攫われた私達はどこかの廃ビルへと連れてこられていた。
「ここなら騒いでも誰も来ねえな」
今すぐこの腕に撒かれている縄をぶち破ることは出来るが、あいにく私は今一人ではないのだ。
隣にはユッキーとカエデがいる、下手に暴れて人質に取られると困る。だから今は大人しくしている。
「犯罪ですよねコレ、男子達にあんな目に合わせておいて」
「人聞き悪ィな〜、修学旅行なんてお互い退屈だろ?楽しくやろうって心遣いじゃん」
「せっかく地元に帰ってきたのに台無しだ、最悪」
「わかってねーな、その台無し感が良いんじゃんか」
コイツらマジで殺すからな、2度と私の地元に足踏み入れられると思うなよ。
「そっちの彼女ならわかるだろ」
そう言って携帯に映された一枚の画像をユッキーに見せた。そこに写っていたのはどこか大人びてギャルみたいな見た目をしていた彼女が写っていた。
ほえ〜、こっちも美人さんだ。
「攫おうと計画してたら逃しちまったんだが、まさか椚ヶ丘の生徒とはね〜。でも俺にはわかるぜ、毛並みのいい奴らほどどこか台無しになりたがってんだ」
そう言って私達の方を見て彼は舌なめずりをするように意気揚々と語る。
「恥ずかしがる事ァねーよ、楽しいぜ台無しは、堕ち方なら俺等全部知ってる、この台無しの先生が何から何まで教えてやるよ」
そう言って、彼は電話がきて一度仲間達の元へと戻っていった。
「ユッキーもあんなギャルみたいな時期があったんだね」
「うちはね、父が厳しくてね...良い学歴、良い職業、良い肩書きばかり求めてきたの、そんな肩書生活から離れたくて、名門の制服も脱ぎたくて、知ってる人もいない場所で格好も変えて遊んでたの」
「...ユッキー」
「遊んだ結果得た肩書きが「エンドのE組」──もう、自分の居場所がわからないよ」
「俺らと仲間になりゃいーんだよ、俺等もよ肩書きなんか死ね!って主義でさ」
すると、用が済んだのかさっきの誘拐犯がやってきていた。
「エリートぶってる奴らを台無しにしてよ、なんてーか自然体に戻してやる...みたいな?」
そうして、罪を次々と暴露していく、痴漢のでっち上げや強姦、ペラペラ長ったらしく勝ち誇ったように語るコイツらに吐き気がした。
「俺らのことはぜひ、台無しの伝道師って呼んでくれよ...そして、お前らもその仲間入りだ」
ユッキーに手をかけようとしたのが見えた私は響くぐらいに笑った。
「フッフフフ!アハハハ!」
「何がおかしい」
「何が台無しだ、バカじゃねえの」
「んだとッ!?」
胸ぐらを掴み上げて、今にも殴ってきそうだった。
四葉ちゃんと二人は私を心配してくれている声が聞こえる、だがコイツ等は気に食わないしこのへらず口が止まりそうもない。
それに堕ち方なら私の方が先輩だ。
「ダッセェな、ほんとに」
「あァ!?」
「お前らみたいなドブに生きてる食中毒になりそうな腐った魚共が、私の友達を馬鹿にするなよ」
「テメェ!!」
その息苦しさが自分の首が絞められている理解する。
苦しいだけ、こんなものはあの時に比べたら屁でもない。
「何エリート気取りで見下してンだあァ!?お前もすぐに同じレベルまで堕としてやンよ!」
「やれるもんならやってみろ───オレが一人残らずぶっ潰してやるよ」
首を掴んでいた腕を足で挟み、そのまま床へと叩きつけた。鈍い音がしたし多分折れた。というか折るつもりでやったし当然だ。
「ギャ...ギャアアアア!!」
「あ〜クッソ、気持ちよく寝てりゃあーコレか」
「よ、四葉ちゃん?」
「悪いがここで大人しくとけ、安心しな、お前らには手出しなんざさせねぇ」
縄を引きちぎり立ち上がると他の奴らもゾロゾロと出てきた、十五人ぐらいか?
「おお、おお、ぎょーさんおるなぁ。久々にいい運動が出来そうだ、最近は鈍ってたからな」
「テメェ!!調子乗ってんじゃねェ──ぶっ!?!?」
顔面に蹴りを入れ、二人目を撃破。
「修学旅行と言ってもお勉強の一部だぜ?───テメェ等!今日はオレが京都の過ごし方の作法をおしえてやるよ」
「かかれーー!!」
「ようこそ、ぶぶ漬け京都本店へ!たーんまり学んでいきな!!」
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━━
━
「ほいっと、大丈夫?腕痛くない?」
「う、うん...私たちは大丈夫なんだけど...」
高校生達の痛がる声を後ろに、縛られていたユッキーとカエデの縄を切ると説明して欲しそうに私を見ていた。
「あー、説明?」
「うんうん!」
カエデは大きく首を縦に振る。そりゃそうだ、体育だってアレ以降ギリ合格みたいな成績だった、そんな奴が急に喧嘩始めてボコボコに打ちのめしたんだ気にならない訳がない。
「誰にも話さないって言うなら話すよ」
「約束する、ねっ!神崎さん!」
「う、うん」
じゃあ話そうかと私は口を開こうとするとオレが話しかけてきた。
(おい、話すのか?)
(まさか、適当に誤魔化すよ)
(そうだね、それが懸命だ...でもいいのかい?)
(もうちょっとだけ、みんなと過ごしたいから)
(わかったよ、オレ達はオマエの意見に尊重するさ)
本当の事なんて話せる訳がない、だから私は心の中で二人に謝りながら話し始めた。
「実はさっきの私が素なんだ」
「そうなの!?」
「二年前の暴力事件もこいつらみたいな奴らシバいたら停学くらったんだよね〜」
「そ、そうだったんだ」
「ほんとうに黙っててごめん!!バレたら幻滅されるかなって誰にも言えなくて猫被ってた」
何を言ってるんだろうか私は、どこまで嘘を塗り固めるのか。本当に嫌いになる、けれどもう私は止れない、今更嘘の一つがなんだ。
「...まだ悩んでる?」
「え?」
「肩書きとか居場所とか、そんなに重いなら私も一緒に背負うよ」
殺せんせーとかだったらもっといい事言えるんだろうけど、私は私なので自分の言葉をぶつけてみる。
「むかし、母さんに言われたんだ。苦しさも悲しさも共に乗り越えこるのが友達だって──ダメかな、私はユッキーも友達だと思ってるからさ」
そっと手を出すと彼女は「いいの?」と問い、私は「もちろん」と返すと手をとってくれた。
こうして自分はなんて醜い人間なんだと自己嫌悪に陥る。
そう、私の知っている四葉ならこうする。
「ほら、カエデも」
「う、うん」
「じゃあ、帰ろ。みんな心配してるし」
二人の立たせて、私たちはここから出ようとすると突如、突風が起きて目をつむった。
「み、みなさん!大丈夫...です、こ、これは?」
目を開くとそこには焦った表情と困惑が織り混ざった顔の殺せんせーが来ていた。
そりゃ、そうだ。助けに来たと思ったらもう既に不良どもは床を這いつくばっているんだから。
「いったい何が」
「こ、これは〜、その」
カエデがボロ出しそうだし、さてどうしたものか。どう誤魔化そうか...まあ、ここは生徒という立場を使いますかね。
「いや〜、それがさ───この高校生達がユッキーを取り合って殴り合いが始まっちゃってね〜、いやほら、ユッキーもカエデもカワイイじゃん?だからさ、俺が俺が!って感じで殴り合いが───ね?」
「えっ!?う、うん!」
ユッキーにも同調を求めると、彼女も小さく頷いた。
「ですが、これは...」
「えぇ〜、殺せんせーはー、生徒の言葉が信じられないの?おーいおいおい...ひどいよ〜」
こんな下手な泣き真似は鳥間先生やイリーナ先生なら効かない...だが、この先生には効くのだ。
「にゅっ、にゅや!?信じます!信じますから!!泣かないでください!!こんなとこ見られたら泣かせたみたいになるじゃありませんか!!」
思ったより数倍効いてるな...まあ、いいや。
カエデもユッキーもそんなに苦笑いしないでよ、私の人生がかかってるんだから!
「じゃあ、後始末お願いしまーす♪」
行こ、とお片付けを押し...お願いして二人の再び手を取りホコリが被っていた監禁場所を後にした。
「ふう〜、なんとか誤魔化せた⭐︎」
「無理矢理感凄かったけど...」
「いいの、ボクの学校生活が無駄になるのは避けたいし──それに、乙女は秘密を着飾って美しくなるのさ」
「めちゃくちゃキザだ!?」
キザとは失礼な。
その後、班のみんなと合流をすると、心配されたがなんとか誤魔化して宿泊している旅館へと帰ったのだった。
赤羽くんが「俺に処刑させてほしかった」と、言っていたが、すまない私が一人残らず片付けてしまったよ。
旅館に戻った私はシャワー浴びると疲れがどっときて即座に眠ってしまった、何か騒がしかったが人格を変えまくったが故の疲労感に襲われてそこに向ける元気はなかった。
そして、その夜みんなが寝静まった後私一人目を覚ます。
「朝の4時か、起きないよね?」
静かに持ってきた私服へと着替えて旅館を後にして、近くの墓場へと足を運び一つの墓石へとやってきて手を合わせた。
「みんな、私は元気で...いや、やれてないか...やっぱり寂しいよ...」
口では寂しい、なんて言いながら涙は出ない。
「時間だけが、進んでいくよ...ねぇ、私はなんで生きてるのかな?私も一緒に...死にたかったよ...」
置いていかれた、いつまでもあの時の事が鮮明に思い出す。
涙はとっくに枯れ果てた、今ここにいるのはただの生きる屍だ。
「いるんでしょ、殺せんせー」
「...バレてましたか」
「おはよう、殺せんせー」
「おはようございます...ヌルフフフ、いけませんねぇ、こんな時間から一人で出かけるなど、いくら地元でも先生怒りますよ?」
気配を感じ、適当に言ってみたが本当にいるとは。顔をバツにしながらも怒っているように感じない。一応ごめんなさいと、謝っておく。
「地元帰ってきたら、ここに一回こようと思ってたから...大目にみてよ」
「昨日の不良たちをあんな風にしたのは、あなたですね?」
「どったの、急に」
先生は、今は二人きりだと言う。
確かにそれもそうだ、今が聞くには絶好なタイミングって訳だ。
「なんで私だと思うの?ユッキーやカエデがやったって線だってあるじゃん」
「いや、不良達が「あの白髪女」っと言っていたので」
...誤魔化した意味ねぇな。それ言われたら逃げられんわ。
「ハァ〜、そうだよ、昨日の不良供をボコボコにしたのは私、どうする叱る?」
「叱りませんよ...ですが、先生から一つだけ聞いてもいいですか?」
「...内容による」
「今のあなたは四葉さんですか?」
..........。
「いつから知ってた?」
「鳥間先生との初めての授業の時です」
...これ以上、この先生を誤魔化すのは無理か。
いつかは気が付かれると思ったが、こんな早い段階でバレるとは。
「ならなんで今まで黙ってたの?私と話そうと思えばタイミングはいくらでもあったはずだ」
「君は、人と話している時相手を見ていないでしょう...今日だって、誰一人見ていませんでしたよね───笑顔の仮面をつけて、まるで誰かを演じているように見えました」
「...なーんだ、バレてるの」
「先生や、みなさんを信用できませんか?」
「そういう訳じゃない、怖いだけ」
「怖い?」
「みんなの優しさが私にとっては眩しいんだ、自分が自分でいられなくなりそうで...だから、自分の理想の鳴海四葉として生きるんだ」
口を開こうとした刹那、私の意識は消えた。
「────殺せんせー、
「...ええ」
彼はあたしの性格が変わったことに気がついているだろう。それを表情に出していないだけ。
「いつか、この子は自分を殺す...だから、その時は止めてほしいの...この子には幸せに生きてほしい。これは姉としての願いだから」
「キミはまさか...!」
あたしの願いはただ一つ。
「あたしの妹をお願いね...殺せんせー先生、この子を正しい道に導いて...頼んだよ」
これは『▫️▫️四葉』としての願いだ。