イナズマイレブンGO 紅蓮の翼   作:シキDX

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第二十五話(劇場版編) 大・特・訓!!

 ゴッドエデンの奥地。轟音と共に真っ白な飛沫を上げる巨大な滝の前に、俺たちは集まっていた。

 

「いいか、お前たち! この島の自然は厳しいが、そこにはレベルアップのヒントが必ず隠されている。それを掴めるかどうかはお前たち次第だ。頑張ってくれ!」

 

 円堂監督の力強い激励が、滝の音に負けじと響き渡る。

 そんな中頭上から風を切る音が聞こえた。

 バサバサッと木の葉を揺らし、高台から一本の太いツタを掴んだ影が、ターザンのように鮮やかな弧を描いて俺たちの目の前に着地した。

 

「シュウ!」

 

 音もなくしなやかに着地したその身のこなしに、霧野先輩や神童キャプテンも驚きを隠せない。

 

「僕はこの島で育ったんだ。だからこの島のことはよく知ってる。今やったみたいにここの自然と『遊んで』いれば、きっと君たちもすぐにできるようになるよ」

 

 シュウは事も無げに言って微笑んだ。

 なるほどな、「遊ぶ」くらい軽い気持ちでやった方がより自然を感じることができるのか。

 天馬の瞳にパッと光が宿る。

 

「信助、コウ! 俺たちもシュウみたいに、この島の自然を味方にしよう!」

 

「うん! 僕、やってみるよ!」

 

「ああ……あいつのあの身軽さ、俺たちのサッカーに取り込めれば、白竜達にも対抗できるはずだ!」

 

 天馬や信助、そして俺たち一年生が奮起する姿を見て、吹雪さんも満足そうに頷いた。

 

「さあ!特訓開始だ!!」

 

 *

 

 それぞれの課題に合わせ、雷門イレブンは島内の特訓場所へと散っていった。

 俺と信助、狩屋、そして天城先輩の四人が連れてこられたのは、日の光も届かない、轟々と激流が渦巻く巨大な洞窟の中だった。

 

「……ここ、流石にやばくない?」

 

 狩屋が引き気味に水面を見つめる。そこには、鋭い岩肌を削るような速さで水が流れ、巻き上がる飛沫が肌を刺す。

 

「ふん、ビビってんのか? 死にゃあしねぇよ……多分な」

 

 岩場に腰を下ろし、不敵に笑うのは不動さんだ。彼の足元には、頑丈なロープの手綱が取り付けられた大型のタイヤが四つ転がっていた。

 

「特訓内容は単純だ。そのタイヤに乗って、この激流を下りきれ。手綱を上手く使って重心を制御し、変化し続けるスピードに体を馴染ませるんだ。奴らの力に振り回されたくねぇなら、この程度の流れくらい乗りこなしてみせろ」

 

「よし……行くぞ!」

 

 俺が先陣を切ってタイヤに飛び乗り、激流へと躍り出た。

 

「うわああぁぁっ!?」

 

 想像以上の水圧と加速。視界が激しく揺れ、目の前に迫る巨大な岩を避けようと手綱を引くが、遠心力に耐えきれず、カーブを曲がりきれない。

 

 ドォォン!!

 

「ぶはっ……! か、硬ぇ……!」

 

 俺を筆頭に、後続の信助、狩屋、天城先輩も次々と壁に激突し、水中に叩き落とされた。

 

「やれやれ……油断してると自然はすぐに牙を剥くぞ」

 

 不動さんが冷ややかに言い放つ。

 

「お前らの動きは型にハマりすぎだ。流されるんじゃねぇ、流れを利用して加速しろ!」

 

 全身打ち身だらけだが、俺の心は折れていなかった。むしろ、この制御不能なスピードに食らいつきたいという本能が、体中の細胞を熱くさせる。

 

「もう一度だ! まだ終わらねぇ!!」

 

 俺は水から這い上がると、すぐにタイヤを担いで上流へと走り出した。

 

 *

 

 洞窟での激流特訓を終え、拠点の建物に戻った頃には、全員が泥と水にまみれてボロボロの状態だった。だが、建物の中に漂う香ばしいスパイスの香りが、沈んでいたイレブンの心に火を灯す。

 

「お待たせしたっス! 特製カレー、出来上がりっスよ!」

 

 大鍋を抱えた壁山さんの威勢のいい声が響く。

 

「……うまい! 生き返る……!」

 

 天馬や信助がふうふうと息を吹きかけながらカレーを口にする中、俺の食欲は完全にリミッターが外れていた。

 

「……おかわり! 壁山さん、もう一杯!」

 

 バクバクと、まるで数日何も食べていなかったかのような勢いで皿を空にしていく。

 

「了解っス! まだまだ鍋にはたっぷりあるっスよ。アスリートは食べることも特訓のうちっス、じゃんじゃん食べるっスよー!」

 

 壁山さんが嬉しそうに、山盛りのライスにルーをなみなみと注いでくれる。

 

「……すごいね、コウ。あんなハードな特訓の後で、よくそんなにたくさん食べられるよ」

 

 天馬が自分の皿を見つめながら呆気にとられたように呟いた。信助も「僕、もうお腹いっぱいだよぉ……」とスプーンを止めている。

 

「……自分でもわかんねぇけど、今日はいつも以上に腹が減るんだ。いくら食っても足りないっていうかんじ」

 

 俺は熱いカレーを喉に流し込みながら答えた。不動さんの言っていた「自然の牙」に立ち向かうために、細胞の一つ一つがエネルギーを欲している……そんな奇妙な感覚だった。

 

「あまり食べすぎて、明日の特訓で吐き出すんじゃないぞ」

 

 後ろで霧野先輩と一緒に食べていた神童キャプテンが、少しだけ口角を上げて軽く注意する。その言葉には、極限状態の中でも食欲を失わない俺への安心と呆れが混じっていた。

 

(……もっとだ。もっと強くならないと……。三日後のスタジアムで、あの暴風を突き破るための力が、まだ足りない……俺には力が必要なんだ!)

 

 外ではゴッドエデンの夜風が不気味に唸っている。

 だが、今の俺の中にある「熱」は、その寒さを容易く跳ね返していた。

 

 

 特訓二日目の朝、洞窟内に轟く水の音に混じって、鋭い水飛沫が上がる音が響いた。

 

「――っし、抜けた!!」

 

 手綱を握り直し、タイヤの重心を絶妙にコントロールしながら、これまで誰も到達できなかった最下流の出口へと滑り込んだ。荒れ狂う激流のスピードを殺すのではなく、むしろその力を自らの加速へと変える……不動さんの言っていた「流れを利用する」感覚を、俺はこの短期間で完全にモノにしていた。

 

「……嘘でしょ!? コウ、もう最後まで行っちゃったの!?」

 

 洞窟の中ほどで岩にしがみついていた信助が、目を丸くして叫んだ。

 狩屋も呆然としながら、水から上がってきたコウを見つめる。

 

「……フン、思ったより早かったな」

 

 岩場からその様子を見ていた不動さんが、珍しくわずかに口角を上げた。

 

「いいだろう。この激流を乗りこなせたなら、やつらの暴風の中でも自分の足場を見失うことはねぇはずだ」

 

 だが、不動はふと表情を険しくすると、歩み寄ってきたコウの目をじっと覗き込んだ。

 

「……おい、コウ。一つ聞かせろ。お前、最近何か変なもんでも拾ってねぇか? ……例えば『紫色の石』とかよ」

 

「紫色の石……? いや、そんなの見てないけど。どうして?」

 

 俺が首を傾げると、不動はしばらく沈黙した後、「……ならいい。」とだけ答えた。

 

「ここでの特訓は合格だ。次は壁山のやつが広い場所で待ってる。あいつの『特訓』はシンプルな分泥臭いぞ。気合入れ直して行ってきな!」

 

「ありがとうございます、不動さん!」

 

 俺は不動さんに一礼し、次の特訓場所へと走り出した。

 その背中を見送りながら、不動さんは小さく舌打ちをした。

 

「……ただの才能ならいいんだがな」

 

 *

 

 不動さんの洞窟を後にした俺が辿り着いたのは、鬱蒼とした巨木に囲まれた森の開けた場所だった。そこには、壁山さんの手によって作られた、無骨な練習用ゴールが鎮座していた。

 

「おーい! こっちっス!」

 

 壁山さんが大きく手を振る。ゴールの前には、泥まみれになりながら構えを解かない三国先輩の姿があった。そして、一乃先輩と青山先輩も、必死に三国先輩に向かってシュートを放っていた。

 

「三国先輩……ここでやってたのか」

 

 俺が声をかけると、先輩は荒い息を吐きながら、鋭い眼差しをこちらに向けた。

 

「……ああ。シュウのあのシュート、俺一人じゃ指先一つ触れられなかった。コウと霧野がいなければ、今頃俺はボールごとゴールネットに叩きつけられたいたはずだ。今の俺じゃ、白竜の『究極』には到底及ばない……!」

 

 三国先輩の拳が、悔しさで震えている。

 その背後で、壁山さんがどっしりと腕を組んで頷いた。

 

「三国君は、今までの自分を壊そうとしてるっス。だから、コウ君! 君のその『激流』で鍛えた力で、遠慮なく三国君を攻めてほしいっスよ!」

 

「……わかった。先輩、行くぞ!!」

 

 俺は転がってきたボールを思い切り踏み込んだ。

 

 ドォォォォン!!

 

 俺の放った強烈なシュートが、空気を切り裂いてゴール隅を突く。

 

「ぬおおぉぉっ!!」

 

 三国先輩が吠えながら飛びつく。指先がボールを掠めるが、勢いに押されてそのままゴールに吸い込まれた。

 

「……もう一本だ! 来い、コウ!!」

 

 先輩は地面を叩いて即座に起き上がる。その執念に、一乃先輩たちも気圧されたように唾を飲み込んだ。

 俺の心臓が、またドクンと大きく跳ねた。

 不動さんが言っていた「変な石」なんて持ってない。だけど、仲間たちのこの熱い想いが、俺の体の中でとんでもないエネルギーに変わっていくのがわかった。

 

「……いいっスよ! 二人とも、もっとぶつかり合うっス! その火花が、本番の勝利を照らすっスよ!!」

 

 壁山さんの激励が森に響き渡る。

 人質として捕らえられている紫たちを救うため、そして自分たちのサッカーを守るため、雷門の守護神とストライカーの、魂を削り合うような特訓は夜まで続いた。

 

 *

 

 特訓最終日。ゴッドエデンの厳しい自然と、レジェンドたちの容赦ない指導に耐え抜いた雷門イレブンは、ついに全員が課せられたメニューをマスターしていた。三日前とは見違えるほど、彼らの体には野生の力強さと、洗練されたスピードが宿っていた。

 その日の夜。疲れ果てて眠りについた少年たちの頭上、建物の屋上には、円堂監督をはじめとする大人たちが集まっていた。

 

「……信じられねぇな。たった三日で、あいつらは別人のようになりやがった」

 

 不動が夜風に吹かれながら、手すりに背を預けて呟いた。だが、その表情に晴れやかさはない。

 

「特にあのコウだ。激流を抜けた後の成長曲線が、どうにも計算に合わねぇ。ありゃあ、ただの才能や努力って言葉で片付けられるもんじゃない」

 

「自分もそう思うっス……。今日のシュート特訓汗ひとつかかずにいたっスよ」

 

 壁山も重々しく同意する。

 その言葉を静かに聞いていた円堂監督は、一度深く息を吐くと、意を決したように懐から一枚の写真を取り出した。

 

「……本来なら、本人のプライバシーに関わることだから、あまり口にしたくはなかったんだがな」

 

 風丸がその写真を覗き込み、眉をひそめた。

 

「これは……機械か?卵のような形に見えるが」

 

 写真に写っていたのは、赤子が一人収まる程度のスペースを持つ、鈍い銀色に輝くメカニックな装置だった。複雑な配線と、現代の工学とは一線を画すような未知のデザインが施されている。

 

「何の機械だこれは。医療用か?」

 

 風丸の問いに、円堂は首を横に振った。

 

「それは俺にもわからない。この写真は瞳子さんから受け取ったものだ。かつて『お日様園』の近くの山中で、誰にも気づかれずに置かれていたらしい。そして……コウは、この中で眠っているところを発見されたんだ」

 

「なんだって……!?」

 

 吹雪が目を見開く。不動の瞳にも鋭い光が宿った。

 

「調べたのか……これは」

 

「ああ、ヒロトや緑川たちが総力を挙げて解析してくれた。だが分かったのは、今の地球の技術力では、パーツの一つですら再現が不可能なほど高度なオーバーテクノロジーが使われているということだけだったらしい」

 

 重苦しい沈黙が屋上を支配した。

 不動が空を見上げ、忌々しそうに鼻を鳴らす。

 

「あの妙な成長の正体は、その得体の知れない機械の恩恵ってわけか……いやだとしたら異常が出るのが遅すぎるな。くそっ情報が少なすぎる!!」

 

「ああ。だからこそ、俺たちは注意して見ていてやる必要がある」

 

 円堂は拳を強く握り、階下で眠る少年たちへ視線を向けた。

 

「あいつの力が何であれ正しい道を示してやらなきゃならないんだ」

ホーリーロード編までの設定集とか欲しいですか?

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