曇り顔が見たくて死んでみたら、結構大変な事になっちゃったって話 作:せみふぁいなる
宜しければ是非、お気に入り・感想・評価・ここ好き等お願いします。お気に入り数に比べて評価が少なくて悲しいお年頃なんです。
追記:文を少し修正しました。
「────で、あのちゃんちゃらオカシイ魔法陣を渡してギルドが建てれたって???」
「……はい。こうでもしないと、僕達『問題児』はギルドなんて作れないかなと……」
場面はハンターズギルドから飛んで、颯斗の家……兼、将来のギルドハウスとなるだろう建物の玄関にて。
彼は今、怒り心頭な銀髪の少女に詰められていた。
腕を組んで正座の颯斗を詰めるその姿は、怒りのオーラに当てられてか髪の毛も若干浮いている気さえする。
流石の颯斗も、下を向いてプルプルと嵐が過ぎ去るのを待つしかない様子だ。
ギルドマスターの執務室にて、無事にギルドの設立と、それとちょっとした試験を終えた颯斗は、笑顔で自宅の扉を開いた……はずだったのだが。
ひと仕事終えた颯斗を待っていたのは、腕を組み圧のある笑顔で仁王立ちしていた銀髪の少女……“
陽奈も、元々は圧なんてない綺麗な笑顔で迎える予定だった。例えギルドを設立出来なかったとしても、だ。
しかし、今日も今日とて無許可で颯斗の部屋を掃除している時に気付いてしまったのだ。
いつぞやかに颯斗が作ったと言っていた
もう陽奈と颯斗はかなり長い付き合いであり、陽奈は一瞬で察してしまった。「あ、これ持って行ったな」と。
当然、作ったと言っていた当時も、陽奈はバチクソにキレまくっていたし、何度もそんなモノ破いて捨てろと言ったのだ。
しかし颯斗は「何かの役に立つかも知れない」と言って聞かず、捨てる事をしなかった。
昨日も机の中に大事そうにしまってあったというのに、今日この大事なタイミングに限って無い。
そこから陽奈が察するまでに、時間は必要無かった。
「私が何回も捨てろって言ったのに聞かなかったのは、この時の為って事かしら?」
「……まぁ、そういう可能性もあるかもしれま「真面目に答えて」…………はい、そうです。今日の為にと思ってました」
それを聞いた陽奈はプルプルと震える。
少し俯いているのもあってか、前髪で隠れて表情が見えず、颯斗は堪らずこれから来るであろう怒りの波に身を構える。
しかし颯斗に襲いかかってきたのは怒りでは無く────
「あ、あの、陽奈さん……?」
「……んで……」
「……はい? ごめんなさい、もう一度言ってもらえると……」
「……なんで────なんで! すぐそうやって自分を犠牲にするのよ!! そんなに私達は……私は、頼りないってワケ!?」
──陽奈の涙であった。
颯斗に目線を合わせた陽奈の
颯斗はこの13年の間で何回もやらかしている。主に自分の身を犠牲にする、という形で。
やらかしては陽奈に怒られ、やらかしては陽奈以外の仲間に怒られ、それを聞いた陽奈に更に怒られ……と繰り返していく内に、陽奈の内には負の感情が溜まっていっていた。
それがとうとう爆発し、色々な感情がごっちゃになった結果なのだろう。
そんな陽奈を見て、颯斗は思わずと言うように勢いよく立ち上がる。
お互いの気持ちをこれから熱くぶつけ合うような構図になったが、しかし。
この
「(……危ない危ない。いきなりの
やはり人の心は無いようだ。
“衝動的に立った”のは間違いなかったが、理由が終わっている。
「(それにしても、自分が死ぬ事でしか引き出せないと思っていたと言うのに、今このタイミングで“自らの死以外でも曇らせられる”という事が判明するとは……世の中分からない物だな……)」
普通に陽奈の気持ちを考えたら分かる事ではあるが、颯斗は本気でその様な事を思っていた。普通に死以外で曇る事はあると馬鹿でも分かりそうなモノだが、颯斗は“死”に囚われすぎている。
もっとこの顔を見ていたいが、ずっとそのままでは流石にダメか、と颯斗は話を進める為に“思ってもいない事”を言う。
「頼りない訳無いじゃないですか! なんなら何時も頼りにしてます!」
「じゃあなんでッ……なんで大事な時には私達には何も言わずに行動するのよ!」
「それは! ……皆には怪我させたくないから……です」
嘘はついていない。怪我は本当にして欲しくない、と彼は一応想っている。
「そんなの、貴方のエゴじゃない! 私はせめて相談くらいはしてよって言ってるの! そしたら、貴方が犠牲になる以外の方法も浮かんでくるはずでしょ!?」
「エゴだとは分かってるんです。……だけど、“『問題児』が安心して暮らせる場所を作る”なんて馬鹿みたいな理想に着いてきてくれる皆さんを、危険に晒すような真似は……俺はしたくない」
どう言葉を伝えても譲らない二人。
そんな状況に段々と痺れを切らしてきたのか、陽奈の表情が怒り寄りになって行く。
「ッ……あぁもう、このままじゃ埒が明かないわ! ……また後で話しましょう。貴方も私も、譲りたくない。そんな状況で感情のまま喋ったって、きっと解決しないわ……少し、お互い頭を冷やしましょう。いや、冷やすのは私だけなのかしらね」
自嘲気味にそう言うと、陽奈は自分の部屋へと帰って行く。
一方で颯斗は、俯いて立ったまま微動だにしない。
オレンジ色の陽の光が部屋を照らしていく。
俯いていた颯斗にも、その光は平等に届く。そうして照らされた颯斗の顔は……心底安堵している表情だった。
「(良かったぁぁぁぁぁ、ガチギレした陽奈さんの淡々としたお説教だけは受けたくなかったからなぁ……。とてもイイ顔も見れたし、お説教回避だし、ギルドも建てられるしで、今日はとても素晴らしい一日なんじゃないか?)」
後でまた話し合う事になるのは忘れているのだろうか。
それと、こんな目標を掲げている限りお叱りを受ける頻度は必然と高くなる事もコイツは分かっていないのだろうか。
なんにせよ、颯斗はそれはとてもご機嫌の様である。
「(ギルドは建てれた。家もある。……条件は整った訳だし、後はギルド活動をして行きながら、頃合を見て“やる”だけか……いやぁ長かった、苦節18年。……でも、死んだ後に復活するのはなんとなく分かってるけど、復活って元の体でするのか? それとも“新しい人生”を歩む事になるのか? …………んー、そこは分からないか……)」
今更な疑問である。
なんなら颯斗は「どうにかなるか!」の先送り精神でこの疑問をぶん投げる。
そんな事より目の前の曇り顔、という訳だ。
どういう訳だ。
この後の冷静になった陽奈との話し合いも、結局は難航した。
難航したが、陽奈側が折れて“せめてそういう事をする時は事前に言う事”を条件として見逃してくれる事となった。
人間として出来すぎている。
「(事前に言うとは約束したが、緊急事態で咄嗟に出てしまった行動は事前に言うもクソもない。勝ったな)」
……対称的に、人間として終わっている。
TIPS:家は親の知り合いの『問題児』がくれた。当然親もその知り合いも『問題児』である事は隠している。
陽奈さん、多分颯斗君には勿体ない女の子だと思うんですけど。どうしてこんな子を曇らせないといけないんですか?(現場猫)