今、藩登龍探偵事務所には小林メイことメイ姉さんこと宮野明美、灰原哀こと宮野志保、そして江戸川コナンこと工藤新一の、『黒ずくめの組織』に関わっていた者たち3名が勢ぞろいしていた。彼ら3名は、探偵事務所の応接セットのソファ、その来客側に一同に坐している。
まあ本来メイ姉さんは探偵事務所側の人間ではあるのだが、今回は灰原およびコナン側の人間としてこの場にいる。そしてホスト側のソファにはハント探偵が座っていた。コナンが口を開く。
「なあハントさん。あんたまだ色々秘密にしてる事あんだろ」
「あるぞ。というか、秘密にしてる内でも、積極的に話そうと思ってたけど前回君がいっぱいいっぱいだったから話すのやめた事柄、聞かれなきゃ話す気はないが聞かれたら話そうと思ってる事柄、聞かれてもあんまり話す気はない事柄、はなから話す気ない事柄などなど色々あるが」
「……とりあえず俺が前回いっぱいいっぱいだったから話すのやめた事柄、話してくんない?」
「いいぞ。ただし分かってると思うが」
「ああ、聞いた事はここだけの話ってことで、誰にも話さない」
「いいだろ。明美さん……メイ姉さんは最初から秘密にして欲しい事は話さないって契約してるからいいが、灰原サンも?」
「わかってる。恩を
ハントは頷くと、いきなり姿を変えた。彼の身体にテクスチャがベタベタと貼られるようなイメージがまとわりつき、その姿はコナンたちと同学年の子供……東正太郎少年のものに変わる。既に知っているメイ姉さんはともかくとして、コナンと灰原は驚きに目を見開いた。
「な……。あ、東ぁ!?」
「嘘、東君……?」
「そういうこと。僕と『
「お前なぁ……」
非常に疲れた顔をしたコナンだったが、次の瞬間何がしかに気付いた様子で、ハッとした表情を浮かべる。
「おい、東、ハントさん、いやどっちで呼べばいい?」
「頼むから、その折々で表面に出してる姿で呼んでほしい。正体バレは避けたいんでね」
「じゃ、東。その姿を大人と子供とに変えるのって、何かしら魔法とか超能力とか、そういう類か?」
「いや、これは魔法的技術……。いや、魔術とか魔法とかを区別する人もいるけど、僕はあえて区別しない。
ともかく、この変身は純粋に機械工学的なテクノロジーの
コナンは一瞬面くらったが、しかしまだ食らいついて来る。
「そ、そうか。じゃあその機械工学的な変身って、他人に、いや正直に言おう、俺に応用できるか?」
「できない。いやエドガーが自分の身体を機械工学的、生体工学的に改造手術して、『こうなる』覚悟があるんなら、不可能じゃ無いが」
そう言った正太郎は、自分の左手を腰だめにし、右手を真っ直ぐ自分の左ななめ上に掲げる、某一号の変身ポーズを取る。まあつまりは、改造人間になるんなら、不可能じゃねーよ、と言ったのだ。
「そ、うか……。え゛。そういうことだと」
「東君って、改造人間なのかしら?」
「ああ、いや、違う。メイ姉さんにはもう最初に会った時から知られているんだけどさ」
そう言って、正太郎は再び姿を変える。黒い地色に赤、青、シルバーでのアクセント。胸板には赤で大きく『8』の文字。灰原は息を飲んで、目を見張る。
「エイトマン・ネクスト……」
「な!? アレは都市伝説の類だろ!? 闇に紛れて人知れず悪を討つ正義のヒーロー、スーパー・アンドロイド!」
「いえ、『組織』では既に何度か邂逅して、実在を確認してるわ。だけど実力は『そこそこ』程度の、中身もアンドロイドじゃなく仮装したヒーロー気取りだって思われてた。でも……。なにかの事件でジンが交戦して、抗戦を断念して撤退したって話があってね。それ以来、『組織』に取って最大級の脅威の1つに数えられてるらしいわ」
「ああ、その事件なんだけど。わたしがジンに殺されかけた時に助けてもらって、それ以来
メイ姉さん……宮野明美の台詞に、コナンと灰原はしばらく言葉も出せなかった。エイトマン・ネクストは正太郎に姿を戻す。コナンは長々と溜息を
「そっか、駄目かぁ……。いや、な。灰原が例のクスリ……。
「流石にあんな膨大な、薬物の組成データなんて記憶してないわ。わたしは天才的だって色々と褒めそやされたけれども、わたしの頭はコンピューターじゃないのよ」
「僕の頭の中身はコンピューターだけどね」
「あ、ごめんなさい。
「な、なあ東。その変身が応用できねーんなら、魔法とか超能力とかで俺の毒、解毒できねーのか?」
「できるよ」
「なら!!」
一瞬喜色に溢れたコナンだったが、正太郎はソレを叩き潰す。
「薬物を消すだけだから、いったん変化した年齢は変化したまま固定されるけどな」
コナンはソファに沈む。撃沈する。轟沈する。爆沈する。
「まあでも、今のままよりはマシなんじゃないかな」
「何処がだよ……」
「お前ら2人、今のままだと小学一年生レベルの肉体年齢に固定されたまま、再度の成長もしないぞ。ざっくりと霊視した結果だけどさ」
「「な!?」」
「まあ、今のままならソレでも問題ないけどさ。いつ何時、この状態が解決されるかもしらんし」
コナンは灰原に泣き付く。
「は、灰原ぁ! 頼む、一刻も早く解毒剤を!」
「わ、わかった。いえわたしも、わたしは再成長するんなら変化したままでも、かまわなかったけど。でも一生このサイズのままってのは」
「それはマズいわよ、志保」
「まあ、最悪元の高校生レベルに戻れなかった場合、魔法か超能力かで毒消すからな」
「「わ、わかった」ぜ」
「お願いするわね、正太郎君」
コナンはしかし、大きく
「ったく、アンドロイドなんて超科学の存在が、どうしてこの時代に現れるんだ。しかも超能力や魔法なんて非科学的なのと共存してるし。
「滝の裏が発進口なのが、通なのは否定しないよ。だけど超能力も魔法も、非科学的なんかじゃないぞ。超能力は第3波動とか色々理論も論文も出てる。魔法はなんか最近の小説とか創作物で科学と相反するような描写が多く出ているけどさ……」
そう言うと正太郎は体内の無線装置を動かしリモコン仕掛けのプロジェクターを半
「魔法はアレはアレで、自然界に存在するまだ一般の科学では未発見の、
……自然の現象を研究し、その研究結果を解析し、利用し役立てる。その『科学』とどこが違う? 『魔法』は『科学』だよ? その中でも一番なじみ深い『自然科学』だ。そしてそれを利用した結果である『科学技術』そのものだよ」
「あー、なんか理解した、したけど」
「なんていうか、感覚的に、ね」
「ちょっとズレがなあ」
「そうねえ」
「第一、『科学』って言葉は広いんだ。国語や音楽だって『人文科学』だし、社会科とか歴史学、政治や経済なんて『社会科学』だ。全ての学問は、『科学』なんだよねー」
そして今度は、正太郎が大きく息を
「第一さ。君ら魔法関係したクスリで小さくなっておきながら、何いまさらな事言ってんの」
「「えっ」」
あまりの言葉に、コナンと灰原の目が点になった。
わたしの他作品でもよく言ってますが、魔法は科学です。科学と魔法が相反するようなものの風潮がありますが、魔法は『神秘的現象を解明して、人間が利用するための学問』すなわち自然科学そのものなのでございますですだすどす。
魔法は科学だ!! 科学の一分野だ!!
ちなみに全ての『学問』は科学ですだよ。自然科学、社会科学、人文科学。そして全ての技術は科学技術ですだよ。
やったぜ、科学万能。