世界系ヒロインたちに巻き込まれて   作:金木桂

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 そして帰宅。結局帰ったのは午後七時くらいだった。

 リビングに行けば瑞星が今日の夕飯を作っている。

 匂い的に……カレーか? スパイスの良い香りが扇風機が作る気流に乗って鼻孔を刺激される。美味そう。

 

「あ、帰ったんだね。お帰り栄太」

「ああ、ただいま」

「ご飯そろそろ出来るから少し待ってて。あ、でも先に汗を流したいっていうならお風呂沸かしちゃうけどどうする?」

「先カレーにするわ」

「おっけー」

 

 ちょっと待って。

 何てことのない感じを装って瑞星と喋っていたけども、なんだなんだこの新婚夫婦みたいなやり取りは。

 しかも姉は床が露出するようになった自分の根城へ帰っていったため、この家には正真正銘、僕と瑞星の二人っきり。

 ……あれ、二人っきり?

 そうか、二人きり。

 

 可能性を考えなかったわけじゃなけども、こうして実感すると堪らなく緊張が走る。

 同じ屋内に異性と二人。しかも相手は美少女と言っても尚、お釣りが来るような耽美的な美貌の持ち主───と言うと流石に過言かもしれないけども。

 見た目だけならクール系同級生には違いはないので、僕としても普通に対応が難しい。

 なんといってもこんな日は恐らく今日だけじゃないのだ。

 事態に進展が無ければ、明日も明後日も───来週もそうなるかもしれない。

 反射的に唾を呑み込む。甘酸っぱい予感に対する防衛機制。

 僕だって一人の良識人として、一般的男子高校生として、この状況下で不埒なことを妄想をするほど不謹慎で安い感性は持ち合わせていないけどさ。それでも一瞬でも油断をすれば砂糖菓子みたいに甘い香りが瑞星から漂ってきたような錯覚に囚われて、僕の視線はキッチンでカレーの灰汁を丹念に取り去る瑞星へと惹かれてしまうのは、一介の男子として仕方がないことじゃなかろうか。とか自分自身に言い訳を始めちゃうところも我ながら浅ましくて悲しくなる。彼女歴ナシの限界であった。

 

 ううむ。

 考えれば考えるほど蟻地獄の如くドツボに嵌る。

 ならば瑞星を意識しないようにしても、瑞星の存在を認めているからこそ意識をしないよう努めている訳で、じゃあ更に思考を一つ前に進めて意識しないことを意識することを意識しないようにすれば感情がフラットになるかと言えばそんなわけもある訳なく。

 ポケットに突っ込みっぱなしのイヤホンコードみたいに論理がぐちゃぐちゃとしてきたところで瑞星が僕の座るソファーへとやってきた。少し迷って瑞星は隣に座った。隣といっても端と端なので、大人一人分は間にスペースが生まれている。

 

 ここにきてパーソナルスペースを開けてくるか。

 いや、男子と女子の間にはあって然るべきなんだけどさ。

 相合傘とかしてきた時点で瑞星ってそういう、男女だから節度を保って、みたいな堅苦しさとは無縁の天衣無縫で自由闊達な奴だと思っていたんだけど、まあ、朝の一件もあったし、そんなスタンスに変化が生じてきても何ら不思議じゃない。

 

 だからここで真面目な話が出てくるんだろう。

 先程、覚悟を決めたら話すって言ってたあの件。

 カレーが煮込むまでの時間で足りるかどうかは知らんけども。

 

 僕は確信的予測を持って瑞星の口火が切られるのを待とうとして、タイミング良くその唇が戦慄く。

 

「さっきの話なんだけどさ。実は私……」

「ああ、何でも言ってくれ。誠心誠意聞いてやる」

「この世界を混乱の渦に叩き落したいんだよね」

「何でもとは言ったが、本当に何でも言われると困る!」

 

 突然悪の魔王みたいなことを言い始めたぞこの女!?

 てへへとか軽やかに笑みを浮かべてるけども、何がどうなって突拍子も無くそんな危険思考に至った!

 

「いや、6割は冗談。正確には6割2分5厘は冗談」

「6割でも6割2分5厘でも大差ねえよ! つーか4割弱本気なのかよお前!? さっきまでそんなキャラじゃなかっただろ! 僕が姉貴の家で掃除していた数時間の間に一体何があった!?」

「いやさ、キャラ付けするの忘れてたなって。ほら、私ってなんか栄太のお姉ちゃんと比べてキャラ地味だし、鮮烈にイメチェンしなきゃなって思ったんだよね」

「だからって思想を魔王テイストにイメチェンするな! せめて容姿をイメチェンしろ!」

「だって文章じゃあんまり容姿伝わらないじゃん。イラストレーターさんが描いてくれない限り、見た目なんて精々が、文章で赤髪にしましたとか髪留めを新調しましたとか犬用首輪を嵌めましたとか、そんなのばっかりで訴求力に欠けるからね。だからイメチェンするなら分かりやすく思想かなって」

「メタいな! 少なくともお前が犬用首輪を付けたら訴求力の塊だよ! ついでに事件性の始まりだ!」

 

 仮に二人で外を歩けば、間違いなく僕が職質を食らうだろうな!

 

「違う違う。私は付けないよ私は」

「は……? まさかとは思うけど、僕とか言わないよな?」

「栄犬に首輪なんて付けるわけないじゃん」

「点を付ける位置を変えて犬そのものにされた!? やっぱり僕に付ける気だろお前!」

「まあ栄太が望むなら私が装着しても良いんだけど……リードはちゃんと握っててね?」

「私の手綱をちゃんと握っててと言う意味合いで告白されているのか、はたまた特殊プレイに巻き込まれているのか判断が難しいんだが」

「あれ、お父さんが女の人にペット用の首輪を付けるのが好きだから、てっきり男性の一般的嗜好の範疇なのかと」

「娘の前で普段そんなインモラル全開の姿を!? 会ったことも無いからあんまり悪く言うのも気が引けるけども、言っちゃ悪いがとんでもない悪趣味だなお前の親父さん!」

「違う違う。お父さんが持ってるエロ本に出てくる女の子が大体首輪付けてるから、そうなんだろうなって私の想像」

「おっとそれは話が大きく変わったな。それはそっと見なかったふりをしておいてやれ。多分娘にバレていることを知られたら大ダメージ食らっちゃうからな。思春期の男子よりも大の大人の方がそういうのは繊細なんだ」

 

 まだ結婚も何もかもこれからの学生よりも、失うものがある大人の方がどうしてもエロ本一冊当たりのダメージが大きいというのは僕の持論だ。例えばほら、自分の父親がエロ動画をパソコンに大量ダウンロードして、夜な夜なビキニから零れ落ちそうなロリ巨乳の艶姿に耽ってる様子を思い浮かべてほしい。……大分きついだろ? 僕もキツイ。つまりそういうことだ。

 

「うーん、繊細なのかなお父さん」

「え?」

「だってほら、思い出してほしいんだけど、お母さんの首にも首輪の跡が付いてたでしょ? ね?」

「既に身内に実践済みなのかよお前の親父さん!? ああもう、それ以上瑞星家の闇を暴露するな! 僕は見てねえし、仮に跡が付いていたとしたら次会った時どんな顔をすりゃいいか分からなくなる!」

 

 僕には同級生の夫妻の特殊プレイを覗き見る奇特な趣味嗜好はねえから! ワンワンプレイとか瑞星の年齢的にそこそこお年を召しているだろうにお盛んなこって!

 軽口の応酬により、さっきと比較して空気が弛緩しているのを感じる。僕としては妙な緊張がかなり解けたし、瑞星が楽しいなら何よりだ。

 瑞星はくすりと笑って、人差し指を立てて言う。どうも本題はここからのようだった。

 

「で、世界を混乱の渦に叩き落したいって話だけど」

「随分大きく舵を切り戻したが、それ本気で言ってたのか」

「実のところ、もう世界は混乱の渦に包まれているんだよ」

「そりゃウクライナ情勢とか台湾有事とかワールドワイドに話を拡大させれば間違っちゃいないだろうが」

 

 世界はいつだって混迷としている。

 人間の欲によって。

 地球の何処かで諍いは起こり、血が流れ、無辜の人々が死ぬ。

 世界平和なんて未だ夢のまた夢で。

 そもそも、紛争のない日本を始めとする先進諸国ですら少子化だの何だのと国内問題だらけであるのを考えると、火種は何処にでも燻っていて、小さな火花一つで爆発をするんだから、太古より世界は混乱の渦中にいるのではないだろうか。

 

 現代社会に対する見解に、瑞星は首を横に振る。

 

「そういう話じゃないよ」

「じゃあどんな話なんだ、混乱の渦に包まれたっていうのは」

「……ここから話すのは私の罪の話。私の存在が消えても仕方ないくらいの同害報復の話」

 

 静かに呟いた言葉は、声音の割に室内でよく響き渡る。

 罪。

 罰。

 同害報復。

 覿面天罰。

 

 瑞星は自嘲気味に息を漏らす。

 

「私さ、流れ星に願ったら願い事が叶うんだ」

「流れ星。念の為に確認だけど、夜空で煌めくアレだよな。塵が大気圏で燃えて光るやつ」

「……うん」

 

 たっぷりと溜めて、顔を強張らせながら瑞星は言った。

 

 それにしても、流れ星。

 ここ数年、矢鱈と毎晩のように夜空で流れまくっていている、あの流れ星。

 ぶっちゃけそう珍しいものじゃない。

 最近じゃちょっと流れたくらいじゃ誰も話題にもしない程には日常に溶け込んでしまった自然現象。

 昔ニュースで言われていたけども、どうもこの数年の流れ星の9割9分は天文学的にも物理学的にも不可解なものであるらしい。流れ星というのは本来、凡そ観測シーズンというのが定まっていて、それは地球の公転軌道とも関係しているらしい。例えばペルセウス座流星群ならお盆頃、しぶんぎ座流星群ならば正月後半くらいに観測のピークを迎えるという風に。

 

 でも、今じゃ日に一回、多い時は日に二回は流れ星が夜空を走っている。

 一昨日も六月下旬ながら夜空に大量の流星群が流れて綺麗だとかニュースになっていたし。最早、この流れ星を奇々怪々とした自然現象と穿った見方をするのは専門家くらいで、世間的には地球温暖化の影響か何かだろうと一笑に付して、日常の中の美しい自然の一部という枠組みに押し込められてしまっている。かく言う僕も同じ認識で、今宵流れ星を見つけても大して感動を覚えないだろう。昔はいざ知らず、今じゃ四つ葉のクローバーよりも希少価値が低いのだ。

 

 そんな有り触れた流れ星に願いごとをすれば叶ったと。

 信じられないが、瑞星の身に起きている現象よりはまだ信じられる。

 流れ星に願えば叶うなんて───古来より伝わる良くある伝承じゃないか。

 

「それで流れ星に何を願ったんだ?」

「それは……」

 

 今度は、次の言葉まで更に時間を使って、腹の底を全て吐き出すような息を一度吐いて、瑞星は言う。

 

「これを言うと嫌われるかもしれないんだけど……」

「大丈夫だ、僕は瑞星のことを嫌わない」

「本当に?」

「肥溜めの中に落ちてもゴム手袋を付けて引き上げてやる程度には好きだからな」

「それはただの人命救助っていうんじゃないかな。今そういう戯ける場面じゃないんだけど」

 

 ジロリとした冷たい目が痛い。

 言い訳の余地なく僕が悪かった。

 平身低頭。

 

 呆れたように溜息を吐いた瑞星は僕から視線を逸す。その先にはリビングの大窓があって、外の景色、夜の天気を眺めているようだった。ただ、今晩は分厚い雲によって遠大な星光は遮られている。

 

「私さ、本当はこんな性格じゃないの。こんなっていうのは、クラスとかで誰にも明るく誰にも優しく振る舞うみたいな、そういう少年漫画の主人公とかヒロインみたいな感じ。私の本性はそういうのとは全然真逆。根暗で人間不信で臆病なんだ」

「それは、取り繕っていたってことか? ずっと?」

 

 白状するように力なく瑞星はコクリと頷く。

 僕の記憶の中にある瑞星の印象は概ね中学以降だ。でも中学以前だって明るくて他人を巻き込むような印象が……あったっけ?

 だめだ、思い出せない。

 靄がかっている。

 僕と瑞星は小学校どころか幼稚園から同じクラスだったのに、同じクラスであるという一点を除いた記憶が掘り起こせない。

 思えば、ここまでちゃんと瑞星に携わる記憶を掘り起こそうだなんて考えたことも無かったかもしれない。

 ただ、何となく瑞星の言う通り、昔は違ったような、違わなかったような。

 

 チリチリした異物感。

 順当な違和感。

 全てを僕は腹に収めて、話を進める。

 

「なんだって、取り繕うなんてしたんだよ。もしも高校デビューって言うんなら不躾なことを言って申し訳ないけども、そうじゃないんだろ?」

「ある種では高校デビューかもしれないかもね」

「ある種? どの種の話だ?」

「権力が欲しかったんだ」

 

 権力。

 およそ瑞星の口から出てほしくない単語ランキングトップ10に入りそうな単語だ。まだ高校デビューしたかったと言われたほうが腹落ちが良い。これでもし王様にでもなって独裁統治をしたいと瑞星の口から出た日には、僕の三人称は瑞星から瑞星様にランクアップするだろう。ついでに距離を置く。危険人物とは関わらない。中学時代に学んだ平和な学生生活を送る上での鉄則である。

 

「といっても、国家権力とか社会権力とかじゃないからね。別に私は人民にも同志にも興味ないし」

 

 僕の内心を読むかのように瑞星は僕の懸念を否定する。

 国民という言葉を社会主義風味にアレンジして言うあたりは少し気になるけども。幼馴染でクラスメイトの美少女が共産主義者だった件についてって本でも出してやろうか。多分ヒロインがツンデレ銀髪ロシア美少女だったとしても思想が強すぎてギリギリ受け入れられないような気がする。

 

「権力が欲しかったってことは、つまり、今は権力を持っていたんだよな」

「うん。計画通りにね」

「となると、お前の言う権力っつーのは、クラス内の発言権とかそういう意味合いか?」

 

 仰々しい言葉ではあるが、間違っちゃいないとも思う。

 高校のクラスを一つの組織単位として見たときに、クラスに所属する全員の行動や思想に影響を及ぼして自分の意図通りに操舵する───それだって権力の一つだ。たかが学生の集まりだろうが、やれることは少なかろうが、人が人を使うのならば、その背景には必ず権力の影がある。

 勿論高校生だから、権力の背景にあるのは大人の社会みたいに経済力や政治力、利権のような如何にもと言った即物的なものじゃない。高校生程度が権威に感じる属性なんて、顔の造形とか、頭の良し悪しとか、運動神経の良し悪しとか、コミュ力の是非とか、その程度だ。それで言えば僕が教室内で見てきた瑞星は全て持っている。オールパーフェクト。本当は演じていた……クラスメイト達の印象を拐わしていただけなんだろうけども。

 

「クラス内カーストって言葉で言えばより厳密かな。私はどうしても頂点に立ちたかったんだ。でも向いてなかったんだけどね。絶対に向いてない。毎日が茨の絨毯で正座している気分だった。クラスメイトの笑顔も、私を友人と言ってくる大勢の甘言も、総じて薄っぺらくて嘘塗れに見えて、だからこそ、そんな猜疑と疑心暗鬼ばかりの自分自身も嫌だった。良く知らないクラスメイトの優しい言葉1つ1つが私にとって毒物でしかなかった」

 

 なるほど……。

 いや向き不向きで言えば、これ以上ないくらいに圧倒的に向いていると僕個人は思うけどな。まだ入学して3カ月目だというのに、僕のクラスは瑞星瀬亜が有りきで一年二組を語れるのであって瑞星瀬亜無しでは我々は一年二組ではないという謎のイデオロギーに支配されちゃってるくらいだ。クラス内カーストの頂点どころかクラスメイトを恐怖でなく魅力のみで心酔させ、独裁政権を打ち立てることに成功している時点で不向きなはずが無いだろう。

 

「纏めると、流れ星に願ったのは権力……クラス内での立ち位置ってことか? でもそれが回り回って何でお前が全世界の人類から忘れられることになるんだ?」

「違うよ。忘れられたのは後の話。私が権力を欲しかったのは、栄太」

「僕?」

「君のことを守りたかったんだ」

 

 キュンと来た。

 いや冗談ではなく、こうも凛々しく言われると、一般的男子高校生たる僕としたことが、存在しない乙女心が疼いてしまう。

 

「僕が女子になったらどうしてくれる」

「え?」

「コホン。コホホン。それで何を願ったんだ?」

「誤魔化せてないよ?」

 

 誤魔化されてくれ。

 マジで本題に関係ないから。

 

「僕を守ろうってどういう意味だよ。そりゃ僕は非力で弱くて雑魚くて虚弱に見られがちだけども、守られるアレコレの理由なんてないと思うぞ。名字で弄られた程度の話はあれど、イジメられてたりした事実はねえし」

「それは忘れてるだけだよ」

「忘れる……僕が?」

「私以外が……私すらも忘れている、それだけなんだよ栄太」

 

 難解な英文を読み解けと言われたらきっとこんな気分になるだろう。

 なにせ──忘れている?

 そりゃ記憶ってのは時間が経つに連れて風化するし、脳内メモリには存在したとしてもそのアドレスを忘れてしまう。

 しかし、瑞星の言う忘れるという言葉はもっと根本的な話、記憶を根こそぎ削ぐ話って意味合いにも聞こえた。

 

「私が覚えているのは栄太の身に虐めが起きていたという事実だけ。それで中学2年のとき、私は栄太が虐められている事実を世界中が忘れるよう、流れ星で願ったんだ」

「盛大に願う対象が広いな……世界中どころかクラスメイトだけで良いだろそれは」

「だって虐められ顔だったし栄太」

「お前エグいこと言うな」

「間違えた。いじめられっ子だったから」

「言い間違えにしてもそこだけは間違えてくれるなよ!」

 

 虐められ顔なんてワード、いじめっ子の語彙にしかないからな絶対!

 

「でもね、意味なんてなかったんだ。何回でも虐めは起きた。栄太は必ず虐められる。井戸水をいくら汲んでも水が湧き出るのと同じだよ。当時クラスメイトだった原郷いるでしょ。それは覚えてる?アイツが何度も何度も願っても栄太を虐めた。相性が悪いんだろうね。あと原郷の性格も。それで虐められそうになるたび私は流れ星に願ったよ。それ中学3年のクラス替えまで乗り切ったんだけど……覚えてないよね」

「まあ……原郷がいたのは何となく」

 

 記憶の箱を弄ればさした労もなく、治安の悪い角刈りと全中準優勝ボクサーを自称するそいつの面影を思い出した。原郷なんちゃら。名前は単純に忘れた。そいつとは中学2年の時に同じクラスだったが、それはもうステレオタイプな不良で、僕の名字弄りをしてきた一人でもあり……。

 それで……えっと……あれ、なんだっけか。

 それ以上はあんまり覚えてない気もする。

 思い返せば当然だった。気弱脆弱な僕が自ら危険に寄るはずもない。

 

 と、以上が僕の思い出せる原郷たろう(名前が無いと不便なので仮名である。平仮名だと脳裏で覚えている奴の厳つい顔も多少マシに思えてきたかもしれない)の全てであり、しかし、話の流れからして、僕はどうやら奴に虐められていたらしい。なんて奴だ。

 人を見た目で判断しちゃいけないとか言うけど、そんなのは正常性バイアスを助長するだけの流説に過ぎない。断言しておくが、世の中ヤバい奴はちゃんとヤバい格好をしているものなのだ。

 

 ただ一つ、肝心なことに、僕には虐められていた記憶が無い。

 確かに中学二年生で厨二病真っ盛りな僕であれば、名字どころか言動から趣味嗜好、好きな女の子のタイプまで、幾らでも因縁の付けようがあるだろうけども、それらを全て僕が忘れているとしたら。

 記憶が無いとするなら。

 僕はどのくらい自分の人生を正しく認識できているんだろう。

 

「お礼を言うべきなんだろうけども、全く実感が湧かないな」

「そういうもんなんだよ、流れ星に願うって」

 

 瑞星は自分の髪先を指で握りながら言った。

 流れ星に願えば叶う……それが事実なら、何でも叶うのなら、瑞星はさながら神様じゃないか? 神様よりも現人神という言葉が正しいかもしれないけども。

 

「流れ星に願うねえ……それってさ、誰でも何でも叶っちゃうものなのか? だとすれば危険と言うか、世界が簡単に無茶苦茶になるって言うか、一個人の手に余るような気がしてならないぞ」

「何でも叶う訳じゃないよ。願って叶うのは誰かの記憶に関する願いだけなんだ。恋の願いとか世界平和とか願ってみたけど、そういうのは何も変化無かったね」

「へえ」

「誰でもっていうのも違う気がする。これは確信とまではいかないけど、少なくとも、昔栄太に教えたときは何も現実にならなかったかな」

「教えた? 僕にか?」

「うん。虐められた記憶と十把一絡げに栄太からは消えちゃってると思うけどね」

 

 消えてるな。そもそもが瑞星と仲睦まじく話していた記憶だって僕には無いんだ。

 ……しかし色々とぶちこんでくるな瑞星は。

 正直整理する時間が欲しい。僕も言われてばかりで、すんなりと受け入れて理解するのが難しい。それを言語化するなんて以ての外。

 そんなことを考えながら、ふとカレーのスパイシーな匂いが意識を揺らがす。

 そういえば、カレーを作っている途中だったよな。

 ……20分くらいもう経ってるよな?

 

「話の途中で悪いが、続きはカレーの後でも良いか? これ以上話し込んだら確実に焦げるぞカレー」

「わっわっ……! そうだね! そうする!」

 

 慌ただしく瑞星はソファーから立ち上がるとキッチンへと駆け込んだ。

 

 

 

 

 

 更に長引きそうだった話を中断したのは我ながら機転が効いていた。グッジョブ僕。

 おかげでカレーを食べながら話を整理する余裕が出来た。

 

 時系列を纏めてみる。

 

・中学2年まで

僕と瑞星はクラスメイトで、そこは記憶通り。史実通り。瑞星がそれ以上僕の記憶を消していなければ───だけど。

 

・中学2年〜終わりまで

僕は虐められ始めたらしい。しかし僕にはその記憶がなく、瑞星もさえ触り程度しか記憶が残っていないような言い方をしていた。瑞星はその期間、何度も流れ星に願い事をして、僕の虐めを無くすために尽力していたみたいだった。

 

・中学3年〜高校1年6月まで

虐めを忘れた僕は特に何事も無く進級と進学を重ねる。一方で恐らく中3の春から瑞星は権力とやらを求めて、俗な言葉で表せば陽キャデビューとやらをしたのだろう。つまり今の瑞星瀬亜だ。そして手にした権力で多分、教室内で虐めを起こさないような世界を作り上げたのだろうと思う。僕みたいな、肩書きはともあれ関わりが薄い人間ですら助けようとする瑞星のことだ。僕には見えないところでは色々と骨を折っていたのだろう。虐めが再発生しないように。

 

・高校1年目の6月21日

つまりは昨日のこと。瑞星瀬亜は全人類から忘れ去られた。忘却の対象になった。両親から家を追い出され、僕の家に辿り着くまでは学校をサボって一人で行動をしていたらしい。

 

 ううむ、いざ箇条書きに正せば気になることが多いなおい。

 気になったのは二つ。

 一つ目は中学2年生のとき、虐められていた僕を助けた点。

 僕なんて瑞星から見れば教室内にいる知り合い寄りのあまり親しくないクラスメイトだったはずなのに、なぜそこまでして心を砕いて助けようとしたのか。瑞星は委員長気質じゃないはずだ。本人も自分のことを臆病で人間不信と自虐的な評価をしていたし、正義感から他人を助けようなどと考えるタイプじゃない───これがただの偏見だったら申し訳ないけども。

 

 二つ目は願い事が叶えられるのは瑞星だけだったという点。

 僕じゃできなかったと言っていた。

 それ以前に、願い事を流れ星に願うだなんて古来から続く風習みたいなもんで、こんだけ毎晩流れ星が現れるんだ、僕ら以外にも沢山星に願ってる人間はいるだろう。その中には瑞星と似た願いを持つ人間だっているはず。

 でも、事実として、願って叶うのが瑞星だけだとすると。

 昨日、家なき子になった瑞星から存在を奪い世界から排斥した諸悪の根源とは───瑞星自身という事に他ならない。

 

 その可能性を認識しながらも口に出さなかったのは、瑞星自身、理解しているように見えたからだ。

 同害報復。

 目には目を、刃に刃を、存在には存在を。

 他人から記憶を消し去るということは、存在の重みを奪うことに等しい。記憶とは人生だ。ミルフィーユみたいに記憶が重なって、人間は出来上がっている。

 

 瑞星が存在を略奪されてしまったのは、彼女もまた、他者の存在を奪ったからだ。

 そういう意味での同害報復。

 そういう意味での因果応報。

 

 でもその場合、翻って、僕のせいにならないだろうか?

 中学二年の瑞星は僕の虐めを回避するべく、流れ星に願った。流れ星は瑞星のために願いを叶えた。でも利益を最も享受したのは僕だ。僕しかいない。

 とすれば、同害報復は誤りだ。

 因果は応報に掛かっていない。

 危害を加えるべき相手はこの僕だ。

 瑞星は実行犯という意味では加害者であることに変わりはないかもしれないけども、この一件で責められるべきは利益の不正授受をした僕なのだ。

 それすら判別出来ず、何が流れ星だ。願いを叶えるだ。何が───記憶を忘れさせるだ。

 

 僕は瑞星とカレーを食べながら流れ星を呪ってみた。記憶を消すとかいう巫山戯た願いを叶えてしまう流れ星───本当は流れ星ではなく悪魔や邪神が気まぐれに叶えてる可能性すら考えてしまうが、ともかく、迷惑千万な事象であるのは間違いない。だから───全て元通りだ。僕が虐められていた記憶も、僕を虐めてた奴の記憶も、瑞星に関する周囲の記憶も、全て元通りにしやがれ。じゃねえとAIでフェイク動画作ってやるからな。それはもう、流れ星かと思って目を凝らしたら表面に有名ホモビ男優がソファーで腕組みして凭れ掛かってる図が見えるみたいな、品位の無いフェイク動画をインターネットに流してやるからな!

 

 と、カレーを頬張りながら、3回ほど繰り返し願ってみたがダメだった。世界は変わらず、僕と瑞星が無言で夕食を摂る現実が連綿と続いている。畜生め。

 

「どうしたの?」

 

 瑞星は僕の様子に違和感を覚えたのか、スプーンで救う動きを止めると首を傾げる。

 ……今さっきまで巡らせていた思考は、流石に正直に言えないな。

 

「ちょっと……言葉に出来ないことを考えていたんだ」

「こ、言葉にできないこと……」

「ちょっと待て。頬を赤らめるな僕から遠ざかるな胸元で腕をクロスさせるな。確信を持って言うが絶対にお前の想像していることじゃないから」

「私は大抵の性癖なら大丈夫だけど、その、カレーで萌えるのはちょっと……」

「予想外の角度でアッパーカットを入れてきたなおい!」

 

 カレーに萌え属性は感じてねえよ!

 どちらかと言えば燃え属性だろ! 辛いし!

 

「ま、まあ大丈夫。栄太がどんな性癖でどんなカレーちゃんが好きでも私はクラスメイトだよ」

「性癖の話なんて欠片もしていないし、食品メーカーのマスコットキャラでも命名されなそうなくらいにベタベタ過ぎる名前すぎるぞカレーちゃん! 一周回って見てみたい!」

「あられもない姿を?」

「瑞星、お前は僕をどういうキャラにしたいんだ!? カレーに興奮する変態に仕立て上げたいのか!?」

「とか言いながらまたルーを掬ってる。エロいね」

「至って普通の食事シーンだよ!」

 

 ルーのことを衣服として捉えてんのかコイツ!

 でもその論理構造だとカレー本体は白米ってことになっちまうからな!

 ああもう、何の話をしてるんだ僕は。

 冷静になれ。Be Coolだ撲。

 そうだよ、きっと今僕はカレーのスパイシーさで体温が上がってテンションまで乱されてしまっているんだ。

 ここは一度箸休めとして漬物を口に入れて食べて気分リセットしてやる。これ以上瑞星にペースを握られて堪るか!

 

「あ、福神漬けをスプーンで慰撫してる」

「慰撫って言うな!」

「今度はライスのライスを広げて福神漬けを出して汚しちゃって……栄太、食べ物で遊ぶのは駄目だよ?」

「お前は言葉で遊ぶのをやめろ!」

 

 いかがわしいことをしているみたいに実況すんじゃねえ!!

 何をやっても言っても無駄だなコイツは!

 あーもう!

 語り部だけが発動可能な必殺技を出してやんよ!

  

 

 と、いうわけで閑話休題(30分後)

 誰が何を言おうが、場面転換(30分後!)である。

 

 

 食事を終え、厄介なカレー作成後の鍋を洗い切ると、自然と僕と瑞星は再びさっきまで座っていたソファーにすとんと腰を落とした。テレビも付けてないこの室内ではカレー臭を吐き出すために付けた換気扇の音と、いつの間にぴとぴと降り始めた雨音、そして互いの息遣いだけが響く。

 

 30分はギャグコメディーがシリアスになるには十分な時間だった。

 ようやく軽口が止まった瑞星は僕をちらりと一瞥すると口元に手を当てて。

 

「カレー、どうだった?」

「まあ美味かったよ。なんなら市販のカレールーを使ってるのにレシピ通りに作るよりもうまかった気がしたけど、何か隠し味とか入れたのか?」

「じゃあ当ててみてよ」

 

 そう来るか。まぁ僕としても食後の余興に付き合うのも吝かじゃない。

 カレーの隠し味と言えば有名どころで言うとハチミツ、インスタントコーヒーの粉、ヨーグルト、チョコ。思いつくのはこのくらいか。でもどれも全然さっき食べたカレーに含まれているかと言うと、うーん。

 特徴的な甘みとか苦みとか、そういうのは無かったしなぁ。

 敢えて言うならばコクが深かったけども、それはルーが優秀だったからという見方も出来るし……あ、そうだ。スパイスの香りが凄かったからターメリックとオレガノみたいな香辛料が多めに入っていたのかもしれない。

 ……いやいや、それは隠し味って言わないだろ。

 

 真剣に考察していれば瑞星がパンと手のひらを叩く。

 

「はい、時間切れね」

「制限時間とか聞いてないぞ。ちょっと出題者としてのホスピタリティが足りないんじゃないか」

「あー、言うの忘れてた。でもね、世界はいつだって説明無しに無茶ぶりをしてくるもんだよ栄太」

 

 なんか含蓄ありそうなことを言うな……。

 ただ言うのを忘れていただけなのにな……。

 

「僕も世界が生きとし生ける物全てに厳しいとは思ってるよ。同感だ。で、答えは何なのさ?」

「気が合うじゃん、流石私たち幼馴染。それで私がカレーに入れた隠し味の答えは……無いです。ゼロ。特に何もいれてません」

 

 思わずそのドヤ顔を殴ろうかと思った。グーで。

 流石に自重したけども。

 真面目に考察を深めた僕がバカだった。

 

「あ、でも愛とか思いやりとか親愛とか答えてくれたら正解をあげてたのにね、残念だったね栄太」

「それは僕への親愛が無いからって意味じゃねえよな? 0=0だから正解って意味じゃねえよな?」

「ダイスキダヨ栄太」

「声ロボってるじゃん。めっちゃ片言じゃん。絶対嘘じゃん」

「月が綺麗ですこすこのすこ」

「夏目漱石の意気な意訳をインターネットで汚すんじゃねえ!」

 

 てか、こいつ意外とネット用語とか知ってるんだよな。

 根が人間不信だからインターネットに浸っていても不思議じゃないのか?

 ……その割には僕には結構ぐいぐい来るけども。

 

 さてと。

 余談はさておき。

 余談と言うには余りにもテンポが良過ぎて楽しかった掛け合いはさておき。

 

「なあ瑞星、お前は僕に隠していることがあるんじゃないか?」

「……え?」

「別に無理矢理聞くつもりはないけども、僕にはどうしても不思議なことがあるんだよな」

 

 瑞星瀬亜は流れ星に願うことで人の記憶を消すことが出来る。

 条件もなく。

 自由自在に。

 

「なあ。瑞星が全員から忘れ去られた中で、何で僕だけがお前のことを覚えてるんだ?」

 

 幼馴染とはいえ肩書きだけ。

 関係値も深くはない。

 瑞星、お前が僕を流れ星に願う対象から外したんじゃないか。

 誰からも忘れられるという願いの対象に、僕だけを含めなかったんじゃないか?

 

「前提が違うな。私……一昨日は何もしていないよ。何も願っていない。当たり前だよね、私に関する記憶を世界から無くして、どうやってこれから生きていくの? 栄太だけが覚えているのは多分、願って消せる記憶の容量に限界があるんじゃないかって思ってるんだ」

「容量限界……?」

「例えばほら、私が好きな相手から私の記憶を消そうとしたら、どうしたって感情的矛盾が生じるよね。だから消えなかったとかさ」

「ならお前の両親の記憶はなんで消えてるんだよ」

「寂しいけど、そんなに私に関心が無かったかもね?」

 

 真実は分からないけどさ、と瑞星は言った。

 友人どころか、家族からの愛さえも疑ってかかるのか。僕なんかよりもよっぽど長い事一緒に暮らしていただろうに。

 人間不信。

 正しくその通り。

 腹の底では誰も信頼していない。

 

「だとすると猶更変だろ。僕が覚えてるなんて。両親が忘れていて、僕が覚えている? そんなこと有り得るか? あまりにも言いづらい事実だけども、幼馴染とはいえ、クラスメイトなだけの僕が覚えているのは道理に合ってないだろ」

「幼馴染だからこそだよ。長年ずっと……ううん……仲良かったのは中学一年生までだけどさ……栄太の家に来たのも幼稚園ぶりだけど……それでも私は栄太の幼馴染だったわけだから」

「幼馴染」

 

 僕は咀嚼する。幼馴染という言葉を。

 認識齟齬。

 そう、認識齟齬が僕と瑞星にはある。

 

 僕には瑞星瀬亜の記憶が残っている。

 でもそれは幼馴染として過ごした記憶じゃない。

 昨日まではクラスメイト以上でも以下でもない、同級生としての記憶だ。

 

 僕の胸中で渦を巻いていた違和感の正体が顕現した。 

 疑懼の氷塊に罅が入った。

 そうだ。

 何が変って、思い返せば色々と変だった。

 

 瑞星が僕のことを名前で呼んでくるのも───。

 さながら気心知れた友人同士みたくジョークを言ってくるのも───。

 

 全部が全部───僕が瑞星瀬亜を忘れているとしか思えない。

 どこかのタイミングから───瑞星の発言通りなら中学二年生以前の瑞星瀬亜との記憶を忘れてしまっているとしか、考えられない。

 

 ごくりと唾を飲み込む。

 信じられないが、信じざるを得ない。

 僕は自ら得た確信を元に核心へとそっと手を触れる。

 

「なあ瑞星、僕たちは昨日初めて話したんだよな」

 

 その言葉に、瑞星は全く持って不思議そうな顔で、首を小気味よく傾げながら口を開く。

 

「何を言ってるんだい? 確かに中学二年で一旦疎遠になっちゃったけど、それまでは仲良く遊んだりしてたよね私たち」

「……それは本当か?」

「栄太……何を言って……」

「僕にそんな記憶はないんだよ瑞星。お前と過ごした小学生時代も、中学時代も、僕には何一つとして記憶に無いぜ」

 

 唖然としたように瑞星の透き通った群青色の瞳が見開かれた。

 

「それにだ。誰かの記憶に関する願いごとだけお前は出来ると言ったが、それが出来るのなら、次の流れ星の夜に思いだせと願うだけで良い……でも出来ないんじゃないか?

嘘を嘘と咎める気なんて欠片も無いけども、それが出来るんならこんなにも困らないはずだ」

 

 瑞星は聞いていなかった。

 もっと言えば僕の言葉なんて耳に入っていない様子だった。

 茫然自失とした面持ちで、唇が小さく戦慄く。

 

「まさか……今まで思い出してなかったの? 流れ星が……叶っていなかった?」

 

 瑞星は手先を震えさせながら窓の外を縋るように見遣る。夕飯の間に窓はカーテンで閉ざされ、夜闇を窺い知ることはできないが、雨音からして今日はやはり星光を見ることは叶わないだろう。

 ……どうも僕の想像と様子が違う。

 嘘を吐いていたと思っていたし、それは少し淋しいことだけどと感傷にも浸っていた。

 しかし、瑞星は本気で信じていた。

 自分の願いが叶っていたと。

 そしてその願いとは恐らく───僕の記憶に関することだ。

 

 怒ればいいのか、許せばいいのか。どれにしても何を言えばいいのか。

 僕は言葉に詰まる。

 

「ごめん、先に部屋戻ってる」

 

 結局、僕が瑞星に声をかけることは出来ず夜が更けて。

 翌朝、瑞星は家から姿を消していた。

 

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