「実は勇者じゃない」から始まる激重美少女たちの『花嫁競争』〜勇者じゃないなら誰とでも結婚できるんでしょ?なら私と結婚しよ? 作:水葉わいん/わいん。
【グロウside】
「――よく頑張ったな」
俺は〈
ふと背後を一瞥すると、そこには呆気に取られた顔で俺を見つめる少年の姿。
彼の体の至る所についた切り傷は、壮絶な戦いを物語っていた。
それにしても……よくD級冒険者の実力で〈
相当頑張ったのだろう。
俺は聖剣を構えると、ありったけの魔力を込めていく。
次第に魔力は込めづらくなっていき……同時に聖剣は淡い青の光を放ち始めた。
「……あとは全部、俺に任せろ」
さらに魔力を込めていくと――刹那、聖剣は目を瞑ってしまうほど眩い光を放った。
――今。
「――ッ!」
俺は聖剣を〈
当然、聖剣は鋼鉄の鎧に阻まれる――が、聖剣は鎧をまるで紙きれのように切り裂いていく。
魔力を最大限まで込めた聖剣は、万物を切り裂くのだ。
青の閃光が晴れた時――床には、真っ二つになった〈
〈
「命を賭けて女の子を守った男に、地面は似合わないぜ?」
呆然と俺を見つめながら尻餅をついていた少年に、静かに手を伸ばした。
――――――――――――――――――――
「――ギルッ!」
少女は抱えていた魔法杖を放り投げて、ギルと呼ばれた少年に駆け寄ると――
「生きてた……良かった……良かった……ッ!」
彼の胸に飛び込み、咽び泣いた。
彼女の安堵で流した涙と罪悪感の混じった表情を見るに……彼女は相当ギル君のことを心配に思ってたんだろうな。
俺たちは上層で転移トラップの発動痕跡を見つけて、すぐさま下層に降りてきた。
そこで見つけたのが、涙を流す少女と罪悪感に染まった表情を浮かべるギル君のパーティメンバーたちだった。
話を聞くと、ギル君は少女を守るために命懸けで〈
その後、俺たちはすぐにギル君の元へ向かい――なんとか、助けることができたというわけだ。
「……グロウさん、彼女たちを邪魔するのも悪いですし、少し離れましょう」
「そうだな」
俺たちは彼女らの声が聞こえないくらいまで距離を取ると……リシアは安堵の息を漏らした。
「……本当に良かったです。もしも、ギル君が死んでいたら……少女は心に酷い傷を負っていたでしょうね」
彼女は空虚を見つめながら、呟くように言った。
彼女の眼差しは後悔と哀愁に満ちているような……そんな気がした。
「……ねぇ、グロウさん」
リシアは俺の手を取ると、ギュッと力を込める。
「(っ……手が……震えてる?)」
リシアの手からは、僅かな震えが感じられた。
「命を犠牲に助けられても……取り残された側は……苦しいんですよ……?」
「リシア……それはつまり……」
「――すみません。余計なことを話しましたね」
リシアは、パシャっと会話を断ち切る。
やっぱり……彼女は、過去に何かを抱えている。
それが癒えない毒のように彼女を今も蝕み続けているのだ。
「でも……もう少しだけ、このままで居させてください……」
リシアは、俺の熱を確かめるように、存在を確かめるように指を絡ませた。
俺には……それを拒むことなんて出来なかった。
結局、ギル達〈不屈の風〉が平静を取り戻すまでの数分間、俺はこのままだった。
――――――――――――――
「――だとしても街に着いてからも、くっついてるのはどうなんだ?」
ノスタリアの街に帰ってきた後。
俺の腕をガッチリとホールドしているリシアを見て、ため息をつく。
道行く人々からは好奇の視線を体に穴が開くんじゃないかといつほど向けられるし……いい加減、離れて欲しいんだが……。
「すみません……けど、離れようとはしたんです……!」
リシアは、申し訳なさそうに話を続けた。
「けれど、その度にどうしようも無い不安に駆られてしまい……気がつけば、くっついているといいますか……」
「……そうかい」
無理矢理、剥がすことはできる。
けれど……さっきの弱ったリシアの姿を見たせいで、俺にはそんなこと、出来なかった。
「……はあ、わかった。今日は好きにすればいいよ……代わりに明日には離れてもらうからな?」
「……!」
俺の言葉を聞いたリシアは、ぱあっと表情を明るくさせた。
「す、好きにしてもいいんですか……っ! じゃあ――」
「――抱きつくのは無しだからな?」
「……むぅ。好きにしてもいいのではないですか?」
不満げに頬を膨らませるリシア。
おい、本当に抱きついたり、拘束したりするつもりだったのかよ。
油断も隙もないな……。
「流石に俺が困る……他のものにしてくれ」
「うーん……じゃあ私のお部屋まで付いて来て貰ってもいいですか?」
「リシアの部屋? 一体、何をするんだ?」
「ふふっ、それは……着いてからのお楽しみということで」
リシアはフワリと微笑んだ。
……本当に大丈夫だろうな?
――――――――――――――――
「――ここです」
案内されたのは、この街で随一の高級宿だった。
確か、大貴族なんかも利用することがあるって有名じゃなかったっけ……?
「り、リシア……ここに泊まってるのか?」
「そうですよ? ……勇者パーティとして貰ってるお金を考えれば、これくらいの宿には泊まっても余裕はありますよ。……大量の寄付をしなければ」
「うぐっ……」
実に耳が痛い話だ……。
「ほら、ここで立ち止まっていても迷惑なので中に入りましょうか」
「お、おう」
そうして、俺は高級感溢れる宿に圧倒されながらも、リシアの部屋へと案内された。
部屋の中は随分と広く豪華で、俺が泊まっている安宿とは比べ物にならなかった。
「それで……ここで一体、なにをするんだ?」
「ふふっ、実は……疲労が溜まっているであろうグロウさんに
リシアはそう言いながら、謎の液体が入った幾つもの小瓶を取り出した。
「……その小瓶に入ってるのは……一体……?」
「これはローションとかオイルとか……それと、色々です」
い、色々ってなに?
……怪しい薬とかじゃないよな?
「さあ……早速始めますので、ベッドに横になってください」
俺の不安など無視して、リシアは俺をベッドに案内しようとする。
「え……いや、俺はマッサージを受けるとは言ってな――」
「――好きにしていいんですよね? 言いましたよね?」
リシアは小首を傾げながら微笑みを浮かべた。
……が、彼女の目は一切笑っておらず、仄暗い感情に塗れていた。
その姿に、思わず全身の肌が粟立つ。
「(どうして、あんなこと言っちゃったんだよ、俺……っ!)」
俺は今更になって、さっきの発言を激しく後悔した。
「ほら、早く横にならないと私から押し倒してしまいますよ?」
「わ、わかったよ……これでいいんだろ」
俺は渋々、ベッドでうつ伏せになった。
すると、仄かに甘いフローラルの匂いが肺いっぱいに広がった。
そっか……このベッド、リシアがいつも使ってるんだもんな……。
じゃあ、この匂いはリシアの……。
「ふふっ、グロウさん? どうかしましたか?」
「――へっ?! い、いや?! なんでもないけど?」
「ふぅん?」
それは俺の反応を揶揄うような声色だった。
「まあいいです。それよりも早速マッサージを始めましょうか」
リシアはそう言うと、小瓶の中からオイルを少量、手のひらに出す。
そして――
「ッ……?!」
冷たい感触を右腕に感じた。
リシアが、オイルを塗った手で触ってきたのだ。
そのままリシアは俺の二の腕から指先まで、滑らかに指を走らせていき、隅々までオイルを塗りたくっていく。
字面だけ見れば、やっていることは、普通のマッサージのはずなのだが――
「なんか、手つきがいやらしくないか?」
さっきから何度も二の腕にオイルを塗っているし、手にオイルを塗る時に関しては、しれっと恋人繋ぎをしてくるし……。
明らかに変な意図を感じるんだが?
「あー……バレました?」
チロリと舌を出し、誤魔化すように笑うリシア。
「バレバレだよ……! やるにしてももっとバレないようにやってくれ……反応に困る」
「バレないようにすればいいんですね? ……わかりました」
リシアは頷くと、マッサージを再開した。
彼女は左腕にもオイルを塗り終えると――
「じゃあ、少し上に乗りますね」
今度は俺の背中に、馬乗りしてきた。
羽のように軽い……とは、この事を言うのだろう。
乗られているはずなのに、全然重さを感じない。
「では、マッサージしていきます……〈
すると、リシアの指先は淡い光に包まれた。
彼女はその手で俺の肩に触れる。
次の瞬間――彼女が触れた場所から、溜まっていた疲労がゆっくりと溶かされていくような心地良さが広がっていった。
あまりの気持ちよさに俺の意識はとろけていく。
「気持ちいいですか? 〈
「ああ……これ、凄く心地良いよ」
「ふふっ、なら良かったです」
続けて彼女は肩の筋肉をほぐしていく。
彼女が俺に触れる度に熱が全身に広がっていき、その熱はずっと溜まっていた緊張やストレスすらも溶かしていく。
やばい……これ……。
ダメになるやつだ……。
俺の意識は徐々に遠のいていき……思考は上手くまとまらなくなる。
このまま……まどろみに意識を預けてしまえば……どれだけ気持ちが良いのだろうか。
俺は、今にも眠りそうになっていた。
その時――
「ん……」
頭上から微かに嬌声が聞こえてきた。
同時に、俺の背中はポカポカとした暖かさに包まれていった。
なんだこれ……まるで、背中全体に〈
気持ちいい……。
でも……あれ?
背中全体に〈
それに、さっきから背中で存在を主張している柔らかな感触は一体……?
「(まあ……いいか)」
俺は思考をやめた。
今はただ……この心地良さに身を委ねたかった。