竜として異世界に転ず 作:暁悠
「ふぅ、危なかった」
やっぱりキックは着地が安定していいね。
というか、吹っ飛んだシュトルツが山にぶつかったが……山が半壊している……。
我ながら恐ろしい威力だな。
そう思って少し溜息を吐いていると、ルディアがこっちに歩いてきた。
「やったね、アヴ」
「だな」
そう言葉を交わして、ルディアとハイタッチをする。
いやはや、作戦勝ちな部分もあるが、最後は
「驚いた」
「うわっ!?」
気づくと、シュトルツが背後にいるではないか。
もしかして、ルディアが使う『転移』スキルと似たようなモンか……?
「何なんだ、あの力は?」
「誰が言うかよ。それより、俺の質問に答えてもらおう」
「あ?」
「お前、概念竜なんだろ。司る概念だけでも教えろよ」
そう問いかけると、シュトルツは、はぁーーーやれやれと溜息を吐いてルディアに向き直る。
「おいルディア。いらん事を教えたのはお前か」
「てへ」
「てへ、じゃない。オレの事は国家機密レベルの筈だろう」
「そうだけどさ、この子にもこの子なりの事情ってものがあるんだよ」
「事情だと?」
それから、ルディアは俺の情報を盛大にバラしていく。
「この子もさ、概念竜なんだよ」
「……何? 何だと?」
「司るのは自然の四大属性……運命、感じるとは思わないかい? キミだって、この子と一緒に行動して不利益はないはずだよ」
ルディアは、言葉巧みにシュトルツを協力路線に誘導している。
流石だ。ルディアは、こういう事やらせると超一流並みの能力を発揮するのである。
「うん? アヴ?」
え?
何だよ、どうしたんだ?
あれ……?
声が……出な──
「カハッ!?」
「アヴ!?」
ルディアが急いで俺に駆け寄ってくるのが薄っすらと見えた。
何だ、これ……何が起こってるんだ……?
ああ、いや、知ってるぞ……これ……魔力欠乏症──
魔力欠乏症。
ルディアに
一度に多量の魔力を消費すると起こる症状で、拒絶反応を起こした肉体が体内から魔力、及びエネルギーでもある魔子を強制的に体外に排出しようとする症状である。
「ゲホッ、ゲホッ……」
「アヴ、大丈夫かい!? アヴ!!」
人間で言う血──俺で言うなれば〝魔血〟だが──を吐いている状態で、とても気持ち悪いし辛いし苦しい。
「かひゅー、かひゅー」
本当に苦しい……これ、死ぬんじゃないか……?
まだこの世界に来て……一年も経っていないぞ……。
死にたくない──
心の底からそう願った、その時だった。
「あらまあ、苦しそうね」
そんな、女神のような、澄んだ声が聞こえた。
「……珍しいな」
「お話を聞いてしまったのですもの。放っておけませんわ」
薄っすらと瞼を開けて見てみると、そこにいたのは天女のような美麗な女性だった。
「今、楽になりますからね……」
その女性はそう言いながら、俺の頭を膝の上に置いた。
ああ、心地良い……このまま……眠ってしまいそうな──
そこで、俺は自分の意識を手放した。
………
……
…
瞼を開ける。
そこは、一面が花に覆われた花畑。
とても美しい、楽園のような景色だった。
てか、ここどこだ?
ルディア?
「あれ、ルディア?」
いない……。
あれ、なんでだ……。
もの凄く……もの凄く不安だ。
「ルディア?」
どこだよ……?
どこ行ったんだ?
「ルディア?」
少し見渡すと、ルディアをやっと発見した!
「ルディア!」
「──!」
あれ?
口を動かしてるのは見えるが……聞こえないぞ?
「ルディア、聞こえない!!」
「──、──!」
あ、あれ?
「聞こえない!!」
「──! ──!」
どうなって──
………
……
…
「アヴ!!」
「おわっ!?」
急いで飛び起きた。
場所は……花畑じゃない……。さっきの荒れ地のままだ……。
「どうしたんだい? 妙に
「うなされてた……? そ、そうだったの?」
「うん……ボクの名前を執拗に呼んでたし……どんな夢見てたんだい?」
「ええっと……」
あれ、どんな夢だっけ?
よく思い出せないし……まあ、いっか。
「ごめん、思い出せない」
「……そう。なら、いいんだけど」
「起きて早々にイチャイチャするのはやめて下さる?」
「してねーし!! って……」
そこにいたのは、天女のような女神のような……そんな女性。
「貴女は?」
「まあまあ、そう警戒なさらないで下さいな。わたくしはリーベ」
「リーベ……さん?」
「ええ、ええ。ようやく警戒を解いてくれましたわね」
……多分この人も概念竜だわ。
なんかもう解るぞ。ルディアとかシュトルツとかが受け入れてる時点で同格だろうし。
「サナ、まだ味方かどうかもわからないんだぞ。治して大丈夫だったのか?」
「ルディアがついているのですもの。警戒する方が野暮というものですわ。そうそう、わたくしの事はフォルのように〝サナ〟と、気楽に呼んでくださいね」
敵対の意思はなさそうだが……。
「そんなに警戒しなくていいよ。さあ、二人とも自己紹介を。司る概念と名前を教えてあげてね」
ルディアがそう言うと二人は頷いて、それぞれ自己紹介を始めた。
「改めて、オレはシュトルツ。司る概念は〝誇り〟で、
「誇り!?」
そんなんアリなのかよ!?
「うん。概念竜の中には、生物が持つ〝感情〟を司る者もいるんだ」
「へえ〜」
そんなのいるんだ……。
なんかもっとこう……ザ・概念って感じの奴らばっかだと思ってた。
「わたくしはリーベ。司る概念は〝愛〟……
こっちは愛か。
愛と誇りの竜ねえ。
「俺はアヴラージュ。司るのは〝自然〟で、
「色々と補足説明するね」
うん? 何だ?
「彼、シュトルツが司るのは〝誇り〟で、能力的には制圧する〝力〟に秀でている。リーベが司るのは〝愛〟で、シュトルツとは対照的な〝癒し〟の力に秀でてる。それと……アヴ」
「うん?」
「キミが司る
「なに!?」
なんだって!?
普通に衝撃情報なんだが!?
ルディアによれば、俺は〝自然〟に加えて〝希望〟と〝勇気〟の概念も司っているのだとか。そういえば、俺の〝アヴラージュ〟という名前の意味も〝未来への希望に満ちた、勇気ある者〟というものだった。納得である。
「ていうか、なんでそんな事がわかるんだ?」
「ボクが使う『解析』はちょっと特殊でね。こういう事もわかるんだよ」
はあ?
説明になってない気がするんですけど。
「やめておけ。どうせ何も教えてくれん」
あ、シュトルツも被害者なんだ。被害者って言い方はおかしいが……。
いるよね。規格外な事仕出かした癖に〝諸事情〟とか〝企業秘密〟で押し通そうとする奴。
そういう奴は大抵、何聞いても教えてくれる事がない。シュトルツの言う通り、スルーするのが一番いいだろう。
「……ちょっと失礼じゃないかい?」
「いやいやハハハハ」
そんな事あるわけないじゃないか──という表情&仕草を保ったまま華麗にスルーする俺であった。