竜として異世界に転ず 作:暁悠
無事に冒険者登録を終えた俺達は、早速
とは言っても、俺達のランクは上からS+、A、B……。適正ランクの依頼は、かなり高度なものになりそうだ。
説明しておくと、適正ランクではない……自分のランクよりも下級のクエストをクリアすると、報酬は通常よりも安くなる。ちなみに、報酬は金銭。
なので、普通に金銭を稼ごうとするならば、自分と同じランクのクエストに挑むのが一番いい。自分よりも上のランクのクエストに挑戦すれば報酬は増えるが……ルディアの〝S+〟が最大ランクなので、それ以前の問題であった。
なので、俺達が挑めるのは最大でSランクの依頼となる。
「どうする? ボクはさ、この〝炎の谷〟の
「実力的にも申し分ないよなー。でも、絶対ルディア単騎で瞬殺出来るだろ?」
「まあね」
「申し分ない……でしょうか……。私は、そうは思いませんけど……」
そりゃそうだ。俺は竜で、ルディアは不明。しかし、トリステスさんは人間なのだから。スペックからして違うので、ここはどうしようもない。
「俺達が守るんで──」
「ああ、共同でクリアする場合は、パーティを編成するのも手ですよ」
アデルさんから、そう言われた。
パーティ……ゲームなんかでよくあるアレか。
「俺達三人で組むとして……名前はどうしよう?」
「名前?」
「ああ。パーティ組むってンなら、カッコイイ名前は必須だろ?」
「確かにね」
まず、リーダーは誰にするのか?
これは、俺になった。
……。
「絶対めんどくさい役目押し付けただけだろうがッ!!」
「そんな事ありませんよ」
「うん、そんな事ないよ」
信じられるかっての!!
前世にもあったよ、こんな事! 完っ全に班のリーダーを押し付け合うアレじゃねーか!!
「信じられるわけねーだろ!」
「だって、考えてみてください。ルディアさんは得体が知れないし」
「え?」
「私は貴方より弱い。適任者は貴方しかいないと思いませんか?」
ぐぬぬ、もっともらしい事を……。
まあ、確かにそうだな。ルディアに任せたら凄い事になりそうだ。
常識人という面ではトリステスさんの方が適任なのでは……? とも思ったが、トリステスさんは実力重視だそうで……結局、リーダーは俺になった。
「いやあ、助かるよ」
「ええ、とても助かりますわ」
絶対面倒な役目を押し付けただけだな。ずっと根に持ってやる。
で、肝心なのはパーティの名前だな。
うーん……あっ。
「割とノリと勢いだが……〝
俺がリーダーなので〝竜〟と付けて、それに加えて〝流星〟……つまり、流れ星。ちょっとお洒落な名前にしてみた。
「〝
「うん、ボクも異論ないよ」
決まりだな。
「アヴラージュさん、ルディアさん、トリステスさん……三名で、冒険者チーム〝
アデルさんの確認に、全員で答える。
トリステスさん、俺、ルディア……。この三人で、今後は行動する事になる。
◇◇◇
ドラゴン討伐の依頼を受理してもらい、俺達は早速〝炎の谷〟に向かう。
〝炎の谷〟とは、俺達が行き着いたアグニル王国と、実質的な隣国であるヴァルネリ王国の間にある小国群……との間にある、灼熱の谷。らしい。
「〝炎の谷〟はさ、人間が入ると溶けちゃうから、ボクとアヴで行くよ」
ルディアから、そう説明された。
って──
「えええええ……そんなおっかない場所に行くのかよ?」
「もちろん! そうじゃなきゃ楽しくないだろう?」
楽しさ云々じゃないと思うんだけどなあ、こういうのって……。
「あ、それならご心配なく」
え?
聞くと、トリステスさんはルディアの魔法講義もあって、魔法が超得意になっているのだとか。元素魔法の中に、各属性の防御魔法──今回で言えば〝
「いらぬ心配だったかな」
教えた本人のルディアが、一瞬だけニヤリと嗤った。
コイツ、さては最初から仕組んでたな……?
「お前、ワルだな」
「ふふふ、それほどでも?」
褒めてねーよ!
「さ、魔法の準備を。そろそろ到着だよ」
話しながらとはいえ、かなり長い距離を歩いている。もうそろそろかなと俺も思っていたのだが、やはりそうだったみたいだ。
……。
目の前には、見るからにメラメラと燃え盛る炎に包まれた道。
谷というには道が広い……のだが、ルディアによると〝炎に包まれた様〟から〝
まあ、そう思うのもわからなくはない。確かに、一目見ると炎の谷のようにも見える。
そして──
「あれか……」
「ふぅん、
道中に、横たわる巨大な獣の影。
間違いない。依頼にあった
「ここにいるんだし、属性は〝火〟……さしづめ〝
ファイアドラゴンね……そのままだな。
「ふむ……相性的にも申し分なし。アヴ、ここで『
「おいおい!? 無茶言うなよ! 相手は龍だぞ!?」
「キミだってそうだろう? いい機会じゃないか」
ぐぬぬ……まあ、練習しておくに越した事はないが……。
あーもうっ! ええい、ままよ!
「やってやろうじゃねーか。精々──」
その時、俺の背筋に悪寒が走る。
俺の本能が告げている。
「──っく」
「ひゃはは♪ あれぇ? そこの奴だけ殺すつもりだったのに!」
目の前にはルディア。
黄金の輝きを持った
「……キミ、
「ひゃは? それを言う必要が?」
何か問答をしている……?
母さん?
関係?
いや、今は──
「
俺が行使するのは、風属性の最上級精霊魔法。
続けて──
「
一番扱い慣れている、火属性の最上級精霊魔法。
「おぉっと! ひゃはは、やるねぇ、キミ」
「ボクの質問に答えなよッ!」
「答える義理はないよ!」
ルディアが、その手に持つ
見るだけでわかる。俺に介在する余地はない。
超絶技巧の応酬が、その場で繰り広げられている。
俺に出来る事は──
「トリステスさん、離れ──」
「おっと、させないよ?」
「えっ──」
俺の眼前に、あの青年が現れる。
何だ? 急に……現れた?
いや、それより! コイツ──俺の事を殺す気だ……。
俺が感知出来た魔子が、青年の爪先に収束していく。
何か来る。
どう避ける?
避けられる?
どうすれば──
「ひゃはは♪ 死ねェ──っ!」
ダメだ、死ぬ──
「──うぐぁっ!!」
「──は?」
俺の目の前には、くすんだ桃色の髪を真っ赤に染めた美女──
「トリステスさんッ!!」
トリステスさんが、俺を守るように、青年の前に──立ち塞がっていた。
少し短いかもしれません。
これ以上伸ばすと、どうしてもキリが悪くなってしまうもので……。すみません。