イナズマイレブンGO 紅蓮の翼   作:シキDX

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第二十三話(劇場版編) VSアンリミテッドシャイニング

「……コウ! コウ、起きて!!」

 

 肩を激しく揺さぶられ、俺は重い瞼を持ち上げた。

 視界に飛び込んできたのは、信助の焦った顔。そして、地面にまばらに咲く、紫色の花だった。草原のように見えるが、どんよりとした曇り空のせいか墓地のような不気味な静寂が漂っている。

 

「……信助。ここは……?」

 

「わかんないんだ。気がついたら、みんなこの場所に倒れてて……」

 

 俺はふらつく足取りで立ち上がり、周囲を見回した。天馬や神童キャプテン、錦先輩たちの姿はある。だが、どこを探しても、一緒にバスに乗っていたはずの大人たちや、紫、葵、茜、水鳥といったマネージャーたちの姿が見当たらない。

 

「監督……! 音無先生! 紫!!」

 

 俺の声は、霧の立ち込める草原に虚しく吸い込まれていった。返ってくるのは、不気味な風の音だけだ。

 

「……おそらく、奴らの手の中だ」

 

 低く、冷徹な声が響いた。声の主は剣城だった。彼は一人、一点を凝視している。その視線の先――霧の向こうにそびえ立つ巨大で無機質な建造物が見えた。

 

「剣城、知っているのか? ここがどこなのか」

 

 神童キャプテンが問いかける。剣城は忌々しそうに吐き捨てた。

 

「ここは、通称『ゴッドエデン』……神の楽園の名を持つ、“地獄”だ」

 

「知ってるのか?」

 

 天馬が息を呑む。剣城の表情には、かつて自分がいた場所に対する、深い嫌悪と恐怖が混じっていた。

 

「シードを生み出すための施設がある孤島だ」

 

 神童キャプテンが剣城に詰め寄る。

 

 「詳しく教えてくれ、剣城」

 

 剣城は苦々しい表情で、そびえ立つ施設を見上げた。

 

「俺がこの島にいたのはわずかな期間。聖帝イシドシュウジの勅命ですぐにこの島を出る事になって詳しくはわからない。ただ一つ言えることはこの島で行われている特訓は尋常じゃない。シードになったもの達はこの島に来ることを恐れている。この島だけは特別なんだ!」

 

「そんな危険な島で監督達は捕えられて、俺たちは完全に孤立したということか……」

 

 神童が絶望に近い言葉を漏らしたその時だった。

 激しいエンジン音と共に、霧を切り裂いて軍事用と思われる無骨な装甲車が次々と現れ、俺たちを包囲した。車から降りてきたのは、深い赤色の軍服のような服を纏った男たち。

 

「お前達は何者だ!」

 

 神童が叫ぶ。すると、いつの間にか俺たちの背後にある岩の上に、奇抜な格好をした男が立っていた。

 

「ほう……それが教官に対する口の聞き方ですか? 静粛に!」

 

 男は冷徹な眼差しで俺たちを見下ろした。

 

「ようこそ究極を生み出す島、神の特訓場ゴッドエデンへ。私は牙山、この訓練場を預かる教官だ」

 

「鬼道監督や音無先生、他のみんなをどこへやった」

 

「我々が欲しいのは選手のみ!ホーリーロードでの活躍は中々の物だ……しかし残念な事にフィフスセクターに逆らい続けている。よって……今日から君たちには、フィフスによる徹底した教育を施すことになった」

 

 

「誰がお前達の手先になるものか!!」

 

 神童が激昂して一歩踏み出すが、牙山は表情一つ変えずに告げる。

 

「反抗は認めない!」

 

 牙山が手に持った石を握りつぶした瞬間、轟音と共に俺たちの背後の地面が左右に割れた。中から現れたのは、無機質な照明に照らされた不気味なサッカーグラウンド。そして、そこには既に十一人の影が立っていた。

 

「彼らは究極の光を放つ者――『アンリミテッドシャイニング』。諸君らには、これより彼らと試合をしてもらう」

 

 牙山教官の冷酷な宣言に、雷門イレブンに戦慄が走る。

 中心に立つ白髪の少年、白竜が一歩前へ出た。その鋭い眼光は、まるで獲物を射抜く猛禽類のようだ。

 

「君たちが雷門イレブンか……会えて嬉しいよ。俺がキャプテンの白竜だ」

 

 その声を聞いた瞬間、剣城がハッとしたように目を見開いた。

 

「あいつ……」

 

 白竜は剣城の動揺を見逃さず、冷笑を浮かべる。

 

「剣城か。ここから逃げ出したやつがノコノコ戻ってきたとはな?」

 

「俺は命令に従っただけだ!」

 

 剣城が絞り出すように言い返すが、白竜は微塵も揺るがない。

「フン、まあいい……今のお前と俺では次元が違う。思い知るがいい」

 

 その言葉から放たれる圧倒的なプレッシャーは、これまでのどの対戦相手とも異なっていた。フィフスセクターが「究極」と称するのも頷ける、絶対的な力の差がそこにはあった。

 神童先輩は深く考え込んだ後前を向いた。

 

「ここは俺たちだけで受けて立つしかない!」

 

 審判もいない、観客もいない。

 ただ牙山教官の冷たい視線だけが注がれる中、雷門イレブンは「究極」の壁に挑む。

 

 *

 

 ピーッ!

 試合開始の笛が鳴った。

 雷門のキックオフだが、アンリミテッドシャイニングの選手たちはまるで見定めるかのように、その場から一歩も動かない。

 天馬がボールを受け、一気に駆け上がる。相手の一人がようやく奪いにかかるが、天馬は鋭いターンでかわした。

 

「『そよかぜステップV3』!!」

 

 鮮やかに抜き去り、前線の剣城へ完璧なパスが通る。

 剣城は迷わず飛び上がり、漆黒のエネルギーを纏った必殺シュートを放つ。

 

「『デスドロップ』!!」

 

 ゴールへ一直線に向かう弾丸。だが、その時まで微動だにしなかった白竜が、まるで瞬間移動でもしたかのように、いつの間にかシュートの軌道上に立っていた。

 白竜が優雅に手を振る。すると、彼を中心に凄まじい上昇気流が発生し、『デスドロップ』の威力を強引に吸い込み、完全に無力化してしまった。

 

「なんだと!?」

 

 驚愕に染まる剣城。白竜はそのボールを宙に浮かせると、自らも高く跳躍した。

 

「 『ホワイトハリケーン』!!」

 

 白竜の足から放たれたのは、スタジアム全体を飲み込むほどの白銀の暴風だった。

 

「うわあああぁぁぁっ!!」

 

 ピッチ上にいた雷門イレブンが、その余波だけで木の葉のように次々と吹き飛ばされていく。

 

「……止める!!」

 

 俺は必死に踏み込み、シュートの正面に立ち塞がった。なんとしてでも跳ね返してみせる!!

 

「『フレア――」

 

 全身に炎を纏い、カウンターシュートを叩き込もうとした。

 だが――。

 

「……がっ、あああぁぁぁっ!?」

 

 拮抗する暇さえなかった。足に触れた瞬間に感じたのは、嵐そのものに激突したかのような絶望的な衝撃。俺の体は無様に宙を舞い、地面を転がった。

 暴風は勢いを緩めることなくゴールへ。

 

「――っ!!」

 

 三国先輩は構えることすら、技を出すことすら許されなかった。ボールがネットを突き刺し、背後の壁にめり込む轟音だけが響く。

 0対1。

 白竜一人に、雷門全員が文字通り「一蹴」されたのだ。

 

 *

 

 再び雷門からのキックオフ。しかし、今度は神童先輩がパスを出すよりも速く、白竜が影のように詰め寄っていた。

 

「なっ……!?」

 

 神童が反応する間もなく、ボールは白竜の足元へと吸い込まれる。白竜はそのまま、まるで障害物を避けるかのような軽やかさで前進を開始した。

 錦先輩と天城先輩が二人がかりで立ち塞がる。だが、白竜は不敵な笑みを浮かべると、あえて二人を狙って強烈なパスを放った。

 

「ぐあぁぁっ!」

 

「ぬおぉぉっ!」

 

 ボールの衝撃だけで二人が弾き飛ばされる。それはパスではなく、人間を標的にした「攻撃」だった。

 高く跳ね上がったボールを追い、白竜が空中で静止したかのように静かに舞い、オーバーヘッドでボールをゴールへと叩き落とす。

 ピッチを震わせる轟音と共に、再びゴールネットが悲鳴を上げた。三国先輩は一歩も動けず、ボールごとゴールネットに叩き込まれた。

 

 *

 

「なんか怖いです……今までのシードとは違う」

 

 天馬が肩を落とす。あまりの次元の違いに、雷門イレブンの間に絶望が伝播していく。

 

「確かに全く次元が違う」

 

「じゃあどうすれば……キャプテン!」

 

「わかっている。これ以上好きにはさせない」

 

 勝ち筋が見えないながらも何とか次の手を考える神童先輩だがこの実力差を埋められるのはそう簡単ではない。

 

「しかし奴らのスピードとボールコントロールは並大抵じゃない……技を出す暇もなかったぞ」

 

 霧野先輩の言葉に白竜が鋭く反応する。

 

「技を出す暇があったら止められるとでも言いたいのか?」

 

 白竜の冷徹な眼差しが、雷門イレブンを射抜く。

 

「くっ……!とにかく今は攻めるしかない!いくぞ!」

 

 神童キャプテンの鼓舞に応え、天馬が果敢に中央を切り裂く。得意のドリブルで突破を試みるが、白竜はそれを見切っていたかのように、一瞬の隙を突いて天馬の足元からボールを掠め取った。

 

「さあ!止めてみろ!」

 

 白竜が低く鋭い咆哮を上げ、加速する。その行く手を阻むべく、俺、マサキ、霧野先輩、そして信助の四人が最終防衛ラインを組んだ。

 

 三人が同時に必殺技のモーションに入る。だが、白竜が不敵に笑い、くるりと回ると凄まじい竜巻が発生する。

 白竜から放たれた強烈な竜巻がピッチを荒れ狂い、狩屋のネットも、霧野先輩の霧も、信助のジャンプさえも無慈悲に引き裂いていく。

 

「「「うわあああぁっ!!」」」

 

 三人が吹き飛ばされる中、「バーンドロウ」の加速を使った力技で竜巻を突き抜ける。

 

「……まだだ! 『バーンドロウV3』!!」

 

 俺はそのまま白竜が持つボール目掛けて炎を纏って飛び掛かる。

 

「ほう……中々やるな。だが遅い!!」

 

 俺がボールを奪う間もなく白竜はボールと共に飛び上がり、またも白銀の竜巻をボールに纏わせる

 

 「『ホワイトハリケーン』!!」

 

 先ほどよりもさらに密度を増した衝撃が、三国先輩の構えるゴールマウスを粉砕した。先輩は必殺技の構えに入ることすらできず、弾き飛ばされて背後の壁に激突する。

 

 0対3。

 

「……ハァ、ハァ……。なんだよ、これ……」

 

 狩屋が泥を吐き出しながら立ち上がる。

 俺は痺れる足を見つめた。必死に食らいついて、必殺技まで出した。それでも、奴らには届かない。

 

 *

 

 あれから数分しか経っていないにも関わらず既に0対7と圧倒的な点差をつけられてしまう。

 

「ハァ、ハァ……っ! まだだ……まだ、終わってねぇぞ……!」

 

 膝が震え、全身の筋肉が悲鳴を上げている。それでも俺は、泥まみれの地面を拳で叩き、無理やり体を押し上げた。周囲では天馬も、神童キャプテンも、これまでの猛攻に耐えかねて倒れ伏している。

 一人、悠然と立ち尽くす白竜が、俺を見下ろして鼻で笑った。

 

「……無駄に頑丈なやつだ。だが、その無意味な執念ごと、次の一撃で終わらせてやる」

 

 白竜が再び高く跳躍する。その背後に、スタジアムの空気を引き裂くような巨大な白銀のオーラが渦巻いた。白竜が足を振り抜こうとした、まさにその刹那。

 

 ――ドォォォォォンッ!!!

 

 グラウンドの外、深い霧の奥から、目にも止まらぬ速さで一球のボールが飛来した。それはピッチの中央に凄まじい砂埃を巻き上げながら突き刺さった。

 視界を覆う土煙。その奥に、ぼんやりと人影が浮かび上がる。

 

「……あれ、は……」

 

 薄れゆく意識の中で、俺はその影を見つめた。

 

「円堂……監督……」

 

 安堵か、それとも限界か。その影が誰なのかを確かめる前に、俺の視界は真っ暗に染まり、力尽きるようにピッチへと倒れ込んだ。

ホーリーロード編までの設定集とか欲しいですか?

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