1人の老人が、星空が見える窓際に立って、幾多の星々の中からひときわ大きく見える惑星、
「博士……。ナイト・デーモン博士。お願いしていたプロテクト外しは、どうなってますか?」
「おお、貴様かハント探偵。順調に進んでおる。まあわしは魔法技術に関しては門外漢、まあ良く言っても未だ学生レベルなのでな。それが応用されたプロテクトともなれば……。早くてあと数ヶ月と言ったところだな。
しかしフロッピー・ディスク、か。『この世界』は、電子や情報関係のテクノロジーに関しては、発展はまだまだ、と言ったところか」
「おかげでネットが未発達、やり辛くてしかたありませんよ」
「ふん、よく言うわ」
老人、デーモン博士は失笑して、再度窓から地球を眺める。
「……エイトマン、か。そしてその後継たるエイトマン・ネオ。懐かしい。……所詮は模造品とは言え、あの世界とおさらばした以上、『わしの』世界の中でかの者達の痕跡を残しているのは、貴様しかおらぬ。エイトマン・ネクストよ」
『……お連れしない方が、よろしかったですか?』
ハントの姿は、いつの間にかエイトマン・ネクストへと変わっていた。デーモン博士は、
「いや、わしこそ所詮あの世界には居場所は無かった。このようにしてクオリアを量子コンピュータに移植し、永遠とは言わぬがそれに近き生を得る事になったが……。やはりわしも、貴様を見習い、立体映像のアバターではなくマシナリーのボディを製作してみるべきかの」
そう言ったデーモン博士の右手が、サイドテーブルに置いてあった花瓶に生けてある造花に触れる。そして、その造花をピクリとも揺らすことなく、それを通り抜けた。デーモン博士の姿は、彼の言う通り立体映像のアバターであったのだ。
『デーモン博士がわざわざラグランジュ3に浮かべたこの宇宙基地じゃなく、『身体』を造り地上でお手伝い頂けるなら、わたしも物凄く楽になるのですがね』
「後ろ向きに検討しておこう。さすがにこの歳になるとな。若い者たちに付き合って騒ぐのも、正直つらい」
『残念です。でもその気になったら、お手伝いいただけると幸いです』
にやりと失笑をこぼす、デーモン博士のアバターだった。
「そうか。今はあの『黒ずくめの組織』と主にやりあっているのだったな? サイボーグ009たちと表向き敵対し裏で協力、『
『ありがとうございます。では』
そしてエイトマン・ネクストは光に包まれて姿を消した。超音速への高速転移ではなく、超能力のテレポートだ。その様子を見遣りつつ、デーモン博士は語る。
「……高度な学習能力により人間と同様の『心』を獲得した様だが。『心』というものは、扱いが大変じゃぞ。まあせいぜい頑張るがいい、『ライガー3』よ」
デーモン博士、そのアバターは、また窓に向き直ると半月状に
*
陸上幕僚監部指揮通信システム・情報部情報1班特別勤務班の
そして今彼は、本来の職場への通信手段を封じられ、あるいは破壊されて必死になって、場末の港湾を舞台に逃走を図っていた。だが彼の足元に、銃弾が着弾する火花が散る。彼は情けない声を上げた。無論、演技ではあるが。
「うわぁっ!? ひいいぃぃ!!」
「け、どうやら日本のNOCだってのはわかったが、そんな情けないチンピラのクセして、よくもまあ『組織』に潜入なんぞ……」
「少し黙ってろ、ウォッカ」
「は、はい兄貴」
「じ、ジン!? ……の兄貴!? な、なんで俺を殺そうとすんですかぁ!? 俺なんかやっちまいましたか!? お願いです、なんかやったんなら、反省しますから! どうかお許しくださいジンの兄貴ぃ!!」
見苦しい命乞いに、ウォッカは舌打ちをする。しかし銀髪の大男ジンは、鼻で
「やめとけ、ライジング・サン。コードネーム貰ったばっかで正体バレしたのは不幸だったがな。だが
「へ!?」
「ち、そうかよ。てめえは最初っから知ってた、気付いてたわけだ! だがンなら話は早え! てめえ殺して、俺が実行部隊のニューリーダーだ!!」
そう叫んで洋考は懐の拳銃を抜く。今まで組織の中で見せた事の無い、自A隊員として鍛練に鍛練を重ねて来た尋常ではない早撃ちだ。その銃口は、ぴたりとジンの額を狙っている。頭に二発、心臓に二発、洋考はその様に撃ち込むつもりであった。
バン!!
一瞬の発砲音。ジンの大型拳銃が、洋考の右肩を撃ち抜いた。拳銃を取り落とす、洋考。
「ガッ! ……ば、馬鹿な」
「自A隊員相手に、こちらが油断するとでも思ったか? 正体はだいたい割れてるんだ」
「く……」
「ライジング・サン……。カクテルの名前だったが、てめえにとっちゃ陽は沈む羽目になったな」
そしてジンは、洋考の腹に向けて拳銃を撃つ。これは外れる可能性を低くするためと、既に連絡手段は全て奪っているから何の遠慮も無く、相手を苦しめて殺す意図があるためだ。そして……。
バン!
「き、消えた!?」
「ちっ……。馬鹿な……。探せウォッカ!」
「はい……!? あいつは!」
『わたしはエイトマン・ネクスト。貴様たちはあの『黒ずくめの組織』で殺しなどを任されている実行部隊の、ジンとウォッカだな。また悪事を働く気か』
「ち、ちくしょう! これでもくらえ!」
「あっ、待てウォッカ!」
バン! バン! バン!
拳銃を連射、いや乱射するウォッカだったが、エイトマン・ネクストは立ったままだ。
「ば、ばかな!? 命中してるはずだ! そのはずなのに!」
『……』
エイトマン・ネクストが右拳をゆっくりと開く。すると、少々ひしゃげた3発の拳銃弾が、そこから
「げっ! た、弾を手づかみにしやがった!?」
「ち、ウォッカ……」
ジンが何か言おうとした瞬間、エイトマン・ネクストの拳から凄まじい雷光が
「ぎゃあああぁぁぁ!?」
「ぐうっ!」
『む!?』
ウォッカは雷光……高電力の電撃に撃たれて、あちこち黒焦げになって倒れ伏している。黒服を着ているので、よくわからないが物凄く焦げ臭いので、大かた予想はつくのだ。しかしジンは少々通電
エイトマン・ネクストは、そのジンの右手を凝視する。その手には、海に繋がるワイヤーがぐるぐると巻き付いていた。これまでにエイトマン・ネクストは何度か『黒ずくめの組織』と戦っている。その際に、指向性電撃装置は幾度か使用しているのだ。その情報を、実行部隊リーダー格のジンが知っているのは当然であった。
『なるほど、海中に張られた衝突防止安全ネットの、網の芯に使われているワイヤー、それの端が転がっているのに気付いて、それをとっさに腕に巻いた、か。それで電撃はワイヤーを伝って海中に逃げてしまったというわけだな』
「ぐ……」
『だがそれでもダメージはゼロとはいかんだろう』
次の瞬間、ジンはウォッカを担ぎ上げると逃走する。だがエイトマン・ネクストはその彼を追わない。代わりにエイトマン・ネクストは、足元の
『……大丈夫かね
「お前は……」
『わたしはエイトマン・ネクスト』
「いや、ソレは知っている。だが何故、お前が僕を助ける」
ふっと笑みをこぼし、エイトマン・ネクストは語った。
『わたしはコレでも、いちおう表では日本国籍を持つ人間として生活している。どんな姿かは秘密だがね。……だから、日本人としての義務を果たすため、日本の平和と安全のために日夜命を賭して働いている自A官を助けるのは、普通の事では?』
「……ふ。済まないが、携帯電話か何かあったら貸し、いや駄目か。借りたら記録がその携帯や電話局に通話記録が残ってしまう」
『秘密保持には、有線電話、だよ。わたしの知る限り、公衆電話なら『
洋孝は苦く笑うと、ふらふらと立ち上がる。エイトマン・ネクストのマッハにも迫る高速転移で助け出されたため、ぐらぐらと
「助かるよ。あ……。しまらんなあ。10円玉貸してくれないか」
『ふ、返却は今度あったときにで良い。10円玉5枚貸そう』
「感謝する。いつか会おう。善良な日本人、『エイトマン・ネクスト』……」
『いつか会おう、日本に忠実な特別職国家公務員』
そして洋孝とエイトマン・ネクストは、逆の方向に向かい歩き出したのである。
今回のモブキャラ、スタスクです(笑)。