曇り顔が見たくて死んでみたら、結構大変な事になっちゃったって話 作:せみふぁいなる
気合で書きました。書けるものなんですね。
変わらず何時でも評価は待っております。お陰様で執筆意欲がかなり上がっています。
それと、ご指摘下さった方もありがとうございました。
宜しければ是非、お気に入り・感想・評価・ここ好き等お願いします。
颯斗らが正式にギルドとして活動し始めて、早くも半年。
この半年間、彼は曇らせたい欲が出ては怪我をして曇らせ欲求を少しだけ満たし、また出ては満たしを繰り返していた。
一刻も早く颯斗は曇らせたいのだろうが、絶好のタイミングと言うのが中々やって来ない。
しかし、かと言って功を焦るような真似を颯斗は一度たりともしなかった。
全ては記憶にこびり付いて離れない、“あの顔”を見る為だと。
だからこそ、颯斗は抑えられない欲求を少しだけ満たせるような、致命傷にはなり得ない怪我を繰り返して我慢していたのだ。
そも、彼は今の今まで、今世における全てを
この程度慣れっこ……とは欲のデカさの関係上言えないだろうが、それでも耐える事を目標の為と割り切っていた彼に死角は無い。
尚、自分が化け物である自覚もそこまで無い。
さて、そんな自分の本能に耐えに耐えてきた颯斗だが。
そんなジッとしている時期も遂に終わりかもしれない、とウズウズしている。
それに伴い彼は今、これまでに無い程の
──というのも、だ。
「──それで、“ギルドマスター”。お話と言うのは……?」
「──あぁ、堅苦しくしなくていい。話自体はすぐに終わる……」
……とうとう来たのかも知れないのだ。
「この半年間、お前らの活動をじっくりと見させてもらった。──『ハンターズギルド』は、お前達は信頼に値すると評価する事となった。……で、だ。タイミングの良い事に、そんなタイミングで厄介事が舞い込んできやがってな」
颯斗の言う、“タイミング”というヤツが。
「単刀直入に言おう。────お前達“トラブラー”が設立を許される理由となった内の一つ、“
「…………詳しく、お聞かせ頂いても?」
腕を組むレオに心の内を隠し、颯斗は真面目な顔で続きを促す。
彼の人生で一番大事な瞬間は今、暗雲と共にやって来たようだ。
悲劇は、避けられない。
──とは言っても、颯斗にとっては別に悲劇でもなんでも無いのだが。むしろ幸福であろう事は間違いない。
この世界で颯斗の
「まだ一般には広まってねぇ情報なんだが……出ちまったんだよ。本当の『問題児』ってヤツがな」
“全く面倒な事しやがるぜ”と溜息をつき首を振るレオ。
相も変わらず疲労が溜まっている苦労人らしい。
「まだ初期段階ってんで、急いで戦力を送って早めの対処に動こうって話になったんだが……他のお偉いさん方がどうにも出し渋りやがってな。間違いなく無視出来ない損害が出るからってソコで渋るのは、トップとしてどうなんだって感じなんだが……」
やれやれだよな、と肩を竦めるレオ。
流石の颯斗も、彼からしたら好都合とは言え、世界の危機に何してんだ人類……と引かざるを得ない様子だ。
結局足の引っ張り合いが起こってしまうのは、人間の
「ま、ここまで話したら大体分かるよな? そんな状況で白羽の矢が立ったのがお前らって事だ。いっちょ前に『仕事ぶりを見せてもらう』とか言われたがな……ま、それはお前らのギルドの設立を認めた俺の責任だ。仕方ねぇ」
どうやら、『トラブラー』が
しかし、颯斗は“これはあんまり使えなさそうな情報だな……”と、半分聞き流していた。何してるんだコイツ。
どうせもうすぐ死ぬ彼には関係の無い事だから、と言う理由があるにはある。だとしても耳を傾けた方が良いと思うが、これが颯斗クオリティである。
「断る気も無いですし、そもそも拒否権は設立理由的にも無いでしょうから、そこは良いんですが……複数質問をしても?」
「あぁ、大事な話だからな。遠慮せずなんでも聞け」
極上の顔を作る為にはやはり情報が欠かせないと、颯斗は右から左へ聞き流すのを止め、自分から引き出す事にする。
最初から全部聞け。
「一つ目は、出し渋ったと言っていましたが、多少の戦力は送られましたか?」
「あぁ、それぞれのお国から一個小隊がな。舐めてんのかって話だが……。ハンターズギルドからは特に戦力の大きいギルドに掛け合って戦力を出して貰ったが、お国の小隊含め全滅した。……送られた奴らには、申し訳ねぇとは思ってる」
レオは絶対に死ぬと分かってる中で行かせたくは無かった。しかし、それでも送らないと面子という物が立たなかったのだろう。
死んで行った人への罪悪感を誤魔化す為一つ舌打ちをすると、レオは軽く顎をしゃくり続きを促す。
「分かりました、ありがとうございます。二つ目ですが、“相手の能力は判明していますか”?」
「……『問題児』共は訳の分からん能力を持っている事が多いからな。判明している事にはしているんだが、正確性に欠ける。絶対に“こうだ”と言い切れないんだ。それでも良いか?」
「はい。事前に少し分かっているだけでも、大きなアドバンテージを得られると思います。……教えてください」
実際、それは正しいだろう。
事前に分かっているだけで、如何に敵の動きへの対策をするかを事前に練ることが出来る。そしてそれは、敵が強大になればなるほど必須となる。大体のゲームでもそうだろう。
しかし颯斗の場合、如何に怪我を負うか……又は、如何に味方を庇い致命傷を負うかを練る為の情報であった。
そして、こういう時だけ頭の回転が早い颯斗は、敵の能力も分かっていないのに、もうこの段階でどのようにして死ぬかを決めた。
皆の曇り顔は見たいが、皆に死んで欲しくは無い。しかし自分が殺られるとなると、自分以外の誰かへと危険が向かう事となる。
敵の能力関係無しに、良い具合にビターエンドを迎える為には。
それらの条件が結び付き、颯斗が出した結論とは。
「(────そうだ! ラストバトルっぽい所で敵と刺し違えよう! 俺は死ねて敵は倒せて、かつ皆の顔が見れる! 最高だな!!)」
この間、考え始めてから僅か0.5秒。
この才能を、何故神様は他のステータスへと振らなかったのか。不思議でしょうがない。
若干手段と目的に逆転が見られるが……まぁ、彼からしたら些細な事だろう。
そんな事を颯斗が考えている間に、レオが敵の能力についての詳細を話し始める。
「致命傷を負ったまま気合で逃げ帰った奴から聞いた話らしいんだがな。……なんでも、身体を武器に変えることが出来る……らしい。好きなタイミングで好きな箇所を、好きな武器に。……そう“本人から聞いた”みたいだな」
「それは……なんとも強力ですね」
〇彩滑刀とかも出せそうだなー、良いなー、と颯斗は呑気に考えている。
外面を繕う事において彼の右に出る者は、あまり存在していないだろう。
「しかし、それだけですか? 他には分かって無いですか?」
「……すまねぇな、他は無いらしい。他にも言おうとはしていたらしいが、コレだけ言って事切れたそうだ」
「……そうですか……。──いえ、充分です。ありがとうございます」
綺麗な角度でお辞儀をする颯斗。
一見して、とても自爆ボタンを相手のトップに渡すような人間とはとても思えない好青年ぶりだ。
「頭を上げろ、別にそこまで畏まらないで良い。……そうだ、聞かれる前に言っておくが、敵の目的は不明。潜伏場所は、北の“死沼の森”だ」
「分かりました。ありがとうございます。……では、最後の質問をしても?」
「……もう良いのか? 死ぬかもしれねぇってんだ、もっと聞く事は無いのか?」
「えぇ、大丈夫です」
この半年、レオは何だかんだで颯斗の事を、“トラブラー”の事を気に入っていた。
親心に近いそれを持ってしまったレオは、そこそこ世話を焼いてしまっていたのだ。
相手が『問題児』だと言うのに、しっかり個人個人を見た上で絆されたレオは、この世界屈指の人格者と言えるだろう。
「最後なんですが────これを達成出来たとして、何もしていない僕達『問題児』への印象は良くなると思いますか?」
その質問に、レオは予想してたと言わんばかりの早さで回答する。
「──それは怪しいだろうな。結局やらかしてるのも『問題児』だ。……どちらかと言えば、『問題児』への印象と言うよりも、お前達“トラブラー”への印象が良くなる、が正解だろう」
「…………そうですか。そう上手くは行かないですね……分かりました、ありがとうございます」
颯斗が表で宣言している目標。“問題児が安心して暮らせる場所を作る”。そんな目標を、レオも当然聞いている。
だからこそ、今レオの答えを聞いて浮かない顔をしている颯斗を、レオは無視出来なかった。
「……あー、
「──本当ですか!?」
「あー、本当だ。本当だから、そんなに顔を近付けるな。何が悲しくて野郎の顔をドアップで拝まなきゃなんねぇんだ」
そんな事を言いつつも、レオは余り満更では無さそうであった。
「話はこれで終わりだ。メンバーの奴らに今の話を伝えてやんな」
「はい! では、ありがとうございました!」
「あぁ、気を付けろよ。…………死ぬなよ、“トラブラー”」
「(やっと、やっとやっとやっと! この時が来た! 待ち侘びたんだぞ全く……! 長かった……長かったぁ……! こうしちゃいられん、すぐにでも帰って報告。で、自分の部屋で早速策を練るとしよう……! クククッ……!)」
……勘違いしないで欲しいのだが、これでも悪役では無い。
本性を知ってると全然悪役だが。
TIPS:大牙君はレオに憧れている。
少しネタバレすると、敵の『問題児』に殺されはしません。
予定的にはあと6話前後で持ってけると思いますが……オーバーしちゃったりしたらすみません。
違和感があったりしたら遠慮なく投げてください。
追記:明らかにおかしい箇所を修正・加筆しました。推敲せずに投稿するとこうなります、皆さんも気を付けましょう。