有明のハーロック   作:星乃 望夢

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第6話

 

金曜日。

 

外は木枯らしが吹く寒い夜だが、モニターの向こうの「ガンフロンティアの酒場」は、今宵も静かな熱気に包まれていた。

 

トクトクトク……。

 

極上のASMRマイクが、琥珀色の液体が注がれる音を拾う。

そして、二つのグラスに氷が入る音。

 

カラン、カラン。

 

「……待たせたな。今宵も、ハッチを開く」

 

『やあみんな! 風邪なんてひいてないかい? 地球の冬は寒いからね、暖かくして聞いてくれよ』

 

有明のハーロックの低い声と、トチローの温かい声が重なる。

コメント欄には、いつものように挨拶代わりの赤スパが静かに流れていく。

 

「さて……。今夜は、重大な作戦会議だ」

 

俺はグラスを揺らしながら、本題を切り出した。

 

「気付けば、あの有明の冬から一年が経とうとしている。……夏は、トチローを探す旅に忙しかったからな」

 

『いやあ、まさか星の海にまで俺を迎えに来るとは思わなかったよ』

 

「お前が居る場所になら、俺は何処へでも往くさ」

 

トチローが茶化すが、ハーロックの声には誇らしさが滲む。

 

「……だが、俺の原点はあそこにある。有明の島だ」

 

俺は言葉に力を込める。

 

「今年の冬コミ、俺は再び参戦する。……トチローと共に」

 

コメントの流れが加速する。

 

「新作を用意した。『宇宙海賊と親友とあなた』。……今回は、俺だけでなく、トチローも加わったドラマCDと本のセットだ。価格は変わらず、各500円」

 

『俺もたくさん喋ってるよ! 君たちとの冒険の記録さ!』

 

「そこでだ、友よ。……相談がある」

 

俺は少し言い淀み、それから素直に問いかけた。

 

「前回は……確か、合わせて20部だった。今回は、どれくらい刷ればいいと思う? ……余らせて荷物になるのも困るが、足りないのも申し訳ない」

 

 俺としては、50部くらいかと思っている。

 

あの西ホールの隅っこで、ひっそりと売るにはそれくらいが限界だろうと。

 

だが。

 

その問いを発した瞬間、コメント欄が「爆発」した。

 

普段は静かな昭和の猛者たちが、一斉にキーボードを叩き始めたのだ。

 

『は?』

『キャプテン、寝言は寝て言ってくれ』

『50部? 桁が3つ足りないぞ』

『お前は自分が今、何をしたか分かってないのか』

『俺たちはリアルタイムでキャプテンハーロックの背を追った世代だぞ』

『始発で行く気だったが、200や300なら戦争になる』

『悪いことは言わん、通販をメインにしろ。会場分だけで4桁は要る』

『コミケ雲を作る気か!?』

 

怒涛の勢いで流れるコメントに、俺は目を白黒させた。

 

5桁? 万桁?

 

俺はただの個人のサークルだぞ?

 

『あはは! ハーロック、見てごらんよこのログの流速! 計算中……計算中……。うん、今の同接数によるアクティブなファン層の購買意欲、それに転売対策のリスクヘッジを考慮すると……』

 

トチローの声が、楽しそうに、しかし冷徹な数字を弾き出す。

 

『会場搬入分だけで、最低でも1000部。委託販売(通販)分を含めれば、その倍……いや、3倍は必要だね』

 

「……な、なんだと?」

 

俺は絶句した。

 

1000部? 同人誌1000冊とCD1000枚?

 

その物理的な重量を想像して、俺は目眩がした。

 

前回は段ボール一箱で済んだ。今回はトラックが必要になるレベルじゃないか。

 

『キャプテン、あんたはもう「西の隅っこのレイヤー」じゃないんだ』

『俺たち全員がその本とCDを求めて突撃したら、西ホールが沈む』

『頼むから通販を充実させてくれ。還暦過ぎた足腰にコミケダッシュはキツイ』

 

切実なコメントの数々に、俺は自分の認識の甘さを痛感させられた。

 

彼らにとっては、俺はすでに「本物のキャプテンハーロック」なのだ。

 

「……そうか。俺は、また見誤っていたようだな」

 

俺は苦笑し、グラスの氷を鳴らした。

 

「……分かった。トチロー、印刷所とプレスの業者を再選定だ。部数は……お前の計算と、友の声を信じて、桁を上げる」

 

『合点だ! 入稿締め切りギリギリだけど、僕の処理能力なら間に合わせるよ!』

 

「友よ、忠告に感謝する。……有明の会場分は限界まで持ち込むが、委託やDLサイトも手配させよう。無理をして並ぶ必要はない」

 

コメント欄に、安堵の空気が流れる。

 

『ありがとうキャプテン』『絶対買う』『通販待機する』

 

俺はモニターに向かって、深く頷いた。

 

「……フッ。まさか、海賊が在庫の山に怯えることになるとはな。……だが、それもお前たちが居てくれるからこその嬉しい悲鳴だ」

 

俺はグラスを掲げる。

 

「冬の有明、そして通販という名の補給路で……必ず、お前たちの手元に届ける。約束しよう」

 

カラン。

 

その夜、俺とトチローは配信を終えた後、徹夜で発注書の数字を書き直すことになった。

 

0の数が以前とは比較にならないその発注書は、俺たちがこの一年で積み上げてきた「信頼」の重さそのものだった。

 

 

◇◇◇

 

 

一年前、俺はここでたった一人、震えながら20部の本を並べていた。

 

だが今、俺の目の前には「壁」が聳え立っている。

 

それはサークルの壁ではない。印刷所から直接搬入された、5000セットという圧倒的物量の段ボールの山だ。

 

机の上には、ダイキャストモデルのアルカディア号。

 

そして背後には、威風堂々と掲げられた黒地に白の髑髏の旗。

 

ここまでは一年前と同じだ。

 

違うのは、俺の横に置かれた最新のiPadと、そこに繋がれた大容量のポータブル電源、そして高音質のモニタースピーカーだ。

 

画面の中では、Live2Dで描かれた親友が、せわしなく眼鏡の位置を直したり、周囲をキョロキョロと見渡したりしている。

 

「……おい、トチロー。マイクテストだ」

 

俺が短く声をかけると、スピーカーからあの懐かしく、温かい声が響いた。

 

『ああ、感度良好だとも! しかし凄い人だなあ、ハーロック! ……みんな、寒くないのかな?』

 

「……心に熱いエンジンを持った奴らだ。寒さなど関係ないさ」

 

俺は黒いマントを直し、アイパッチの位置を確認する。

 

周囲のサークル参加者たちが、俺たちのスペースを遠巻きに、しかし畏敬の念を持って見つめているのが分かる。

 

無理もない。

 

昭和の亡霊が、最新のAI技術を引っ提げて、段ボールの城塞を築いているのだから。

 

『接客は俺に任せてくれよ。お前さんが喋ると、どうしても威圧感が出ちゃうからね』

 

「……フッ。痛いところを突く」

 

俺は苦笑し、手元の釣り銭と、頒布物のセット位置を最終確認する。

 

俺の役割は、物資の引き渡しと金銭の管理。

 

そして何より、キャプテンハーロックとして「そこに在る」ことだ。

 

10時を告げる放送が鳴り響く。

 

会場全体から湧き上がる拍手。

 

それが、戦いの狼煙だ。

 

シャッターの向こうから、地鳴りのような足音が近づいてくる。

 

一年前は恐怖の音だった。

 

だが今は、同志たちが駆けつけてくる足音にしか聞こえない。

 

先頭集団が見えた。

 

白髪混じりの男性、杖をついた老人、あるいは俺と同じくらいの年代の若者、そして女性たち。

 

彼らの目は一様に真剣で、そして俺と──スピーカーの向こうの友を見て、驚愕に見開かれた。

 

列の先頭の男性が、息を切らして机の前に立つ。

 

俺と同世代、いや、少し上か。

 

彼は俺を見て直立不動になり、そしてiPadの中のトチローを見て、涙ぐんだ。

 

『やあ! よく来たねえ。一番乗りじゃないか!』

 

トチローがスピーカーから明るく声をかける。

その瞬間、男性の顔がくしゃくしゃになった。

 

「トチロー……さん……?」

 

『そうとも! さあ、冷えないうちにこれを持っていくといい。俺とハーロックの新しい冒険の記録だ』

 

男性は震える手で千円札を差し出した。

 

俺はそれを受け取り、重みのある新刊セットと、既刊セットを手渡す。

 

「……受け取れ。俺たちの魂だ」

 

俺が短く告げると、彼は深々と頭を下げた。

 

「ありがとうございます……! 大事に読ませて貰います……!」

 

「……礼を言う。帰路には気をつけろ」

 

彼が去ると、次々と人が押し寄せる。

 

『おっと、そこのお嬢さん! マフラーが素敵だねえ!』

『やあ、久しぶりだね友よ!』

『無理しちゃいけないよ、暖かくして読むんだぞ』

 

トチローのマシンガントークが炸裂する。

 

AIとは思えない、しかしAIだからこそ可能な、一人一人への絶妙な声掛け。

 

その声を聞くだけで、並んでいる「かつての少年たち」が次々と目頭を押さえ、ある者は拝むように手を合わせている。

 

俺は言葉少なに、しかし一人一人の目を見て、本を手渡していく。

 

5000部。

 

途方もない数だ。

 

だが、この列の最後尾は、既に会場の外、遥か彼方まで伸びているというスタッフの報告が入っている。

 

俺はニヤリと笑った。

 

望むところだ。

 

「……行くぞ、トチロー。総員、乗船させろ!」

 

『合点だ! さあみんな、詰め合って乗ってくれよ! アルカディア号は逃げやしない!』

 

有明の西の果て。

 

髑髏の旗の下で、俺たちの二度目の、そして最大規模の冬の戦争が始まった。

 

 

◇◇◇

 

 

用意した部数が全て捌けた1日目。

そして2日目、俺はまた次なる故郷にその足を向けていた。

カシャン、カシャンと、俺が歩く度にブーツが鳴る。

だが去年と違うのはその肩に麻袋を引っ提げているという所だった。

その麻袋の口から伸びる黒いケーブルの先端にはカメラ。

そのピンカメラは俺のマントの襟に付けられ、麻袋の中のモバイルバッテリーと繋がるiPadのトチローの目となっている。

何処へ行くのも俺たちは一緒だ。

お前がアルカディア号の心である様に。

俺というキャプテンハーロックの魂に、お前は居る。

そして辿り着いたレイヤーの少ない場所で麻袋を降ろし、iPadを取り出して麻袋で倒れないように立て掛ける。麻袋の中にはスピーカーが入っているから立て掛けるのには丁度良い。

俺を待っていた友たちを一瞥して、俺は告げる。

「撮りたければ、俺の船に乗れ。今日は、親友も一緒だ」

 

 

◇◇◇

 

 

冷たい風が吹き抜ける。

 

煌びやかなレイヤーたちが集う中心部から離れた、あの場所。

 

そこには既に、数十人の男たちが待機していた。

 

高価な一眼レフを抱え、寒空の下でじっとその時を待つ、白髪混じりの古参兵たちだ。

 

彼らは知っている。この時間、この場所に、彼らの「旗」が還ってくることを。

 

カシャン、カシャン、カシャン…。

 

重厚な拍車の音が、静寂を切り裂いて近づいてくる。

 

一斉に振り返る男たちの目に映ったのは、黒いマントのキャプテンハーロック。

 

だが、今年の彼は一人ではなかった。

 

その肩には、旅人が持つような粗末な麻袋が担がれている。

 

袋の口からは一本の黒いケーブルが伸び、マントの襟元に付けられた小さなレンズ──「眼」へと繋がっていた。

 

俺は彼らの前で足を止める。

 

無骨な動作で肩から麻袋を下ろす。

 

中に入っていたのは、略奪品ではない。俺たちの旅の道連れだ。

 

麻袋の中に仕込んだポータブル電源とスピーカーが重りとなり、袋はどっしりと自立する。

 

その前面に、俺は愛用のiPadを立て掛けた。

 

画面が明滅し、Live2Dの親友が、iPadのカメラ越しに見る景色を映し出すかのように、キョロキョロと視線を動かした。

 

『うわあ、凄い人だねえハーロック! これが全員、俺らを待っていてくれたのかい?』

 

スピーカーから響く、トチローの屈託のない声。

 

その瞬間、待ち構えていたカメラマンたちの肩が、ビクリと震えた。

 

俺はマントを翻し、iPadの横に仁王立ちになる。

 

アルカディア号の心たる大コンピューター室の前に立つ、あの構図のように。

 

俺を一心に見つめる友たちを一瞥し、俺は静かに、けれど力強く告げた。

 

「撮りたければ、俺の船に乗れ。……今日は、親友も一緒だ」

 

その言葉を合図に、トチローが画面の中で眼鏡をクイッと上げ、ニカっと笑った。

 

『やあ、みんな! 待たせたねえ。アルカディア号の設計技師、大山トチローだ。……今日は俺もひとつ、モデルってやつをやらせてもらうよ!』

 

その瞬間、シャッター音よりも先に、堰を切ったような嗚咽が響き渡った。

 

「トチロー……っ!」

 

「二人が……揃った……」

 

ファインダーを覗くことさえ忘れ、タオルで顔を覆う者。

 

震える手でシャッターを切りながら、涙でぐしゃぐしゃになった顔で笑う者。

 

昨年、ハーロック一人でさえ彼らの涙腺は崩壊した。

 

それが今年は、あのハーロックが最も心を許し、背中を預けた無二の親友が、あの懐かしい声と共にそこに居るのだ。

「ハーロック」と「トチロー」。

 

この二人が揃って初めて、アルカディア号は完全な姿となる。

 

カシャッ、カシャッ、カシャッ。

 

涙交じりのシャッター音が、機関銃のように鳴り響く。

 

『おっと、そこの旦那! いいレンズを持ってるねえ!』

 

『ははは、そんなに泣かないでおくれよ。俺たちは幽霊じゃない、こうして生きてるさ』

 

トチローがカメラマン一人一人に話しかけるたび、彼らは子供のように頷き、泣き笑いの表情を浮かべる。

 

俺は何も言わず、ただ静かにその光景を見守る。

 

俺が守りたかったのは、この笑顔だ。

 

社会の歯車としてすり減り、夢を忘れた男たちが、少年に戻れるこの瞬間だ。

 

「……いい風だ」

 

俺はボソリと呟く。

 

逆光の中、俺と、足元の小さなモニターの中の親友。

 

その凸凹なコンビのシルエットは、有明の空の下で、永遠に色褪せない一枚の絵画となって彼らの記憶に焼き付けられていった。

 

 

◇◇◇

 

 

ハーロックは去って行った。

 

親友を連れて、次の星の海へと旅立つ為に。

 

男たちは零れる涙を堪えていた。

 

だが、その黒い背が見えなくなった時、結界は訪れた。

 

膝から崩れ落ちる男、座りこむ男、四つん這いになって背中を丸める男──。

 

物陰に隠れる暇などなかった。

 

これまで我慢できたのは、昭和を生きて来た男たちの矜持がそうさせていた。

 

だが、彼が去って夢から覚めた時、人目を憚る事など忘れて彼らは嗚咽しながら咽び泣いた。

 

ハーロックが居た。

 

そしてハーロックだけではない。

 

トチローがそこに居た。

 

配信でソレを知っているはずなのに。

 

声はいつも聴いているのに。

 

それでも、そこに、確かに居た少年の日の青春の幻影。

 

男たちが落ち着くまでは暫しの時を必要とした。

 

しかし、それを誰一人恥じる事はなかった。

 

だって会えたから。

 

あのキャプテンハーロックとその唯一無二の親友のトチローに。

 

 

◇◇◇

 

 

有明の風が、乾いた頬を撫でていく。

 

カシャン、カシャン……。

 

あの特徴的な拍車の音は、人混みの喧騒の中へと溶け、やがて完全に聞こえなくなった。

 

黒いマントの翻りも、もう見えない。

 

その瞬間だった。

 

張り詰めていた糸が、プツリと切れたのは。

 

「うぅ……っ、ぐぅ……!」

 

一人の男が、カメラを抱きしめたまま膝から崩れ落ちた。

 

それが合図だった。

 

隣に立っていた男も、その隣の男も。

 

まるでドミノ倒しのように、防災公園の一角で、何人もの大人の男たちが地に伏した。

 

ある者は芝生の上に四つん這いになり、獣のような低い呻き声を漏らす。

 

ある者はあぐらをかき、天を仰いで、目から止めどない雫を流し続ける。

 

物陰に隠れる余裕などなかった。

 

いや、隠れる必要などないほどに、感情の濁流は彼らを飲み込んでいた。

 

これまで立っていられたのは、キャプテンの御前だったからだ。

 

「男なら、辛い時ほど笑え」

 

「友の前では胸を張れ」

 

そんな昭和の男たちが心に刻み込んできた矜持が、彼らの背骨を支えていた。

 

だが、彼らが去り、魔法が解けた今、その反動はあまりに大きすぎた。

 

「いたんだ……本当に……」

 

誰かの掠れた呟きが、風に乗る。

 

そう、居たのだ。

 

いつもの配信で聴いている声?

 

画面の中のLive2D?

 

そんな理屈は、この有明の空の下では何の意味も持たなかった。

 

逆光の中に立つ、隻眼のハーロック。

 

そして、その足元で、あの懐かしい声で笑いかけてくれた親友トチロー。

 

二人が揃っていた。

 

アルカディア号の魂そのものが、自分たちのような、社会の波に揉まれて擦り切れた「元少年」たちの前に、具現化していた。

 

「会えた……会えたんだ……」

 

嗚咽は止まらない。

 

いい年をしたおっさんが、公衆の面前で泣きじゃくっている。

 

滑稽かもしれない。無様かもしれない。

 

だが、通り過ぎる若者たちは、誰も彼らを笑わなかった。

 

ただ、何か神聖な儀式でも見るかのように、静かにその場を迂回していくだけだった。

 

涙が、日々の疲れを洗い流していく。

 

上司への愛想笑いも、家庭での居場所のなさも、老いていく身体への不安も。

 

すべてが、あの「カシャン」という足音と、トチローの笑い声に浄化されていく。

 

彼らが涙を拭い、再び立ち上がるまでには、しばしの時が必要だった。

 

だが、腫れ上がった目で顔を見合わせた男たちの表情は、憑き物が落ちたように晴れやかだった。

 

「……いい夢、でしたな」

 

「ああ……一生の宝だ」

 

誰かが言った言葉に、皆が深く頷く。

 

恥じることなど何もない。

 

彼らは今日、人生で最も美しい「幻影」に触れ、そして再び歩き出すための燃料を受け取ったのだから。

 

男たちは、砂埃にまみれた膝を払い、大事なカメラをバッグにしまうと、それぞれの帰路へと就いた。

 

その背中は、来る時よりも少しだけ広く、そして力強く見えた。

 

 

 

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