藩登龍(リュウ・ハント)探偵事務所   作:雑草弁士

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今回APTX(アポトキシン)4869周りで、大きく設定改変というか原作崩壊というか原作無視があります。ご容赦ください。


File017:コナンと灰原、宇宙基地訪問

 コナンは今、何かを諦めた瞳で窓から地球を眺めている。ここはラグランジュ3ポイントに浮かんだ宇宙基地。窓の外は真空の宇宙空間である。

 

「……いつの間にやら、こんな遠くまで来ちまったなあ」

「今更何を言ってるのよ」

「いや、物理的距離じゃなくて。心理的な距離として言ってるんだ。ここから地球を眺めてると、魔法とかロボットとか宇宙基地とか、そういったものをファンタジーやらSFやらの概念として、嘘八百のフィクションとして片付けてた頃の事が思い起こされてさ……」

「だからわたしも、その事を今更だって言ってるんじゃない」

 

 灰原の言葉に、力なく頷くコナン。

 

「実際1つ2つは、魔法が直接間接に関わってる事件に出くわしたからなあ……。とは言っても、魔法の心得無くちゃ気付けない事件でもあったが。もし万一、魔法の心得無くてあの事件にうっかりぶつかってたらと思うと、冷や汗が出るぜ。正太郎の……ハントさんの言ったことは確かだったな」

「わたしだってそうよ。APTX(アポトキシン)4869の組成に魔法式やら疑似的な魔法陣やらが偶然とは言え組み込まれてたなんて、思いもしなかったわ。それはそうよね。身体が縮んだとき、身体を構成してた質量が何処行ったのかなんて、良く考えれば現代の科学や化学や生化学や薬学で説明できるわけないじゃないの。

 そんな事象を、現状の薬学で躍起(やっき)になって解明しようとしてたのよ? APTX(アポトキシン)4869を原型にして、本来目的にしていた薬効を持つ薬品を生成するために」

 

 そして灰原は、大きく溜息を()く。

 

「どうやらAPTX(アポトキシン)4869の組成に含まれている魔法式は、わたしや貴方の遺伝情報に含まれていた要素と組みあって更なる別の魔法式、そして疑似魔法陣を形成しているようなの。わたしたちが幼児化した事で喪失した質量は、その新たな疑似魔法陣を(くぐ)り抜けて5次元方向にある別のプランクブレーンへ送られたみたいね」

「すまん、その辺は俺にゃ知識が足りん」

「わかってるわ。簡単に言えば、異次元というか隣接した異世界に、わたしたちの大人……ではないかもしれないけど。高校生レベルだし。まあ大人と仮称するけど。大人としての身体を構成してた物質は送り込まれてるのよ」

 

 それを聞いてコナンは目を見開く。灰原はちょっと悄然(しょうぜん)としていた。

 

「俺たちの身体、そのまんま送り込まれてるんじゃねえのか?」

「だったら今のわたしたちの、小学生としての身体はどうなってるのよ」

「そ、そりゃそうか」

「大人の身体から、小学生としての身体を除いた質量はいったんエネルギーに変換され、だけどそれは5次元方向に向けて移動するからわたしたちのプランクブレーン、この世界にはなんら影響を及ぼさずに向こうのプランクブレーンに抜けて行ってるの。そして白乾児(パイカル)……」

 

 白乾児(パイカル)という酒の名を聞いたコナンは、顔をこわばらせる。灰原は話しを続けた。

 

「風邪での高熱と白乾児(パイカル)の分子構造を持つお酒を飲酒したという状況が揃ったとき、一時的、あくまで一時的に。わたしたちの体内に残留している、というか神経系に焼き付いているAPTX(アポトキシン)4869の疑似魔法陣が呼応し、『扉』が開いてプランクブレーンから身体を再構成するに足る質量を呼び込み、魂に記憶されている17~18歳の身体を再構成する」

「……」

「ただし肉体の免疫系に影響されるから、これは良くて数回、下手をすれば1回しか効果は無いわね。そしてこれは『扉』を開いて『向こう側』と一時的に繋げるという手法を取ってるから、完全に元に戻るための手段にはなりえない」

「その通りじゃな」

 

 コナンと灰原は、彼らの会話に割って入った老いた声のした方に目を向ける。

 

「「デーモン博士!!」」

「とりあえず、あらためてAPTX(アポトキシン)4869の組成と組織の人員及び協力者の名簿のデータをコピーしたMO(マグネットオプティカルディスク)を持ってきたぞ」

『フロッピーディスクに入っていたデータは超高密度に圧縮されていたから、圧縮を解いたらフロッピーディスクじゃあ収められなくてね』

「「エイトマン・ネクスト……」」

 

 デーモン博士に付いて部屋に入って来たのは、エイトマン・ネクストだった。今日はハント探偵や東正太郎の姿を取ってはいない。

 

「やはり不便じゃな、MO(マグネットオプティカルディスク)程度の質量でも荷物を持てん、立体映像のアバターと言うものは。やはり機械(マシナリー)の身体を造ることにしたわい」

『であれば、地球上でわたしたちの手伝いをしていただけませんか?』

「後ろ向きに検討すると言うたはずじゃが」

『残念です。灰原サン、これがデータ入ったMO(マグネットオプティカルディスク)だ。それと薬としての組成データと、術式としてのフローチャートのプリントアウト。薬としての薬効と術式とが複雑に絡み合った結果だからね、君達の幼児化は』

「ありがとう。……ナニコレ!?」

 

 目を丸くする灰原。横から資料を覗き込んだコナンも、顔を引き攣らせる。コナンには薬学や物理の知識は薄いが、その分魔法関係の知識に於いては犯罪捜査に応用させるために勉強を欠かしていない。

 

「げっ……」

「わしも薬学については知識があるし、魔法関係もお前たちに若干劣るかも知れぬが知識はある。それ故に少し検証してみたのじゃが」

『わたしも少しチェックして見たがね。これはひどい』

「開発のドキュメントを読んだ限り、半分以上はお嬢さんの前任者の問題じゃろうが。表面的な薬効ばかりを検討し、無茶苦茶に組み合わせたためじゃな。コンピューターのプログラムに例えれば、バグにバグを重ねた結果、表面的に上手く動作している様に見えるだけじゃ。

 それをまがりなりにも薬剤として成立させ、奇跡の毒薬としてじゃが完成させたお嬢さんの力量には感服するが」

「あまり嬉しくないわ……」

 

 そしてデーモン博士は語る。

 

「これの解毒剤、というか復元薬とでも言おうかの? それを創るには、この毒薬としてのAPTX(アポトキシン)4869の組成を1から整理し直して、まともな……まともな? 幼児化薬として作り直した上で、改めて復元薬の作成に入るしかあるまい。

 今のこのAPTX(アポトキシン)4869は、知育玩具の電子ブロックを、添付図面も見ずにでたらめに組み合わせて、結果としてワンボードマイコンを造ってしまったに等しい奇跡じゃて」

「とんでもねえなあ」

「とんでもないわね」

『ああ、とんでもない』

 

 そんな中、ふとある問題について思い至ったコナンが声を上げる。

 

「なあ灰原。さっき白乾児(パイカル)での肉体復元について語ったときによ。魂が記憶している17~18歳の身体に復元するって話をしたよな」

「ええ、それが?」

「わかんねえか? 『記憶』だぞ?」

「!!」

 

 灰原は真っ青になる。コナンも深刻な顔色になった。エイトマン・ネクストは眉をしかめる。デーモン博士は、口角をわずかに上げた。

 

「『記憶』ってのは、けっこうぼやけ易い。ましてや俺と灰原は、既に魔法の修行のために加速空間で20年程度過ごしてる。『身体の記憶』が、成人した男女、20歳ぐらいになっていてもおかしくはないし、逆に今の小学校一年生レベルの身体を『正しい今の自分』と魂が認識していてもおかしかないんだ」

「まずい、わね」

「……とりあえず、白乾児(パイカル)を原型としてみた一時的復元薬を製作してみてはどうだ? 大型量子電脳(コンピューター)が本体であるわしが協力すれば。それにハント探偵……エイトマン・ネクストも同じようなものじゃし、わしらが協力すれば一時的な薬なら数時間で組み上げられるだろうて。

 それを使って身体を『復元』してみれば良い。さすれば『魂』に『記憶』されている身体の情報が今どんなモノなのかは確認できよう? 更に魂の記憶が無事であれば、定期的にその薬で元に戻る事で、自身が江戸川コナンや灰原哀ではなく、工藤新一と宮野志保である、との認識を魂に刻み直す事もできよう?」

 

 灰原は頷くと、手近な端末に飛びついてMO(マグネットオプティカルディスク)をドライブに叩き込み、内容をHD(ハードディスク)に落とすと色々といじり始める。コナンはその背後から画面を覗き込み、知識面では灰原に劣るが流石は名探偵というところを見せて時折思い付いた事を助言。デーモン博士は本体の量子電脳(コンピューター)からリモートで助力する。

 そんなこんなで、暫定版の『復元剤』は徐々に完成に近づいて行くのであった。




コナン君と灰原さんの常識は、1億2千万光年の彼方へ飛んで行ってしまったんじゃ。

ちなみにデーモン博士は魔法歴はコナン君たちよりもずっと長いですが、魔法面での実力はコナン君たちよりも低いです。何故ならば彼の本体は大型量子電脳(コンピューター)なので、『人間が』行使することを前提として発展してきた技術である『魔法』は、単純に行使する方面では手足が無い彼には扱いづらいのです。
術を発動する際に印を組んだり、手足を振り回したりなど等。そういう行いが大型量子電脳(コンピューター)である彼には難しく、一部は電子的に疑似的に代行することが可能なのですが、それでも高度な術は行使することが叶いません。
まあそんなわけで、彼は行使することが叶わない高度な術に関する知識は今のところ欲していないため、覚えていません。
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