藩登龍(リュウ・ハント)探偵事務所   作:雑草弁士

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File010:魔法探偵コナン

 時は少しだけ以前に戻る。コナンと灰原は阿笠博士と共に、不手際で『黒ずくめの組織』の外部へ流出したAPTX(アポトキシン)4869の組成データを回収すべく、大学教授である広田正巳の家へ向かう。しかしながら広田教授はトリックを使われて殺され、あやうく事故死として処理されるところだった。

 結局はコナンたちの活躍で、トリックは暴かれて犯人は逮捕された。その際に阿笠博士を探偵役として推理ショーみたいなものを行わなければならなかったため、後にコナンはその事を内々で正太郎に詫びている。正太郎はコナンに、あまり気にするなと言った。実際事故と判断されて警察が撤収し掛けていたため、緊急避難的な事でもあったし。

 実際のところ、コナンが毛利探偵を隠れ蓑にして推理ショー的な事を行う回数は激減した。可能な限り、その場にいる警官などにヒントあるいは推理結果を内々でメモの形で渡すなどして事件解決を図っている。まあ「毛利のおじさんから、お手紙」とか言って信じてもらうのはそのままだし、毛利探偵が余計な事を言いそうなとき腕時計型麻酔銃で眠らせるのは、そうなのだが。

 ただその事で毛利探偵の名声は落ちるどころか逆に静々(しずしず)とではあるが上昇しつつある。今まで彼をカッコつけだと嫌っていた人たちから、少しは謙虚さを身につけた様だとの評価をされるようになったのだ。

 何はともあれ、事件を解決して『組織』から流出したフロッピーディスクを回収したコナンたちであったが……。その後色々と多忙が続き、今日(こんにち)に至るまでフロッピーディスクの中身を確認できていなかった。

 

「……」

「……どうしたの江戸川君」

「エドガー、何悩んでるんだ?」

「あ、いや……」

 

 そして今日、正太郎を含めたコナン、灰原の合計3人は、パソコンの前で、唸っていた。問われたコナンは答える。

 

「あ、いやな……。なんで俺、『黒ずくめの組織』に関する、研究に関わった人間のデータまで入ってる、APTX(アポトキシン)4869のデータ入ったフロッピーが手に入ったっていうのに……。なんで忙しさにかまけて、今の今まで内容チェックしようとしなかったんだろってな」

「!?」

「あら、流石の少年探偵江戸川コナン君にして、高校生探偵工藤新一君も、『組織』の強大さに臆したかしら?」

「オメ……」

 

 次の瞬間、正太郎はフロッピーディスクをドライブのスロットに投入しようとしていた灰原の手を掴み、フロッピーを取り上げる。灰原は驚き、目を丸くした。

 

「ちょ、何をす……」

「危なかった」

「「え?」」

「エドガー……江戸川は魔法訓練で、灰原サンほどは魔法的能力が伸びなかった様に見える。だけど、動物的(カン)とか、魔法的な(カン)とか。そう言った面に関しては、訓練はじめる前に比べて、桁外れに上がってる様だ。

 ……それでエドガーは、無意識にフロッピーがパソコンごと駄目にされる危険性を『感じ取り』、ウダウダと内容確認を今日まで延ばしてしたんだよ。だけど、訓練とか一段落してとうとうヒマができて理由が尽きちゃった。そういう事さ」

「コンピューターウイルス、闇の男爵(ナイトバロン)!!」

 

 灰原の叫びに、正太郎は深く頷く。

 

「おそらくは、その辺だろうね。サイコメトリの超能力で今ざっくり調べたら、コンピューターウイルス仕掛けたのが読み取れた。ただ仕掛けたのは日常的業務だったっぽくって、ウイルス名とかを喋ったシーンは見えなかったけど。闇の男爵(ナイトバロン)か……。下手したら、エドガーがぶつかった初の魔法関係した事件かもな」

「「え!」」

「いや、確かじゃない。ただ闇の男爵(ナイトバロン)には魔法的技術が関わってる可能性が、ね」

 

 そう言うと正太郎は、フロッピーディスクを手の中でくるりと回す。するとフロッピーディスクは消失した。正太郎が、『何処かへ』仕舞い込んだのだ。たぶん正太郎が保持している個人用無限保管庫(インベントリ)こと空間歪曲庫あたりに。

 

「このフロッピーは、僕がいったん預かる。薄々気付いてるとは思うけど、僕は探偵事務所(ココ)の地下の鉄人29号DX(デラックス)基地以外にも、様々な超技術の詰まった基地を持ってる」

「そら、な。エイトマン・ネクストの身体を創り出すにゃあ、地下の基地みたいな『おおざっぱ』な設備だけじゃなあ」

「それに鉄人29号DX(デラックス)だって修理や整備ならともかく、建造するにゃココの設備だけじゃあ、とてもじゃないけど足りないわよね。自動車で言うなら、ここの基地はディーラーの店舗にくっついてる工場。製造工場とかとは機材のレベルが違うわよ」

「うん、そういう超技術の集約された基地に持って行って、色々調べてから内部データ読みだすから。闇の男爵(ナイトバロン)の詳細が分からないから、時間はかなりかかると思うけど」

「「了解」」

 

 そういったわけで、『黒ずくめの組織』の秘密が収まったフロッピーディスクは、正太郎が預かる事になったのである。

 

 

 

*

 

 

 

 そして『他の基地』に向かった正太郎を除いた小学生組、コナンと灰原に元太、歩美、光彦を加えたいわゆる少年探偵団は、1月1日の天皇杯決勝を見るために国立競技場へとやって来た。サッカーの試合に子供っぽく熱狂するコナンと3人の子供たち。それを見て苦笑する灰原。

 だがそのサッカーの試合の裏で、その放映権を保有してテレビ中継している日売TV(テレビ)局に対する脅迫事件が発生していた。サッカー場の端に転がっていたサッカーボールが、消音拳銃で撃たれたのだ。そして脅迫電話がテレビディレクターに届く。犯人は五千万円を要求し、要求が()れられなければ観客席で拳銃を乱射すると脅して来る。

 更には警察が裏で動いている事も察せられ、何も知らぬ観客たちを人質にした身代金の額は十億円にまで引き上げられた。警察を率いる目暮警部やコナンたちは必死に競技場内を駆け回る。

 そしてコナンがとうとう犯人を見つけた。

 

「やっとわかったよ、おじさん。おじさんでしょ? 日売TV(テレビ)を脅迫してた犯人って……」

 

 犯人は複数犯、2人組だった。場内を監視したりする役目と、実際に拳銃でサッカーボールを撃ったりする役目。だがどうしても見張り役が誰なのか分からなかった。しかしコナンはその相手の正体を見抜く。犯人を特定するために、場内の様子を撮影した映像を警官たちといっしょに視聴したのだ。

 

「日売TV(テレビ)を脅しているのが、同じTV(テレビ)局のカメラマンだなんて、誰も思わないもんね」

「ふん、よくわかったな小僧」

「おじさんが撮った映像のビデオを視たんだよ。犯人の仲間が三回映ってたけど、三回ともすぐにフレームアウトした。……仲間をかばって、わざと撮らないようにしてる、ってね。

 どうする? 自首する? おじさん?」

「ああ、仕方ないな……。そうするよ……」

 

 そして犯人は懐に入れた右手を引き出す。コナンはとっさに麻酔銃を撃った。しかし麻酔銃の針は、犯人のカメラマンが懐から取り出した拳銃にあたって弾かれる。

 

(ヤベ!?)

「と言いたいところだが、そーはいかねぇんだ」

 

 犯人たちは、一年前に銀行強盗の計画を立てていた。だがその決行予定日、日売TV(テレビ)がタレントの一日支店長という企画を立てていたせいで、銀行がごった返ししていたために頓挫。高跳びの予定も、奪う予定だった金もパァになり、犯人のカメラマンがつきあっていた女性は金が入らなかったことで自殺。

 

「なるほど、それで恨みを晴らすために日売TV(テレビ)局のカメラマンになった、ってわけか……」

「見て見ろ。観客の視線はサッカーの試合にくぎづけ。この大歓声で、サイレンサーのついた拳銃の音なんて微塵(みじん)も聞こえやしねー……。現に、おまえがグランドに降りたことすら、誰も気づいちゃいねーじゃねえか……」

 

 コナンは悩む。

 

(どうする……。魔法使えばこいつを制圧するのなんて別になんの苦でもねえ。だけど、こんな衆人環視の中じゃなあ……。あ、いや。べんきょーさせられたっけな。どうやって魔法使わずに対処するか、とか。使わなきゃならんときも、どうやって隠れて使うか、とか)

「おまえを撃つのは試合終了の瞬間……。歓声は悲鳴に変わり、パニックになる。その騒ぎに乗じて俺は逃走……。そして新聞にタレこむ。『俺は日売TV(テレビ)が金を出し渋ったせいで、ガキを1人()っちまった犯人だってなあ!!』

(うっわ、だっせぇ)

 

 その時、犯人の右手ごと拳銃がまるごと何かの液体に捕われ、そして液体は瞬時に硬直する。……なんらかのプラスチック樹脂、である。

 

「よぉ、無事か?」

「たすかった、ハントさん」

「て、てめえ!」

「撃たない方いいぞ。この探偵七つ道具の1つ、固化樹脂(トリモチ)ランチャー。命中した場所で瞬時に固形化するプラスチック樹脂を撃ちだすランチャーだ。……樹脂が銃口にも入り込んで固化、銃口塞いでるから、撃ったら暴発して右手、大怪我だ」

「ちくしょう!」

 

ばぎぃっ!! ぼごぉ!!

 

 ハントに殴りかかった犯人のカメラマンだが、一瞬で殴り倒される。そこへ目暮警部たち警官を連れて来た灰原が到着し、犯人は確保された。

 

 

 

*

 

 

 

 警察での事情聴取が終わり、少年探偵団の子供たちはパトカーで自宅まで送っていかれた。ハントとコナン、灰原は藩登(リュウ・ハント)龍探偵事務所の社用車であるマ○ダ・○ァミリアでいったん探偵事務所まで行ってから帰宅予定だ。

 

「うん、江戸川も灰原サンも、今日はご苦労さん。江戸川は流石だったな」

「ああ、なんとかおおっぴらに魔法使わずにどうするか方法考えてさ」

「それで最低位の術である通信の魔法『遠話(ログ)』を心象結印で心で念じただけで発動させて、わたしに連絡取って目暮警部たちを呼ばせたのよね。わたしが携帯電話で連絡を受けたフリをして」

 

 ハンドルを切ってマツ○・ファ○リアを左折させつつ、ハントも言う。

 

「ほんとは目暮警部たちに花を持たせようかとも思ったんだけどな。いつ犯人が発砲するかわからなかったんで。そんで、エドガーの『遠話(ログ)』による通話を傍受した俺が、偶然近くに居たんでエイトマン・ネクストになって超音速で現場に駆けつけてさ」

「それで突然現れたのか。いや、来てくれたのはありがたいし、たぶん俺の『遠話(ログ)』を通信傍受したんだろなってのは。うん」

 

 ○ツダ・ファミ○アは夜の街を走る。コナンと灰原は、魔法の使い方は奥が深いものだ、としみじみと思った。




単に遠隔通話する類の術って、使い様によってはTRPGのシナリオを崩壊させかねないんですよな。ワースブレイドって、そんな術が最低位からあるから、けっこうシナリオ作るの大変だったり。
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