竜として異世界に転ず   作:暁悠

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第22話 夢と幻

「それで、シュトルツ達はどうしたのさ?」

 

 あ、確かに。

 結局、アイツら何してるんだ?

 

「へ? ああ、アイツらなら、呑気に屋台満喫してたけど?」

 

 あ、アイツら……。

 そんなナリじゃないだろ! ──と、理不尽にも内心でキレてしまったのはご愛嬌である。

 というか、ルディアに脅さ(たのま)れた事があったんじゃ? アイツ、さては最低限の事だけ伝えて自分はお祭りを満喫していたりするんじゃないだろうな?

 それこそ、「ルディアが来る」ぐらいの事だけ言ってそうである。ヤツめ、変なところで大雑把なんだよな……。そういう場面が容易に想像出来るのもダメだと思うんだ。

 まったく──と、全員で呆れていた時である。

 

「おっと?」

「こんな時に問題発生か」

 

「え? 何々?」

 

 何が起こっているかわからないので、俺がそう訴えるのも当然なのだ。

 そんな俺を見たシルティオスが、やれやれといった感じで俺にも『思念通話』を繋いでくれた。

 

『おお、凄い……』

『問題発生です! ヴァルネリ共和国南部の森林より、魔物の群れが押し寄せています! 推定等級(ランク)は個体ごとにBランク程度……』

『……最近多いな、どうなっている?』

『不明です』

 

 何やら、シルティオスと人間の誰かが話し合っていた。

 どうやら南部の森から虐殺大蜘蛛(キルスパイダー)硬鱗恐竜(スケイルサウルス)を含む魔獣達が一斉にヴァルネリ共和国に向かってきているそうだ。

 目的はわからないが、確実に悪い事なような気がする。止めなくては。

 

『すぐに向かう。私達が対処しよう』

 

 それだけ言って、シルティオスは『思念通話』を終了した。

 虐殺大蜘蛛(キルスパイダー)硬鱗恐竜(スケイルサウルス)等は推定等級(ランク)がBとかなり強く、他にも突進甲虫(ラッシュビートル)等の虫型魔獣も確認されているのだ。

 

「火急の事態だから、私が全員を南部森林前に『転移』で送り届ける。申し訳ないが、力を貸してくれ」

「おう」

 

 答えるのは、もちろん俺である。ルディアは俺が答えるんだろうと思ったのか何も言っていなかった。

 

   ◇◇◇

 

 シルティオスのスキルで、ヴァルネリ共和国南部に送られてきた。

 ホントみんな、息をするように難しそうなスキルを使うものだ。俺なんて、視界内の転移が精一杯なのにさ。

 

「……アヴ、戦えるのかい?」

 

 それは、不安だ。

 またアグニルでの事のような事になったら、と思うと、どうしても足が(すく)んでしまう。

 

「放っとくわけにはいかないだろ!」

 

 そんな事は考えてたって仕方ないので、そう言って受け流すのがいいのだ。悩んでいたって前には進めない、とも言われた事があるが……俺の場合はただの空元気というか、そういうものなので、そんな前向き(ポジティブ)なものではない。

 今はただ、走るだけ──

 

「……?」

 

 あれ、おかしいな。

 足が……動かない……?

 足が震える。

 力が抜ける。

 

「……やっぱり、戦えないだろう。キミは、中で待っていて」

「いやだ……」

「だってキミ、かなり無理してるじゃないか。ボクは、キミが──」

 

 だから、何だ?

 傷つくのを見たくないって?

 そんなものじゃない。

 それで済ませていいものじゃ──

 

「戦えないんだから、戦わなくていいだろ!!」

 

 ルディアに、怒鳴られてしまった。

 いや、違うんだよ。

 そうじゃない、っていうか……。

 

「キシァアアアァァッ!!」

 

 魔獣の咆哮(こえ)が聞こえる。

 

   ◆◆◆

 

 時間は数分ほど巻き戻り、ルディアは内心で苦悩していた。

 

(さて、どうしたものか……。アヴ、かなり思い悩んでいるようだし、なんだか……)

 

 ルディアから見ても、最近のアヴラージュは様子がおかしかった。

 空を飛ぶのに失敗したり、何度も戦うのに躊躇していたり。少し前であれば、「人を助けるためなら」と無茶な戦いにすら身を投じていたが、今はまるで違った。

 

(多分要因は、アグニルの件……)

 

 アグニルでの差別と非難。

 それが原因となり、今のアヴラージュの足を竦ませ、留めさせていた。

 

「戦えないんだから、戦わなくていいだろ!!」

 

 ルディアは願う。

 

(アヴラージュ……キミに、傷ついて欲しくない。これ以上、自分の身を(かえり)みない戦いなんて、してほしくないんだよ!)

 

 アヴラージュもルディアに対して恋愛にも近い感情を抱いているが、ルディアもルディアなのだ。ルディアも、アヴラージュをかなり気に入っていた。

 

「キシァアアアァァッ!!」

 

 魔獣の咆哮(こえ)が聞こえる。現れたのは、巨大な硬鱗恐竜(スケイルサウルス)

 ルディアは自身の『格納異空間』から黄金色に輝く(さん)()(けん)──零虚竜杵(イニシャライザー)という武器を取り出す。

 ルディアは〝原初の竜(プリミティブドラゴン)〟という、〝創造性〟や〝始まり〟の概念を司る竜だが、司れるのはその〝創造〟のみだ。

 彼の〝母親〟は、そんなルディアを憐れみ、自身の権能の一部を劣化させたモノを武器に付与し、その〝名〟と共にルディアに与えた。

 

終響剣閃(エンドマーク)

 

 その対刃剣(ついじんけん)に込められたのは、〝破壊〟の劣等である〝衰退〟の概念。

 彼がこの権能を使って放つ技である〝終響剣閃(エンドマーク)〟は、物理的な破壊の斬撃を飛ばすと同時に、命中した対象の最大魔力を削減させるという、悪意たっぷりの技。

 ちなみにだが、この技を使う必要性は皆無だったりする。零虚竜杵(イニシャライザー)の威力ならば、ひと太刀(たち)硬鱗恐竜(スケイルサウルス)硬質鱗(こうしつりん)も容易に断ち切れるのだから。

 ルディアがこの技を使うのは、飽くまでも『一応』なのだった。

 

 結果、やはり硬鱗恐竜(スケイルサウルス)はひと太刀で絶命した。

 そして同時に、ルディアはアヴラージュに告げる。

 

「アヴは戦わなくてもいい。ボクがキミの分まで戦う」

 

 ルディアはもう、これ以上アヴラージュに背負わせる事は出来ない。アヴラージュが背負うくらいなら、自分が全て背負うと、そう思うようになってしまった。

 

 

 

 視点は変わり、シルティオス達。

 

輝光彩波壊(ラスターウェイブ)

 

 突き出されたシルティオスの掌から、破壊力を持ち指向性を与えられた光波が放たれる。

 放たれた光は平野を進む魔獣達を蝕み、破壊していく。

 シルティオスの種族名は〝天翔る夢の竜(ヴィジョンドラゴン)〟と言って、司るのは〝夢〟及び〝時間〟の概念だ。

 彼の権能は、軽い『時間操作』。そして〝輝光彩波壊(ラスターウェイブ)〟という技だが、もちろんこの権能を利用したものである。

 その原理も単純明快で、彼自身のエネルギーでもある魔子を『時間操作』で光速化させ、攻撃対象に光速でぶつけているだけだった。

 

幻楼破球(ミストスフィア)!」

 

 シルティアスが作り出したと思われる破壊の光球が、魔獣達の意識外からぶつけられる。

 その光球は捉えられず、意識外から行われる必中攻撃となっていた。

 シルティアスの種族名は〝天翔る幻の竜(ミラージュドラゴン)〟と言って、司るのは〝幻〟及び〝時間〟の概念。

 彼女の権能は、絶対的な『空間操作』だ。相手を惑わせる幻術等に秀でており、真っ向からの破壊が得意な兄とは違い、奇襲や逃走に秀でているのだ。

 幻楼破球(ミストスフィア)もその権能を利用した技であり、生み出した光球を『空間操作』による幻術で隠し、意識外から対象の急所に致命の一撃を与えるという技。

 兄妹揃って、ヴァルネリ共和国の守護神をするだけの実力は持っているのだった。

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