シスターフッドの生臭神父はパンツが見たい。   作:誰か

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生臭神父は夢で語らう。

 

 

 ミカが俺に面倒事を持ってきたその日……俺はエロ本を読み終えた充実感で床についた。頭には色々残ってくるが……兎も角今は寝ることを考えようとした。

 

 そして、いつの間にか俺は夢を見た。夢の中の俺は、あんまり綺麗であくびしそうな夜空の下……一人で墓場に立っていた。

 

 そして、そこには同じように佇む人影が一人……幼気ながらも確かな覇気を感じる彼女は、天を見上げるのをやめるとゆっくりこちらを向いてくる。俺は思わず、その名を呟いた。

 

「セイア、か。」

「あぁ、久し振り……でもないか。」

 

 百合園セイア、ティーパーティーのホストの最後の一人。俺のこいつの印象は……前にも語ったが「パッシブ言語の擬人化」だ。セイアはまぁ頭が良い……だがその頭の良さは哲学的な方面へと向く。それ故に、言ってる事が偶に理由がわからなくなるのだ。

 

 以前ドーナツを共に食った事があったのだが、いきなり哲学のドーナツの穴を語りだした時には友達辞めようかなと思った。

 

 だが、そんな彼女が何故ここに?理由は俺も分からないが……少なくとも、目の前の彼女が俺の幻ではないのは分かる。

 

 彼女は現在、とある場所に隠れている。だが表向きには死んだことにもなっている。理由は……突然の奇襲を受けた暗殺未遂……理由は俺も詳しくは知らされてないが、どうやら寸前で回避できたらしい。

 

 まぁ、当然死んだ事にするには紛いなりにも葬式か類することをやらなければならない。だが、その弔いに関する作業ができるのは、少なくともトリニティではそれを取り仕切れるのが俺、浅木キヨトくらいだ。

 

 ……つまりはまぁ、その偽装工作の片棒を担がされた事になる。俺も詳しいことは全く知らないし、セイアが何処にいるのか何をしてるのか、なぜ戻らないのかすらも知らない。一応救護おっぱいこと、トリニティの救護騎士団と呼ばれる医者の団長が匿っているらしい。

 

 正直、セイアが死んだと聞いた時は結構キツかったよ。知り合いの葬式なんて御免被るからな……その後、連絡が来て諸々の事情を聞いた時は肝が冷えたよ。その事を誰にも言うなと口止めされた時もな。

 

「……しかし、まぁこうして会いに来てくれるとはな。」

「君の物語も動き始めたようだからね。少し顔を見に来たよ。」

「相変わらず何言ってんのかわかんねぇ。」

 

 ある意味安心はした。こんな訳のわからない事を言えるのは間違いなく本物のセイアだ。しかし……まさか人の夢の中に出てくるとはな。予知夢が使えるとは聞いてはいたが、こんな真似もできるのか……いや、俺もやろうと思えば聖書ワープとかできるから。護符とか作れるから。負けてないから。

 

「……エデン条約が始まるな。」

「あぁ。そーだな。」

 

 エデン条約……もう説明は不要かな。ゲヘナとトリニティの和平条約だ。いろいろ無茶もあったが、このまま行けばうまくいきそうらしい……上手くいかさせなさそうなやつに心当たりが出てくるのが嫌だな。

 

 すると、目の前のセイアはまたおもむろに語りはじめた。

 

 

「エデンの園には知恵の実と生命の実と呼ばれる果実があるとされている。その知恵の実を食したものは、善悪を知るのだと言う。生命を実を食せば、永遠の命が手にはいるという。」

 

 ごめん、なんでいきなり神話の授業?

 

「神は、そのエデンに住む二人の男女、アダムとイヴにその実を食す事を禁じた…………だが、そのエデンの園には蛇も住んでいた。その蛇は、イヴを唆し実を食し、イヴもまたアダムを唆して実を食した。」

 

 なんで失楽園の話してんのこいつ。どーした!?旧約聖書にハマった中学生か!?

 

「その所業で二人は恥を覚え、善悪を知った、死を知った…………神は、その所業に怒り二人をエデンの園から失楽園させた。」

「……つまり、俺はそのイヴに唆されたアダムだとでも?」

「そんな高尚なモノじゃないだろう。君は……これはただの忠告さ。そうならないようにと言うね………そもそも私は、その楽園そのものに懐疑的だ。」

 

 セイアはそう言うとまた、その地の天を見上げる。一体彼女には何が見えているのか、はたまた何も見えていないのか。それを測ることには俺には不可能だろう。

 

「キヴォトスの七つの古則は知っているだろう。」

「七つの古則?」

「おや、知らないのかい?君の家にも伝わるだろう?」

「あぁ……DVDを汚れた手で触ったり齧ったりしないでねって言うアレな!」

「全然違うな。君も相変わらずで安心したよ。」

 

 そう言ってセイアは初めてクスリと笑ってみせた。夢に見てからずっと辛気臭い顔をしていたから、友人のそんな顔を見れて俺は若干安堵する。最近、皆辛気臭い顔ばっかりだ。時期も時期だが……俺としちゃあもっと馬鹿みたいに笑っていてほしいもんだが。

 

「……その古則の5つ目こそが、そのエデンに関する物さ。『楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか。』……きみは、この言葉をどう思う?」

「すげぇ好みのエロ同人を見つけたとして、そのエロ同人が他の人の好みにも合うものが分からないって話じゃね?性癖なんて人それぞれなんだ。純愛が好きならNTRが好きな奴もいる。ロリがすきなら人妻が好きな奴もいる………因みに俺は包容力のある人妻が」

「すまない、黙ってくれ。」

 

 なんだよ自分から聞いたくせに……なんだ!?自分は語るくせに人の語りには興味ないタイプがお前!それじゃ人間関係円滑にできないぞ!どんなに相容れない性癖でも表面上は肯定してやるのが優しさだからな!

 

「……はぁ、私は一つの解釈こう考えているんだ。『楽園の存在証明に対するパラドックス』だとね。もし楽園が実在するとして、そこに辿り着いた者は至高の幸福を得る。そして、その幸福が失われる外に出たいとは思わないだろう。」

 

 なるほどね。つまりは一度気に入った絵を見つけるとずっとその絵を使用し続けると言う。そう言う話か。

 

「そう言う話じゃない。」

 

 こいつ!?脳内に直接……!!!

 

「……もし、その楽園の外に出たのであれば、それは真の悦楽を得られる本当の楽園ではなかった訳だ。ならば楽園に到達した者が、楽園の外で観測される道理はない……だろう?」

「だろう?とか親しげに語りても、俺何も言えねぇよ。何をどう答えれば良いんだよ。皆が皆お前のパッシブ言語に付き合ってあげると思うなよコノヤロー。」

「……本当に相変わらずだな。」

 

 するとセイアは、じゃっかん諦めに満ちた表情をこちらに向けてくる。そして、また静かに口を開く。

 

「……だが、この問いが問いかけたいのはそんな冷笑地味た答えではないと思う。……存在証明できない楽園は、本当に無価値なのか?……エデンと言う夢想家の虚像。この物語はきっと、君には耐えがた……」

「なぁここお茶菓子とかでないの?椅子ないの?さっきっから立ちっぱで足がガクガクで生まれたてのバンビになったんだけど。」

 

 俺はいい加減に面倒くさくなって話をきり上げた。

 

「君は本当に身勝手と言うか奔放と言うか……神父とは思えない堪え性の無さだな。」

「言ってろよ。俺がそんな利口じゃないのは多少ならお前も知ってるだろう。」

「違いないな……だが、私はそれに期待をしていた。」

 

 そう言って、セイアはまた笑う。

 

「……全く、君はいつもそうだな。人が悩もうが何してようが、自分の感情を、自分の進むべき道を信じて突き進む。間になんて障害物があろうと無視して突っ切る。それが君だったな。迷わず、直向きに……」

「別に迷ってないわけじゃねぇよ。」

 

 そうだ、迷ってない訳なんかじゃない。何をどーするのが正解なんてのは何も分からねぇ。何処行っても明かりの一つも見えねぇ真っ暗闇だ。だが……一つだけ確信してることがある。俺が今歩いてる道はきっと大丈夫な道って事だけだ。

 

「幸福な事に俺の周りにゃ俺が本当に馬鹿やった時に殴ってでも止めてくれるやつが大勢いるんでね。おかげで悩む暇も無くテメェらしく進んで行けてるよ……そりゃ時々分かんねぇ事にぶち当たる事もあるけど、なもんは進んでたら案外どうにかなっちまうもんさ。」

「……君はミカに負けず劣らずに向こう見ずだね。その周りが間違っていたらどうする気なんだい?」

「そしたら最終的に俺の判断で動く。」

「ブレブレじゃないか。」

「ブレブレだよ……ぶらんぶらん揺れて揺れて揺れまくるさ。けどな、揺れるってのは、確かに芯があるってことだろ。そこに戻ろうとする力が働く芯って奴が。それが何なのか俺も知りはしねぇがな、こいつがある限りは大丈夫なんだよ。」

 

 そもそも理屈で云々は主義じゃないしな。

 

「……それと、セイア。折角だからお前に俺にとっての楽園の三箇条を教えてやる。」

「……ほぉ?気になるね、ご教授頼むよ。」

「一つはダチ公とみんな揃って笑って馬鹿やれる所。二つはマジの馬鹿をしでかしたら俺を殴ってくれる奴が居る所。三つ目はエロ本が買える所。四つ目はエロ同人が買える所だ。」

「四つあった上後半二つ同意義じゃなかったかい?」

「気のせいだろ。」 

 

 あれだから、エロは大事よエロは。エロ規制した国ってたいていロクなことならないから、一部がスパーキングして大変なことになるから。

 

「……それで、君は今その楽園に居るのかい?」

「人間は欲深なんだよ。こんなんじゃ満足できねぇ。」

「発言がコロコロ転がるな………」

「俺はボンボン派なんで。」

「もうないよ。」

「コロコロアニキの方で良いよ。」

「話が進まないなあ……」

 

 ははは!セイア!ここが夢の中だからといってお前にだけ発言させやしないぞ!お前の発言パッシブすぎて俺わけわかんねぇもん!さっきの楽園のパラドックスの話とか俺そんなわかんなかったぞ!!

 

 そもそも楽園なんて人によるだろーが!なんなら今ここで楽園バトルするか!?楽園バトルしよーぜ楽園バトル!!俺が勝ったらお前の楽園、エロ本以下なァァァァァ!!!!

 

「兎に角、だ。俺に言わせちゃ楽園だの考える前に目の前に転がった問題片付けなきゃいけねぇんだよ。お前も早く戻ってこいよ。俺の楽園が完成しない一端お前だからな。」

「……?」

 

 セイアは本当に意味がわからないのか、大きく首を傾げた……コイツは、何と言うか……偶に人の頭を読むのには冴えるのに、人の心の中を見抜けない時があるな。

 

「俺に言わせちゃ友達が何処ともしれねぇ所で引きこもってる時点で、十分楽園からは離れてら。それに、俺の楽園はそんな小綺麗じゃねぇよ。綺麗好きは俺嫌いだから……泥にまみれて下世話に笑う様な毎日で十分だろ。」

「私と君は友達なのかい?」

「じゃあ友達の友達でもいいよ。ほぼイコールだ。変わらねぇや。」

 

俺は目の前の墓にしゃがみ込み、墓石を軽く撫でる……相変わらず、墓石に刻まれた名は一文字も読み取れないが……いつまでも夢のなかにいるわけにもいかねぇや。

 

「んじゃセイア。俺行くわ。お前も早く戻ってこいよ。」

「気をつけると良い。この物語は疑い欺瞞と虚偽で満ちた物語だ。」

「ご忠告は無視しとくわ〜……俺ァまた自分のできそうなことあらかたやって備えるさ。じゃあな。」

 

 あーあ……まぁ、いいや。

 俺は俺流にやればいい……やれること必死にやるしかねぇ……のかな。

 

 

 そして俺は、いつの間にか夢から覚めていた。

 

 

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