シスターフッドの生臭神父はパンツが見たい。   作:誰か

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生臭神父は天敵と出会う

 

 銃器飛び交い挨拶代わりの鉛玉が喧嘩殺法なこのキヴォトスで、トリニティは比較的治安は良い方だと言える。

 

 勿論三大マンモス校であるが故に事件率は高いが、自衛組織もキチンと組み立てられており、少なくともゲヘナと比べれば治安は天と地も差があろう。

 

 しかし、その分内政やら内輪揉めやらで火蓋バチバチなのがトリニティだ。家でも外でも摩耗し疲れ果てる者も少なくはない。俺の知り合いにもそんな奴が何人かいる。

 

 才媛と呼ばれながら、その才能だけを見つめられ、利用され摩耗してきた娘が……そして奴は……弾けた。

 


 

 

「あーあ……暇だな……早く家帰ってテイルズ・サガ・クロニクルの続きやるか〜。」

 

 その日、俺は適当にいつものような日々を過ごして、特にエロ本買いにブラックマーケットへ繰り出す気分でもなく、懺悔室での聞き役を終えてそのまま家に帰ろうとしていた日だった。

 

 通りすがりの一声が俺の耳に響く。

 

「おい!広場でスク水の変態が出たってよ!?」

「本当!?……春ねぇ……」

 

 あぁ、ほぉんと春だな…………春つってもまだ寒いのに。そんな日でスク水で過ごす馬鹿居るんだな……思い当たる節がねぇな……

 

「お前見たのかよ?」

「見たけど……ピンク髪で、その……凄い体付きだったよ。……うん……」

「えっ……そんな?」

 

 全く、公然でそんな下世話な話をしちゃいけねぇよ?何処の変態神父が聞き耳立ててるかわかんねぇんだから……しかしなぁ、ピンク髪でロングヘアーでグラマラスボディのスク水の変態かぁ……世の中も末だな。脳裏にちらつく影があるけどきっと気の所為だな。

 

「……しかし変態かぁ。早く家に帰ろ……帰って戸締まりしてゲームしよ……」

「あら♡良いですね、ゲーム♡ツイスターとかどうですか?」

「いやぁ、なもんは流石に……」

 

 あー、聞き馴染んだ声だな。あー……後ろを振り返るのが怖い。できればいま直ぐ走り出したい。けど何故だろう……これから逃げ出しても多分無理な気がする。

 

 俺は恐る恐る一歩踏み出し、そっと後ろを振り返る……そこには、流し聞いた通りの特徴の娘がいた。ピンク髪のロングヘアーの、グラマラスボディのスク水ド変態……彼女は艷やか顔でこちらを見つめて声をかけてきた。

 

 

「お久しぶりです♡キヨト君♡」

「消え失せろォッ!!!」

 

 俺は、我も忘れて叫び即刻後ろに下がる。緊張で冷や汗が流れる……くそっ、手が震えやがる。こんなに震えたのはお袋が学生時代のセーラー服引っ張り出してきた時以来だ……

 

「もう、なぜ逃げるんです?相変わらず奥手な上に早漏(はや)いんですね♡」

「文字おかしかったぞお前ぇっ!?黙れ!!近づくな!にじり寄るな!?」

「これから家に伺ってもいいですか?お茶くらい射精()しますよ?」

「くたばれ!!R18指定に突き落とすつもりか!?ファンに怒られるからやめろ!!」

 

 ……浦和ハナコ。キヴォトスでも随一の才媛。

 

 策略策謀戦術に長け、一年生の頃からトリニティの三年の高難度のテストで満点を叩き出すほど、その才能からシスターフッドからのスカウトもあった。ティーパーティー入りも確実とまで言われた傑物だ。

 

 実際あの頃のハナコにはそれだけ人を惹きつける才能があった……今?見ての通り色ボケ通り越して俺以上の変態になっちまったよ。

 

「ふふっ、なんだかんだ言っても、こちらに視線が釘付けですね♡」

「釘付けっつーか……もういいよそれで……」

 

 こいつも一年の半ばまではここまで変態じゃなかった。むしろ、誰もが憧れる天才美少女って感じだったんだよ。それがなぜこんな変態になったのか……その原因は……………まぁ、その、俺にあると言っても過言じゃない。

 

 実は、こいつをシスターフッドに勧誘するために使者が使わされたことがあるんだが……それがその頃二年生の俺とサクラコだ。その頃はソレだけの注目株だったって所だな……断られたサクラコは今でもなんとか力を借りれないか頭を悩ませてるみたいだが。

 

 まぁ、当時から普通にハナコには散々と断られて尻尾を巻いて帰ることになったんだが……その時に俺がちょっと落とし物をしちまってな。まぁ、みんな察しの通り俺がよく携帯しているエロ本だ…………

 

 やっちまったと思って、俺はソレを取りに戻ったよ。交渉一発目でエロ本なんて落としたらもう二度とシスターフッドと口聞いてもらえなくなる可能性もあったからな。えっ?なら最初から持ってくんな?エロ本は俺のキーポイントだから無理だな。

 

 んで、その落とし物を拾いに戻ったら……ハナコが俺の落としたものを見てた。しかも、何故か何処か手慣れた手つきで。俺は気配で分かったよ……あっ、コイツ見慣れてるなって。

 

『これは……中々の……っ!?』

『あっ……悪い。それぇ、俺の……』

『しっ、失礼しました!いや、その……ちょうど買い逃した……じゃなかった!中身がその……』

『んだよ、そんな隠れてエロ本読む事はねぇだろ。』

 

 まぁ当時から俺は今と全く変わってなくこんな事を言い出すわけだわ。

 

それに何より、そのエロ本を観ている時の表情が俺や世間がそれまで見てきたハナコの表情とは違って……生きた物に見えたからな。少し興味が出ていろいろ話しちまったのさ。

 

『……いえ!!違います、偶々目に入っただけで……』

『いいんだよ、俺にはわかる。勘ってのは馬鹿にできないのは知ってるだろ?同類にもなれば、勘でわかるのさ。』

 

 すると、ハナコは少しあきらめたような表情で肩を落としていたのを覚えている。

 

『…………すみません、幻滅しました、よね?』

『幻滅?なんで?』

『いえ……その…………こんな物をみてたら、普通は……』

『エロは嗜みだ。言ったろ?俺も同類だ。』

 

 その頃のハナコは、今思えば色々と期待やら才能やらを押し付けられて、文字通り擦り切れそうになってたんだろうな。いろんなところで身を削られて、トリニティってのは嫌なやつも多いからな、きっとやっかみみたいなのもあったと思う。

 

 それに加えて、きっとやりたくもねぇ仕事を押し付けられた上、それが名誉だみたいな押し付けがましい事を言われてたのかもしれない。そりゃ、目の一つや二つ、死んだ魚みたいな目になるわって話だ。俺が逆の立場なら耐えられなかった……そう思えたから、いろいろ言ってやったよ。

 

『その程度で幻滅するんなら、お前に張り付いたレッテルだけが目当ての連中だろ。そんなもんで幻滅されるくらいなら最初から突き放しちまえよ。』

『……でも……』

『お前はお前だ。やりたい事をやれよ。』

 

 すると、ハナコは嘲笑にも近い笑みを俺に向けてきた。

 

『……そう言って、心の隙に付け込んでシスターフッドに協力してもらおうと?そういう魂胆ですか?』

 

 ……その言い方に俺も少しカチンと来てたな。思わず胸ぐら軽く掴んで怒鳴ったよ。

 

『ふざけんな!!テメェが何処の何になろうが知ったこっちゃねぇよ!!!シスターフッドだろーがティーパーティーだろーがどっかの生徒だろーがな!!!!』

『……』

『やりたくないならやるな!!やりたいことがあるならやれ!どーせいつか出来なくなって、したくない事しなくちゃいけなくなるんだからな!!』

 

 俺もシスターフッドの葬儀屋なんて真似はしたくなかったしな。誰かがやらなくちゃいけないから全力でやってるだけだったし。今は……ある種の使命感でやってる。

 

『周りからの期待とか幻滅とか、そんなもんはな!!応えたい時に応えれば良いんだよ!!ずっと一生応え続ける義理なんざねぇだろ!!』

『っ!!』

『そりゃ時には才女なんて衣装に着飾ることも必要だろーがな。ずっとソレを着たままでいることもねぇだろ。ドレスコードをするのはパーティの時だけで十分。ずっと着けてたら体壊しちまうぜ?』

 

 改めて思い出すと何言ってんだこの時の俺……若かりし頃の発言って思い返すと恥ずかしいな。たった1年も経ってないのに……すげぇ恥ずかしい。成長って早いね。

 

『……もしまた見たい新作が出たら俺に言いな。お前が自力でエロ本手に入れる勇気が出るまでは、何度でもお前のところにエロ本落としに行ってやるよ。』

『……ありがとう、ございます……』

 

 …………っとまぁ、今考えると恥ずかしいし独りよがりだしティッシュ1枚より薄っぺらい言葉だが……こんな一幕があって、それを経ての……

 

「……貴方が言った言葉の通り、私はこうして何もかもを脱ぎ捨てて、キヨトさんには私自身の、ありのままの私を知ってほしいのです。」

 

 これである。

 

 ……おい待て馬鹿スク水まで脱ごうとすんな馬鹿。落ち着け。落ち着けっての!!!

 

「帰れ!!帰って服着て寝ろ!!」

「わかりました、では帰りますから一緒の布団に入って暖を取らせてください」

「何の暖を取る気だよ!?いい加減にしろよお前!!何考えてんの!?」

「ナニを考えているん「喋んなくていい!予想つくわ馬鹿!!」

 

 一つ聞きたい、これは俺のせいなのでしょうか?そもそも最初にエロ本拾ってたときから手慣れてたし、多分俺がなんか言う遥か前から色ボケだったと思うよ!?ここまで直接的な子に育つことある!?俺悪くないよな!悪くないって言って!!

 

「いいか!せめてぼかせ!!もっとぼかして物を言え!!」

「何を……貴方だって同じような物でしょう!相当な変態生臭神父なのに……自分の事を縛り上げて!」

「棚に上げてだろ!?なんで自分を縛らなきゃいけないんだよ!?どんなプレイ!?」

 

 はぁ……はぁ……すげぇ疲れる……サクラコ達も普段こんな苦労してんのかな、ごめんな皆。俺絶対悔い改めないし直さないけど覚えておくよ。

 

「お前、まじでいい加減にしないと正義実現委員会よばれるよ?捕まるよ?」

「ふふっ、捕まる程度で私が治まらないのはよく知っているじゃないですか♡」

「そーだね。」

「それに私を捕まえて目茶苦茶できるのは、キヨトさんだ「喋んな。喋んなぁ……次喋ったら磔にすんぞテメェ……」

 

 多分アレだよ!!俺が女に手を出してるって噂半分位こいつのせいだよ!?コイツがいろんな所で吹聴してるからだよ!!俺ハナコになんかした!?何もしてないよ!!

 

「もう……分かりました。それじゃあスク水は脱ぎますから」

「脱げって言ってねぇよ。服着ろって言ってんだよ。」

「……分かりました。服を着れば良いんですね?」

「露出度高いやつは駄目だぞ。」

「もぉ♡」

 

 もぉ♡じゃねぇよ……どんだけ頭淫乱ピンクなんだこいつ……はじめのうちはここまで酷くなかったが2年に上がって悪化した気がする……全く、つかこんな時期にそんな格好してたら風邪引くぞ……

 

「!!へっくしゅ……!」

 

 いわんこっちゃない……なんでこいつ頭いいのにこういう所はアホなんだ……いや、こいつの事だから覚悟のうえでやってんだろーな。こういうところがあるから末恐ろしいよ。

 

「……春先で気温も上がんねえのにスク水なんて着るからだよ。」

「いえいえ……噴水につかるんじゃありませんでした。」

「本当お前何してんの!?頭パッパラパーにも加減があるだろ!!」

 

 ったくもう……しょーがねぇな……

 

「おらっ。俺の神父服(カソック)貸してやるから。」

「っ!あ……どう、も……キヨトさんは?」

「カソックは上着みたいなもんだからな。下に着てるから問題ねぇよ。」

「そうですか……ちなみに私は……」

「喋んな。もうだいたい分かるから。」

 

 あー……神父服脱ぐとやっぱ寒いな。アビドスではえらい暑かったのに、やっぱ保温性抜群通気性最悪なのはこういう時に役立つんだな……失って初めて気づくよ。

 

「……ふふっ。」

「どしたハナコ……何笑ってんの……つか帰れよ……」

「いえっ、キヨトさんの家に寄ってもいいですか?神父服このまま持って帰るわけにはいきませんし。適当にキヨト君の私服貸していただければそれ着て帰ります。」

「……はぁ、あとで絶対返せよ。あと変なことには使うなよ。」

「変な事……?一体どんな用途に使うか教えてもらっても♡」

「零した脳ミソ拾うとか。」

 

 ……まぁ、なんのかんの言ったが、結構コイツがあの頃よりはマトモな顔をするようになってよかった。死んだ顔して生きてるやつほど見てられねぇ物はねぇからな。

 

 それはそれとして、もっと抑えてくれるようになればなぁ…………やっぱピンク髪は淫乱か…………

 

「キヨト君。」

「なんだよ……」

「キヨト君の服は、男の子って感じの匂いがしますね♡」

「匂いについての言及は普通にキモさカンストするからやめろやぁぁぁっっ……!!!」

 





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