シスターフッドの生臭神父はパンツが見たい。   作:誰か

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生臭神父は偶に自語りする

 

 マーケットガードを蹴散らして強行突破して通り過ぎた高道すがら…………あぁ、今日も空が青い。銀行強盗なんてえげつない真似しでかしたのにせいせいした気分だ。俺達は無事にブラックマーケットから脱出……漸く落ち着いた所だ。

 

「んっ。やったねリーダー。」

「お疲れ、そっちもいい働きっぷりだったよ。」

「本当に銀行強盗しちゃうなんて……ていうかなんで関係ないアンタが一番貢献してんの!?なんで一番ノリノリで脅してたの!?なんでリーダーになってるの!?」

「あはは……ある意味相性が良いみたいですね……ある意味……」

"多分絶対駄目な方の意味だよね。デーモンコア並に起こしちゃいけない化学反応だよね?" 

「誰がプルトニウムだよ。」

 

 まぁ何はともあれ上手くいったのは何よりだ。これでカイザーローンの足取りってやつも追えるだろうぜ。

 

「ふぅ……キヨト君。集金確認の書類は持ってるよね?」

「おう、いらねぇ書類も持たされたが、例の集金書類はしっかりと持ってるよ………つぅかシロコさんや。その荷物何?」

「なんか……持たされた。中身は……見てないけど……」

 

 そう言ってシロコは青いバックのファスナーをそっと開けると……なかには大量の札束が込められていた。これ大分不味いんじゃないか?

 

「へっ!?なんじゃこりゃ!?札束が!?」

「シロコ先輩……まさか現金盗んじゃったの!?」

「違う!……銀行員が勘違いして無理やり持たされて……」

 

 ……まぁ銀行強盗だからな。普通金が目当てだと思うし強盗の話なんてさして聞かないだろうし、なんか……どんまいって感じだな。

 

"ざっと、数えて一億はあるね。" 

「うへぇ、本当に5分で一億稼いじゃったよ。」

「まぁ、こうなりゃ後やる事は簡単だな。」

「そうね!早速運「捨てるか」ちょっと待ってぇ!?」

 

 うおっびっくりした。

 

「どうしたのNO.4。デカい声上げて。」

「何当たり前のように捨てようとしてるのよ!?」

「そうですよ!せっかくのお金なのに……」

 

 えぇ、なんだよセリカとノノミまで。

 

「こんなモン使えねぇし要らねぇだろ。」

「いるし使えるわよ!?そりゃアンタからしたら何処とも知らない学校だから良いでしょうけど!私達は必死なの!それを……」

「いやそれ以前にな……銀行から盗まれた金なんて記番号押さえられて使えねぇに決まってんだろ。あちらグレーゾーンでも、闇でも、ブラックマーケットでも、一応正規で銀行名乗ってんだ。資金扱うからには小賢しいがそこん所は当たり前にキチッとしてるだろ。」

 

 まぁ、記番号抑えられなくても、どんな犯罪で巻き上げられた金でもこんな真似で手に入れた金に価値があるとは思えねぇが……まぁ、そこは個人の感傷だから良いや。

 

「だから使えないって話。」

「えっ?そう、なの?」

「んっ。確かにリーダーの言う通り。盗んだお金は使用するときにはクリーニングして足がつかなようにしなければならない。それも、一筋縄でできるような物でもないし……少なくとも返済に使えば直ぐにバレると思う。」

 

 うん。なんでそんなに詳しいのかは疑問だが……調べたのか。銀行強盗するために……怖いわ。

 

「それがまかり通るなら、もっとリスク冒しても強盗する奴は増えるわ。資本主義舐めんなよ。金権は信用なんだ、そこ緩めじゃおしまいだからな。こんなもん手放すかしちまおうや。」

『そう、ですね。私もキヨトさんの意見に賛成です。こんなやり方で稼いで借金返済をしても、同じ事の繰り返しですし。』

「楽ってのは身に覚えちゃうと厄介だからねぇ〜。使えない物持っててもしょうがないし。」

「……!!……はぁ、そう言う事なら持っててもしょうがないわね。ただどうするの?置いてくの?」

 

 うぅん……だがまぁ犯罪に使われるのが半ば決まったような金を普通に戻すだけってのもなんか腹立つしなぁ。折角なら使う以外で活かしたいよな……そうだ!!

 

「俺前から札束燃やすってやってみたかったからここでやっていい!?」

「支離滅裂な言動!!!」

「んっ!?ど、どうしたのリーダー……?」

「いやぁ、俺は使うなって言っただけでこれを戻すのが吉と思わねぇよ!だからさ!燃やそう!!金を使って普段できないことをしよう!!!」

「ヒフミちゃん!?!?トリニティってこんなトチ狂った奴ばかりなの!?」

「この人だけです〜!この人は生臭神父と恐れられ様々な言動で各方面を暴れ散らかすトリニティ1の問題児なんです!」

「破門にしなさいよそんな神父!?」

 

 燃やそう……そうだ。金なんてものに囚われるからみんなおかしくなるんだ。燃やしちまおう。

 

「……そもそも金って言うのは俗世の汚い部分の詰め合わせみたいなもんだ。神父として資本はすべて燃やすのが良いのでは……!?燃やそう!!」

"それ違う!神父とか信仰とか関係ないから!?ただのヤバい人だから!?"

「この子情緒不安定すぎない?」

「若干の闇を感じますね☆」

 

 火をつけろ!燃え残った全てに……!!

 

「ちょっ!?コイツ力強くない!?全然押さえつけられないんだけど!?」

「んっ。いい加減にしないとさっき拾ってた薄い本に火をつける。」

「よし、冷静になった。兎に角この金と……後いらねぇ書類も捨てていこう。持って帰るのはこの集金確認の書類で十分だ。」

「うわぁっ急に冷静にならないでよ!?」

 

 ふぅ。思わず我を失っちまったぜ……兎に角バカをやってる暇はねぇ。早くここを離れてぇが……

 

『たっ、大変です!!誰かがそちらに!急いで顔を隠して!』

「っ!?」

 

 よしゃ、ヘルメット装着!!

 

『この反応は……便利屋68の皆さんです!?』

「便利屋68……?」

"アビドスを襲おうとしてる何でも屋だよ……私も車に隠れるね。" 

 

 確かに話題のシャーレの先生が銀行強盗逃亡の手伝いとかシャレになんねぇな。……おっ、来た……ってあれは……ゲヘナの校章!?

 

「あ、あのっ!」

「……なんだ?」

 

 しかも真っ直ぐ俺に話しかけてきたよ!?ちょっ、お前ら!?なんで見てるだけなの!?なんなのその生暖かい目!?

 

(んっ。リーダー頑張って。)

(リーダーさん☆お願いします!)

(リーダー、任せたわよ。)

(リーダー君ファイト〜!)

(キヨトさんすみません!ちょっと助けられそうにないです……!!)

 

 なんだろう、なんとなく何考えてんのか読めてきたぞ!?こいつら俺に面倒な奴相手させるつもりだろ!?つか誰この子!?

 

「そ、その!銀行強盗の一部始終見させてもらったわ!たった5分でブラックマーケットの闇銀行を襲撃し、マーケットガードの包囲網すら抜けての大活劇!稀に見るアウトローっぷりだったわ!」

 

 稀に見るアウトローっぷりってなんだよ!?そんなに!?そんなになのか!?俺もう神父辞めてアウトローに転職しよっかなぁ!?ダー◯神殿とか行ってやろうかな!?

 

「貴方がこのメンバーのリーダーなのよね?そう呼ばれてたし……!こんな凄まじい気を放つ人達をまとめられるなんて……!」

 

 纏めてない!?纏めてないよ!?変な重圧プラスすんのやめて!?

 

「と……特にシビレたのが!脅す時の言葉で……男はイチだけ覚えてれば生きてられるってあの言葉!真に響きました!……私もいつか貴方みたいな男になります!」

 

 いやっ、男ってジョブチェンジ制じゃないからな!?LV上がって進化したり神殿で変えられるようなもんじゃないからな!?

 

「わ、私は陸八魔アルって者よ!その、できれば貴方の組織名とかチーム名を教えて……できれば貴方の名前も……コードネームみたいなものでいいから……その勇姿を私が刻み語り継いで行くわ!」

 

 何この子!?アウトローっていうかただのスポーツ選手見た時の少年なんだけど!?いい子だよ!わかんないけどこの子たぶんいい子だよ!こんなキラッキラした目の子見たことないもん!!

 

「……悪いが俺の名は教えられない。だが、そうだな……()()の名なら教えられる。俺達は悪を持って邪を制すアウトロー……己の素顔を隠しながら、理想を曝け出す矛盾の集団……」

「っ!!そう!それが私達覆面水着団なのです!!」

「覆面水着団……!?」

 

 うおおおおおおおノノミさん乗ってくれたぁぁぁぁ!!!!いい子だよ!あの人絶対いい子だよ!!自分でも何言ってんのか分かんなかったけど何とかなったよ!!

 

「本来はスクール水着に覆面が正装なんだけどね。リーダーは特別だから海パン履いてもらってヘルメットが正装なんだ〜」

 

 変な設定つけ足すなよ!?スク水と海パンじゃ面積違いすぎるだろ!?つかそれじゃあ露出狂の変態集団じゃねぇか!?髪色だけじゃなくて頭までピンクってかぁ!?じゃかしいわ!!スクール水着来てる淫乱ピンクは一人(ハナコ)だけで十分なんだよ!!

 

「……午前中にはリーダーをマネージャーに置いたアイドル活動をしているのですが、夜には正義の怪盗に変身して、警察戦隊と日や戦いを……」

 

 もはや何の話!?今思いっきり昼だし!?

 

「な、なんて人達なの……これが私の求めたアウトローの真髄……!」

 

 お前のアウトローはコレで良いのか!?夜になると露出魔になって戦う覆面戦隊だぞ!?

 

「何やってるの……」

 

 ほらもうお連れの人がとんでもないジト目披露してるから!何してるんだろうね俺!本当に何してるんだろうね!!

 

「キヨト……とにかくコレ早く逃げほうがいいでしょ?」

「よし、俺が適当に煙に巻くから…………それじゃあな。次のステージのリハーサルに遅れてしまう。」

(何気マネージャーの設定拾ってんだけどこの人!?)

「アディオ〜ス!」

「っま待って!!!」

 

 俺は声を上げて手を伸ばすアルを振り切ってその場を後にするのだった……結局金や諸々の書類は置いていってしまったが……まぁ、このまま持ち帰るよりはマシだろう……と思いたい。

 


 

 便利屋を巻いた俺達はそのまま流れでアビドス高校へ足を伸ばした。俺は途中で帰っても良かったのだが……まぁ、乗りかかった船だ。今回の強盗についての顛末くらいは見届けよう。

 

 そうして、いまは例の集金確認の書類をルートと照らし合わせていたのだが………

 

 

「な、何よ!?これ!!」

「現金輸送車の集金記録にはアビドスで788万回収したと記録されてる……来たのはあのトラックで間違いない。」

 

 そしてその後に直通でカタカタヘルメット団(どうやらアビドスを襲ってた不良軍団らしい)に任務補助金五百万を下ろしていた。

 

「つまり私達からお金を受け取ってその足でヘルメット団に援助してたってこと!?」

「つまり……ヘルメット団の背後にいたのは、カイザーローン!?」

「中々にひでぇ話だな。」

 

 つまりアビドスの皆はアビドスをなんとかしようと借金を返済し、その金で自分たちの首を絞めてたってわけか……質の悪い仕掛けだ。

 

「どういうことでしょう……学校がつぶれたらお金の回収も……」

「カイザーローン……いや、どう考えてもカイザーコーポレーション本社の企みなんだろうが……」

"つまり、企業にはアビドスの借金を踏み倒されてでもこの学園には潰れて欲しいって理由があるのかな。" 

「そんな……いったいどんな理由で!!」

「ふ〜む」

 

 ろくな話じゃないのは当然として…………全く手の込んだ話だよな。一体いつからこんな罠を仕掛けてたのか……兎も角、今の俺に手伝えるのはここまでのようだ……不意に気づけば。外は夕日に染まりかけていた。

 

「……そろそろ夕方だな。戻らねぇと。」

「そうですね。」

「ヒフミさん、キヨトさん……変な事に巻き込んでしまい、すみませんでした。」

「あはは……」

「まぁ、楽しかったから良いよ。」

 

 久々にワクワクする体験ができた。いい感じに若返った気分だ。

 

「今度トリニティに遊びに行くよ〜!」

「んっ!リーダー、また何かあったら誘う。」

「頼むわ。」

「もうリーダーってデフォで呼ばれてるわね……っていうか誘うし乗るんだ。」

 

 楽しかったので。

 

「……でも、これがあればカイザーコーポレーションの決定的な不正の証拠に……」

「なるだろうけどなぁ。なぁんか握りつぶされる気しかしねぇや。」

「連邦生徒会やほかの学園の長達もみんな把握してそうだもんねぇ〜」

「えっ!?」

 

 俺達が個人で把握できたことを向こうさんが知らねぇ道理が無いわけだからな……まぁ、カイザーはデカい企業だし容易に手が出せないのも確かだ。

 

「……私たちに、トリニティにできる事はないのでしょうか?」

「いくら援助してもらっても、トリニティみたいなマンモス校からの援助に耐えられる地盤はアビドスにはないからね。それに、その隙に付け込んで何か悪さする子たちがいないとも限らないし……」

 

 居そうって言うか実際居るよ。絶対……腹芸は十八番みたいなもんだからな。トリニティの……

 

「私は他人の好意を素直に受け取れない汚れたおじさんになっちゃったからねぇ……その分、キヨト君は良いよ〜」

「俺?」

「正直だし、腹芸とは無縁そうだし、なにより行動理念がわかりやすいから。」

 

 遠回しにバカって言ってんなこの野郎。

 

「俺はエロ本を隠すので精一杯でね、罠仕込むまで手が回んねぇや。それに自分を騙して仮面被って薄ら笑って、腹の中で中指立てながら策謀張り巡らせて悦に浸るなんざぁ趣味じゃないよ…………俺ぁ帰る。じゃあな。」

「あっ!!……えっと、私に力になれることがあったらまた呼んでください!!それじゃあ!」

"またね!ヒフミ!!キヨト!!" 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は2年前よりもさらに砂に溺れた自治区を眺める……あの頃は今よりもう少しマシだったか、それとももう駄目だったか……兎も角、アビドスには良い思い出がない。理由っていうのは単純で……俺が神父としての初仕事がここだったからだ。

 

 えっ?こんな所に教会はないって?啓蒙活動でもしてたのかって?そんなんじゃない……もっと身近でありながら、もっとも経験したくない事柄の一つで、宗教にもよるが神父が出張らなきゃいけないもの…………それは……

 

「おーい!キヨトさん!!」

「っ?ヒフミか。」

「急に行っちゃうからびっくりしました……置いていかないでください。」

「悪い悪い…………。」

「……何かありましたか?」

「いや、少し、昔を思い出してな。」

「2年前にアビドスに来てたんですよね?一体なんの用事で……」

「……なぁ。ヒフミ、お前さん。人の亡骸って見た事あるか?」

「……えっ?」

 

 

 

 少しばかり自分語りさせてくれねぇか?

 俺の一族はな、ルーツを話せば長くなるが……その頃から、昔からそう言う仕事をしてたのさ。

 

 滅多な事じゃ誰も死なねぇこのキヴォトスで、死者を供養するってのは俺の一家の役目だった。死者に安らぎを与えるのが神父としての俺の役目の一つだった。簡単に言えば葬儀を取り仕切るのがな。

 

 俺がトリニティで1年になった頃。俺は家柄でシスターフッドに入部し、その仕事を任された。

 …………俺が神父として、啓蒙活動や懺悔室での相談役以外での初めての仕事場が、ここアビドスだ。

 

 そこで俺は、砂漠で干からびて死んだって言う当時のアビドス高校生徒の遺体を見たんだ。当時はアビドスはもう三年生が一人と一年に一人しか生徒はいなかったありさまでな……こんな事言うのもあれだが、よく今5人ものこってるなって感じだ。きっと死ぬほど頑張ってんだろーな。

 

 ……棺桶の中で事切れて乾いた亡骸は、まるで抜け殻みたいに何の表情も宿してなかった。人の遺体としっかりとした場で顔合わせたのはあれが初めてだったが、何処の誰とも知らぬ人だったのに、泣きそうになったのを覚えてるよ。

 

「そんな…………そんな事が…………って事は、ホシノさんって……!?」

「まぁ、俺も色々一杯一杯でよく顔は見れなかったし慰めの言葉もかけられなかったが……まぁ、ホシノがその頃の1年なんだろうな。」

 

 当時はもっと鋭いナイフみたいな奴だったって聞いたよ……暁のホルスなんて謳われてたらしいが……俺が見た時は、只管に自分を責め立てるような表情をしてた同い年の女の子に見えたよ。そりゃそーだ。人の死なんてそうそう受け止めきれるモノじゃないのは当たり前だ。

 

「って事は……その先輩が?」

「あぁ、当時のアビドス学園の三年生で生徒会長……名前は……梔子ユメだったな。」

 

 

 

 

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