【完結】男女比がイカれた世界で秘密結社のボスをしている   作:かませ犬S

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第二話 未来視

「ボスぅぅぅぅ!」

 

 何をトチ狂ったのか梓さんが私目掛けて飛び込んできました。

 

 これが初見であれば呆気に取られて彼女に押し倒されていたでしょう。そうならなかったのは、ほんの少し前に梓さんが飛び込んでくる()()()()()()から。

 

 血走った目で飛び込んできた梓さんを冷静にいなし、首元に電撃を浴びせて気絶させます。白目を剥いて倒れる彼女を見て、思わずため息を吐いたのは致し方ありません。

 

「私は貴女の事を誰よりも信頼していたのですよ、これでも」

 

 昔の彼女は今よりもずっとずっと仕事に忠実で、己の欲望に左右されるような人ではありませんでした。そんな梓さんがこうなってしまう世界が怖い。

 

 貞操観念が逆転するだけならこうはならなかったでしょうね。男女比が大きく偏った事で、男性に対してある種の憧れや幻想を抱く者が増えたと言います。

 

 生まれた時から父親がいない家庭は当たり前。母親一人、あるいは二人に育てられるのが常です。男性が少ないから仕方ありませんね。両親が揃っている家庭は極少数とされております。

 

 世界的に問題となっている圧倒的男性不足と、それに伴う少子化の懸念。その対策として成人男性に精子の提供が義務化され、人工授精という形で子供を増やす政策をとったようです。

 

 つまるところ父親を知らない子供が増える訳です。成人男性である私にもその義務はあるようで、自宅に書類とキットが届いてましたね。精子を提供すればお金が貰えるようですが、拒否すれば最悪逮捕もありえると。

 

 情報を仕入れていると、精子の提供を断った男性が警察に捕まり、女性警官複数人に犯されたなんて話もありました。いやはや、本当にふざけた世の中です。

 

 こんな歪んだ世界だからこそ、女性に対して苦手意識を持つ男性が増えた訳です。悪循環ですねー。それ故、多くの女性は男性と交際する以前に、会話も出来ないまま一生を終えるとか。

 

 梓さんから話を聞いたところ、小中高の学校と冒険者の資格を取る為の専門学校にも少ないですが、男性はいたみたいです。ですが、一言も話す事は出来なかったみたいですね。

 

 話しかけても無視は当たり前、近寄るだけで舌打ちされたりと……明確な拒絶があったとか。私は世界が変わってからまだ男性と交流した覚えがないので、人伝に聞く男性の性格が悪さにびっくりします。

 

 男性が性被害にあった、なんてニュースをテレビをつければ連日のように見かけますので、男性が悪いと一言に責める事もできませんがね。

 

 そんな背景があるからこそ、女性に対して柔らかく、そして何より優しく接してくれるボスに心から惹かれたのだとか。

 

 私の中の記憶と擦り合わせを行い、梓さんとの出会いは変わっていませんでしたが好感度がどうやら限界突破しているようでした。

 

 世界が変わる前───梓さんが男性の時も好感度は高かった覚えはありますが、同性であったが故に友情から先へ進む事はなかった。世界が歪み、梓さんの性別が女性へとなった事で関係値が変わってしまった訳です。

 

「……うぅ……」

 

 気絶して床に転がっている梓さんをソファーまで運んで、寝かしておきます。

 

 今回の事は言いたくはありませんが、発言かあるいは仕草で梓さんを煽った結果でしょうね。理性というストッパーで欲を抑えていた梓さんの前で、私は無意識に餌を差し出すような事をしてしまった。

 

 ゴミみたいな発言ですが、『痴漢されるような格好をしている方が悪い』とも取れます。全面的に悪いのは痴漢や襲う方ですけどね!

 

 それにしても、一つ選択を誤っていれば私が視た未来のようになっていましたね。

 

 その時の光景では、私を押し倒し身につけていたスーツを力づくで剥ぎ取った梓さんが、欲望のままに私の体を貪りました。

 

 血走った目と鼻息荒く興奮する梓さんの姿は、ありえたかもしれない未来とはいえ見たくはありませんでした。

 

「また、この指輪に助けられましたね」

 

 右手の人差し指にはめた装飾のないプラチナの指輪に視線を落とす。この指輪はダンジョンでとあるモンスターを倒した時に入手した物です。

 

 ゲーム風に言うならボスを倒したご褒美のドロップアイテムと言ったところでしょうね。この指輪をはめる事で、少し先の未来を視る事が可能です。

 

 私はこの指輪の力を借りて、飛び込んでくる梓さんから身を守る事が出来ました。世界が変わった時に私だけ対処出来たのもこの指輪のお陰ですね。

 

 この指輪をはめていれば私は無敵!と豪語したいですが、そんな上手い話はないですよね。あくまでも私の意思で未来が視える訳ではなく、指輪が私に未来を視せる時は決まって身に危険が及ぶ時。

 

 今回のようなケースならば対処は可能だったりしますが、ダンジョンのモンスターが相手だったりすると未来を視えても身体能力的に対処が出来ない……なんて事も。

 

 そんな未来が視えるならダンジョンに入る前に視せて欲しいと思ったものですが、それでも有用性があるのは事実。この指輪に助けられた事の方が多いですし、それくらいは大目に見ましょう。

 

 この指輪のデメリットを挙げるとすれば、人差し指から抜く事が出来ない点でしょうか。指にはめたその時から固定したように動かなくなりました。ある意味で盗まれなくて良いです。

 

「おや?」

 

 胸ポケットから振動を感じ、スマホを取り出すと着信が来ておりました。

 

「レヴィ様ですか」

 

 スマホの画面に映るのは着信者の名前に気分が沈みます。それでも大切なお客様であるので無下に出来ないと、応答ボタンにタッチしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 着信者─── 『金の豚』。

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