藩登龍(リュウ・ハント)探偵事務所   作:雑草弁士

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File007:いろいろとブチまけた(後編)

 正太郎は、さらりと爆弾発言を行う。

 

「第一さ。君ら魔法関係したクスリで小さくなっておきながら、何いまさらな事言ってんの」

「「えっ」」

 

 あまりの言葉に、コナンと灰原の目が点になった。

 

「いやまて待てマテ」

APTX(アポトキシン)4869はきちんと薬学上の産物よ!?」

「でもさ。今の時代の生薬(しょうやく)とか漢方薬だって、いや生薬に限らず実際には成分がわかって一般販売してる薬だって実際には生成方法が不明なため薬草なり昆虫なりバクテリアなりから抽出してる物も、多々あるんだろ」

「そうなのか、灰原」

「え、ええ。ええ、そうだけども……」

「ソレにさ。小さくなったとき、その質量差どこいったの。工藤新一が江戸川コナンになったとき、ダブダブの服は着てたけど、老廃物の痕跡とかまったく無かったって。質量保存の法則とかさ、質量はエネルギーだから、エネルギー保存の法則にも喧嘩売ってる。魔法的現象以外に何の答があるんだって話」

 

 正太郎は真っ青になった灰原に向かい、問う。

 

「薬の組成、覚えてるだけで良いから、少し言えるかい? 物は試しで」

「え、ええ。たしか……」

 

 そして灰原は、覚えている限りの薬の組成を語る。コナンとメイ姉さんにはまったく理解できないが、正太郎はうんうんと頷く。

 

「ああ、やっぱり。昔から長寿とかアンチエイジングとかに効果がある類の薬、厳密に理屈が解明されていない類の生薬まで、試験的に組み込んだだろう。その結果、一部の薬の組成がコンフリクト起こして、その結果、薬が『合わない』生物に対しては強烈な毒性を発揮した上で、クスリそれ自体が自壊するシーケンスが起動する。その辺までは読み取れた」

「マジ?」

「ほんと?」

「凄いわね、正太郎君」

「ただ、その自壊プロセスと毒性効果発揮のプロセスだが。薬効の分子構造そのものが疑似的に魔法陣や魔法式構成して、魔法効果発揮してる」

「「「マジ!?」」」

「おおマジ」

 

 正太郎は腕組みをして、ちょっと考えながら言葉を発した。

 

「どうして毒性を発揮するか、どうして死体から毒物が発見されなかったか、そのあたりが理屈として不明だったんじゃないか? だけど、過去に中国皇帝とかが飲んだ不老不死の薬だけど。丹紗とかの水銀化合物は別にして、毒性の無いはずの物でもある組み合わせで飲んだとき死んだりしたから、そんなもんだと思ったまま使ったんじゃないか?」

「わ、わたしの前任者からの引継ぎ事項で、この組み合わせが効果高いけど、被験者を殺す可能性もあるから注意って。だから別な、近い組み合わせの薬を試したら」

「あー」

 

 コナンと灰原は、特に灰原は肩を落とす。正太郎は続けて語った。

 

「おそらく幼児化現象も、同じように分子構造が魔法陣か魔法式を構成して、人が飲んだという事実がトリガーになって発生したんだ。細胞の自己破壊プログラムの偶発的な作用で、神経組織を除いた骨格、筋肉、内蔵、体毛、それらすべての細胞が幼児期の頃まで後退化する。だけどそんな精密コントロール、普通の技術で錠剤だかカプセルだか1錠で効くわけがないだろ?

 というか本当に脳を含む神経組織が幼児期まで後退してないってマジ? 後退してるだろ。大人っていうか高校生レベルの脳髄が、幼少期の頭蓋骨の収まるわけ無いんだから。幼児化した脳に、17~18歳の魂が小さくなった瞬間にあらためて宿りなおした、って事だよたぶん。小さくなったって自分の身体なんだから、霊的なつながりは……」

 

 灰原はソファから床に崩れ落ちて、orz状態になっている。コナンはコナンで、世の中の理不尽というか、今まで心理的に否定し切っていた魔法とか超能力とかそう言ったものの存在を認識させられて、精神的にショックを受けていた。メイ姉さんはそんな2人をどうしたものか困り切っている。

 彼らを後目(しりめ)に、正太郎は話しを続けた。

 

「あともう1つ。君ら唐突に僕と言う、SFとか魔法とかの要素が滅茶苦茶濃い存在に、本当に唐突に突然にブチあたったと思ってるかもしれないけれど。この世界って、正直魔法的な要素、ゴリッゴリに裏で存在してるからね」

「「「え」」」

「犯罪とか事件とかに深く関与しといてさ。あと犯罪組織とかに関わっててさ。なんで今までそんな要素にぶつからなかったってもんだよ、まったく」

 

 コナンは眉をしかめて、立ち上がる。

 

「ど、どういう事だよ」

「あとしばらく月日が経過すれば、君らにもすぐわかる。この世界は、ループしている。いや、ループっていうとちょっと違うか。なんていうのかな、スプリングかスリンキー……和名トムボーイってスプリング状の玩具(オモチャ)みたいな、螺旋を描いてるっていうか。

 3月末か4月頭か、その辺を契機にして、また前年度の同時期に戻ってるんだ。ただ、この世界内部の人間たちからすれば、前の1年のことは記憶から失われないで連続的な時間として繋がってる。君たちも、この事を僕から知らされなければ記憶と言うか認識を誤魔化されたまま、また小学一年生を最初から……というのとは違うかな。新学期としてやり直してたはずだよ。本人の認識としては進級して、だけど実際には進級もクソも無しで」

「ば、馬鹿な!!」

「嘘よそんな!」

「まって、ちょっとまって」

「いや、次の4月になりゃわかるから。僕から言及されたから、君達3人の認識は修正された。信じても信じなくても。だから次の4月で、周囲が小学一年生の世界をやり直すのを多大な違和感をもって感じ取るさ。

 ちなみに僕/俺/わたしは、この世界は、この事態は不健康だと思ってるんで、なんとか解決したいと思ってるよ。なんか魔法的というかそんな事態っぽいから、今までは表面的に補助的にしか使ってなかった魔法とか、プロのレベルにまで磨き上げようとしてる」

「「「……」」」

 

 コナン、灰原、メイ姉さんは半信半疑だったが、それでも最終的には正太郎が嘘を言っていない、と理解した。まあコナンと灰原は、『正太郎がそう信じているだけではないか』と疑ったままであったが。まあ次の4月になれば、強制的に判明してしまう事だ。

 

 

 

*

 

 

 

 メイ姉さんの用意してくれたお菓子とお茶を頂きながら、コナンは正太郎に問いかける。

 

「なあ。お前がエイトマン・ネクストだったって事はよ。アレも嘘か? お前の前の義父さんが遺産目的で殺されて、それが原因で推理ショーとか大嫌いだっての」

「……それは嘘じゃないよ」

「……そっか」

「東鋼助お義父(とう)さんは、僕の正体を知った上で僕を人間の子供と同じように扱ってくれたからね。本当に大好きだったよ。僕も何か、僕の超人的能力使って株式予想とかして恩返ししようかと思ったんだけどね。お金は充分あるからいらんって笑って断られた。ははは。(あずま)さんってのは、どの(あずま)さんでも高潔なのかね。初代エイトマンの東さんもそうだった」

「ああ、初代がいて、それでネクストなのか、お前」

 

 本当に嬉しそうに、そして寂しそうに笑う正太郎に、コナンはそれ以上何も言う事ができなくなる。コナンは毛利探偵を麻酔銃で操り人形にして、それで推理ショーを展開し、毛利小五郎を一躍有名人にしているから。『黒ずくめの組織』関係の事件にぶつかる事を願って。

 

「僕は本来エイトマンとは何の関係もない人工? 知性体だったんだけどさ。エイトマンの後継者、エイトマン・ネオの東光一(ひがしこういち)さんに助けられた事あってさあ。それで僕もエイトマンの系譜に類する機械体を製造して、エイトマン・ネクストを名乗ったんだよね。

 ちなみに初代エイトマンの東八郎(あずまはちろう)氏は本当に尊敬できる人格者で、無敵のアクション系探偵だよ。ハードボイルドじゃないけどね、表向きは売れないへっぽこ探偵を装ってたって話だから」

「そっか……」

「あとは鉄人28号を操る金田正太郎探偵とも知り合ったっけなあ。彼も正義漢だった。正義感溢れる少年探偵だった。それで感銘を受けてね。鉄人の設計をコピーしてライバルロボのブラックオックスかけ合わせて、鉄人29号DX(デラックス)造ったんだ」

「それでお前、東正太郎、なのか」

「まあね。君が江戸川乱歩とアガサ・クリスティーを混ぜて江戸川クリスにしたのと同じような物」

「コナン・ドイルだ!! え・ど・が・わ・こ・な・ん!!」

 

 メイ姉さんが、お茶のお替りと茶菓子のお替りを用意してくれる。彼らはしばらく歓談していた。まあ灰原はほとんど黙ったまま、聞き役に回っていたが。

 

 

 

*

 

 

 

 さて、そろそろ話し合いもいったんお開きになりかけた、夕刻の頃合い。コナンと灰原が荷物に手を出して帰宅準備を始めようとしたところで、正太郎が言葉を発した。

 

「江戸川。灰原さん。君たちは、魔法に手を出したいか」

「「!?」」

「江戸川は、探偵として完璧を目指したいならば。これから先も探偵であるならば。予言しよう。一般的なトリックだけじゃなく、必ず魔法的なシステムを用いたトリックにぶつかる。正面衝突する。その際に、魔法的知識が無い君は、必ず誤った推理をする。魔法的解決方法を持たない君は、必ず犯人を取り逃がす。最悪の場合、間違った相手を犯人と決めつけてしまって、冤罪で無実の人を監獄に送り、そして最悪中の最悪、その人を獄死、刑死させてしまう」

 

 コナンは真っ青になった。次は灰原哀の番だ。

 

「灰原さん。君は少し話を聞いただけで、少し言葉を交わしただけでわかる。素晴らしい薬学者、素晴らしい科学者だ。才能のレベルは、下手をするとライガー教授にすら届いているかも知れない。まあ人格面ではライガー教授ほどに逝ってしまってない事を祈るが」

 

 灰原はライガー教授を知らないが、ライガー教授を引き合いに出すのは正太郎にとって、才能を褒める意味で最高の誉め言葉だ。

 

「だがしかし、神秘方面での知識がまったく無い。だからこそ君は、毒薬では無いはずの、不老長寿なのか若返りなのか、それは知らないけれど。APTX(アポトキシン)4869などという『秘密裏の毒殺にも使える』危険すぎる薬物を製造してしまった。いいのかい? あんな悪の『組織』に、『黒ずくめの組織』に利用されるばかりで。君の才能を使い潰されて。

 正しい知識さえあれば、APTX(アポトキシン)4869の様な危険性を避けて、まっとうな効能を持つ薬を生み出す事もできる。まっとうでない効能を持つ薬を、生み出さない事もできる、そして魔法の力は同時に物理的な力、パワーだ。利用しようと近づいてくるやつらを一蹴(いっしゅう)する事もできる」

「……」

 

 そして正太郎は、2人に向かい言葉を続ける。

 

「答えは今すぐに、とは言わない。そのうちでいい。どうせこの世界は螺旋(らせん)を描いてループしてるんだ。これが解除できなければ、君らが成長しなくたって、答えをいつまでだって引き延ばしたって、なんら問題は無いし」

「「……」」

「まあ、よくよく考えてくれよ。ただ、もし魔法を学ぶつもりがあるなら! 魔法使用に関して徹底的なモラル教育はするからね! 何の資格もない人間に拳銃を渡す、レベルじゃない。核兵器のスイッチをポイっと渡すに等しいんだ。その覚悟と禁忌を、きっちり学んでもらうからさ」

「「……」」

 

 正太郎は、お土産のアップルパイ……正太郎謹製であるが、それを1台ずつ2人に渡し、手を振る。

 

「んじゃ、今日はさよなら。また学校で」

「あ、ああ。んじゃ、またな」

「今日はありがとう。またお姉ちゃんに会いに来ても?」

「それはいつでもいいよ。彼女は基本、ここに常駐してるから、僕がいない時でも遠慮しないでいい」

「「ありがとう、それじゃあ」またな」

 

 2人は去っていく。正太郎は姿をハントに変えると、メイ姉さんに向かって言った。

 

「んじゃ俺はこのまんま、浮気の張り込み行ってくるわ」

「いってらっしゃい。今日はご苦労さま」

「んあ。んじゃ、適当な時間になったら3階のフラットに帰宅していいから。俺ぁカギは持ってるから、戸締りだけ遠慮せずにきちんと閉めてな」

 

 ハントはマ○ダ・ファミリ○に乗り込むと、仕事に出掛けて行った。

 

 

 

*

 

 

 

 翌週月曜日の昼休み、給食を食べた後でコナンと灰原は、正太郎に頭を下げて弟子入り志願をした。ただその場を歩美、元太、光彦に見られて、誤魔化すのにかなり苦労した模様であった。




工藤新一君であるコナン君には、冤罪で無実の人を死刑にする可能性が、ってのは深くブッ刺さった模様。
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