俺には嫌いなものが幾つかある。
そのうちの一つが綺麗好きだ。奴等は人の有様を見て直ぐに綺麗だの汚いだのと言いやがるだけならまだしも、そこに優劣を差して好き勝手な口出してくるから手に負えねぇ。
家も人も世の中も、少し汚いくらいが暮らしやすいって物だ……そんな考えだから、やっぱり俺は人の清潔さを志すシスターフッドとは反りは合わない。
……と思いきや、そこまででもない。そりゃあそうさ、シスターフッドってのが元来、トリニティの血に汚れた部分の塊なんだから。
ユスティナ聖徒会。シスターフッドの前身であり、かつてのトリニティを一時期に武力で支配していた存在。
今やトリニティは現在のティーパーティと呼ばれるパテル、フィリウス、サンクトゥスの3つの連合を長においた総合学園だが、それまでは様々な学園が寄せ集まってできた場所で、相応以上の争いがあったそうな。
そんな現状を脱却のために結ばれた統合計画……勿論反対の声も上がる。その時声を上げたアリウス学園はその後……っと、余談や横道も良い所だな、今はここまでで終わらせよう。
兎も角、俺は変に綺麗な場所が嫌いだ……無論、綺麗にする掃除屋もな。このトリニティはキヴォトスの中でも特大のマンモス校、治安維持組織は非公認含めて幾つかあるが、その中でも公式に活動している中で最も大きな派閥は正義実現委員会だろう。
取り繕わずに言えば、俺はこの正義実現委員会が嫌いだ。正義と言う題目を掲げて、人にとっての必要な汚れを奪う……余計なお節介の代名詞だ。
……えっ?なぜそんなに嫌うのかって?何か恨みでもあるのかって?
あぁ、あるさ……俺にとってとてつもなく大事なものを奪われた恨みがな…………………そうさ、許せるわけがねぇ。だから……!!!!
「コハルゥァッ!!!早く俺のエロスティックカーニバル返せぇぇぇぇぇ!!!!」
「わぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」
正義実現委員会の押収品管理室……その日、俺はそこに突撃をかました。理由?決まってんだろ、悪しき正義実現委員会に非健全書物として奪われた我が愛読書の一つ、エロスティックカーニバルを取り返すためだ。
「ちょっ……な、なんでここまで来てんのよ!この生臭神父!!」
「あぁ、正面から入ると蹴飛ばされて追い出されるから窓から入った。戸締まりはしっかりしとけって警備に言っとけ。」
「方法じゃなくて理由を聞いてるんだけどぉ!?」
このピンク髪の羽付き淫……失礼。正義実現委員会の制服を着た少女は下江コハル。俺の
「ちょっ……!?今何気にすっごい気持ち悪いこと思われた気がする!?」
「何を言う、俺もお前もエロ本を追い求める求道者。今でも思い出す……俺が1年の頃、同級生のお前と河川敷にエロ本を探して修復した思い出が…………」
「そんな思い出無いんだけど!?エッチなのは駄目だしそもそも同級生じゃなぁぁぁぁぁぁい!!!!!!」
いやぁ、反応が面白い。こりゃこいつが正実で好かれるのもわかるわ。
「うぅ……アンタはいつもそう!私の事からかいまくって!」
「まぁまぁ落ち着けよ。」
「ア!ン!タ!の!せい!!」
「つかそもそも俺3年だぜ?敬語使おうぜ。」
「いやだぁっ!!!アンタに関してだけは例え誰に何を言われようとも絶対に敬語を使いたくない!!!」
めっちゃボロカスで草。
まぁ、いいや。あんまりいじり過ぎると可哀想だし……いい加減長居してほかの奴らに見つかっても困る。本題に入ろう。
「んでコハル。お前にしか頼めない大事な役目があって今日はここまで来たんだ。」
「……えっ……?大事な、役目……?」
あぁそうだ。押収物管理室に担うお前にしか頼めないだいじな仕事だ。俺は背の低いコハルに合わせるように跪き、失敬のないよう顔を合わせる。
「ちゃっ!?ちょ、な、何よ!?」
「コハル……」
そして俺は地面スレスレにまで頭を下げて、一つの願い事をする。
「俺の
「返すわけないでしょうが!!!」
なにぃっ!?意外ィッ!!!!
「何びっくりな顔してるのよ!?するわけ無いでしょ!私は正義実現委員会なの!飛び級試験を控えてるのに、そんな信用を落とす真似できない!」
「えっ、飛び級……?」
……えっ?コハルが?嘘だろ。
お世辞にもこいつ飛び級なんてできる頭してないのに……えっ新手のジョーク?
「……エイプリルフールはもう終わったぞ……?」
「四月馬鹿じゃないわよ!」
「あぁ、お前は年中馬か……」
「うがぁっ!!」
ちょっスナイパーライフルで殴るのは勘弁し
「いっだあ!ごめんなさぁい!!!」
「ふんっ!」
「にかいめぇっ!?」
あ……あば……ば、馬鹿になるぅ……
「あ、安心しろコハル……たかだかエロ本一冊、気にも止めないだろ……」
「気づくわよ!!だってあれハスミ先輩がアンタから直々に取り上げた奴でしょ!?」
そう、俺のエロスティックカーニバルを奪ったのは正義実現委員会副委員長、羽川ハスミ……尻とタッパがデカい女だ。
あぁ、因みにこのセリフを前本人の近くで口走ったら屋根に逆さまで吊るされて1日放置されたから言わないほうが良いぞ(334敗)
「大丈夫だ……コハル。仮にバレたとしても……」
「……しても?」
「2人で怒られれば怖くない!!」
「死刑ぇっ!!!」
「それに勿論、タダで受け取ろうなんて真似はしないさ……これだ。」
そうして俺は懐に手を伸ばす。
「なっ!?……まさか、お金……!?そんな……そんな真似だけはしないって思ってたの」
「ここに三冊のドエロイ本があるじゃろ?」
「くたばれぇ!!!」
「三回目の打撃ィッ!!!」
こ、こいつ……!?俺の頭に3回もスナイパーライフルでぶん殴りやがった!見ろ!おかげでたんこぶがアイスクリームみてぇに3弾重ねだ!!今度は五段を買うといいなんて俺ぁいえねぇぞ!?
「は、は、は、は、は、は!!!早くそれしまいなさいよ!!!えっちなのは駄目!!死刑ぇ!焼却!!」
「ふっ……そうは言いつつ、ガン見じゃないか……安心しろ、お前の好みを抑えたブツだ。」
「なんで人の好み知ってるのよ!?」
「ふっ……お前にエロ本を教えたのは誰だったか?」
「アンタだったわねぇ!!!」
「てか、やっぱこの系統が好きなのか。良いセンスだ。」
「黙れぇぇぇ!!!」
いやぁ、入学したてで道に迷ったこいつにエロ本読んでるのを見られてチクられたのが始まりだったか。
あん時はびっくりしたらいきなり後ろで人のエロ本ガン見する女の子がきたんだもん。ま、おかげでよいエロ本仲間に出会えた……もう一人思いつく
「さぁ、取引だ。この三冊と回収された一冊のギブアンドテイクだ。渡せよ……早く渡せ……」
「そ、そんなの興味ないもん!!」
「そんなじっくり舐め回すように見られても説得力が……」
「っ!!と、兎に角駄目なの!!……どうしても盗りたきゃ、私を倒してから行きなさい!!」
なにぃっ!?
「わ、私は……まだ弱いかもしれないし、あんたには勝てないかもしれないけど…………どんな目にあっても、絶対に取らせなんかしないんだから!!!」
あっ(良心の呵責)
くっ(罪悪感の刺激)
それでもぉっ!!!
はぁ……はぁ……あぶねぇ。思わず全てを投げ捨ててここに泣いて土下座して許しを請う所だった。
さすがは誇り高き正義実現委員会……変態に片足突っ込んだ新人でも高潔な黄金の精神はそのままか。正直尊敬するよ……本当に。心の底から。
だが!!オレにも引けん理由がある!!!俺の愛した本を取り戻す為にも!!!
「仕方が無い……愛を通す為には戦わなきゃいけんこともある!!」
「き、来なさい!!」
「さぁ、行くぞ……俺のターン!!まずこれだ!5メガネ!!「何を、しているのですか?」……あ゜」
あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!いつの間にか後ろにハスミがいると思ったら、すでに頭をワシ掴みにされていた。何を言っているかわかねぇと思うが、俺はわかる……これが、コハルに迫った代償だと言う事を。
「よ。よぉハスミいつぶり〜」
「昨日貴方から有害書物を取り上げた以来ですね。それで、こんな所まできてコハルに迫って何をしていたのですか?」
「あ、いや……そのぉ……」
「あぁでも、しかし良かった。」
えっ、は、ハスミ……?なにその春風のような爽やかな笑みは……?えっ、ちょ……何を……
「ツルギが模擬戦相手が欲しいと言っていたので……貴方にお願いしましょう……丸腰で。」
「しぬぅっ!?潰れた空き缶よりも酷い状態になる!!!」
やめろ!!委員長に突き出すのはやめろぉ!!あの人普通に最高戦力!!俺死ぬぅ!!丸腰になったら俺死ぬぅ!!せめて!せめてヒノキの棒をください!
「……コハル。このド畜生の誘惑に耐え、よく押収物を護ってくれましたね。誇りに思いますよ。試験もこれからでしょう?頑張ってくださいね。」
「っ!!あ、ありがとう御座います!!ハスミ先輩!私、頑張ります!!」
えっ!?ちょっ!?何そこ少しよい雰囲気になってるの!?先輩の方片腕で人の頭蓋骨潰そうとしてるんだけど!?
「それじゃあ、行きましょうか……キヨト。」
「い、いやだぁ!!!ころされる!!三角コーナーに詰められるレベルでグシャグシャにされるぅぁ!!!!」
この後、俺は正実の委員長であるツルギにサンドバックにされて、建物の屋根から簀巻きにされて吊るされて見世物にされたまま1日放置されました。
……キヨトがハスミに引きずられて直ぐの管理室。そこには、コハルと……彼女の目の前には、キヨトが不意に落としていった欲のそそられるエロ本が三冊残されていた。
「………ごくり……」
コハルはそっとエロ本を手に取り……
「こ、これは一次的な没収!流石にこのまま押収品扱いで焼却は可哀想だから!!一次的に預かってるだけ!!決して私が興味あるとかそんなんじゃないもん!!」
と、誰もいない部屋で言い訳をして……三冊をそっと、バッグの奥に詰めた。
(……それに、これ持ってたらまたアイツとお話できる機会が来るかもだし。)
なんて少し甘い事を考えながら、コハルは悶々とする頭で作業を再開するのだった。
コハルの鞄から見つかるエロ本が増えました。やったね!!