ここは貨物船などに貨物を積み下ろしする港湾施設。ここのコンテナの陰で、マフィア的な犯罪組織である『黒ずくめの組織』、その一員である宮野明美は、組織の殺し屋であるコードネームをジンと言う男、そしてその舎弟であるウォッカという男と対峙していた。
「さあ、金を渡してもらおうか……」
「ここには無いわ……。あるところに預けてあるの」
「ナニィ!?」
「その前に妹よ!! 約束したはずよ! この仕事が終わったら、わたしと妹を組織から抜けさせてくれるって」
「てめぇ」
凄むウォッカだったが、銀の長髪の男ジンは冷笑を浮かべる。
「そいつはできねー相談だ。奴は組織の中でも有数の頭脳の持ち主……」
「な!」
「奴はおまえと違って、組織に必要な人間なんだよ。最後のチャンスだ、金のありかを言え」
「あまいわね。わたしを殺せば永遠にわからなくなるわよ」
「あまいのはお前の方だ。だいたいの検討はついている。それに言っただろ? 最後のチャンスだ、と」
ジンは左手に構えた自動拳銃を、明美に向けた。明美は唇を噛む。そのときである。
『待て。その引き金は、このエイトマン・ネクストが引かせないぞ』
「!? 何モンだ!!」
ジンとウォッカ、そして明美は声のした方を見上げる。そこには貨物パレットを船に積み下ろしするための巨大なクレーンがあり、その天高くそびえ立った頂点に、1人の黒いメカニックな人影があった。ウォッカが叫ぶ。
「あっ! エイトマン・ネクスト!」
「ち。きさまが近頃ウワサになってる、エイトマン・ネクストか。実力もそこそこ兼ね備えたヒーロー気取り野郎って話だが……。だが、そんなクレーンのてっぺん、そんな離れた場所で、どうやって引き金を引かせない気だ?」
『こうやってさ』
「「「!?」」」
ジン、ウォッカ、そして明美もまた驚愕した。今までたしかにクレーンの頂点に立っていたエイトマン・ネクストが、3人が気付きもしないうちにジンの背後やや左側に立っていたのだ。いや、一瞬すさまじいまでの風が吹いた、だろうか。たったそれだけの気配で、エイトマン・ネクストは3人に気取られもせずにエイトマン・ネクストは瞬間的に移動していたのだ。
そしてジンは目を見張る。すっ、と無拍子で伸ばされたエイトマン・ネクストの右手がジンの拳銃の、その銃身を握ったのだ。そしてジンが何かするヒマも無い。反射的に引き金を引くのを思いとどまり手を放したのは、ジンの勘の良さだろうか。
クシャッ。
自動拳銃の銃身は、軽い音を立てて握り潰された。その部品が、地面にばらばらになって散らばる。もしジンが拳銃に固執し、引き金を引いていたら暴発し、ジンの左手はズタズタになっていたはずだ。無論銃身を握ったエイトマン・ネクストの右手もそうなっていたはずではあるのだが、しかしその場の3人にはそうはならない、との確信があった。
「退くぞ」
「あ、兄貴!?」
「今回の件は失敗、そう報告する。宮野明美の始末は、後回しだ」
『わたしがお前たちを逃がすとでも?』
「俺は逆手に手りゅう弾を持ってる。ハンドルに刺さってるピンは今抜いた。ハンドルから手を放せば、ハンドルが本体から外れて爆発する」
エイトマン・ネクストは動揺した様子すら見せないが、ジンはそのまま言葉を続けた。
『……』
「てめえは爆発にも耐えられるのかも知れねえがよ、ヒーローモドキ。せっかく助けたその女は吹っ飛ぶぜ?」
「!!」
『……いいだろう。逃げたまえ』
「ふ」
「あ、兄貴……」
ジンとウォッカは
ゴガアアアァァァン!!
……爆発。だがそこにエイトマン・ネクストと明美の姿は無い。彼らは、先ほどのクレーンのてっぺんに一瞬で移動していたのだ。
「な、何なの。目が、目が回る」
『……爆発から助け出すために、ちょっと小技を使ったからな。目が回るのは仕方がないさ。それよりも……。本当ならこのまま君を、警察に引き渡すのが筋だ。しかしわたしがこれまで軽くサワリだけ調べただけでも、あの『黒ずくめの組織』と仮称されている奴らの組織力は尋常じゃない。留置場や刑務所に収監されたとしても、君は確実に処分される』
「……」
エイトマン・ネクストは
『やむを得ない。君はわたしが
「えっ……」
『仕方ないからな。結果的にだが、君にわたしの秘密をいくつか明かさざるを得ないが……。秘密が護れないと言うならば、わたしは君を見捨てて警察に引き渡す。……わたしは東八郎さんや金田正太郎さんと違って、純粋な正義ではない。無条件な正義には、なれない。つらい事だが』
「……わかったわ。贅沢は言わない。生きて居られるだけ、御の字よ。あと、わたしたちが奪った10億円だけど……」
肩を
『今頃は、ホテルのフロントから警察が押収している頃合いだ。色々調べて通報しておいたからな。もっともそれで、ここへの到着が遅れた。本当なら、隠れ潜んで一瞬で奴らを……。場合によっては君も含めて無力化しているつもりだったのだが。人目に付かない高所を跳躍に跳躍を重ねて移動したが』
「あきれた。クレーンのてっぺんに出現したのは、カッコつけじゃなかったの」
と、そこへ警官を引き連れた小学生ぐらいの子供と高校生ぐらいの少女が、ばたばたと走ってやって来る。そして手りゅう弾の爆発跡を見て、大騒ぎしていた。
『あれは……』
「?」
『……』
エイトマン・ネクストの唇が、声を出さずに小さく動く。宮野明美にもしも読唇術の心得があったなら、『えどがわ・こなん』と
*
江戸川コナン……それは高校生探偵工藤新一の世を忍ぶ仮の姿にして、『黒ずくめの組織』の殺し屋ジンにより毒薬APTX4869を無理矢理に服用させられた結果、その副作用により身体が6~7歳程度に縮んでしまったが故の存在である。彼はやむなく知人である発明家、阿笠博士の助けを借りて偽の身元で小学生として帝丹小学校へ通っていたのだが……。
「コナン君! コナン君! 聞きましたか!?」
「どうしたんだよ光彦。元太や歩美ちゃんも」
「おめえに続いて、また転校生だってよ!」
「なんか、外人っぽい男の子だって話だけど! ハーフかもって!」
「ふうん」
「なんだよぉ! 気にならねえのかよ」
「あんまりな。外人だのハーフだのって、今時そうそう珍しかねえだろ」
と言いつつも、コナンが転校生に興味を持てない理由は別にあった。数日前に起きた事件が、完全に消化不良に終わった事が原因だ。10億円強奪犯の広田雅美(偽名)という女の行方は、いまだに分らない。しかし10億円については、ホテルのフロントに預けられていたのを
(くっそ、すっきりしねえ……)
そこへ担任の女教師が、おそらくその転校生と思われる少年を連れて、教室へ入室して来る。
「はいはい、みんなー! 静かにしてねー! 今日は新しいお友達を紹介します。日本、アメリカ、イギリス、フランスのクォーターだそうで、この黄緑色の髪の毛も染めてるんじゃなくて地毛だそうよ。自己紹介してくれるかな?」
「はい先生。
「「「「「「おおー! 日本語喋ってる!!」」」」」」
「いや、あたりまえだろ。名前も日本名じゃねえか」
「ええと、実の両親とは離別してて、今のおとうさんは義父です。なので、お
クラスメートたちは、東と言う少年に色々と質問を投げかけている。彼は必死になってそれを
「ふう……」
「うふふ、ご苦労さま!」
「ああ、えっと……。いちおうクラス名簿は前もって見せてもらってたから判るけど、吉田さん、だっけ?」
「わあ、もう知ってるんだ!」
「よお! 俺は、俺!」
「僕は、僕は!?」
「小嶋君、だった、かなアハハ。そっちは円谷君だよね。そして……」
「そして、江戸川コナン、君。よろしく」
「え、あ。あ、ああよろしく」
コナンは一瞬、意味深な響きを感じた。しかし東少年……正太郎は、もう別の方を向いて他のクラスメートと会話をしている。
(……気のせい、か?)
コナンは思い直して、一時間目の授業の教科書とノートを机の中から引っ張り出した。まあ中身が高校生探偵の彼にとっては、ノートも教科書もいらないぐらいなのだが。
*
(戸籍情報とかの電子化が、この世界、この時代だと、未だ完全じゃないどころか全然進んでない。おかげで調査に手間取ったが。江戸川コナン……。彼の戸籍、住民票、医療保険、その他諸々の個人情報……。怪しい所だらけだ。何者だ?)
「……?
「あ、いや。その眼鏡、度が入ってないんじゃないかな? なんかレンズ通して君の顔が、歪んで見えないからさ。オシャレの、なんだっけ、ダテメガネ?」
「うぇ!? あ、ああそうそう! そんな感じ!」
「そっか!」
正太郎は、平然とした様子を崩さずに、他のクラスメートと話し始めた。
とりあえず体調とか含めた調子、全部完璧に思い切り崩してしまったので、調子取り戻すためにとりあえず新作。というか、なんかわたしが新作始める時っていつもいつも調子崩して再起動するためじゃないのかな。
ちなみに東正太郎少年の外観は、6~7歳に化けた超人ロ○クです。でもロッ○本人じゃ絶対無いです。というか設定だけ持って来た、オリキャラですので。