定住の会の依頼を承諾して数日後、車に揺られること三時間、俺たちは例の跡地に来ていた。
「ここが依頼した場所になります」
小高い丘の上にある赤いレンガ造りのいかにもな屋敷。
周りには森しかなく、人の住んでいる気配はない。
「バイオハザードにでてきそうだな」
肌にピリピリと電気が走る。
異様な感覚だ。
「私どもはこちらで待機しておりますので、合体装置が見つかりましたらご連絡ください」
「ああ、わかったよ」
ここまで送迎してくれた女性に礼を言って門をあけた。
中は変色したカーペットに、埃がたまって色が鈍くなった手すりがあるだけの典型的な廃墟だった。
ただ、あの噂を聞いたあとではとても恐ろしく感じてしまう。
「とりあえず、探索するか」
合体装置はかなりの大きさがある、置くとしたらかなり大きめの部屋にあるはずだ。
そういう場所を探し出し、しらみつぶしに見ていけばこの仕事も終わりだ。
「うーん、とくになにもないな」
201号室、202号室と順繰りに回っていき部屋を一つずつ確認していく。
ビルドさんの話によると着の身着のまま逃げ出したらしいから部屋に地図ぽいものを置いていったと思ったのだが。
「なさそうだな」
カビの臭いで鼻がやられそうになりながら、灯りのついた廊下を通る。
……ちょっとまて、通電してないはずなのになんで灯りが付いているんだ?
「チぃ!」
即座にその場を飛びのいた。
その直後、さっきまで立っていた場所にシャンデリアが叩きつけられる。
「なんでバレたホー」
【妖精】ジャックランタン LV23 が現れた
「こい、リリ」
「はーい」
即座にCOMPを起動して、リリを呼び出す。
「なめるなホー」
バックアタックの衝撃が俺から
《アギラオ》*1
ランタンから一瞬光が溢れ、うねる炎がこちらに向かってくる。
「無駄だよ」
リリが手をひと払いすると炎はたちまち消えた。
LV差があるためダメージはほとんどない。
「眠らせろ」
自慢の炎が防がれたせいかジャックランタンは呆然とする。
そして、プレスがこちらに回る。
《ドルミナー》*2
リリが放った魔法を回避できず直撃。
ジャックランタンは
「グー、グーダホー」
相手のターンだが睡眠状態のため行動不能。
すぐさまこちらにターンが回る。
《永眠の誘い》*3
避けられるはずもなく。
ジャックランタンはすぐさまMAGの粒子に分解され散っていった。
「ありがとな」
「全然良いよ。また呼んでね」
リリをCOMPに入れ、探索を開始する。
屋敷を見回り、部屋を確認した。
そうしていく内に固く施錠された大扉を発見した。
「ここか」
ほかに確認していない部屋はない。
地下室など見つかっていない部屋がない限り、ここが俺の目的地だ。
「あかないか」
扉を何度か叩いてみたり、ノブをがちゃがやとやってみたりするががびくともしない。
鍵開けなどを試してみたが、特殊な作りすぎて持ってきた道具が役に立たなかった。
仕方がないのでCOMPを操作し、二人目の仲間を呼び出した。
「ミミ、来てくれ」
「お、仕事か」
出てきた元気っ娘な見た目をしたサキュバス、俺の2人目の仲間ミミだ。
人懐っこそうな彼女だが、その本性は原義的な悪魔そのもの。
その苛烈さをもってチームのエースアタッカーに就任している。
「この扉壊せるか?」
扉を触ったり、いろいろと調べてみている。
だが、結果は芳しくなく。顔を横に振った。
「うーん、並みの魔法だとびくともしないぞこれ」
「おまえでもか?」
「コンセントレイト*4して、ブフダイン*5撃てば吹っ飛ばせそうだけど、中も無事じゃすまないぞ」
「それは、なしだな」
中には入れても合体装置が壊れたら意味がないからな。
しかたない、鍵を探すか。
「ありがとう」
「今度は戦闘で呼んでくれよな」
そう言ってCOMPの中に収納されていく。
そして、3人目の仲魔を呼び出す。
「来てくれ、ノノ」
「は~い♡」
今度はぱっつんの髪型をした3人目の仲魔ノノがでてきた。
種族は前の2人と同じサキュバスだ。
「ご用事は戦闘、悪魔会話、それともわ・た・し♡」
「すまないね、会話で頼むよ」
「この扉の鍵が欲しいんだ」
「……は~い、わかりました」
ノノは一番サキュバスらしい子だ。
仲魔内で最も話術にたけ、男を誑かすサキュバスの特性を色濃く映している。
今言ったセリフも揶揄いの類いだろうが惹かれることがある。
心を強く持ち、屋敷の中で探索を始めた。
しばらくして、一匹のジャックフロストを見つけた。
「レベルは20くらいか」
ノノは氷結無効の耐性をもっている。
仮にジャックフロストが氷結以外の技を持っていてもレベルは半分以下、余裕で耐えられるな。
よし、あいつにしよう。
「すまない、ジャックフロスト君少し時間いいかな?」
「ヒホ!あんた誰だホー!」
後ろから話かけるとジャックフロストは驚いたのか転がるように後ずさる。
「そう怖がらないでくれ、君と少し話がしたいんだ。」
「おまえと話すことなんてないホー」
反応が渋いな。
彼以上の交渉相手は見つけにくいのに、このままでは変えなくてはいけない。
「まぁまぁ、そうおっしゃらずに♡お話を聴いてくれませんか?」
「ヒホ!お姉さんだれだホ」
「彼の仲魔をしているノノと申します、かっこいい雪だるまさん」
「か、かっこいい!オイラ、かっこいいホー!」
「ええ、とても」
さっきとは打って変わってヒーホーの態度は軟化したように見える。
やはり、わがまま*6を持っているノノをだして正解だったな。
「それでかっこいいあなたにお願いなんですけど♡彼のお願いを聴いてあげてくれませんか?」
「もちろんだホ、オイラはかっこいい悪魔だから聴いてやるホ」
腕を組み、胸をそる。顔は心なしか自信満々だ。
チョロすぎて不安になってくるな。
「聞いてくれてありがとう、かっこいいジャックフロスト」
「実は、あっちにある大扉の鍵を探してるんだ」
「あっちの鍵?」
「それなら知ってるホー」
そう言って、ジャックフロストは雪だるまのような体の中に手を突っ込み一本の鍵をだした。
あの扉と同じような金属の大きな鍵だ。
「それがあそこの扉の鍵か」
「そうだホー」
「譲ってはくれないか、必要なんだ」
「え~、どうしよっかなホー」
ジャックフロストは鍵をお手玉のように扱っている。
殺して奪ってもいいが、悪魔に無茶苦茶すると悪評が立って交渉ができなくなるかもしれない。
おとなしく会話を続けよう。
「こちらは宝石が出せる、それと交換しないか」
「えー、宝石って美味しくないホー」
感触はいまいちのようだ。
たぶん時価よりも自分の感性に近いものが欲しいのだろう。
「なら、一万円をだそう」
「それが何の役に立つホー」
「──好きなだけ、アイスが買えるぞ」
さっきの宝石は美味しくないという理由で拒否された。
つまり、こいつが大事なのは美味しいものだ。
それを基準に攻めていけば交換の目が見えてくるはずだ。
「ほ、ほんとかホー」
「ああ、100個くらい買えるぞ」
「交換、交換するホー」
一万円を渡すと、ジャックフロストは小躍りを始めた。
「ヒーホー!弱くなった時はどうしようと思ったけど、いいこともあるホー」
そう言って鍵を置き去りにしてジャックフロストは退散していった。
「お見事です♡」
「どうってことないさ」
残るは合体装置だけだ。