大魔王マーラを倒し、奇跡的に無傷な合体装置を回収して数日がたった。
俺は依頼主であるビルドさんに招かれ、とある廃教会に訪れていた。
来た理由は合体装置の確認と依頼の詳しい報告だ。
「急に呼び出してすまなかったね」
「いいえ構いません、こちらも合体装置が起動するか確認しておきたいですから」
目の前では運搬のために解体した合体装置が組み直されている。
彼らの世界では力がある土地は教会が使っていることが主流だったため、力がある土地にはセットだった。
そこでエクソシストなどが撤退したあとは、だいたい教会をい抜き物件として利用し悪魔の館を運用していたらしい。
名前も悪魔の館ではなく偽神教会と言われている。
神に祈る場所で悪魔の装置を作るとは信仰心はなくとも少々の罪悪感を感じてしまうな。
「そうか、それなら何より」
「では、任務の仔細を聞かせてくれ」
「了解しました」
とりあえず、ざっくりと屋敷に訪れてからマーラを倒すまでの話をした。
一般人の俺がマーラを倒すなんて話を盛りすぎだと思われてもしかたないが、ビルドさんは真面目に俺の話に耳を傾けてくれた。
そして、こう言っては悪いが、テレビを見てドキドキしたよう子供のように目を輝かせてくれた。
「なるほど、見込んだ通り君は素晴らしいデビルサマナーだ」
「偶然うまくいっただけです」
「ならばなおのこと素晴らしい!!」
正面からこう褒められるのはなんだかむずがゆいな。
そんな俺の様子を見たのか、表情がすこしだけ申し訳なさそうなものになる。
「ああ、すまない興奮しすぎたよ」
「いえ、褒められて悪い気はしませんから」
「ありがとう、では任務の仔細について聞いてもいいかな」
「もちろんです」
仕事内容についてまとめた報告書をめくりながら、気になる内容を指さしていく。
「まずどうしてあの場所にマーラがいたのかわかるかい?」
「土地との縁があるようには思えなかったのだが」
あの場所には有名な寺や歴史的遺産は発掘されていない。また、大きな出来事の中心地になったわけでもない。
できそこないとはいえ大魔王マーラがでてくるにはいささか格が落ちている場所だ。
普通なら大魔王の痕跡すら見つからないだろう。
普通ならな。
「これをどうぞ」
「これは?」
「合体装置を運び出す際に部屋に落ちてた日記帳です」
これは合体装置を運びだすときの護衛兼確認係として行った日合体装置のある部屋で偶然見つけたものだ。
中身は秘密結社の首領の日記帳だ。
「その日記によるとあのマーラは組織が召喚したもののようです」
「組織がか、しかし彼らの行動を見ているとそうは思えないが」
一理ある、インフレを乗り切れず籠城戦を強いられ、最後にはほうほうの体で逃げ出す。どこをとってもマーラを召喚する格があるようには見えない。
「順を追って説明しましょう」
「まず彼らは外のインフレについていけず、引きこもっていたところに襲撃をかけられた」
この襲撃の実行犯は、予想通りこの組織に恨みがあるものたちだったようだ。
日記の内容を見る限り、その力に溺れて多数の人間に被害を及ぼしていたみたいだし自業自得ではある。
「彼らはそれに対応できず、着実に数を削られていった」
「なんとか籠城まではできたがこのままでは死ぬと確信した」
「そこで一発逆転の方法に出ることにした」
「なるほど、それでマーラを召喚したのか」
「ご名答」
追い詰められた彼らは合体装置と召喚した悪魔たちの知恵を駆使して、自分たちの窮地を脱することができる悪魔を呼ぼうとした。
「方法はおそらく悪魔合体の事故を使った高位悪魔の召喚*1」
「それでマーラを呼び出したのでしょう」
「ただし、ここからが問題だった」
彼らは運良く高位の悪魔を呼べた。そして、運の悪いことに彼らには実力がなかった。
「おそらく、呼び出されたマーラは彼らの支配下には収まらなかったのでしょう」
「それどころか、逆に屋敷を侵食していった」
「異界化したのか」
異界化するとその場所は悪魔のテリトリーとなる。しかも、その主はマーラだ。
そんな場所で籠城戦するよりボロボロでも外に出た方がまだ生き残る目がある、だからみなボロボロの装備で外に出てきたのだ。
「しかし、不思議だ」
「そんな盤石な根城を築いて顕現したのになぜマーラは外へ出てこなかったのだろ」
「おそらく、呼び出されたはいいものの力を維持するエネルギーがなかったのでしょう」
「その証拠にジャックフロストがそのような発言をしていました」
ジャックフロストは弱くなった時はどうなることかと思ったホーと言っていた。
つまり彼は、もともとジャックフロストではなくもっと別の悪魔だっだ。それが、主の力の減少で弱くなっていったんだ。
まあ、エネルギーとなる人もいなければ力の強い土地でもないんだ、存在できるだけ奇跡的なのだろう。
「ハラショー、素晴らしい推理だ」
どこからか拍手が送られる。それをしたのは定住の会唯一の悪魔合体士、名前をヴァギト・チューホフさんだ。
年齢は20代後半くらいに見え、顔は北欧圏ぽいつくり、身長180CMほどで研究者に似合わない服の上からわかる程度のマッチョだ。
「ヴァキト、調整は終わったのか?」
「ああ、設定は全て完了した。今は試運転を部下に頼んできた」
彼はビルドさんと話しながらも、こちらのことをじっと見つめている。
その姿には、ボ卿たちをを思わせる好奇心がありありと見て取れる。
「申し訳ないユウキさん、歓談中に割り込む無礼を許してくれ」
「いいえ、ちょうど話もひと段落ついたところですし構いませんよ」
「聞きたいことがあるのでしょう」
「ああ!あなたに一つ聞かせてほしい」
「あなたはどうやってマーラを討ち取ったのだ」
その顔はまるでマジックショーの種を知りたがる子供のようだった。
憧憬と感動におされ、真正面から手の内を探るという禁忌を犯す姿は危うさを感じさせる。
「あなたのパーティー悪魔を作業中小耳に挟んだが、あなたの悪魔たちは強い。しかし、とてもマーラを打ち倒せる面子ではなかった。それなのに君には勝利した」
「私はその秘密が知りたい」
「それは、会の一員だからですか?」
「違う、私の夢の為さ」
「なるほど、まぁいいですよ」
さきほどビルドさんが見せた顔以上のわくわくとした顔を見せてくる。
やはり別の世界の研究者でも探求心はかわらないのか。
そんな思いを持ちながら、彼らに種明かしすることにした。
隠すほどのことじゃないし、ビルドさんにはもうバレてそうだしな。
「使ったのはこれです」
彼らの前に一つの瓶を出す。
その中には液体ではなく霧のようなものが閉じ込められている。
「これは耐物ミスト*2か」
「ええ、これがあったおかげでミミがガードして耐えられました」
「なるほど、それは売った甲斐があるな」
そう、このアイテムは定住の会から購入したアイテムである。ここではない、世界樹という場所で探検するときに使うものらしい。
最初は悪魔に効果があるか不安だったが使ってみればとても良いものだ。
これがなければミミが死にバフが切れていた、そうすればバフの付け直しにターン数をもってかれ敗北していただろう。
「素晴らしい!」
「やはり強い悪魔は強い悪魔使いがいてこそだ!」
ヴァキトさんも興奮しっぱなしだ。
さっきより声が高いな、なにかハマるものがあったのだろうか。
そんなことを考えた直後、耳に機械が煙を吐く音が入ってきた。
「どうやら、できたようだ」
中央に鎮座した悪魔合体装置は人間の血管のようにケーブルから光を脈動させる。
神や悪魔を混ぜ合わせ、使役せんとする不遜で傲慢な人間のため装置が稼働を始めた。
「さきほど挨拶をしたが、改めてこう言おう!!」
「プリビィエト ユウキ!!」
「ようこそ、偽神教会へ!」