イナズマイレブンGO 紅蓮の翼   作:シキDX

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第十五話 VS海王学園

ついに、この日がやってきた。

 ホーリーロード関東地区予選、決勝戦。スタジアムは超満員の観衆で膨れ上がり、空気に触れるだけで肌がピリつくような、異様な緊張感に包まれている。

 

「……結局、昨日の特訓でも化身は出せなかったな」

 

 ベンチでスパイクの紐を締め直し、俺は隣の天馬に声をかけた。

 

「うん。でも、体はすごく熱いんだ。昨日の鉄塔での特訓……あの時の感覚が、まだ残ってる」

 

 天馬もまた、自分の手を見つめながら静かに頷く。

 化身は出せなかったがこの試合で何か掴めるものがあるはず。自分の力を信じて、俺たちはピッチへと向かった。

 

 *

 

 ピィィィーーーッ!!

 

 乾いたホイッスルの音が、決勝戦の開始を告げた。

 海王学園のキックオフ。ボールを持った喜多が不敵な笑みを浮かべ、猛然とダッシュを開始する。

 

「行くぜ、雷門! 遊びはここまでだ!」

 

 そのスピードは、これまでの敵とは次元が違った。

 

「させるかよ!」

 

 倉間先輩がチェックに行くが、喜多は踊るようなステップでそれを軽々と回避。さらに、カバーに入った天馬と神童先輩の二人を、重力を無視したような驚異的なジャンプで飛び越えていった。

 

「はっ……速い!?」

 

 天馬が驚愕に目を見開く。

 海王の攻撃は止まらない。一人一人が超高校級のフィジカルを持ち、それでいて機械のように正確なパスワークを披露する。全員がシードとして同じ過酷な訓練を積み、意思疎通すら完璧に完成されている。

 

「……これが『全員シード』の真の脅威。個人の才能を、組織の力が何倍にも増幅させているわ」

 

 ベンチで見つめる紫が、唇を噛み締めながら戦況を読み取る。

 雷門ディフェンス陣が翻弄される中、ボールは再び最前線の喜多へと渡った。

 

「喰らえ! 『フライングフィッシュ』!!」

 

 巨大な魚が跳ねるような軌道を描き、凄まじい衝撃波を伴ったシュートが放たれた。

 

「止めてみせる! 『バーニングキャッチ』!!」

 

 三国先輩が炎を纏った両手で迎え撃つ。だが、シュートの重圧は先輩の想定を遥かに超えていた。

 激しい音と共に、三国先輩の体ごとボールがゴールネットへ突き刺さる。

 前半開始わずか数分。海王学園が、あまりにも一方的に先制点を奪い取った。

 静まり返るスタジアム。一点の重み以上に、海王が見せつけた「格の違い」が、雷門イレブンの心に重くのしかかる。

 

「……クソッ、これが……海王の力なのかよ」

 

 芝生を叩き、悔しさを滲ませる俺。だが、その隣で天馬の瞳はまだ死んでいなかった。

 

「……コウ。まだ、始まったばかりだよ。俺たちのサッカー、見せてやろう!」

 

 失点してなお、立ち上がろうとする天馬。その姿に呼応するように、俺の胸の奥で、昨夜紫とぶつけ合った熱い炎が再び、激しく脈打ち始めた。

 

 先制された重圧を振り払うように、雷門の反撃が始まった。

 倉間先輩から神童先輩へ。そして、エースの剣城へとボールが繋がる。

 

「……フン、行かせるかよ」

 

 海王のディフェンダーが二人がかりで剣城を封じ込もうとするが、剣城は冷静だった。背後から駆け上がる天馬の気配を感じ取り、ヒールキックでバックパスを送る。

 

「天馬!!」

 

 ボールを受けた天馬が、持ち前のドリブルで一気に中央を突破にかかる。だが、その前に壁となって立ちはだかったのは、海王の主将・浪川だった。

 

(……っ、このプレッシャー! まともにやり合ったら奪われる!)

 

 天馬は本能的に危機を察知し、サイドでフリーになっていた倉間先輩へボールを預けた。浪川のマークを外したその先、ゴール前は驚くほどガラ空きだ。

 

「倉間先輩!!」

 

「決めてやるぜ……! 『サイドワインダー』!!」

 

 鋭い弧を描き、獲物を狩る蛇のごときシュートが海王ゴールを急襲する。決まったかと思われたその瞬間、海王のGK・深淵が不敵に口角を上げた。

 

「……温いな。『ハイドロアンカー』!!」

 

 地底から湧き上がった巨大な水の錨が、サイドワインダーの回転を瞬時に止め、その威力を完全に無力化した。

 

「……嘘だろ。倉間先輩の必殺技が、あんなにあっさりと……」

 

 信助が絶望に染まった声を漏らす。

 

「ヘッ、攻め疲れたか? だったら今度はこちらの番だ」

 

 海王学園の猛攻は、さらにその激しさを増していた。

 一人一人の圧倒的なキープ力と精密なパス。雷門はボールを追いかけるのが精一杯で、触れることすら叶わない時間が続く。

 

「くっ……DFだけじゃ足りない! 倉間、剣城、下がって守備に加わってくれ!」

 

 神童先輩の必死の指示により、雷門は全員守備の布陣を敷く。俺も必死に食らいつき、間一髪のところで『バーンドロウ』を繰り出しボールを奪い取るが、喜多をはじめとする海王の即座の囲い込みにより、パスコースを塞がれすぐに奪い返されてしまった。

 

(ダメ……個人の技だけじゃ、一瞬で組織に飲み込まれるわ。でも、戦線が膠着している今こそ……!)

 

 ベンチで紫が固唾を呑んで見守る中、試合が動く。

 浪川が強引なパワー勝負で中央を突破。ボールは再び、先制点を決めた喜多へと渡る。

 

「これで終わりだ、雷門!!」

 

 喜多が再びシュート体勢に入る。だがその瞬間、天馬が猛烈なダッシュで割り込んだ!

 

「終わらせない…… 『スパイラルドロー』!!」

 

 特訓の成果である鋭い風の渦が、喜多の足元からボールを強引に吸い上げる。

 

「コウ、走って!!」

 

「おうっ!!」

 

 天馬から放たれたパスを、俺は全速力で受ける。目の前には壁のように立ちはだかる海王のシードたち。だが、昨夜の鉄塔で紫の冷気を切り裂いたあの時の熱さが、足元に宿る。

 

「どけぇっ!! 『烈風ダッシュ』!!」

 

 炎の残像を撒き散らしながら、俺は海王のディフェンス陣を瞬きする間に抜き去った。そのまま前線へ駆け上がっていた剣城へと、魂を込めたパスを送る。

 

「……決めてくれ、剣城!!」

 

「……言われるまでもない。消え失せろ!!」

 

 剣城が跳躍し、漆黒のエネルギーを纏った強烈なオーバーヘッドキックを放つ。

 

「『デスドロップ』!!」

 

 放たれた衝撃波は、海王の守護神・深淵の『ハイドロアンカー』を真っ向から貫き、ゴールネットを激しく揺らした。

 静まり返っていたスタジアムが、一瞬遅れて大歓声に包まれる。

 

「やった……! やったぞ天馬、剣城!!」

 

 俺たちはピッチの上で拳を突き合わせた。

 しかし、追いつかれた屈辱に、海王イレブンの空気が一変した。

 

「野郎ども、調子に乗らせるな! 」

 

 浪川の鋭い檄が飛び、海王ボールで試合が再開される。

 喜峰からボールを受けたのは、ドレッドヘアを揺らす湾田だった。彼は不敵な笑みを浮かべ、首をボキボキと鳴らす。

 

「遊びは終わりだ。シードの力、その目に焼き付けな……!」

 

 その瞬間、湾田の背後から凄まじいプレッシャーが噴き出した。

 

「現れろ! 『音速のバリウス』!!」

 

 翼を持った疾風の化身が顕現する。その圧倒的なスピードを乗せたドリブルは、神童先輩すら追いつかせず、カバーに入った天馬を木の葉のように蹴散らした。

 

「……っ、天馬!」

 

「くっ……速すぎる……!」

 

 湾田はそのまま一気に雷門陣内を切り裂き、前線の浪川へ鋭いパスを出す。

 ボールを受けた浪川が、重厚なオーラを纏って吠える。

 

「トドメだ。海に沈め……雷門ッ!!」

 

 空を裂く咆哮と共に、浪川の背後に三つ又の鉾を構えた巨大な巨神が出現した。

 

「『海王ポセイドン』!!」

 

 凄まじい質量を持った水のエネルギーが、ポセイドンの三叉槍から放たれる。

 

「うおぉぉぉぉッ!『バーニングキャッチ』!!」

 

 三国先輩が必死に飛びつくが、化身のシュートは『バーニングキャッチ』を文字通り蒸発させ、ゴールごと破壊せんばかりの勢いでネットを揺らした。

 

 ピ、ピ、ピーーーッ!!

 

 前半終了のホイッスルが鳴り響く。

 スコアは1-2。数字以上の「化身」という絶対的な壁の前に、雷門イレブンは息を切らし、芝生に膝をついた。

 俺はボロボロになったユニフォームの袖で顔を拭い、浪川の化身を見据えた。

 

(……化身……バリウスにポセイドン……。強すぎる……。でも、昨日の特訓で見た紫の化身に比べれば……!)

 

 絶望が支配するハーフタイム。しかし、俺の瞳の奥では、紫との特訓で研ぎ澄まされた「炎」が、まだ静かに、かつ激しく燃え続けていた。

 

 *

 

 ハーフタイムの重苦しい空気の中、円堂監督は腕を組み、不敵な笑みを浮かべて口を開いた。

 

「後半、キーパーを交代する。……天馬、お前がゴールを守れ」

 

「「ええっ!?」」

 

 ロッカールームに全員の驚愕の声が響き渡った。さすがの神童先輩も予想外の指示に戸惑う。

 

「どういうことですか!一度もキーパーをやったことがない天馬をキーパーにするなんて」

 

「もちろん、勝つためだ」

 

 正キーパーである三国先輩も、一瞬戸惑いの表情を浮かべた。しかし、監督の瞳にある「確信」を見た瞬間、先輩は天馬の肩に力強く手を置いた。

 

「……監督の言う通りやってみよう!」

 

「三国先輩……」

 

 俺は、不安そうにする天馬の背中をバシッと叩いた。

 

「天馬、心配すんな! いざって時はお前にボールを触らせねぇくらい、俺が前で全部止めてやるよ!」

 

「……うん、分かった!こうなったらやるしかないんだ。サッカーを守るためにも……!」

 

 *

 

 後半開始の笛と共に、湾田が再び『音速のバリウス』を顕現。その圧倒的なスピードでフィールドを横断し、一瞬でゴール前まで肉薄した。

 

「どりゃああ!!」

 

 化身を纏ったまま放たれた、目にも止まらぬ剛速球。天馬は一瞬、そのあまりのプレッシャーに足を震わせ、視線を逸らしそうになる。

 

「……!くっ!ダメだ取れない……」

 

「諦めるな!!」

 

 その背中に、剣城の鋭い叱咤が叩きつけられた。

 

「サッカーを守るんじゃなかったのか!お前の好きなサッカーを!」

 

 その言葉が、天馬の迷いを断ち切った。

 

「……そうだ!ここで点を入れられたら今までやって来たことが全部無駄になっちゃうんだ……。できるのかなんて考えちゃダメだ。強く思えばなんとかなる!」

 

 天馬の全身から、これまでにない巨大な気流が噴き出した。青白い光が螺旋を描き、彼の背後に力強い翼を持つ巨神が姿を現す。

 凄まじい衝撃波がバリウスのシュートを迎え撃つ。ペガサスの放つ圧倒的な風圧が、化身シュートの威力を削り、天馬は両手でそのボールをがっしりと掴み取った!

 

「な……化身を、出しただと……!?」

 

 呆然とする湾田。スタジアムは、雷門の新たな化身使いの誕生に、地鳴りのような歓声で沸き上がった。

 

「ペガサス……。俺の化身『魔神ペガサス』!!」

 

 *

 

「魔神ペガサス」でゴールを守り抜いた天馬が、三国先輩と再び交代しフィールドへと戻ってくる。その瞳には、もはや迷いなど微塵もなかった。

 海王のスローインから試合が再開される。一点のリードを守り抜こうと、海王はさらに攻撃のギアを上げた。

 

「化身を出したくらいで調子に乗るな! 叩き潰せ!」

 

 浪川の叫びと共に、青い波濤のようなプレッシャーが押し寄せる。

 だが、その瞬間、俺の全身を駆け巡る熱量は臨界点を突破した。天馬の覚醒、そして昨夜、紫の化身とぶつかり合ったあの極限の記憶。

 

『……来なさい、コウ! あなたの心臓を焼き尽くすほどの炎を!』

 

 紫の言葉が脳裏でリフレインする。

 

「俺も負けてられない!皆んなでサッカーを守るんだ!」

 

 俺の背後から、スタジアム中の空気を蒸発させるほどの紅蓮の炎が吹き上がった。炎は巨大な翼を広げ、神々しくも猛々しい巨大な鳥人の姿を成す。

 

「来いッ! 『聖焔のフェニックス』!!」

 

 その威容に、海王の選手たちが一瞬たじろいだ。俺はその隙を逃さず、化身の力を集束させる。

 

「紅蓮の炎で焼き尽くしてやる! 『プロミネンス』!!」

 

 太陽の黒点から放たれる爆炎のごとき炎の竜巻が、海王の守りを強引に焼き切ってボールを奪取。そのまま、化身を纏った状態で前線へロングシュートを放った!

 

「いっけえええ!!」

 

「化身シュートだろうがその距離じゃ無駄だろ!」

 

「無駄じゃねえ!!」

 

 俺が放った炎の弾丸に、倉間先輩がシュートチェインで加速させる。

 

「『サイドワインダー』!!」

 

 炎を纏う蛇が加速しながらゴールへと突き刺さる。海王のGKが反応することすら許さない、衝撃の「シュートチェイン」。

 2-2の同点。スタジアムの熱気は最高潮に達していたが、海王学園のイレブンに漂う空気は、凍りつくような殺意へと変わっていた。

 

「……チョロチョロと、目障りなんだよッ!」

 

 試合再開の笛と共に、海王が再び化身を使い、暴力的なまでの突破を開始する。ボールは再び、主将の浪川に渡った。その背後には、荒ぶる海の神『海王ポセイドン』が、その三叉槍を禍々しく光らせて立っている。

 

「沈め……今度こそ、海の底へ!! 『ヘヴィアクアランス』!!」

 

 凄まじい質量の水の塊が、弾丸となって雷門ゴールを襲う。

 

「させるかぁっ!!」

 

 俺は『聖焔のフェニックス』を全力で展開し、その軌道上に割り込んだ。炎の翼で水を蒸発させようと試みる。

 

「――っ!? ぐあああああッ!!」

 

 だが、化身を顕現させたばかりの俺の力では、海王のエースが放つ渾身のシュートを止めきることはできなかった。水の重圧に炎が押し流され、俺の体は無残にピッチへと叩きつけられる。

 

「コウ!!」

 

 天馬の叫びが響く。勢いを失わないシュートが、無人のゴールへと突き進む。

 

「……雷門のゴールは俺が守る!!」

 

 その時、ゴールマウスに立ちはだかったのは三国先輩だった。

 天馬にゴールを任せ、ベンチから仲間たちの戦いを見守っていた時間は、先輩の中に新たな闘志を燃え上がらせていた。

 

「はあああッ! 『フェンス・オブ・ガイア』!!」

 

 ゴール前に岩の壁が複数現れでポセイドンの槍を真っ向から受け止める。凄まじい衝撃がスタジアムを震わせたが、シュートは岩の壁を貫くことなく弾き返された。

 

「……三国先輩!」

 

「悪いな天馬。……お前が繋いでくれたこの場所、簡単に譲るわけにはいかないんだよ!」

 

 三国先輩の気迫に満ちたセーブ。

 三国先輩が魂で止めたボールは、前線へと駆け上がる天馬の足元へ正確に届けられた。

 

「コウ、信助! 行こう!!」

 

 天馬の呼びかけに、俺と信助が同時に頷く。言葉は要らない。アイコンタクト一つで、俺たち三人の鼓動が完璧に重なった。

 海王のディフェンス陣が必死に立ちはだかる。

 

「行かせるかぁッ!!」

 

 だが、天馬の勢いは止まらない。

 

「俺たちのサッカーは、ここからなんだ! 『ペガサスブレイク』!!」

 

 再び顕現した『魔神ペガサス』が、腕を振り下ろすと共に雷が海王のディフェンスを吹き飛ばす。天馬はそのまま、俺と信助を引き連れて敵陣の最深部へと突入した。

 

「俺たちの思い!天まで届けえ!!」

 

 天馬を中心に3人が全速力で交差すると交差した点から青い炎の竜巻が発生し上空でペガサスの形へと変化する。

 

「「「『トライペガサス』!!!」」」

 

 青白い天馬となって海王ゴールへ襲いかかった。海王のGKが放つ『ハイドロアンカー』など、もはや紙切れ同然だった。

 スタジアムを揺るがす衝撃波と共に、ボールがゴールネットを突き破らんばかりの勢いで突き刺さった。

 

 ピーーーーッ! ピーーーーッ! ピーーーーーッ!!

 

 試合終了の長いホイッスル。

 3-2。雷門中、関東地区予選、優勝。




新必殺技:『トライペガサス』
属性:風
使用者:松風天馬、不知火恒陽、西園信助
詳細:
既存技。
3人が全速力で交差し、交差した点から出た竜巻がペガサスに変化するシュート技。

新化身:『聖焔のフェニックス』
属性:火
使用者:吉良 恒陽
詳細:
聖なる炎の羽を持つ不死鳥の鳥人。マジシャンズレッドではない
必殺技:『プロミネンス』
化身の羽ばたきと共に炎の竜巻が発生し、相手選手を吹き飛ばす。

ホーリーロード編までの設定集とか欲しいですか?

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