黄緑のクセッ毛の少年、東正太郎を尾行して、コナンを始めとした子供たちは街中を歩いていた。無論その子供らは、歩美、元太、光彦のコナンとよくツルんでいる子たちである。
「なあ、やめとけよ」
「でもよー。あいつ、あんだけきいたのに、ぜってー家の場所教えてくんなかったじゃんか」
「何かありますよ、コレはね」
「気になるよねー」
「ほっとけよ。プライバシーの侵害になるぞ」
いや、いつもいつも人の隠し事を暴き立てる江戸川コナンが言えた事だろうか。まあ、一応は犯罪を暴いて正義を為しているのだから、大義名分はあるのだが。
「お、あの空きテナントばっかのビルに入ってった」
「あそこに住んでるんでしょうか?」
「いってみよ!」
「おい勝手に……」
コナンが
「元太君! 歩美ちゃん! コナン君! 正太郎君は、あの事務所に入りましたよ!」
「あれ? 空きテナントばっかりだと思ってたら、あの事務所やってるね!」
「ちくしょう、腹減って来たぜ。うな重食いたい」
「……あれ? ここは」
「
「「「「わぁ!!」」」」
突然後ろから掛けられた声に、4人の子供たちはビビった。それはもう物凄く。
*
そして今、子供たち、特に元太は出された茶菓子をわしづかみにしてバクバクと食い散らかしていた。歩美とコナンはその元太に苦言を呈する。
「おい元太、もう少し遠慮して食え」
「そうだよ。周りにお菓子クズ散らばして……。あとでこのお兄さんが掃除するんだよ?」
「え、あ、た、確かに。済みません」
「まあ光彦は、そこまで酷くはねえがよ」
「うまっ! この菓子、うまっ!」
「聞けよ」
そして先ほど子供たちに後ろから声を掛けた青年が、全員分の紅茶を持って来る。
「ははは、お兄さんじゃなくて、おじさんでも構わないんだぞ? というか体質的に若く見えるけど、これでもそこそこ歳食ってるんだ。それに正太郎の
「えっ! 正太郎君のおとうさん、ですか!」
「あれ? でも苗字が違うよね」
「ああ、色々偉い人に手を回してもらって、正太郎の苗字は前の義父のものをそのまま使わせることにしてたんだ。前の義父に懐いてたし。正太郎は新生児のときに本当の親が行方不明になって、7年経ってるから失踪宣告して、まあ言っちゃわるいが死んだも同然の扱いになってる。
でもって、前の義父はちょっとあって亡くなっちゃってなあ。で、俺が3代目の親、義父って意味では2代目ってわけだな」
ここでコナンがふとした疑問を口に出す。
「ところで、さっきリュウ・ハントって言ってましたけど、事務所の扉には藩登龍って……」
「ああ、ちょっと海外暮らしが長かったんでなあ。姓は
「ふうん、そうなんだー。ねえ、おに……おじさん。正太郎君のお
ハントは苦笑いする。
「ああ、なんか
「気付かれてたんですかー」
「光彦……。いや、あんだけ騒ぎながら尾行してたら、バレて当然だっつーの」
「……コナン君、普段大人の人の前だとかわいく喋るのに、なんか普通だね?」
歩美の台詞に、コナンは溜息を吐く。
「そらな。このおじさん、見た目は柔らかいけど流石に探偵だけある。俺の演技なんかお見通し、だぜ」
「……ふふ、君は毛利探偵事務所の
「流石ですね」
「「「ええーーー!?」」」
「「わぁ!?」」
歩美、元太、光彦の3人は大声を上げる。
「おい、お前ら! 他所の店舗や事務所に声響いたらどうすんだ!」
「ああ、いや、このビルはウチしかまだ入ってないから……」
「不幸中の幸い、ですね」
「そ、そっかー。コナン君流石ですよ!」
「なんか大人の前でカワイコぶって、気持ちわりいと思ってたぜ!」
「そうだったんだー!」
ひとしきり騒いだ後、子供たちはハントに質問する。
「なあ、おっちゃん。おっちゃんも探偵なんだろ? じゃあ事件とか解決したりすんのか? 殺人とか」
「いや、俺は頭良くないからな。推理とかそういうのは。俺は足で稼ぐタイプだし、浮気調査とかそういうのがメインだなあ。コレ、ウチのチラシ」
「「「「……『猫の散歩も引き受けます』???」」」コレ、ほんとに探偵の仕事か?」
「元太君!」
「ああ、いいんだよ円谷君だったね。ま、ウチは探偵の名前借りた『何でも屋』さ。殺人事件とかにはあんまり、ね」
子供たちのうち、コナンを除く3人はガッカリ感を顕わにする。しかしコナンは興味深げにハントを見遣った。ハントはハントで、コナンにニヤリとした笑いを送る。
と、そこに元太が思慮の無い言葉を吐いた。
「あー、探偵っつーからカッコ良く殺人事件とか解決すんのかと思ったのによー。俺が探偵だったら、ずのーめいせきでカッコよく推理ショーとかやって、殺人犯とか追い詰めてやっつけて、ゆーめーになってやるんだけどな!」
「僕だって、やるときはやりますよ! 頭の回転じゃ……」
光彦も、元太の発言に乗っかる。が、光彦は息を飲んだ。歩美はソファに腰掛けていたが、思わずコナンの座る
子供たちを、ハントが見つめていた。厳しい、あきらかに気分を害した、という様な視線である。そしてハントは大きく溜息を吐くと、目を閉じてやれやれと
「俺だからいいけれど。正太郎の前では、絶対にその台詞、言わないでくれよ?」
「ど、どうし、て」
「正太郎の、俺の前のお
「「「「!!」」」」
ハントの瞳は
「で、誰が犯人なのか不明だったんだが。そこにエラッソーな探偵が現れてなあ。エルキュール・ポアロみたいな奴。だけど、あの性格が許されるのは清涼剤としてヘスティングス大尉が居るからだよな」
「「「「……」」」」
「死んだ被害者に、申し訳程度にすら祈りもせず。偉そうに喋りまくって。警察もへいこらしてさ。胸糞悪い推理ショー……。被害者の屍の前で、被害者遺族である正太郎の前で、『ショー』って言いやがったんだ。『これでまた、わたしの名声が』って言いやがったんだ。
犯人は逮捕されたんで、正太郎は文句すら言えなかったよ。正太郎が言うには、犯人もトリックもわかってたそうなんだが。小学校にも入ってない子供の言う事だから、警官たちも本気にしなかった」
「「「「……」」」」
「『ぼくのお
そして子供たちは、悄然として探偵事務所を辞去したのだった。
*
「どう? あの子、コナン君? だったかしら? 帰った?」
「ああ、明美さん。変装してここの事務をやってもらってたんだが、万が一彼がしょっちゅうココに入り浸る様なら、どこか潜伏場所を別に考えないといけないな」
奥の給湯室から現れた宮野明美に、ハントは肩を
そしてエイトマン・ネクストは、更に姿を変える。テクスチャ画像がベタベタとその表面に貼られるような現象が彼を取り巻くと、その身長は一気に縮み、そこには小学1年生ほどの少年が立っていた。その髪は、緑のクセッ毛。東正太郎、である。
明美は声を掛ける。
「父親と変身超人と子供との1人3役は、厳しくない?」
「厳しいけどね。本性に近いのはエイトマン・ネクストだけど、人間としてはお
「とりあえず、わたしの変装もう少し
「やれやれ……」
正太郎は、疲れたように
推理『ショー』って、被害者の御霊や被害者家族とかに物凄く失礼な表現だと思うんです。わたしだったら、赦せないかなあ……。
というわけで、探偵リュウ・ハントは推理系じゃなくアクション系探偵です。エイト○ンの東八郎、鉄○28号の金田正太郎みたく。