて、そんなこんなで『問題児』の現状を知った颯斗の行動は実に早かった。
父親と母親に礼を言うと同時、「僕がこの現状を変える! だから成人したらすぐに家を出ます!」と、要約するとそんな事を宣言したのだ。
困惑する親をよそ目に、颯斗はそれから可能な限りずっと勉強を続けた。
ギルドの設立方法、ルール、法律。お金関係のやりくりもしないといけないだろうと、会計や税金等の勉強まで。
とにかく本の虫となり知識を詰め込んだ。それもこれも、全ては将来の曇り顔の為だと必死になって。その有り様は恐怖すら感じてしまう。
“目的の為に一途”……と言えば聞こえは良いかも知れないが、やろうとしている事は転生者達の心を弄ぶ世の中を巻き込んだ盛大な自慰である。人の心は無いのかも知れない。
さて、その調子で勉強しまくりの生活を続けて早13年が経ち、年齢は18歳。
そんな彼の現在の状況だが──────
「……お願いします!!! どうか、『問題児』のギルドの設立を許可してください! この通りですッッ!!!」
────大衆も見ている中で、堂々と土下座を決行していた。
それはもう、前世から染み付いた大和魂による
土下座審査員が居たら全員10点を出すに違いない。
そんな近年稀に見る完璧な土下座の相手は、世の中の数ある“ギルド”を纏める機関である『ハンターズギルド』、そのトップを務めている“レオ・アルパード”だ。
普通ならギルドの設立なんて、受付に行って書類を書いて試験をクリアしたら終わりの簡単な作業なはずなのだ。
それなのに何故土下座をする段階まで到達する程、ギルドの設立を渋られているのか。
「だってなぁ……お前、『問題児』なんだろ? 土下座されたって無理なモンは無理だ」
それは彼が自分が『問題児』だと公言しているからだ。
大体の転生者達は、バカ正直に「自分は転生者なんです!」なんて言わない。
それも当然だろう。世界の敵認定されているのに自分から名乗り出るなんて、そんな事をするのはとんだ大馬鹿者だけである。
その大馬鹿者が颯斗なのだが。
「お前達『問題児』が集まったら、また何をしでかすか分かったもんじゃないだろ。それは歴史が証明してるんだ。……分かったら帰んな、坊主」
シッシッ、と厄介者を追い払うように手を払うレオ。
実際厄介者なのだから仕方ない。
しかし、それで諦める颯斗では無い。
「ッ……嫌です! ギルドの設立を認めてくれるまでは帰りません!」
「あぁ、全く……どうしてこう若いヤツってのは分かってくれねぇかな……。分からなかったか? お前ら問題児にやる慈悲は無いって言ってるんだ。早く帰ってくれ」
「──『問題児』のキルドを作ることによって、貴方にデメリットを上回るメリットがあったとしてもですか?」
「…………なに?」
颯斗は続けて話す。
「確かに、俺達『問題児』は世界の敵と言われ、全ての国、人から差別されています。歴史的に、そうなってしまっても仕方ないとは俺も思ってます。そんな俺達にギルドという“立場”を与えてしまったら、貴方の責任問題にもなる。それも分かってます」
土下座は続行しつつも、颯斗は頭だけ上げる。
「『問題児』には、一人でこの世界を相手取れる程の戦力が備わっている。故に
「……続けろ。その姿勢ももう良い、床に座れ」
では有難く、といそいそと正座に姿勢を変え、続ける。
「仮に力を削ぐ事が出来なかった『問題児』が現れたとして、ソイツが好き勝手に暴れた時、それを止めるにはまた世界中に甚大な被害を出す事になる。……ですが、俺達『問題児』が『問題児』を止める、としたらどうでしょうか?」
颯斗が提案しているのは、つまり“化け物には化け物ぶつけんだよ”理論である。
自分達が異端だと理解した上での提案だ。
しかし、レオもこの考えはした事がある。
した事はあるが、どうしても無視出来ない欠点が残ってしまった。
「──言いてぇ事は分かる。しかしさっき言っていたが、お前達の“裏切り”が絶対に無いと言える保証は?」
裏切り。
力を持った者の裏切り程手のかかる事は無い。なんならそのまま世界滅亡まで一直線になってしまう可能性もある。
そんなデメリットを無視出来る訳も無く、レオはこの案はボツだと白紙にした過去があった。
しかし、颯斗は「なんだそんな事」とでも言いたげに、しれーっとした顔のまま“とある紙”を出す。
「……これは?」
「“魔力を流すと俺の頭が爆発する魔法陣”ですが?」
「──あ?」
レオが紙と颯斗を交互に何回も見る。
冷や汗を流しつつ。
「……お前、正気か?」
「正気です」
「よし、お前は狂ってるらしい」
「無視ですか?」
「こんなモン渡されて無視は出来ねぇな」
現代日本で言うならば、“押すと自分が爆発するスイッチを軽いノリで渡された”みたいな物だ。
普通の感性ならやろうとはしない。
「こうでもしないと信用出来ないと思いまして」
目的の為とはいえ、流石は“化け物”である。自己犠牲の精神が物凄い。
あぁそういえば、と慌てて颯斗は付け足す。
「“頭”では無く“手”が爆発する方も作ってあります。頭では自分で確かめられなかったので、手ならどうか、と。信用してもらう為なら、その“手”の方を渡すので魔力を流してください」
「待て、分かった。落ち着け」
確かに、よく見てみると颯斗の手には良く手当されているようだが火傷の痕が付いていた。
どうした物か、と眉間を抑えるレオ。
普段から疲れている彼は、どうやら今回の事で限界が来そうである。
「──仮に承認したとして、お前の仲間が裏切らないという保証は? この魔法陣はお前だけが爆発するんだろう?」
「……そこは、信じて頂くしか無いです……すみません」
先程までの余裕そうな表情とは打って変わって、顔を顰めさせながら頭を下げる颯斗。
颯斗は“曇らせたい”だけであって、“死んで欲しい”とは思っていない。それに、自分と一緒に爆発してしまったら顔が見れないじゃないか、と。
そんな理由で、颯斗は仲間まで犠牲にするような選択は取れなかった。
レオは、颯斗が仲間は犠牲にしたくないという想いがある事を確認すると、ため息を着きつつもたった今重くなった腰を上げる。
「……あぁ、今日はとんだ厄日だな……頭を上げろ、奥に来い。……本来は受付だが、今回は色々と別だ。俺が直々に承認したって事にする」
「ッ……ありがとうございます! ありがとうございます!」
颯斗はそれを聞くとガバッと頭を上げ、かと思えばまたガバッと頭を下げる。
勢いのいい赤べこのようである。
「いいから早く来い。……お前らも聞いただろ! 『ハンターズギルド』は、世界で初めて“問題児達の公式な集まり”を許可する事にした! ギルドの設立もな! こうなりゃけヤケだ、噂もガンガン広めてけ! ……チッ、どうしてこうなったんだか……」
どちらかと言うと面白い事の方を優先する“ギルド”所属の“冒険者”達は、祭りだなんだのと騒ぎ出す。『問題児』への偏見は、世界単位で見ると比較的薄い方のようだ。
『ハンターズギルド』は、世界中のモンスター退治を担っている重要組織。国単体でも対処は出来るが、この機関が無くては困る事の方が多い。
そんな組織が、国から見れば『問題児』達を匿うような動きをした。無視出来るような事態では無いだろう。
「(お偉いさん方になんつー説明をしたらいいか……あぁクソ、やっぱり厄日だな……)」
レオの胃は既に悲鳴を上げていた。
責任を負う者の背中は、まるでくたびれたサラリーマンのようだ。
そんな背中を追う颯斗は、ご満悦の表情だ。
大変良い笑顔である。
「(無理だと思ってたけど、ギルマスがチョロくて助かったな……。いやぁ、それにしてもこれで目標に向かって1歩前進か。早く“陽奈さん”を曇らせたいなぁ……ワクワクしてきた)」
大変な考えである。
そしてこんな事の為に胃を犠牲にするレオは、大変に可哀想である。
ギルマスかなり複雑そうで可哀想。
でも自爆スイッチを渡してくる程の覚悟に当てられて許可しちゃうの可愛い。
今更ですが見切り発車気味なので、矛盾点あったら教えてください。