有明のハーロック   作:星乃 望夢

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無限交差軌道交響曲
第30話


 

機械化母星メーテルの激戦。

 

星野鉄郎という少年が、機械帝国の野望を打ち砕いた、歴史的な決着。

 

その余韻も冷めやらぬ星の海で、俺たちは散っていった友への弔いの酒を酌み交わしていた。

 

その最中だった。

 

突如として発生した時空の歪み。

 

警報を鳴らす間もなく、海賊国家船団・有明の全艦艇、約20万隻が、巨大な渦へと飲み込まれた。

 

だが、俺たちはもはや、嵐に怯えるひよっこではない。

 

幾多の死線を越え、機械化帝国とも渡り合った歴戦の海賊だ。

 

各艦が連携し、旗艦ネオ・アルカディア号の放つ誘導ビーコンを命綱に、荒れ狂う時空の激流を乗りこなす。

 

そして、嵐が去った後。

 

艦橋のメインスクリーンに広がったのは、あまりにも懐かしく、そして切ない光景だった。

 

「……現在位置!」

 

俺の声が響く。

 

オペレーターの老兵が、計器を覗き込み、そして呆然とスクリーンを見上げた。

 

「星域図照合……。というか、見えてますよね、キャプテン? ……あれは」

 

「ああ。……見間違えるはずもない」

 

目の前に浮かぶ、青い星。

 

だが、それは松本零士の世界の地球ではない。

 

大気汚染も、機械都市化によるスラムもない。

 

夜の側には、無数の都市の光が煌々と輝いている。

 

まだ人類が重力に魂を引かれ、宇宙への進出さえままならない、発展途上の故郷。

 

俺たちの、令和の地球だ。

 

「……銀河鉄道管理局との通信は?」

 

「通信途絶。……ホットラインも繋がりません。この宇宙には、銀河鉄道のレールが存在しません」

 

オペレーターの報告に、俺は深く息を吐いた。

 

確信した。戻ってきたのだ。

 

20万隻の船団と、1億5000万の国民を引き連れて。

 

「……トチロー」

 

俺は、船体と一体化した親友の名を呼ぶ。

 

『検索は終わってるぞ、友よ。……どうやら、予期せぬ里帰りになった様だ』

 

AIトチローの声は、驚きよりも、これから始まる「祭り」への予感に弾んでいる。

 

「……そうか。ならば、やることは一つだ」

 

この帰還には意味がある。

 

あの日、俺たちが旅立った後に残された、まだ見ぬ友たち。

 

あるいは、あの時は踏ん切りがつかなかった者たち。

 

彼らを迎えに来たのだ。

 

「トチロー」

 

『準備は出来てるさ、ハーロック。……日本全国に向けて、ジャック完了だ』

 

有明は、マントを翻してマイクを手に取った。

 

震えはない。

 

かつて、西ホールの隅で震えていた男はもういない。

 

ここにいるのは、銀河を渡り歩いた、堂々たる宇宙海賊だ。

 

カチッ。

 

その瞬間、日本のあらゆるスマートフォン、PC、街頭ビジョンがジャックされた。

 

映し出されるのは、ネオアルカディア号の艦橋。

 

そして、傷だらけだが誇り高い、ドクロの旗。

 

「……聞こえるか、地球の友よ」

 

有明のハーロックの声が、電波に乗って世界中へ降り注ぐ。

 

「聞こえるのならば、それで良い。……言葉はいらん。魂で聞け」

 

日本の深夜。

 

人々が足を止め、画面を見上げる。

 

かつて彼の配信を見ていた者たちが、息を呑む。

 

「帰ってきた」「本当に、帰ってきた」と。

 

「この自由と誇りの旗に集う覚悟はあるか? ……今の暮らしに満足しているなら、そのまま眠れ」

 

有明は、画面の向こうの「お前」を指差した。

 

「だが、もし……心の奥底で燻る火があるのなら。鎖を引きちぎり、広い世界へ飛び出したいと願うのなら」

 

彼は、ニヤリと不敵に笑った。

 

それは、かつて憧れたアニメの中のヒーローの顔であり、同時に、苦難を乗り越えてきた一人の男の実存の顔だった。

 

「お前が気に入ったのなら、この船に乗れ。……いつか失くした夢が、ここにだけ生きている」

 

その言葉は、かつての流行歌の歌詞ではない。

 

彼が体現した、真実の招待状だ。

 

「全艦、大気圏突入用意! ……目標、日本! 有明上空!!」

 

『合点だ! 総員、衝撃に備えろ! ……ド派手な凱旋だ!』

 

号令と共に、20万隻の大船団が動き出す。

空が燃える。

 

大気圏突入の摩擦熱が、夜空を真昼のように照らし出す。

 

2026年、冬。

 

東京・有明、東京ビッグサイトの上空。コミケから1週間。

 

雲を突き破り、最初に姿を現したのは、若草色の巨艦、ネオアルカディア号。

 

続いて、空を埋め尽くすほどの無数の宇宙船が、雪崩のように降下してくる。

 

それは侵略ではない。

 

SF映画のワンシーンでもない。

 

「迎え」だ。

 

「……来たぞ! キャプテンだ!」

 

「行くぞ! 荷物はまとめたか!」

 

日本中から、いや、世界中から。

 

かつては画面の前で涙していた老人たちが、車椅子を捨てて立ち上がる。

 

社会に絶望していた若者たちが、リュック一つで家を飛び出す。

 

民族大移動のような熱狂。

 

彼らは目指す。

 

ドクロの旗がはためく、約束の地・有明へ。

 

そこには、法も国境もない。

 

あるのは、自由と責任、そして果てしない星の海への片道切符だけ。

 

有明のハーロックは、艦橋からその光景を見下ろし、満足げにグラスを掲げた。

 

「……待たせたな。さあ、野郎ども。……新しい冒険の始まりだ」

 

物語は、終わらない。

 

ここからまた、新たな伝説が紡がれていくのだ。

 

 

◇◇◇

 

 

ネオアルカディア号の最上甲板にある特別展望室。

 

そこは、喧騒に満ちた艦橋とは隔離された、静寂の空間だった。

 

眼下には、令和の東京・有明の夜景が広がっている。

 

だが、その輝きは地上のネオンではない。

 

空を埋め尽くす20万隻の宇宙船が放つ着陸灯の光と、そこへ雪崩れ込む数百万、数千万の人々の熱気が作り出す、生命の光の奔流だ。

 

その光景を、グラス片手に見下ろす二つの影があった。

 

漆黒の服に身を包み、隻眼の鋭い光を放つ、キャプテンハーロック。

 

深紅の衣装を纏い、長い髪を揺らす、クイーン・エメラルダス。

 

この宇宙で最も孤独を愛し、個として立つことを美学とする二人の伝説が、今、かつてないほど「群れる」男の背中を見つめていた。

 

「……呆れたものね」

 

エメラルダスが、ふっと口元を緩め、赤ワインの入ったグラスを揺らした。

 

「孤高こそが海賊の華。孤独こそが自由の代償。……そう信じて生きてきたけれど」

 

彼女の視線の先には、艦橋でマイクを握り、怒号と歓声が飛び交う通信回線を捌きながら、次々と入港する民たちを受け入れている有明のハーロックの姿がある。

 

「あのアリの群れのような大行列。……あれを全て背負い込んで、なお笑っている男がいるなんて」

 

「……フッ。違いない」

 

ハーロックもまた、喉を鳴らして低く笑った。

 

彼の生き様は、徹底した「個」だ。

 

己の旗、己の船、そして己の信じる友。それだけを守り、それだけのために死ぬ。

 

だからこそ、彼は強い。

 

だが、眼下の男、有明の強さは種類が違う。

 

「俺たちは、風だ」

 

ハーロックは静かに語る。

 

「吹き抜ける風は、誰にも縛られんが、誰も抱きとめることはできん。……すれ違うことはできても、根を下ろさせることはできんのだ」

 

そして、彼は有明を指した。

 

「だが、あいつは『海』だ」

 

「……海?」

 

「ああ。清濁併せ呑み、漂流する者を受け入れ、巨大なうねりとなって進む。……20万隻、1億を超える魂。その全てを『友』と呼び、その重さをマント一枚で支えてみせる」

 

ハーロックの隻眼に、畏敬の色が宿る。

 

「俺にはできん。……いや、しようとも思わん。あれは、孤独を恐れぬ強さではなく、孤独を知るがゆえに、他者と手を取り合うことを選んだ、新しい強さだ」

 

かつて、この男は「偽物」だったかもしれない。

 

だが今、この瞬間、彼は間違いなくこの時代の「王」だ。

 

誰よりも多くの夢を乗せ、誰よりも重い錨を上げようとしている。

 

「……トチローが、彼を気に入った理由が分かるわ」

 

エメラルダスが、優しげな瞳をする。

 

「トチローもまた、誰かのために汗を流し、誰かのために自分の命を使える男だった。……有明の背中には、彼の魂が張り付いているようよ」

 

『ハーロック! エメラルダス! ……すまんが湿っぽい顔してないで、手伝ってくれ。人手が足りん……』

 

艦橋から、有明の声が通信機越しに響いてくる。

 

伝説の海賊に対して「手伝え」などと、恐れ多いにも程がある。

 

だが、その声はあくまで対等で、そして楽しげだ。

 

ハーロックとエメラルダスは顔を見合わせ、同時に肩をすくめた。

 

「……人使いの荒い船団長だ」

 

「ええ。……でも、悪くないわね」

 

二人はグラスを干し、マントを翻した。

 

孤高の海賊たちが、群れる海賊の船出に手を貸す。

 

それもまた、この新しい時代が生んだ「自由」の形なのだろう。

 

「行くぞ、エメラルダス。……これだけの数だ。交通整理は骨が折れるぞ」

 

「ふふっ。……腕が鳴るわね」

 

二つの影が、喧騒の渦中へと降りていく。

 

その先には、汗と油にまみれながら、世界一楽しそうに笑う有明のハーロックが待っていた。

 

 

◇◇◇

 

 

有明のハーロックは、決して耳を塞がない。

 

モニターの向こう、SNSのタイムライン、あるいは魂の叫びとして届く、悲痛なSOSの数々。

 

『行きたい……でも、北海道からは遠すぎる』

 

『入院中だ。点滴が外せない。金もない』

 

『足がない。……ここまで来て、見送るしかないのか』

 

東京・有明に集結できるのは、五体満足で、移動手段を持つ者だけだ。

 

だが、そんな「持てる者」だけを救うなら、それはただの旅行代理店だ。

 

海賊国家船団・有明は違う。

 

魂に火が灯っているならば、どんな深淵からでも引き上げる。それが海賊の流儀だ。

 

「……馬鹿野郎ども。俺が『迎えに行く』と言った言葉を忘れたか」

 

有明は、ネオアルカディア号の艦橋で不敵に笑い、マイクのスイッチを入れた。

 

「トチロー。……『線路』は繋がっているな?」

 

『ああ! 驚いたことにね! ……先生の拘りか、それとも予言か。この国のレール規格(1067mm)は、銀河鉄道とピタリと合うんだ!』

 

「ならば話は早い。……総員、配置につけ! 日本全土が、今夜の停車駅だ!」

 

 

◇◇◇

 

深夜。

 

終電が過ぎ、静寂に包まれた日本各地のターミナル駅。

 

札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、博多……。

 

誰もいないはずのホームに、重厚なドラフト音が響き渡った。

 

シュッシュッ……ポッ……!

 

夜空から舞い降りたのは、黒鉄の巨体。

 

C62-50『QQQ号』。

 

そして、時空嵐に巻き込まれ、船団に合流していた貨物列車や装甲列車たちが、雪の舞う北国から、南国の夜風吹く駅まで、日本列島の動脈へと車輪を下ろした。

 

ガタン、とレールが鳴る。

 

狂いはない。完璧な適合。

 

それは、かつて蒸気機関車を愛し、そのディテールを極限まで追求して描いた巨匠が、未来の子供たちのために遺してくれた「奇跡の架け橋」だったのかもしれない。

 

「……乗れ! 切符はいらん!」

 

客車のドアが開く。

 

駅員もいない、改札もない。

 

ただ、その汽笛を聞きつけ、パジャマ姿や着の身着のままで駆けつけた人々を、銀河鉄道は無言で飲み込んでいく。

 

だが、空には障害もある。

 

地上の政府や防衛組織が、領空侵犯として迎撃機を飛ばそうとする動きがあった。

 

その時。

 

雲海を割り、銀色の閃光が走った。

 

ボオォォォォォォォォォォッ!!

 

銀河鉄道管理局(SDF)所属、超特急『ビッグワン』。

 

その巨大な主砲が、威嚇として空を裂く。

 

『……こちらシリウス小隊。地上の航空部隊に告ぐ』

 

有城学の声が、冷静かつ断固として響く。

 

『これより、当列車は銀河鉄道の運行警護を行う。……進路を妨害する者は、管理局の規定に基づき排除する』

 

「……海賊に言われるまでもない、か」

 

有明は、モニター越しにビッグワンの勇姿を見て、口元を緩めた。

 

秩序の守護者が、無法者の逃避行(エクソダス)を守る。

 

この矛盾こそが、今回だけの特別な「正義」だ。

 

そして、駅にさえ行けない者たちのもとへは、「個別の迎え」が訪れていた。

 

地方の古びた病院。

 

末期症状で寝たきりの少年が、窓の外の月を見上げていた。

行きたかった。あの船に。

 

でも、体は動かない。

 

ウィーン……。

 

突如、病室の窓の外に、奇妙な形の小型艇がホバリングした。

 

海賊国家船団の搭載艇だ。

 

窓ガラスが外から丁寧に外され、冷たい風と共に、一人の男が乗り込んでくる。

 

その顔を見て、少年は目を見開いた。

 

かつてネットで知り合い、半年前に「先に行く」と言って消えた、ゲーマーの友人だった。

 

「……よう。遅刻だぞ」

 

友人は、海賊の戦闘服に身を包み、少しだけ逞しくなっていた。

 

「……来て、くれたのか……」

 

「当たり前だろ。……有明のキャプテンが言ったんだ。『友を見捨てる奴は海賊じゃねえ』ってな」

 

友人は、少年を毛布ごと抱き上げた。

 

チューブが外れ、警報が鳴るが、構わない。

 

ここにあるのは延命治療装置だけだ。だが、あっちには「命」がある。

 

「……痛むか?」

 

「ううん……。なんか、ワクワクする」

 

「へっ、いい度胸だ。……飛ばすぞ!」

 

小型艇は、重力制御でふわりと浮き上がり、夜空へと消えていく。

 

日本中のあちこちで、老人ホームの窓から、独房のような部屋から、数多の魂が「救出」されていく。

 

空を見上げれば、無数の光の筋。

 

それは、銀河鉄道の光跡と、迎えの船たちのジェット噴射。

 

日本の空は今、ひとりの男が描いた「夢の交差点」となり、全ての境界線を取り払っていた。

 

 

◇◇◇

 

 

有明の上空に巨大な船団が現れてから一週間。

 

その姿は、24時間体制で全世界のメディアによって生中継され続けていた。

 

最初はフェイクニュースやCGだと疑っていた世界中の人々も、昼夜を問わず鎮座するその圧倒的な質量と、そこから発せられる熱量に、認めざるを得なかった。

 

「彼ら」は実在するのだと。

 

そして、「有明のキャプテンハーロック」の名と、そのドクロの旗の意味は、瞬く間に国境を越えた。

 

特にフランスなど欧州の一部では、キャプテンハーロックの名は『キャプテン・アルバトール』として、日本以上に神格化された英雄だ。

 

「自由の旗が帰ってきた!」

 

その熱狂は、地球の裏側でも沸騰していた。

 

だが、物理的な距離という壁が立ちはだかる。

 

「日本は遠すぎる」

 

「パスポートも、航空券もない」

 

嘆く声がSNSを埋め尽くす。

 

しかし、有明のハーロックは鼻で笑った。

 

「……地球の裏側? それがどうした」

 

彼はネオアルカディア号の艦橋で、AIトチローに指示を飛ばす。

 

「銀河を渡る俺たちの足(列車)にとって、地球の大気圏内など庭先への散歩にもならん」

 

シュウウウウ……!!

 

有明の交易艦駅から、数多の黒鉄の巨体が次々と飛び立っていく。

 

C62型だけではない。この世界で再生された多種多様な銀河鉄道の車両たちが、青白い重力波を纏い、マッハを超える速度で空へと散っていく。

 

 

◇◇◇

 

 

フランス、パリ北駅。

 

歴史あるドーム型の天井の下、行き交う高速列車の隣に、突如として蒸気の煙が充満した。

 

空から舞い降りたのは、異国の、しかしどこか懐かしいフォルムの蒸気機関車。

 

「……Mon Dieu(なんてことだ)……!」

 

「Albator(アルバトール)の迎えだ!」

 

老若男女がホームに殺到する。

 

言葉は通じなくとも、客車のドアを開けた車掌(アンドロイドや元国鉄マンの魂)が、胸のドクロを指差せば、意味は通じる。

 

『夢はあるか? 乗れ!』

 

アメリカ、ニューヨーク、グランド・セントラル・ターミナル。

 

ブラジル、リオデジャネイロ。

 

中国、上海。

 

ロシア、モスクワ。

 

世界中の主要ターミナルに、銀河鉄道が「臨時停車」する。

 

地球の鉄道網の規格など関係ない。空間軌道を使えば、彼らはどこへでも降り立てる。

 

飛行機なら十数時間かかる距離を、彼らは数十分で駆け抜ける。

 

そして、駅にすら辿り着けない者たちのもとへも、海賊の魔手(救いの手)は伸びる。

 

アフリカの紛争地帯。

 

瓦礫の中で空を見上げていた子供たちの前に、小型の強襲揚陸艇が静かに着陸する。

 

降りてきたのは、強面の空間騎兵隊。

 

銃を構える現地兵を、「邪魔だ!」の一喝(と威嚇射撃)で黙らせ、子供たちを抱え上げる。

 

「……誘拐か!?」

 

「違う。……スカウトだ」

 

隊員はニヤリと笑い、子供にパンと水筒、そして一枚のチケット(有明ナンバーカードの仮発行証)を渡す。

 

「生きる気力があるなら来い。……飯はある。仕事もある。お前たちの命を、こんな砂漠で無駄にするな」

 

南米のスラム街、東南アジアの水上集落、北欧の孤独なアパート。

 

世界中の「見捨てられた場所」に、ドクロのマークが入った艇が降下する。

 

病人も、怪我人も、心を病んだ者も。

 

審査基準は日本と同じ。

 

『夢はあるか?』

『未練はないか?』

『働かざる者食うべからず(ただし、動けるようになってからでいい)』

 

その問いに「YES」と答え、瞳に光を宿した者だけが、重力の底から引き上げられる。

 

有明上空の交易艦駅には、数分おきに世界各地からの「乗客」を満載した銀河鉄道や輸送艇が帰還してくる。

 

ホームに降り立つ多種多様な人種、言語。

 

だが、そこに混乱はない。

 

皆、一様に「助かった」「選ばれた」という安堵と、これから始まる未知への興奮で顔を紅潮させている。

 

有明のハーロックは、その様子をモニターで見つめ、満足げに頷いた。

 

「……言葉も肌の色も関係ない。ドクロの旗の下では、全ての魂は平等だ」

 

地球という星の重力を振り切り、世界中から集まった「同志」たち。

 

その数は、当初の予想を遥かに超え、船団の収容限界に迫りつつあった。

 

だが、有明は笑う。

 

「狭ければ広げろ。船が足りなければ造ればいい。……嬉しい悲鳴だ」

 

世界は狭い。だが、宇宙は広い。

 

有明海賊船団は、地球人類の「希望」を丸ごと飲み込み、さらに巨大な怪物へと進化しようとしていた。

 

 

 

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