ゲームキャラのメイドにTS転生した   作:おおは

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邂逅します、運命で

「おはようございます蓮様」

 

部屋から出た俺を出迎えたのはいつもの無表情メイド、ではなく妹である千尋の専属メイドだった。

 

黒のボブヘアーを綺麗に整え、メイド服を着こなしている。名前は赤坂さんというらしい。

 

「今日のご予定は特に入っておりません」

 

「あーそれもそうか。学校は当面休校だしな」

 

こんなご時世なのだから仕方がない。逆にやっている学校があれば教えてほしいくらいだ。

 

昨日千尋とメイド交換という聞こえが非常に豪華なことをしてから夜が明けた。

 

「さて、千尋のほうはどうなってるんだろうな」

 

「案外平和かもしれませんよ」

 

「そうか?千尋は結構破天荒だと思ってるんだが」

 

いつも行動力が凄い。今帰ってきている千尋だが、海外にいたのだ。即断即決がすぎるだろ。

 

「確かにそうですが、それは蓮様がいるからであって、普段は冷静沈着です」

 

「そうなのか……まぁ専属のメイドが言うんだから間違いないか」

 

妹の意外な一面を知れた。

 

そう思っていると、ちょうど廊下の先を歩く千尋の姿が見えた。

 

どうやら一人で歩いているらしく、後ろに例のメイドの姿はなかった。

 

「おはよう千尋」

 

声をかけると、妹はどこか疲れたように俺を見た。

 

「あ、おはよう兄さん……」

 

「どうした?元気ないな」

 

「いやさ……メイド交換したよね」

 

「ああ。ちょうど感想を聞こうと思っていたんだが」

 

「あのメイドどうなってんの?!」

 

唐突に叫ぶ千尋。俺は思わず肩をびくりとしてしまった。

 

「僕が思ったこと全部完璧にやってくるんだけど?!本を読もうと思ったら読もうと思っていた本を教えてないのに差し出されるわ飲み物でも飲もうかと思ったらすぐに水が出てくるわ、あのメイドヤバいよ!」

 

「あー……わからんでもない」

 

思えば俺にも思い当たる節が大量にある。例をあげれば枚挙に暇がないので控えておこう。

 

「本当にどこから採用したの?」

 

「いや、本当に俺も知らないんだ。親父が急に俺の専属にしたから」

 

「そうなんだ……確かに頼りたくなるというか、自然と信頼してしまいそうな気持ちになった。気を確かにしておかないと」

 

「それは良かったな。良ければもうしばらくの間交換するか?俺は今日は一人で外出する予定だから構わないぞ」

 

「え、一人で?どこに行くの?」

 

千尋が驚いたような表情をする。どこに驚く要素があった。ただ出かけると言っただけだぞ。

 

「冒険者組合の本部。すでにダンジョンに入っていたから忘れていたが、登録してなかったからな。親父から登録しておけって」

 

理由を聞いてみたところ、設立者である西園寺家の人間であるのだからダンジョンなどに入るのに無登録はよろしくないだろうということらしい。

 

「へぇ、そうなんだ……じゃあ僕も一緒に行こうかな」

 

「千尋もか?」

 

意外に思った。千尋は俺の中ではあまりそういうのに興味はないと思っていたから。

 

「うん。少し面白そうだし。それに兄さん一人だと心配」

 

「いや、一応俺は勇者の職業を持ってるから……それに徒歩で行けるくらいの距離だし」

 

遠慮する俺に対し、千尋はズイッと顔を寄せてきた。

 

少しだけ吐息がかかる。少し甘い匂い。

 

「念の為念の為。僕だって一応戦闘向きの職業だったし」

 

「え?そうなのか?どんな職業なんだ?」

 

「人形師。無機物を僕の意思で操ることができる。数に制限があるみたいだけど」

 

少しトリッキーな職業だ。だが応用がかなり利きそうな感じがするな。

 

「とにかく行くなら行こう」

 

俺の手を掴んで強引に行こうとする千尋。

 

「お、おい。メイドはどうするんだよ」

 

「兄さんのメイドなら僕のペットの世話をさせてるから問題ない。ほら、早く行こう」

 

「おい少し待って――――」

 

引き摺られる俺が最後に見たのは、こちらに向かって綺麗にお辞儀する赤坂さんの姿だった。

 

 

 

★     ★

 

 

 

「到着」

 

徒歩で30分ほど。やはりたまにはのんびりと歩いて向かうのも必要だろう。景色を眺めながら歩いた俺達はガラス張りの大きな建物の前に立っていた。

 

「ここが冒険者組合か」

 

「新興にしては大きいね」

 

感嘆する。冒険者組合は少しの間にかなりの普及をしてみせたようだ。

 

早速入ろうとすると、俺たちに近づいてくる人影があった。

 

「西園寺蓮様ですね。お待ちしておりました」

 

綺麗なブラック色のスーツを纏った初老の男が一礼する。

 

「私は磯野一二三。冒険者組合の取締をさせていただいております。今回は登録ということですね。源三様より伺っております」

 

「ああ。お願いします」

 

「ではこちらへ。折角ですし中をご案内しますね」

 

ガーっと開く自動ドアを抜けると、広いフロントが目いっぱいに飛び込んできた。

 

「おおー!広いな!」

 

「一応日本で最初の対ダンジョン組織ですからね。それなりに拡張しておかないといけませんから」

 

磯野さんの後ろをついていく俺と千尋。

 

ふとフロントにある受け付けのほうを見ると、何やら揉めている二人の姿があった。

 

「あの、すみませんが流石に登録は難しいんです……!」

 

静かなフロントではそれなりに目立っていた。

 

気になった俺は野次馬精神で磯野さんに問いかける。

 

「どうしたんでしょうか?」

 

「ああ、あれですか……たまにあることです。冒険者は自由なのですが、年齢は一定ラインを敷かせていただいたりをしていますので、登録できない方も一定いるんです。当たり前と言えば当たり前ですが」

 

「なるほど……」

 

改めて見ると、受付の女性が相手をしているのは俺よりも4つくらい年下くらいの少年だった。

 

だが不思議なことにボロボロの服を纏っていて、細々としている。

 

「気になるの?兄さん」

 

千尋が声をかけてくる。

 

「ああ……なんかちょっと、な」

 

なぜだか分からないが、あの少年が気になるのだ。妙に頭に引っかかる、そんな感じだ。

 

「ちょっと話しかけてくる」

 

俺は決意して、その少年へと話しかけた。

 

「なぁ君、どうしたんだ?」

 

少年の全てを吸い込まんとする真っ暗な瞳が俺を捉える。

 

「便利そうだから登録しようと思ったら、断られてしまったよ」

 

その声は少年とは思えないほど落ち着いていた。




次話はちゃんとメイド視点でいきまうす
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