Fateの現パロだと思ったら全然ヒロアカだった。 作:ぜひもないよね!
普段ないことをするときは存外興奮してパニックになると思った。
「…ふぅん。お帰りなさい、マスター」
トーントーントーンと断続的に何かが落ちる音。手元がとんでもなく赤く染まっている。
「待っててくださいね、マスター。今からご飯にしますから座っててください」
「安心してください!ちゃんと栄養を計算してから作ってますからね!」
支離滅裂な言葉ではない、けど左手に持っているものは明らかに料理に向いてないものだ。
刀。人を殺すのに特化したソレはまな板からはみ出した食材をさらに飛び散らせる。
「マスター。キッチンには入ろうとしないでください。ここは戦場だったのです」
「…入らせろ」
「…いやさぁ」
ポリポリと頰を指でかき、見てわかる範囲の掃除をする。ただでさえ狭いこの家の片付ける量を増やさないでほしい。
(というか何やってんだ沖田さんは…なんでトマトを刀で斬る必要が?)
え、さっきの雰囲気?ただ沖田さんが料理について無知過ぎてとんでもないトンチキ料理しようとしてただけだよ?
「え、とりあえずどいてほしいんだけど。そもそも包丁はどうして…これは酷い」
包丁の入っている棚を開けると、予想より酷い惨状で包丁が置かれていた。全体的に腐食していてまともな使い道などない。
(そりゃまあ市販品の包丁より個性で作る包丁のほうがいいけどさ…)
なんでこんな塩水につけられたみたいな錆もついてるんだよおかしいだろ。
「見てもらったのでわかりますけど刃がボロボロなんですもん。家に包丁を持って無断侵入なんてただの犯罪者ですし…」
「だからといって刀を使おうとするなよ…別に言えば投影できるんだからさ」
沖田さんのせいで唯一傷つけられていないキッチンも傷ついたのだ。電線が壊れていたらどうするんだ、とか細かい話は一旦おいておくにしても面倒。
「沖田さんはオンリーで解決して暖かいご飯を食べてほしかったんです!それにその、なんか先輩とデートしてたじゃないですか!」
「あの人はただ後輩を連れ回してカレーを食い尽くしただけだぞ」
今日一日で半年分のカレーは食べた気がする。食えないのに詰め込まれた感が半端じゃないけど。
「でもデートはしてたじゃないですか!マスターと絡む機会もありませんし…」
「普通に考えれば職場体験で新選組のところは行きたくないって。剣士じゃなきゃやばいしたくあん三昧らしいし」
噂によれば芹沢さんとかもいるらしいけどな。史実通りの新選組になるとしても沖田さんが高校生だからもっと時間がかかりそうだし。
(まー血なまぐさい事件が起きなきゃいいんですけどねぇ…)
警戒するに越したことはないが、今のところ辻斬りのヴィランを追っているとのことらしいし問題なく組織は回っていそうだ。
「あーでも私の死番で辻斬りとは会いましたよ。ヴィランだったのですが取り逃がしまして…」
「生き残っただけでもよくない?ヴィランと戦うなんて理不尽が過ぎる」
「マスター…理不尽を乗り越えるのはやくないですか?」
「アレは運が良かったに過ぎんだろ」
職場体験の戦闘はヴィラン以外がいなかったからこそ容赦なくしかけることができた。もし仮に一人でも残っていたとしたらそこに意識が割かれて負けたかもしれない。
(ヒーローって言っても総合的な力がないとダメだし…)
まあ、こんな言い方はダメだけどサーヴァントとかFateキャラと原作キャラ以外は最悪死んでもらっても構わない。
「ぶっちゃけ味方呼べばヴィランって倒せますもんね。まあ私は病気のせいで無理でしたが」
「沖田さんは運がよかったのか悪かったのかわからんねえ」
「まあタイマンで沖田さんが勝ってたら殺してたと思うのでなんとも。こういう殺し合いになるとヒーローって不利になっちゃいますしねー」
「なんとも言えねえ…っと、終わったぞ」
「ありがとうございまゴフッ!」
全部片付けが終わったあとにいつもの発作。沖田さんがその場に崩れ落ち、ちょっとよろしくない表情をしている。
「悪いがとっとと運ぶぞ。何が食えるかだけ先に聞いとく」
お姫様抱っこで自分の部屋のベッドへと放り込む。他の部屋よりはまだここのほうが清潔に保たれているはずだ。
「とりあえず薬と…」
久しぶりに酷い発作だったので探すのに少し時間がかかる。あまり見ない薬と手書きのマニュアルを持って彼女のところへと戻る。
「…ありがとう、ございま、す」
「黙って養生しとけ。発作が落ち着いたら近藤さんに送ってもらうぞ」
こちらのことを不安げに見てくる沖田さん。何かを期待している目だが、何をしてほしいのかまったくわからない。
「あぁ、手でも握っとくよ」
困った末に一番わかりやすい誤魔化し方。昔みたいな気安さで手を握り、自分の顔が正面から見えないように添い寝。
(…恥ずかしいったらありゃしない)
寝息が立つまでの辛抱だが、それまで彼女の顔を見れそうにもない。
─翌日。紫陽花は咲き誇り、かたつむりが顔を出す梅雨の季節の日。
俺は倒れた。
インターンどうしよう?
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