「没収です!!」
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!ハス゛ミ゛ィ!!テメェ゛ェ゛ェ゛ェ゛!!!!!」
くそっ!冒頭から何でハスミに俺の取っておきのエロ同人を奪われなきゃいけねぇんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!
「返せ!返せよハスミ!!」
「嫌です!何ですかこの不埒な本は!!」
「セクシィコマンドーだが!?筋肉質な女の子がロケットランチャー構えてるだけの絵の何処が不埒だ!」
「格好の問題です!裸体に防弾チョッキしかつけてないじゃないですか!!」
「失敬な!迷彩用のボディペイントをしてるだろう!?」
「違う!!!そうじゃない!!!」
なんてこった……まさかトリニティの郊外の裏取り所でこのエロ本を買った途端……ハスミの運転する車が通り掛かるなんて……!!
「あのまま通り過ぎればよかったのになんで態々Uターンして戻ってきて捕まえに来たんだよ!?お友達になりたいのか!?お友達になりたいのかぁっ!?」
「そんな訳が……!!私は正義実現委員会として正義の執行を!」
「性欲の自己発散の何処が悪だァッ!!!」
「白昼昼間からそんな事叫ばないでください!!??」
はぁ……はぁ……くそ。仕方ねぇ、後でコハルに頼んで保管室に入る前に回収してもらおう。大丈夫、コハルなら俺のコレクションをあげればきっと渡してくれる……!!……多分……
にしても運がないな……この辺はトリニティでも警備が薄い。ましては態々正実の副委員長が頻繁に来るような場所でもない。
いつもは不良のたまり場だが……いつもあの辺で商売してる奴曰く、何やら連邦生徒会の自治区でデモを起こすとかで何人かの不良が連れてかれてるらしいから治安も問題無し。風の噂だと、例の寂れた建物の外郭地区に集まってるとか……
エロ本の取引にはうってつけの場所なのに……なんでこんな所に……
「つかハスミ、お前こそ何してたんだよこんな所で。トリニティとは言えほぼ自治区の縁側……こんな所に用事ってか?」
「……厳密には、ここに用事があるわけではありません。これから私は連邦生徒会長の元へ向かうのです。その最中に寄っただけで。」
「連邦生徒会長?」
キヴォトスを総括する連邦生徒会、その会長。その手腕で幾千もある学園の自治区を束ねてきた傑物だ。今度ゲヘナと結ばれるエデン条約の締結を前面的に推し進めたのも彼女…………だが、最近各方面で連絡が取れないとの噂もでている。
「貴方も知って居るでしょう?サンクトゥムタワーの機能が途切れ、犯罪率の大幅上昇。脱獄者に、出所の分からない武器の輸出が増えている。連邦生徒会がまともに機能を果たしてない証拠です。」
「……まぁ。たしかに……」
あそこ、前からワンオペ気質だったしなー……できる奴がやるスタンスだったけど、引き継ぎとかできそうな奴らの集まりでもなし……
「つまり、それに対するクレームって所か?」
「人聞きの悪い言い方を……兎も角、それもあって私はもう行きます。この有害書物は預からせていただきますから!」
「ちょっ!?それは話が違う!!」
俺は車に乗り込んだハスミに駆け寄り、咄嗟にその車体にしがみつく。すると、ハスミは流し目で車にくっついた俺を見るとかるく溜息……
「はぁ…………まぁ、貴方でしたら落ちても平気ですか。」
「……うぇ、何の話!?」
ちょっ!?まって!なんで車のアクセル全開にしてんだこの女!?おいおい!?お前……!?
「時間がないので。落ちないでくださいね。」
「ハスミ!?ちょっ……待……!!!」
次の瞬間、マフラーから煙を吐いて飛び出す1台の車は、俺の叫び声を撒き散らしながら連邦生徒会の自治区……DAの区画へと向かって走り去っていったとさ。
「数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんかうちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました。」
「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています。」
「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不正流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます。」
「気持ち悪い〜〜〜〜〜じぬ〜〜〜〜〜〜」
「……。」
連邦生徒会の本拠地、高く聳えるサンクトゥムタワーでは突然がたがたになった学園都市キヴォトスの現状に不満を持った一部の学園の者達が挙って、連邦生徒会代行である七神リンにクレームを入れていた。いつ見ても未亡人みたいなスケベさあるよねあの人って。
ゲヘナから風紀委員のチナツ。ミレニアムサイエンススクールからはセミナーのユウカ。トリニティからはハスミに加えて別個で自警団のスズミまで来てやがる。真面目なこって……
俺?俺はあのあとハスミの荒い運転に車の屋根の上から振り回されて……絶賛道路で項垂れてます。キツイです。
「お答えする前に一つ…………そこで青ざめた顔をしている神父様は?」
「あぁ、車の屋根についた汚れです。」
「トリニティの汚点です。」
ハスミにスズミの野郎!!!!俺の事を汚れ扱いだと!?そんなひでぇ事を意図も容易く言いやがるなんて!!
「お前それでも正義実現委員会か自警団か!?」
「貴方はそれでもシスターフッドの神父ですか?」
「唯の神父じゃねぇ!煩悩係数オーバー300の生臭神父だ!」
「いや、そんな声高らかに宣言することじゃないですよ……」
「自覚あるならこれ以上トリニティの汚点を増やさないでください。」
くそっ!スズミもハスミも俺の扱いが酷い!!人の事ナチュラルに汚点扱いしやがった……つうか俺スズミに至っては接点殆どねぇのに汚点扱いなんて……マリーの件と言い、俺は相当トリニティから白い目で見られているようだ。
すると、ユウカとチナツが何やら話をしているのが耳に入る。
「……というかあの男、神父……なの?」
「服装からはそうだと思います。もしや彼が……」
「何?何か知ってるの?」
「ゲヘナでも有名です……トリニティのシスターフッド所属。常に何かしらの有害書物を隠し持ち布教する、生粋の風紀の乱し子であり、歩く猥褻物陳列罪…………シスターフッドの生臭神父!!浅木キヨト!!」
「おい待てやコラ。」
結構酷い言葉がそこかしこに散らばってたぞ。なんだ歩く猥褻物陳列罪って……人をモザイクかけなきゃいけないやつみたいな扱いすんなよ。
「そもそも猥褻物陳列罪なんて言ったら、もっと酷い奴らがこのキヴォトスに沢さ――」
「ふんっ!!」
「痛い!!!」
ハスミこの野郎……またスナイパーライフルで……なんで正義実現委員会のライフル使いはコハル然り皆殴ってくるんだよ!銃だぞ銃!?弾丸使えや弾丸!!
「あの……そもそも何故神父がここに?」
「あぁっ!?決まってんだろ!!こいつが没収した俺のだいじなエロほへぶぅっ!?」
こ、こいつ!?ハスミ……あの一瞬で俺に近づきアイアンクローをかますなんて……近接戦の腕が上がってやがる……!!
「黙ってください、他校の生徒や連邦生徒会、オマケに先生がいる中で恥を晒すのは……本当に、何かしらの罪に抵触しそうなので。」
「だから人を猥褻物みたいに言うな!!」
「ほぼニアリーイコールみたいなものでしょう?」
こいついつか泣かせる!!!!!
「こほん、お話を続けても?」
「そうだった!代行!聞かせてもらうわよ!連邦生徒会長は何処にいるの!?」
え、ちょ……人一人殴り倒されてるのに無視?それがキヴォトスクオリティなの?
「な……なぁ、誰も俺の心配とか」
「連邦生徒会長は只今不在です……いえ、行方不明と言ったほうが正しい。」
「「「行方不明……!!」」」
あ、続けるのね……はい。っていうか……
「………行方不明だって!?」
「なんで数拍空けたんですか。」
「……はい、その為現在はサンクトゥムタワーの最終管理者が不在。つまりは今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。」
そんなほぼワンオペみたいな真似させてるから……まぁ、今の連邦生徒会長は飛び抜けて優秀だったからな。実際に出会ったことはないが、彼女が連邦生徒会長になってからの治安の安定さといなくなったあとの崩れ方を見たらどれだけの傑物なのかは容易に想像がつく。
「これが優秀な人材が辞めたあとに引き継ぎがうまくいかなかった現場の現状か……無念。」
「……我々もサンクトゥムタワーの認証を迂回出来る方法を探していましたが、さっきまでそのような方法は見つかっていませんでした。」
スルースキル高いねリン代行。そういう人嫌いじゃない。
「しかし、見つけました……この方が、先生がフィクサーになってくださるはずです。」
“私?”
そうして生徒会長代行の後ろから不思議そうに現れるのは……ヘイローのない『大人の女性』……何ッ!?女だと!?つうかデカいな、色々と……胸を留めてるボタンとか千切れそうなんだけど、可哀想だよボタンが。
「……見ない方だと思いましたが、先生だったのですね。」
「えぇ、彼女はこれからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です。」
「行方不明になった連邦生徒会長が指名?ますますこんがらがってきたじゃないのよ……」
「……しかし、大人の女性か……いいな、響きがなんか、エロい。」
“えぇ!?”
「ふんっ!!」
「2回目!!!」
くそっ!またライフルでぶっ叩きやがった!!!
「申し訳ありません先生。このド変態神父には後で厳しく言っておきます。」
「おい、誰が変態だ。仮に変態だとしても俺は変態という名の神父だよ。」
「全世界の神父に土下座して詫びてください。」
“な、なんというか……愉快な子だね。”
「愉快と言うか……頭がおかしいと言うか。」
「……トリニティも大変ですね……」
「ゲヘナに同情されるのは癪ですが……わかってもらえると助かります。」
あぁ、ハスミがしなしなに……まるで濡れた鳥みたいだ。
「……兎に角!この状況を何とかできる手立てがあるなら早く何とかしてよ!」
「勿論です、先生には連邦捜査局シャーレと呼ばれる、連邦生徒会長が設立した部活の顧問となります……シャーレの部室はここから30km離れた外郭地区にあり、そこにとある物を持ち込んでいます。そこまで先生をお連れしなければなりません。」
外殻地区……?あぁ……あそこなら……
「ん?あぁ、あの周りに何もない区画だろ?あそこ今脱獄者が不良連れて占拠してるはずだぜ?」
「はぁっ!?」
「なんでそんな事を貴方が?」
「あぁ、いつも品物売ってもらってるエロ本の売人から聞いたんだよ。不良があちこちで集まってデモしてるって噂をな。」
「ふーん……まってあんた今エロ本って言わなかった!?」
「言ったけど……」
全く、皆チェリーだな。エロ本くらいで顔赤くして大袈裟な……
「絵本!絵本の言い間違いでしょう?ねぇ、キヨト?」
「ハスミ、俺はトリニティの名誉よりも事実を正直に伝える方が大事だと思うんだよ……だから、俺も隠さずにエロ本の売人の話を……」
「本当にこれ以上恥の上塗りをしないでください……!!」
「この人もうどっかの反トリニティの回し者でしょ。」
「失礼な、生まれてからずっとトリニティ生まれトリニティ育ちだ!」
「余計に質が悪い!!!」
失敬な!!……しかし、本当にいま外郭地区で何が起きてるのなら、近づくのは骨が折れそうだ。
「……んで、代行、どうだ?」
「今連絡を………………モモカ?……そう、外郭地区の話。まさか、今デモが……そう、わかった…………ヘリでの接近は……無理……そう、なら――モモカ?何、宅配?もも……」
すると、プツッと言う音と共にリンがかけていた無線が切れる……ヤバい、誰とどんな会話してたのか知らんが兎に角なんか可哀想な状況だ。
「……あー、リン……さん?」
“だ、大丈夫?”
「えぇ、えぇ、平気ですとも……大丈夫……大丈夫……です……ここには丁度各学園を代表する立派で暇そうな方々がいるので……私は心強いです。」
ブチギレ一歩手前だ……おまけにじっとこっちを見てきて……厄ネタ投げる気満々っぽいな……まぁでも……
「俺はお呼びじゃなさそうだから帰るね。」
「お呼びですが?」
「そんな……見ればわかる通り俺は立派なんかじゃない!!」
「知ってます。」
「暇なんかでもない!」
「そうですね、では貴方は唯の生臭神父としておきます。立派で暇そうな方々と、そこの生臭神父様、お願いします。」
「生臭神父だとぉ……!?」
この人俺の扱いわかってきやがった!?ふふっ、いいだろう。俺をここまでコケにしたのはあんたで720人目だ。
「おもしれぇじゃねぇか……」
「ハスミさん、学生の躾はきちんとしなければ……」
「本当……なんか、すみません……いつもはもう何割かまともなんですが……なんかはしゃいでいるようで……」
「ハスミさん、お疲れ様です。」
「いつもこんな人と関わっているのですね、トリニティの人間は……」
「なんか、同情するわ……」
なんかハスミへの慰めムードができてる……しかも皆冷ややかな目で俺をみてきやがって!!若干興奮するじゃないか!!
「軽蔑系のエロ本を勧めてくる奴らの気持ちが少しわかったぜ……!!」
“キヨト……君は、なんかすごい人だね?”
「そんなぁ、先生の体つきほどすごくはないですよ〜」
“あとでお説教ね?”
「誠にごめんなさい。」
こうして俺はじゃっかんなあなあ気味であれど、連邦生徒会の機能を取り戻すために、戦場である外郭地区へ向かうことになるのだった。
因みにキヨトはヘイロー持ちで顔はかなり良い方です。残念なイケメンってやつですね。むしろ顔が良くねぇとこんなムーブ許されるわけねぇだろ!?