コナンは今、何かを諦めた瞳で窓から地球を眺めている。ここはラグランジュ3ポイントに浮かんだ宇宙基地。窓の外は真空の宇宙空間である。
「……いつの間にやら、こんな遠くまで来ちまったなあ」
「今更何を言ってるのよ」
「いや、物理的距離じゃなくて。心理的な距離として言ってるんだ。ここから地球を眺めてると、魔法とかロボットとか宇宙基地とか、そういったものをファンタジーやらSFやらの概念として、嘘八百のフィクションとして片付けてた頃の事が思い起こされてさ……」
「だからわたしも、その事を今更だって言ってるんじゃない」
灰原の言葉に、力なく頷くコナン。
「実際1つ2つは、魔法が直接間接に関わってる事件に出くわしたからなあ……。とは言っても、魔法の心得無くちゃ気付けない事件でもあったが。もし万一、魔法の心得無くてあの事件にうっかりぶつかってたらと思うと、冷や汗が出るぜ。正太郎の……ハントさんの言ったことは確かだったな」
「わたしだってそうよ。
そんな事象を、現状の薬学で
そして灰原は、大きく溜息を
「どうやら
「すまん、その辺は俺にゃ知識が足りん」
「わかってるわ。簡単に言えば、異次元というか隣接した異世界に、わたしたちの大人……ではないかもしれないけど。高校生レベルだし。まあ大人と仮称するけど。大人としての身体を構成してた物質は送り込まれてるのよ」
それを聞いてコナンは目を見開く。灰原はちょっと
「俺たちの身体、そのまんま送り込まれてるんじゃねえのか?」
「だったら今のわたしたちの、小学生としての身体はどうなってるのよ」
「そ、そりゃそうか」
「大人の身体から、小学生としての身体を除いた質量はいったんエネルギーに変換され、だけどそれは5次元方向に向けて移動するからわたしたちのプランクブレーン、この世界にはなんら影響を及ぼさずに向こうのプランクブレーンに抜けて行ってるの。そして
「風邪での高熱と
「……」
「ただし肉体の免疫系に影響されるから、これは良くて数回、下手をすれば1回しか効果は無いわね。そしてこれは『扉』を開いて『向こう側』と一時的に繋げるという手法を取ってるから、完全に元に戻るための手段にはなりえない」
「その通りじゃな」
コナンと灰原は、彼らの会話に割って入った老いた声のした方に目を向ける。
「「デーモン博士!!」」
「とりあえず、あらためて
『フロッピーディスクに入っていたデータは超高密度に圧縮されていたから、圧縮を解いたらフロッピーディスクじゃあ収められなくてね』
「「エイトマン・ネクスト……」」
デーモン博士に付いて部屋に入って来たのは、エイトマン・ネクストだった。今日はハント探偵や東正太郎の姿を取ってはいない。
「やはり不便じゃな、
『であれば、地球上でわたしたちの手伝いをしていただけませんか?』
「後ろ向きに検討すると言うたはずじゃが」
『残念です。灰原サン、これがデータ入った
「ありがとう。……ナニコレ!?」
目を丸くする灰原。横から資料を覗き込んだコナンも、顔を引き攣らせる。コナンには薬学や物理の知識は薄いが、その分魔法関係の知識に於いては犯罪捜査に応用させるために勉強を欠かしていない。
「げっ……」
「わしも薬学については知識があるし、魔法関係もお前たちに若干劣るかも知れぬが知識はある。それ故に少し検証してみたのじゃが」
『わたしも少しチェックして見たがね。これはひどい』
「開発のドキュメントを読んだ限り、半分以上はお嬢さんの前任者の問題じゃろうが。表面的な薬効ばかりを検討し、無茶苦茶に組み合わせたためじゃな。コンピューターのプログラムに例えれば、バグにバグを重ねた結果、表面的に上手く動作している様に見えるだけじゃ。
それをまがりなりにも薬剤として成立させ、奇跡の毒薬としてじゃが完成させたお嬢さんの力量には感服するが」
「あまり嬉しくないわ……」
そしてデーモン博士は語る。
「これの解毒剤、というか復元薬とでも言おうかの? それを創るには、この毒薬としての
今のこの
「とんでもねえなあ」
「とんでもないわね」
『ああ、とんでもない』
そんな中、ふとある問題について思い至ったコナンが声を上げる。
「なあ灰原。さっき
「ええ、それが?」
「わかんねえか? 『記憶』だぞ?」
「!!」
灰原は真っ青になる。コナンも深刻な顔色になった。エイトマン・ネクストは眉をしかめる。デーモン博士は、口角をわずかに上げた。
「『記憶』ってのは、けっこうぼやけ易い。ましてや俺と灰原は、既に魔法の修行のために加速空間で20年程度過ごしてる。『身体の記憶』が、成人した男女、20歳ぐらいになっていてもおかしくはないし、逆に今の小学校一年生レベルの身体を『正しい今の自分』と魂が認識していてもおかしかないんだ」
「まずい、わね」
「……とりあえず、
それを使って身体を『復元』してみれば良い。さすれば『魂』に『記憶』されている身体の情報が今どんなモノなのかは確認できよう? 更に魂の記憶が無事であれば、定期的にその薬で元に戻る事で、自身が江戸川コナンや灰原哀ではなく、工藤新一と宮野志保である、との認識を魂に刻み直す事もできよう?」
灰原は頷くと、手近な端末に飛びついて
そんなこんなで、暫定版の『復元剤』は徐々に完成に近づいて行くのであった。
コナン君と灰原さんの常識は、1億2千万光年の彼方へ飛んで行ってしまったんじゃ。
ちなみにデーモン博士は魔法歴はコナン君たちよりもずっと長いですが、魔法面での実力はコナン君たちよりも低いです。何故ならば彼の本体は大型量子
術を発動する際に印を組んだり、手足を振り回したりなど等。そういう行いが大型量子
まあそんなわけで、彼は行使することが叶わない高度な術に関する知識は今のところ欲していないため、覚えていません。