東京都千代田区霞ヶ関に存在する、警視庁本部庁舎。通称『桜田門』。少年探偵団諸君と阿笠博士、そして今回オマケのハント探偵は以前発生した、日本に移築された西洋の古城での殺人事件、その事情聴取のためにここに呼びだされていた。
ちなみにその際、コナンや灰原を含む少年探偵団の面々と阿笠博士は事件に巻き込まれていたが、ハント探偵はまったく関与していない。であるのに何故今回付いて来ているのか。それは単なる運転手としてである。
阿笠博士のワーゲンビートルは、小学生とは言えさすがに子供5人を詰め込むにはちょっと
「お待ちしていました! 警視庁捜査一課の高木です! 皆、さあ中へ」
「わざわざ済みません」
「ああ、俺は送迎だけで無関係なんで、他所で時間潰して来た方いいですかね?」
「ああいや、それも大変でしょう。よろしければ、ご一緒にどうぞ」
ハント探偵は気を利かせていったん立ち去ろうとするが、高木刑事がそれを呼び止める。その言葉に従い、ハント探偵は皆の最後尾をついて行った。
ちなみに子供たちは、
そんなさ中、1人の女刑事がその場に姿を現す。
「あら高木君。なんなのその子たち。迷子なら生活安全課でしょ?」
「いえこの子たちは……。例のお城の事件の証人たちでして」
「なんだよこの姉ちゃん」
「あ、高木刑事赤くなってる」
「そうか! わかりました! 高木刑事の恋人ですね!」
高木刑事は慌てて否定しようとする。一方の女刑事は笑みをこぼし、自己紹介をした。
「おいおいおい! そうじゃ……」
「ちがうわよ? わたしは高木刑事のちょこっとだけ上司、かな? わたしは佐藤美和子、捜査一課強行犯三係の女刑事よ」
その言葉を聞き、ハント探偵とコナン、灰原は目を
こういうタイプは、更に幾つかのタイプに分類できる。本気で好意に鈍感な奴、過去の経験から自分が好意を抱かれるとは信じられないでいる奴、更にその亜種として過去の経験などから自分は他人に好かれてはいけないと思い込む奴、など等。
「……彼女、どのタイプかね」
「本気で鈍感に一票」
「わたしは、仕事人間で恋愛沙汰に割く余裕が無いに一票」
そんな
そうこうしている間に、受話器の向こう側から女性の悲鳴が聞こえて来て電話が通じなくなった。どうやら事件か事故が起こったらしい。佐藤刑事と高木刑事は急ぎ出動する。ちなみにコナンはこっそりと2人の刑事について行ってしまった。
「やれやれ。そこのお巡りさん。俺たち……というか、この子たち以前の事件で解決に貢献したので事情聴取受けるために来たんですが。事情聴取する担当の刑事さんが緊急で出動してしまったので、どうすればいいか聞きたいんですけど」
「あ、ああ。申し訳無いですが、上から何か指示があるまであちらの応接セットでお待ちいただけませんか。すぐ確認を取りますので」
「阿笠博士?」
「この子たちは小学校の都合があるんで、今日以外は聴取に充てられんのじゃよ。本日中に事情聴取が行われるなら、待っていたいんじゃがの。その件、上に伝えてくれぬかの?」
「りょ、了解です」
その後ハント探偵たちは、とりあえず簡単な見学コースを見て回って時間を潰す事になる。ちなみにハント探偵や灰原は、『
*
しばし後に、銀行強盗事件と東都銀行支店長夫人増尾加代女史殺害事件の、2件の事件が一気に解決したとの一報が入る。犯人は東都銀行支店長である増尾桂造53歳。彼は警視庁への事情聴取での呼び出しを自身のアリバイ作りに利用し、仕掛けとトリックとで妻を殺害したのだ。理由は銀行強盗事件の犯人が彼の友人である事を妻に知られ、そこから芋づる式に自身が自分の銀行への強盗を計画した主犯である事が暴かれるのではないかとの恐怖からだった。
警視庁へ帰還してきた佐藤刑事、高木刑事であったが、松本警視に真っ先に賞賛されたのはその際に指揮を執っていたとされる白鳥警部であった。だが佐藤刑事がそれに異を唱える。事件を解決できたのは、捜査中にヒントや手がかりなどをメモの手渡しなどで教えてくれたコナンによるものだ、と。
白鳥警部はおそらく無意識であろうが、『幼稚な子供の方が大人より先に知恵の輪を解く場合もある』などと発言。意図してはいないだろうが、他者を見下す態度を取った。それに対し佐藤刑事はコナンがギフテッドであり、毛利探偵事務所で知恵袋の1人として扱われる様になっている事を開示する。白鳥警部は閉口。
やがて他の皆と合流した際に、佐藤刑事はコナンに問いかける。
「でもなんで、自分で目立たずに助言やメモ手渡しに徹してたの?」
「ああ、うん。そこにいるハント探偵の養子、僕の友達で東正太郎君って言うんだけどさ。ハント探偵に引き取られる前に、別な人の養子だったんだ。でも東君の前のお
「ああ、もしかして。2年前の、東重工会長である東鋼助氏の事件かしら。海外から当時の総理に政治資金パーティーの来賓として招待されてたエルピディオ・ポーロ探偵が犯人を的中させたって」
コナンは沈痛な顔で答える。
「たぶんソレ。その事件で、探偵は被害者を
「……」
「それまで僕は、かっこよく事件解決する事しか考えて無かったからさ。正義の味方である自分に酔ってたって言うか。その話聞いて、頭殴られたみたいな思いだった。だから、犯人を追い詰めるのにどうしても必要なとき以外は推理『ショー』は極力避けて。手がかりとかヒントとか最悪は推理の答えとか、お巡りさんたちに助言するだけにしたんだ」
「……ほんとに、小学生離れした頭持ってるのね。でも、少しは『楽になって』もいいんじゃない?」
「ありがとう」
コナンはそれだけ言うと、佐藤刑事から離れて仲間たちのところへ駆け寄った。
*
高木刑事による子供たちと阿笠博士への事情聴取が済んだ後、子供たちと阿笠博士、および今回オマケのハント探偵は、高木刑事のおごりで晩御飯をご馳走になる事になった。これは殺人事件のせいで事情聴取が遅れ、子供らを午後8時以降まで引きずり回してしまったお詫び、という事である。
そして色々店を物色していたのだが、基本的に夜遅めになったために飲み屋や居酒屋以外はファミレスしか開いていない。普通の食堂やレストランはオーダーストップの時刻だ。そんなわけで、一番近場のファミレスである『ステーキのファルクス』にやって来た一同であった。
高木刑事は情けない顔で頬を引き攣らせる。だが頑張って笑顔になっているだけ、まだマシであるが。
(とほほ。これだけの大人数分のステーキかぁ……。ちょこっとどころじゃなく、キツいなあ)
「高木刑事、ここしか選択肢無かったとは言え流石にステーキ屋は、ファミレスとは言え値段が高い。勘定、俺も半分持とう」
「え!? い、いや迷惑を掛けたのはこちらだし……」
「いやいやいや。突発的な殺人事件では、仕方なかろうて。どれ、わしも勘定を一部持とう。1/3ずつで、端数は高木刑事、で構わんかな?」
「阿笠博士まで……。ハント探偵、阿笠博士、ありがとうございます」
美味しそうなステーキに、元太、光彦、歩美は大喜びだ。コナンと灰原はこれもちょこっと引き攣った笑顔で、あまり高価なメニューを子供らに選ばせないように苦心していた。
*
後日、コナンと灰原はまた
「ところで東ぁ。お前ハント探偵として、ときどき高木刑事と飲みに出てるって聞いたぞ」
「ああ、そうだよ」
正太郎は頷く。
「ああ言う実直な好青年には、好感が持てるからねえ。それにちょっと抜けてて他人との付き合いで進んで損をしそうな性格にも、ね」
「そんなもんかね」
「わからないでもないけれど」
「ハント探偵の姿の元になった、リュウ・ハント探偵って人物……。僕から見て、もう遠い過去の人物だけどさあ。リュウ・ハントの方はちょっとぶっきらぼうでアウトロー的な部分もあったけど、損をしそうな人柄とかで高木刑事は彼を思わせるからね。
それでちょっとばかり、気に入ったのさ」
そして正太郎は、急に表情を引き締める。コナン、灰原もマジな顔になり、彼の言葉に聞き入った。
「エドガー、灰原サン。デーモン博士から通達が来た。例のフロッピーディスク、プロテクト外せたとの事だよ。ただデーモン博士も
「うぇ……」
「それって……」
「宇宙基地まで、一度2人に来てもらいたいってさ」
そんなわけで、この3人はこの週末の土日を使い、宇宙基地へ出向く事になったのだった。
いや高木刑事って、なんか肩入れしたくなりませんか(笑)。
あと、いよいよ組織のフロッピーディスクのデータが割れます。原作と大きな乖離がここから始まるのか。どうなのか。まあ米花町と杯戸町が尋常でないレベルの犯罪発生率であるのはそのままなんですが(笑)。