夢を見ていた気がする。
何故か仕掛けられた罠で泥を浴び、シャワー室へと向かう。
するとそこには例のメイドがいて―――――――
「夢ではありませんよ?」
ハッとして前を向くと、辺りの真っ白な空間に一人、ウールの衣装に身を包んだいかにも女神な美女がいた。
デジャウしかない。
「あ、女神様」
「良かったですね?メイドの裸を見ることができて」
「ッそういうのはやめてください!」
俺がそう叫ぶと、女神はいたずらっ子のようにクスリと笑った。
「まぁ勇者いじ……冗談はこのくらいにしておきましょうか」
「今口滑りかけてただろ……」
「今回あなたに会いに来たのは重要な理由がありまして」
誤魔化したなこの女神、などと思いつつ俺は耳を傾ける。
「あなたにはなるべく早く勇者のダンジョンを攻略していただきたいのです」
「勇者のダンジョン……?」
ダンジョンに勇者用もクソもあるのか?
「はい。勇者にとっての勇者たるための最初の一歩にして最初の壁。勇者の装備を手に入れるために作られたダンジョンです」
「勇者の装備、ですか」
「はい。勇者にとって勇者の装備は自身のステータスを底上げし、これから獲得するスキルを使用するために極めて重要なものです。前から言っていた聖剣もそこにあります。」
そんなものが……俺は脳裏で某ゲームの勇者が付けているような装備を思い浮かべた。
というかダンジョンの話なしで聖剣探させようとしてたのかよ。
「ぜひともレベル上げと同時に進めてください」
「分かりましたが……その勇者ダンジョンというのはどちらに?」
俺が聞いた限り、ダンジョンは全国に百か所近くある。まさか全部入って確かめていけとでもいうのだろうか。
「見つけ方は簡単です。勇者のダンジョンはダンジョンの中で唯一、外部に魔力を漏らしません。それを参考にすればすぐにでも場所は特定できると思いますよ」
「なるほど……」
納得してみたはいいものの、結局魔力を判別できる方法がなければ無用の長物だ。
どうしたものかと思っていると、女神が再び口を開いた。
「勇者のダンジョンには勿論、試練が用意されています」
「……!」
まぁそりゃそうか。たたで装備をくれるなどというのは甘い幻想だ。
「試練は一つ、至って単純です」
女神が真剣な表情と共に、俺を見る。思わず喉が鳴る。
「あなたの記憶の中の、最も強い存在の複製体に勝つ。それが試練です」
「記憶の中の最も強い存在……」
俺は脳裏に思い当たる存在を思い浮かべる。
父親、魔術師みたいな姿をしたゴブリン。そして……
「まだあなたのレベルでは無理でしょうが、早く伝えておくのが良いと思ったので伝えました」
「それはどうしてですか?」
「偏に魔王の存在です。まさか私の予想を上回るレベルで成長するとは思いもしていませんでした」
魔王……まだ会ってないが、本当にどんなやつなのだろうか。
「なるべく早く、レベル上げをして、仲間達と共に勇者のダンジョンを挑むことをお勧めします。ということでそろそろ時間のようです」
女神がそう言うと同時、俺の視界がぐにゃりと歪みだす。
「不運なことに、あなたの記憶で再現された最強は本当の最強そのもの。ご武運を」
意識が落ちる寸前、女神はとても困ったような、そんな表情で呟いた。
「あ、目を覚まされましたか」
まず最初に視界に入ったのは見慣れた自室の天井。
横を向けると、見慣れた無表情のメイドが立っていた。
「お目覚めすぐの所申し訳ございませんが、西園寺源三様よりお呼び出しがございます」
首を動かし傍の時計を見ると、深夜ではなく、既に翌日の昼前だった。
「……分かった」
ベッドを降り、歩き出す。
それと同時にはっきりしてきた頭が昨日の意識が落ちる前のことを鮮明に思い出す。
思わず俺はメイドとは逆の方向を向いた。
「……方向はこちらですよ」
「ああ、わかってる」
さっさと廊下を歩き、父親の書斎へと辿り着く。
コンコン、とドアを叩くと、すぐに返事は来た。
「どうぞ」
ドアノブを回し開けると、広かった書斎の中央、そこに人よりも大きな重厚な機械が鎮座していた。
何だこれ……そう思いながら機械を避けると、父親が椅子に座って静かに待っていた。
「ああ、来たか、蓮」
「俺を呼んだと聞いたんだが……」
「ああ。理由は他でもない、この機械についてだ」
父親の視線が中央の機械へと向く。
「研究会社に依頼していた魔力によってダンジョンの難易度を判別する装置が完成したのだ」
「!もう完成したのか?!」
「ああ。これを使えば冒険者の安全性を飛躍的に上げることができる。結果より人のダンジョン参画も進み、魔力核の回収も増える」
父親がしてやったりとした表情で機械に触れる。
「原理はそこまで複雑ではない。魔力はそれ単体で独特の周波を出していることが分かったのだ。それを利用し、魔力濃度が高いところでは強い魔物が出ることを把握した上で完成させた。そしてそれをSランクからCランクまで分けたのだ」
凄いな……まだ具体的に何なのかもはっきりしていない魔力を使って難易度を分けるとか。
ん?待て。
魔力……魔力……そうか!
「父さん、魔力がゼロの結果になったダンジョンはなかったか?!」
「魔力がゼロの?少し待て」
父親がデスクのノートパソコンを開き、キーボードを叩く。
「む」
「どうだった?」
「一つだけあったぞ」
父親がノートパソコンの画面をこちらに見せる。
そこには、唯一大阪の或るダンジョンが魔力ゼロであることが表示されていた。
俺はそのダンジョンに気を取られていたせいで気づかなかった。
背後で何故知っているんだとばかりに驚く、メイドの姿を。
なぁんか蓮様視点がこのところ多い希ガス
そろそろ主人公視点増やしタイ
※最近昔の話を作者自身も記憶障害ってるので、細かい部分のツッコミはやめてクレメンス