竜として異世界に転ず 作:暁悠
お腹が痛い。
ルディアも魔獣狩りに行ってしまった。
それに比べて今の俺は、平野の真ん中で立ち尽くすだけ。行くも退くも足が動かない。
俺はどうすればいい?
誰のために何をすればいい?
誰か、ルディア──
「っ!?」
誰かが、俺の肩に触れた。
反射的に振り返る。そこにいたのは──
「お前は何をしている? ルディアの野郎が戦っているというのに」
漆黒の短髪にギラギラと輝く朱色の瞳を持つ、白い礼装とマントを身に纏う美丈夫──シュトルツだった。
その背後には、純白の長髪と落ち着いた印象の碧眼を持ち、漆黒のドレスを身に纏う美女──リーベも立っていた。
「ったく、久々に羽を伸ばせると思ったのに、なぜこうも面倒事が巻き起こるのか……。お前はどうするんだ? 今まで何のために戦ってきた?」
そりゃ、俺だって戦いたいよ。
戦いたいけど、足が動いてくれない。
戦えないんだよ。
「…………足が動かんか? まるで人間だな……ま、戦わないのは自由だが……じゃあなんで、シャムと戦った? お前は、その程度の事で止まれるヤツじゃなかっただろう」
それだけ言い残して、シュトルツ達も魔獣に向かっていってしまった。
既に概念竜が五人も戦っているのに、どんどんと押し寄せる魔獣の頭数は減る事がない。
…………でもやっぱり、足が……。
『足は動くだろう!!』
急に飛ばされたのは、ルディアからの思念。
『シャムと戦う時、キミはそんなに悩まなかったハズだ! 動けないなら動けるようになるまで言ってやる! ボクを守ってよ、アヴ!!』
俺の心の中で、
ルディアの喉に、魔獣の爪が迫っていた。
「
俺は抜き出した漆黒の剣──炎を纏った
硬い──俺が脚を斬り落としたのは
これ、
「アヴ……!」
「ごめん、遅れた。ホント──」
「待ってたんだよ〜〜〜〜〜っ!!」
謝罪しようとしたら、ルディアが勢いよく抱きついてきた。
俺になんやなんやと言いながら、ルディアは手に持つ
ってか、おい?
「なあ」
「うん? なぁに?」
「さっきまでお前、ちょっと苦戦してただろ。どうしたんだよ?」
「ああ、それね。キミがウジウジ迷ってばかりだったから、ボクがピンチになれば来てくれるかなって」
嵌めやがったな、コイツ!!!!
愛々しい奴め……。
「ちょっと離れてくれ。俺だって戦いたい」
「うんうん、そうだろうね。でも、忠告はしておくよ」
「あん?」
「この地には〝水〟の属性が染み付いているからね。この地で生まれる魔獣も、その属性を持ってる」
えーっと?
つまり、この土地で生まれる魔獣達には、デフォルトで水属性が備え付けられている、と?
で、俺の得意属性は〝火(炎)〟なわけなんだけど……。
「めっちゃ不利じゃねーか!?」
「そう! そうなんだよね」
そうなんだよね、じゃないんだよ!
どうしろってんだ!?
「ほら、あるだろ?『
あっ、そういう事ね。
つまり、特化する属性をシフトさせればいいわけか。
「水に有利な属性ってなんだろう?」
「普通に行けば〝土〟属性だけど、使うのは『
確かに、それもそうだな。
有利を取るか、『変化』しやすさを取るか……。
「今回は
「そうだね、単なる〝水〟属性特化じゃ勝てない。じゃあ、どうする?」
どうする、ってなぁ……。
「ヒント!」
「ヒント? うーん、そうだねぇ。キミが特化させた〝火〟は、それよりも強い〝炎〟だろう?」
あ、そういう事か!
その〝水〟属性よりも強く、その系統でも上位の属性にすればいいわけね。
で、その〝水〟から連想されるモノ……雨? いや、雨は水の中にあるものだよなぁ……〝水〟よりも上じゃなくっちゃ。
そうだなぁ……。
「うーん……〝氷〟とか?」
「いいね! それにしよう! 属性操作はボクが手を貸すよ」
うーん、サラッと俺より凄い事しないでね?
特化属性で形態変化って、俺だけの特権というか、特技というか、そういうものなんだよね。それをさ、ルディア……。
まあ、いいか。
ルディアの操作によって、俺の中に複数ある中から一つを引き出されるような感覚に襲われた。これは、
ルディアに教えてもらった「三人称視点での魔力探知」で自分の姿を見てみた。
魔力探知というレアスキルの説明も面倒なのだが、簡単に言えば『魔子の流れを見て視界外の事をも把握するスキル』というもの。これを内→外から外→内の観測をする事で、自身を中心とした一人称視点だけでなく、三人称視点での観測も可能というものだった。
それを利用して、自分の姿を見る事が出来ているわけである。
やはり髪色は
一番の特徴は、額から生える青から紫にグラデーションする一本角。
司る属性概念は〝氷〟なので、名付けるとすれば──
「
「いいネーミングセンスだね」
ふふん、そうだろうそうだろう。
力の使い方も、多分
色々と迷走こそしてしまったが……。
ここからは、反撃の時間だ。