「…………よし、採点終わり。確認しとけ。」
「ありがとうございます!」
俺達の合宿も既に三日目に突入していた。先生は朝から誰かに呼び出されたようで何処かに行ってしまった……まぁ、誰が呼び出したのかは想像がつく。ナギサはわざわざ出向かんだろうし、このタイミングならミカあたりだろう。
先生がいなくてもできることやることは無限にある。俺はまた先生の代わりに模試の採点をしていた。
阿慈谷ヒフミ:64点 合格
白州アズサ:58点 不合格
下江コハル:49点 不合格
浦和ハナコ:8点 不合格
前回と比べても(1人を除いて)大幅に上がっている。特にコハルはすさまじい。一気に30点以上の点数アップだ。
「紙一重だったな。」
「はい!今回は本当に紙一重でした!」
「み、見た!?私も結構上がったわよ!」
「うん、頑張ったなぁコハル……んん……」
「はっ?キヨトどうしたのよ、目頭押さえて。」
「いや、ちょっと本当に成長に感動して若干涙出てきた。」
「なんでぇ!?」
いやぁ、人の成長を見守るってこんなにいい気分なのか……ん?
“ごめん、みんな!!”
「あっ先生!見て!この点数!」
「みんな着実に上がってますよ。」
「ハナコ、お前はもっとちゃんとあげろ。4の倍数でしか上がってねぇぞお前。」
「大丈夫です、前回が4点、今回が8点……あと三回で合格ラインに達するはずです!」
「なにその無駄に器用な芸当!?」
ハナコは相変わらずワケワカメだし……まぁみんな少しずつでもやる気が昇ってきて何よりだ。特にアズサはそんなにモモフレンズが気に入ったのか試験そっちのけでモモフレンズを手に入れるために頑張ってる。……まぁ、退学掛かってがちがちになってひどいミスするよりかはマシだが。
……ん?
「悪い、電話だ。」
“どうぞ?”
「ん。」
誰だ……?
「もしもし?」
『あっ。キヨトさんですか?私です!』
「おぉマリーか!久しぶりだな!22話ぶりか?」
『にじゅう……?よくわかりませんが、お久しぶりです!』
いやぁ、タイトルにシスターフッドって書いてあるのにシスターフッド所属の娘が出てくるのだいぶ久々だな……
「どーしたよ?」
『いえ、キヨトさんが補習授業部の合宿に付き合っていると聞いて……そちらに白州アズサさんという方はいらっしゃいますか?』
「あぁ、アズサ?居るけど……」
『よかった!今そちらの合宿所へ来ているのですが……少しお話がしたくて、入ってもよろしいですか?』
「おぉう。いいぞ〜。」
“誰からの電話?”
「俺の所属してる……シスターフッドの新人さん。なんかアズサに話があるってんで入ってくるって。」
「私に話……?いや、そもそも正面から入ってくるのか?」
あぁ?何言ってんだ、わざわざ裏口からはいるわきゃねぇだろ。
「いや……実は夜中にブービートラップを設置していてな。侵入者が出ると起動する仕掛けになっている。」
『きゃぁぁぁっっ!!』
「……。」
……ま、マリィィィィィ!?!?!?!?!?
その後、爆撃されたりなんなりで大惨事にあっていたマリーをなんとか回収し…………元凶であるアズサは……
「う……なんだ、これは……足がチクチクする……!」
「それが正座だ。しばらく反省しなさい……まったく、ブービートラップなんて仕掛けてたのビックリだよ!!」
「す、すまない……しかし……」
「でももだってもありません!!ちゃんとマリーちゃんに迷惑かけてごめんって謝りなさい!!」
“お母さん!?”
まったくもー!このこったら隙あらばすぐに籠城しようとするんだから!!
「……ごめん、襲撃された時用に仕掛けていた奴なんだ……」
「え、えぇ……っと……」
「俺からもすまん。こいつ悪いやつじゃないんだ。悪いのはオツムだけなんだ。本当。」
“お母さんポジに寄せなくていいから!!”
うん。駄目か。
「あら♡私は良いと思いますよ?
「頼むから何も喋んな……!!」
「言い出しっぺは貴方なのに……」
だぁ、話が横道にそれる!!ったく誰のせいだ……!!
「それよりも、シスターフッドの方が何故こんな所に?キヨトさんへ伝言が何かが?」
「いいえ……サクラコ様からはキヨトさんはもう何言っても止まらないので好きにやらせろと。」
「もう完全に諦められてるじゃないの!?」
「馬鹿野郎俺とサクラコは十年来の類友だぞ。信頼と言え信頼と。」
全く……そもそも俺みたいなタイプがサクラコみたいな奴に放置されてる時点で相応の信頼や信用はあるに決まってる。絶対内心胃を痛めてるだろうけど……頑張れわっぴー!!
「しかし……キヨトさんからお話は伺っていましたが、本当にここにいらっしゃったのですね……ハナコさん。」
「私も、成績がよくないので。」
「そう……ですか。」
前にも言ったが、ハナコのシスターフッドへの勧誘は今でも時折続いている。俺はもう諦めろって何回も言っているんだが……まぁ、それこそ好きにしろという感じだ。あっ、そう言えばどうせだから聞いておくか。
「マリー、懺悔室の方は最近どうだ?」
「一部の方は最近キヨトさんの番と鉢合わせないと嘆いていましたよ?」
「マジで?俺の時代来たか?」
「来てほしくないわよそんな時代……と言うかコイツに懺悔するの?コイツがむしろ懺悔する方でしょ?」
んだとコハルこの野郎。一番懺悔しなきゃいけないのはお前だろうが人のエロ本借りパクしやがって。
「いえ、それはそうなのですが……」
「そうなのですがって何!?」
「一応キヨトさんもきちんとした神父。確かに王道な懺悔とは言えずとも、話しやすいと評判なんですよ?」
「マリー……お前も言うようになったな……」
いや、別に良いけれど……!!あとなんか小っ恥ずかしい!
“キヨト、神父としての仕事もキチンとしてたんだね!普段から煩悩にまみれてR18を彷徨ってる亡霊かと思ってた……”
「先生ぇ?何その化け物?何処のデカいサイトの話?」
“懐かしいな……炎天下の中で並んでコスプレイヤーと写真を撮りながら建物のなかで目当てのブースまで歩いたっけ……”
「アンタ即売会行ってるな!?」
とと、またエロ同人方向に話が持ってかれるところだった……違くて!!
「んで、結局マリーは何しに来たんだよ?アズサに会いに来たんだよな?」
「む?そう言えばそうだったな。」
「は、はい!……実は、先日アズサさんが助けた生徒から感謝をお伝えしたいとの事でして。諸事情ありましてこうしてかわりに。」
アズサに感謝……?
「クラスメイトの方から、いじめを受けてしまっていた方がいらっしゃいまして……その日もどうやら突然、建物の裏手に呼び出されたのだと聞きました。」
そ~言う話か……全く、トリニティに限った話でもねぇが気分わりぃぜ。
「そ、そんな事が!?」
「いじめ……」
「聞かない話ではありませんね。皆さん狡猾に陰湿にやるせいであまり表沙汰にはなりませんが。」
因みに俺もそんないじめに遭っていた時期がある。上履きに納豆入れられたり椅子に瞬間接着剤塗られたり陰口悪口だったり。
俺の場合はそれら全てに徹頭徹尾無視を決めて楽しくエロ本ライフを過ごしていたらいつの間にかなくなってた。正直張り合いがなくて肩透かし食らった気分だったな。
偶に俺の周りの方に迷惑かける奴がいたらそ~言うのは徹底抗戦したけど。政治的に。ほら、俺一応ボンボンだから。そう言うの得意なのよ………これだけ聞くと俺完全に悪役令嬢のそれだな。
「私もその方に相談されて漸く知る事が出来たのですが……そうして呼び出されてしまった日。そこを偶然通り過ぎたアズサさんが、助けてくれたそうです。」
「そ、そうなんだ?」
「そんな事もあったな。ただ数に物を言わせて弱い対象に集るのが目障りだっただけだ。」
やだ……このアズサかっこいい?アズサは元々格好いいだろいい加減にしろ!!
「その後アズサさんに怒られた方が正義実現委員会と連絡を取られて、どこで情報が曲解されたのかわかりませんが……なにやら正義実現委員会とアズサさんの間でそれなりの規模の戦闘に発展したとか。」
「最初あった時ハスミ達に拘束されてたのってそれか!?」
「なにはどうあれ売られた喧嘩は買う。あの時も弾薬さえ切れてなければもっと戦えた。もっと道連れにできた。」
「よし、よく言ったアズサ。次は俺も誘って。」
「キヨトさん!?!?」
冗談だよ。流石に。半分位。
「……兎も角、その件を報告しにその方がいらっしゃって感謝を伝えたいと……そして、学園内では見つけられずここにたどり着いた次第です。」
「そうか……私は特別感謝されるようなことはしていない。それに、あの出来事自体は気の毒だけど、いつまでも虐げられているようじゃだめ。どんなに虚しくても抵抗を続けるべきだと思う。」
「……そうですね、そうかもしれません。あの方にも、そう伝えておきます。」
まぁ、いままで誰にも相談できなかったことを誰かに相談できた時点で好転したってとらえていいよな。それができてないやつのほうが多いのは、前提として。
「……それでは、いろいろとお話も出来たので、私はこのあたりで御暇します。」
「あら?でしたら見送りしますよ。色々とマリーちゃんとは積もる話もありますし。」
「んじゃあ俺も行くわ。またトラップ引っかかったら大変だしな。」
すると、アズサは調度
「……キヨトは意地が悪いな。」
「褒め言葉って受け取っとくよ。先生、後は頼む。」
“わかったよ。”
「では皆さん、お邪魔しました……!」
そう言って、俺とハナコ、そしてマリーは教室を後にするのだった…………
合宿所の出口に向かうまでの間……俺は不意にマリーに問いかけた。
「マリー、俺の所の部隊の奴ら、今どうなってる?」
「えっ?……順調に訓練してますよ?……最近は……『我らイスカリオテ、イスカリオテのユダなり……』と、何かを詠唱する練習をしているようですが。」
あいつら本格的にイスカリオテの座取りにきたな!?んじゃあ何!?俺はアンデルセンってか!?メガネかけてねぇしCV若◯さんじゃねぇよ!!
「あいつら……兎に角、やる気は十分なんだな?」
「はい、それはもう。」
「……そう言えば、キヨトさんは直属の部隊があったのでしたっけ?」
「直属の部隊ってほどキチッとした物じゃねぇが、俺が面倒見てる部隊だ。名前はシスターフッド、13番隊……」
「この間部隊名の変更届が送られて……『特務機関イスカリオテ』を正式な名前にする動きがありますが……」
「マリー、サクラコに伝えろ。その名前採用したら俺シスターフッドやめるってな。平◯耕◯さんとかヤ◯グキグ◯ワーズ様に喧嘩売る勇気俺にはないから……」
本当、勘弁して……俺まだ
すると、ハナコが突然くすりと笑い出す。どうしたコイツ。
「ふふっ……本当はマリーさん経由で頼もうと思ったのですが、近くにもっと良い人が居ましたね。」
「ん?」
「ハナコさん?」
「……浅木キヨトさん。伊落マリーさん。二人に……いや、シスターフッドにお願いしたいことがあるのですが?」
「……奇遇だな、ハナコ。俺も同じようなことマリーに頼もうと思ってたわ。」
「えっ!?えっ!?私ですか!?」
「ヘッヘッヘ、シンパイスルコトハナイ。」
「そうです♡大丈夫大丈夫♡……………なんかこうして男女で女の子に迫ってるとイケない事してる気分になりますね♡」
「悪いなマリー。ここからは真剣に話し合おう」
「えぇ……」
……本当、もう俺永遠にハナコに勝てる気しねぇ、もう反射でこうなるんだもん………