ここは何時もの
「……いや、とうとう4月になったなあ。去年一年間の小学一年生をようやく終えて、今日からいよいよ新小学一年生だ!! ……ってなんなんだよ、まったく。今まで半信半疑だったけど、とうとう現実だって思い知らされちまったじゃねえか」
「ほんとにね……。しかもわたしたち以外、誰もその事を気にもとめてないんだもの。阿笠博士が今朝起きたとたん、去年の年月日を口にするんだもの。何の疑念も持たず。カレンダーも、昨日までは19○○年だったのが、一年前の19○×年4月に変わってるし。学校の先生方も、同じで」
「って言うか、こんなあからさまな事象、
そこへハント探偵が戻って来て、即座に正太郎に姿を変える。
「やあ、来てたのか。自主練、ご苦労様」
「どこ行ってたんだ、東? 今日は『風邪ひいて』学校ズル休みしてたよな」
「また浮気調査?」
「いや、今日はちょっと宇宙へ」
「「う、宇宙ーーー!?」」
コナンと灰原は、目を丸くする。正太郎はシレッと続けた。
「いや、年度が切り替わって一年間がループ現象を起こす時期だったからね。軌道上に合計64個の人工衛星投げて、魔力センサーとかも載せて、徹底的にループ現象を調査してたんだよ」
「なるほどね。それで、どうだったのかしら?」
「なんか想像以上にめんどくさそうなんだよね……」
「「え」」
しょんぼりとした様子の正太郎に、コナンと灰原は顔面蒼白になる。正太郎のことを超ウルトラスーパーな機械超人だと思っているが故に、ソレがしょんぼりするって事は人類レベルにとってはトンデモない事態なのかと危惧しているのだ。
「ああいや、最初はさ。
「ちょ、異常気象ってどのぐらいだ」
「伊勢湾台風レベルじゃないでしょうね」
「古いよ灰原サン。エドガーもそこまで心配しなくても。ちょっと春が遅くなって、東京都で3月半ばまで豪雪が降るぐらいだから、人間の力でどうにかできそうなレベル。まあ多少は被害は出るかもだけどさ。……って、当初はそのぐらいの予定だったんだけどねえ」
コナンと灰原は、満面に汗を浮かべている。正太郎はやれやれと
「だけど先代怪盗キッドが」
「ああ、今代のは実は二代目なんだっけ?」
「前に
「うん。先代怪盗キッドが探し求めてた、世界に幾多存在する大粒の宝石『ビッグジュエル』のうちのどれか1つ。不老不死の魔力を秘めてるって話の宝石なんだけどさ。先代はソレ関係でなんか裏の組織とぶつかって暗殺されたっぽい。
今の二代目が宝石ドロやってるのは、僕が調査した限りでは組織にパンドラが渡るより先に手に入れて、破壊したいらしいよ」
「「は~」って、組織?」
コナンは怪盗キッド先代を殺害したのが、『黒ずくめの組織』ではないのかと考えた様だが、正太郎はそれを否定する。
「ああ、『黒ずくめの組織』じゃないみたいだ。『黒ずくめの組織』もなんか不老不死とか若返りとか追い求めてるんじゃね? って疑惑はあるけどさ。それ魔法とか神秘とか排除した、一般の技術だけでやってる。
まあ
「「なるほど」」
「話を戻すとさ。そのパンドラとか、その他にも不老不死とかに関わる宝石の類がさ……」
肩を落とす正太郎。コナンと灰原は不安げな瞳を向ける。
「な~んか妙な具合で、世界全体を包み込む魔力のネットワークを形成しててさ。しかも意図して出来たもんじゃなく、なんか偶然出来た可能性が。意図して創ったネットワークだったら、あんな不合理な形式にはならないよ。無理も多いし。だけどそのせいで、修正のために手を出しづらい状況。諦めるつもりは無いけど、すぐには無理ぽ……ってとこ」
「もしかしたら、それらのビッグジュエル、不老不死のために時間軸とかアカシックレコードとかに干渉していないかしら?」
「なるほど、それで事故って……」
「ご名答」
やはり灰原はコナンよりもこう言う研究者的な頭の回りは早い。正太郎は再度、やれやれと
「そんなわけで、一足飛びに解決ってわけには行かなさそうだよね」
「まあ仕方ないか」
「とりあえず、ループ状というかコイル状になってるこの世界の時間軸修正は、のんびり待つしかないわね」
「そだな」
「君ら、ずいぶん人格的にも落ち着いたな。想像以上に関係性良好だし」
正太郎の言葉に、コナンも灰原も苦笑いする。
「まあ、当初は俺の身体縮めやがったクスリの製作者だし、少しばかり思うところあったのも確かだが」
「でもざっくり計算して、ときどき休み挟んだとは言っても外での1日につき30日間、つまり丸一ヶ月もいっしょに修行の日々」
「それを外での半年以上いっしょに過ごして来てるんだ。単純計算で20年ぐらい共に生きてる勘定になる。まあ目標としている
「やっぱり外で実践して経験積まないと駄目かー。でも2人とも、やっぱり時間軸がループしてる影響と、
そこへメイ姉さん……宮野明美が、お茶とお茶菓子を持って来る。
「はい、お茶。わたしはこの加速部屋を使うのは、2人ほど回数無いのよね。2人は
「姉さんはカザン系の『魔法』で、肉体年齢を進ませない独自魔法開発してるじゃない」
「完全に独自魔法ってわけじゃないわよ? 正太郎君が試作してた術式を貰って、わたしなりにアレンジしたものだもの」
「それにその手の魔法で身体の時間止めても、寿命は人間の限界である150年以上に延ばすのは至難だしなあ。そろそろ君達の『魔法』の類の基礎も固まったし、加速部屋は封印するかなあ? いや、難しい研究などの時に時間必要だとかって場合だけ、再度解放するって事で」
「「「了解」」」
「あと、エドガーはいいんだけど灰原サン。君、本来もともとの素質は木門10、月門8、水門7だったけどさ。当面『敵』である『黒ずくめの組織』への対処を優先して、精神や闇、転じて幻などに強い月門中心に伸ばしたんだよね。でもそろそろ木門や水門にも力入れていいんじゃないかな」
「ああ、それについては既に方向転換してるわ。素質的な面じゃなく現状の実力的な面で、月門は最高第8階梯の術まで使えるけど、木門も第7階梯、水門は第6階梯までなんとか使える様に鍛えてる」
「凄いな。エドガー……江戸川は?」
「俺は犯罪捜査とかに有効な土門を第7階梯までと、金門を第5階梯まで。ただ使いこなせるってレベルだと土門6、金門4だな。かわりに俺は、灰原が苦手な『気功』を第7階梯まで使えるし、使用回数はまだ1回だがリルガミン系『魔法』の『
「もしかして充分
「「まだまだ」」
正太郎は想像以上に2人の魔法的能力が高まっているのを知り、感心した。まあ実践という面ではまだまだなのだが。2人とも室内での勉強ばかりで、実戦経験も実践経験もほとんど無い。そうでなければ、先日に魔法の使い方を非効率的にしたせいで、精神力とか魔法使用回数とか使い切ったりしないだろう。
そして正太郎は話題を変える。
「そういえば、デーモン博士から連絡入ったよ。コンピューターウイルス『
「そっかぁ」
「良かったわね工藤く……江戸川君」
「感動薄いね?」
コナンは失笑を交えて答える。
「いや、嬉しくないわけじゃないんだぜ? ただ、20年以上灰原といっしょに修行してるせいでな。まあその20年ほとんどこの加速部屋の中だったせいで、しかも修行と術式習得の勉強ばっかだったんでなあ」
「精神的に老成とか老化とかはほとんどしなかったけど、精神的な成長もまた無いけどね」
「まあな。でも、それでもなあ。20年経つと、慣れて来ちゃったのもあるし、それなりの落ち着きも出て来るしな。元太、光彦、歩美とか見てると、昔と違って今じゃまるで自分の子供に対するみたいな感情すらなあ……」
「近所のおじさんね、ふふふ」
「おめーも近所のおばさんだろが」
「違いないわ」
メイ姉さんはにこやかに、黙ってお茶のお替りを用意する。正太郎は思った。
(この2人はともかく、メイ姉さんは実年齢と表面的な年齢の差があまり大きくならないうちに、縁談探してあげないとなあ。加速部屋を閉鎖しても、結局は世界のループを解消できないと、ループを認識できてる人間とできてない人間の間で、認識のズレから精神的な老成度合が変化するのは避けられないし)
その後、加速部屋から色々資材やら研究資料やらを運び出すと、正太郎は加速部屋のエネルギー源供給をストップする。コナン、灰原、メイ姉さんの3人は、今後実践の経験を積んで実効的な実力を
明美さん現状肉体年齢20弱? 程度、精神年齢は30歳強。コナン(新一)と灰原(志保)さんは肉体年齢6~7歳、精神年齢は35~40弱程度。
まあでも、その時間の大半は加速部屋でのものなんで、精神的な成長度合いとか老成具合とかは……。
というかコナン君。今著者も再計算して気付いたんですが、工藤新一として蘭ちゃんと生きて来た年月よりも、灰原サンと共に修行して来た年月の方が長くなってます(滝汗)。しかも常にいっしょに魔法学んでるんで、関係性の密度も桁外れ。ま、まあ肉体が小学一年生なので、灰原サンとの間に性愛的な関係性は無いですが。脳内反応も子供のものですし。