竜として異世界に転ず   作:暁悠

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第9話 急襲

 無事に冒険者登録を終えた俺達は、早速依頼(クエスト)に挑戦してみる事にした。

 とは言っても、俺達のランクは上からS+、A、B……。適正ランクの依頼は、かなり高度なものになりそうだ。

 説明しておくと、適正ランクではない……自分のランクよりも下級のクエストをクリアすると、報酬は通常よりも安くなる。ちなみに、報酬は金銭。

 なので、普通に金銭を稼ごうとするならば、自分と同じランクのクエストに挑むのが一番いい。自分よりも上のランクのクエストに挑戦すれば報酬は増えるが……ルディアの〝S+〟が最大ランクなので、それ以前の問題であった。

 なので、俺達が挑めるのは最大でSランクの依頼となる。

 

「どうする? ボクはさ、この〝炎の谷〟の龍族(ドラゴン)討伐依頼がいいんだけど」

「実力的にも申し分ないよなー。でも、絶対ルディア単騎で瞬殺出来るだろ?」

「まあね」

「申し分ない……でしょうか……。私は、そうは思いませんけど……」

 

 そりゃそうだ。俺は竜で、ルディアは不明。しかし、トリステスさんは人間なのだから。スペックからして違うので、ここはどうしようもない。

 

「俺達が守るんで──」

「ああ、共同でクリアする場合は、パーティを編成するのも手ですよ」

 

 アデルさんから、そう言われた。

 パーティ……ゲームなんかでよくあるアレか。

 

「俺達三人で組むとして……名前はどうしよう?」

「名前?」

「ああ。パーティ組むってンなら、カッコイイ名前は必須だろ?」

「確かにね」

 

 まず、リーダーは誰にするのか?

 これは、俺になった。

 ……。

 

「絶対めんどくさい役目押し付けただけだろうがッ!!」

「そんな事ありませんよ」

「うん、そんな事ないよ」

 

 信じられるかっての!!

 前世にもあったよ、こんな事! 完っ全に班のリーダーを押し付け合うアレじゃねーか!!

 

「信じられるわけねーだろ!」

「だって、考えてみてください。ルディアさんは得体が知れないし」

「え?」

「私は貴方より弱い。適任者は貴方しかいないと思いませんか?」

 

 ぐぬぬ、もっともらしい事を……。

 まあ、確かにそうだな。ルディアに任せたら凄い事になりそうだ。

 常識人という面ではトリステスさんの方が適任なのでは……? とも思ったが、トリステスさんは実力重視だそうで……結局、リーダーは俺になった。

 

「いやあ、助かるよ」

「ええ、とても助かりますわ」

 

 絶対面倒な役目を押し付けただけだな。ずっと根に持ってやる。

 で、肝心なのはパーティの名前だな。

 うーん……あっ。

 

「割とノリと勢いだが……〝(りゅう)(せい)〟なんてどうだ?」

 

 俺がリーダーなので〝竜〟と付けて、それに加えて〝流星〟……つまり、流れ星。ちょっとお洒落な名前にしてみた。

 

「〝(りゅう)(せい)〟……いいですわね!」

「うん、ボクも異論ないよ」

 

 決まりだな。

 

「アヴラージュさん、ルディアさん、トリステスさん……三名で、冒険者チーム〝(りゅう)(せい)〟の結成ですね!」

 

 アデルさんの確認に、全員で答える。

 トリステスさん、俺、ルディア……。この三人で、今後は行動する事になる。

 

   ◇◇◇

 

 ドラゴン討伐の依頼を受理してもらい、俺達は早速〝炎の谷〟に向かう。

〝炎の谷〟とは、俺達が行き着いたアグニル王国と、実質的な隣国であるヴァルネリ王国の間にある小国群……との間にある、灼熱の谷。らしい。

 

「〝炎の谷〟はさ、人間が入ると溶けちゃうから、ボクとアヴで行くよ」

 

 ルディアから、そう説明された。

 って──

 

「えええええ……そんなおっかない場所に行くのかよ?」

「もちろん! そうじゃなきゃ楽しくないだろう?」

 

 楽しさ云々じゃないと思うんだけどなあ、こういうのって……。

 

「あ、それならご心配なく」

 

 え?

 聞くと、トリステスさんはルディアの魔法講義もあって、魔法が超得意になっているのだとか。元素魔法の中に、各属性の防御魔法──今回で言えば〝水の防護幕(ウォーターヴェール)〟という魔法があるので、炎の谷の熱量ならば耐えられる、と。

 

「いらぬ心配だったかな」

 

 教えた本人のルディアが、一瞬だけニヤリと嗤った。

 コイツ、さては最初から仕組んでたな……?

 

「お前、ワルだな」

「ふふふ、それほどでも?」

 

 褒めてねーよ!

 

「さ、魔法の準備を。そろそろ到着だよ」

 

 話しながらとはいえ、かなり長い距離を歩いている。もうそろそろかなと俺も思っていたのだが、やはりそうだったみたいだ。

 

 ……。

 目の前には、見るからにメラメラと燃え盛る炎に包まれた道。

 谷というには道が広い……のだが、ルディアによると〝炎に包まれた様〟から〝渓谷(たに)〟を連想したのだそうだ。

 まあ、そう思うのもわからなくはない。確かに、一目見ると炎の谷のようにも見える。

 そして──

 

「あれか……」

「ふぅん、上級龍族(アークドラゴン)か。あんまり楽しめそうにないね」

 

 道中に、横たわる巨大な獣の影。

 間違いない。依頼にあった龍族(ドラゴン)だ。

 

「ここにいるんだし、属性は〝火〟……さしづめ〝炎熱竜(ファイアドラゴン)〟ってところかな」

 

 ファイアドラゴンね……そのままだな。

 

「ふむ……相性的にも申し分なし。アヴ、ここで『形態変化(トランスフォーム)』の練習をしたら?」

「おいおい!? 無茶言うなよ! 相手は龍だぞ!?」

「キミだってそうだろう? いい機会じゃないか」

 

 ぐぬぬ……まあ、練習しておくに越した事はないが……。

 あーもうっ! ええい、ままよ!

 

「やってやろうじゃねーか。精々──」

 

 その時、俺の背筋に悪寒が走る。

 俺の本能が告げている。

 

「──っく」

「ひゃはは♪ あれぇ? そこの奴だけ殺すつもりだったのに!」

 

 目の前にはルディア。

 黄金の輝きを持った(さん)()(けん)で、その目の前に立つ青年の鈍く輝く爪を受け止めている。

 

「……キミ、母さん(・・・)とどんな関係だい?」

「ひゃは? それを言う必要が?」

 

 何か問答をしている……?

 母さん?

 関係?

 いや、今は──

 

大気圧縮断切(アトモスフィアブレード)!!」

 

 俺が行使するのは、風属性の最上級精霊魔法。

 続けて──

 

獄炎霊熱覇(インフェルノフレイム)!」

 

 一番扱い慣れている、火属性の最上級精霊魔法。

 

「おぉっと! ひゃはは、やるねぇ、キミ」

「ボクの質問に答えなよッ!」

「答える義理はないよ!」

 

 ルディアが、その手に持つ(さん)()(けん)で謎の青年に斬りかかる。それを、青年は鈍く輝く爪で応戦。

 見るだけでわかる。俺に介在する余地はない。

 超絶技巧の応酬が、その場で繰り広げられている。

 俺に出来る事は──

 

「トリステスさん、離れ──」

「おっと、させないよ?」

「えっ──」

 

 俺の眼前に、あの青年が現れる。

 何だ? 急に……現れた?

 いや、それより! コイツ──俺の事を殺す気だ……。

 俺が感知出来た魔子が、青年の爪先に収束していく。

 何か来る。

 どう避ける?

 避けられる?

 どうすれば──

 

「ひゃはは♪ 死ねェ──っ!」

 

 ダメだ、死ぬ──

 

「──うぐぁっ!!」

「──は?」

 

 俺の目の前には、くすんだ桃色の髪を真っ赤に染めた美女──

 

「トリステスさんッ!!」

 

 トリステスさんが、俺を守るように、青年の前に──立ち塞がっていた。




 少し短いかもしれません。
 これ以上伸ばすと、どうしてもキリが悪くなってしまうもので……。すみません。
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