天馬と俺はサッカー部棟に着くとサッカー部の顧問音無先生に呼び止められ雷門のベンチへと向かった。
サッカー部棟のグラウンドには神童さん率いる雷門と剣城と呼ばれる不良っぽい男が率いる黒の騎士団というチームが睨み合っていた。
「雷門イレブンのサッカーどんなにすごいサッカーなんだろう」
試合開始のホイッスルと共に雷門イレブンは敵陣へと攻め込んだ。しかし、放たれたシュートは黒の騎士団のGKに片手で受け止められる。
「なに!」
黒の騎士団の選手たちは器用にダイレクトパスを空中で繋ぎすぐに雷門のゴールへと辿り着く。地上にいる雷門の選手たちは、ただ見上げることしかできない。
「くっ……させるか!」
GK三国の前に、一人の黒の騎士団の選手が立ちはだかり、無造作に足を振り抜いた。化身も技も使わない、ただのシュート。
「――っ!?」
反応すら遅れ、三国先輩の横をボールがすり抜ける。網を揺らす乾いた音が、処刑の合図のように聞こえた。
そこからは、もはや試合ですらなかった。
0対1、0対2……電光掲示板の数字が無機質に積み重なっていく。
「……ひでぇ」
ベンチで戦況を見守る俺は、なにもできないのが悔しくて 手を固く握りしめていた。隣に座る天馬も、震える声でピッチを見つめている。
スコアは0対10。雷門イレブンはあまりの力の差に精神共に疲弊していた。
「このままじゃセンパイ達が……。なんとかしないと。監督なんとかならないんですか!」
天馬がたまらず久遠監督に詰め寄る。だが久遠監督はこんな状況にも顔色ひとつ変えず淡々と答える。
「……。なんとかするのは監督ではない。選手達だ。
松風、不知火……今からお前達を試す」
久遠監督は突拍子もないことを言って試合を止めて選手交代を言い渡す。
「選手交代!南沢篤志に代わって松風天馬。小坂元成に代わって吉良恒陽」
「「え!え――っ‼︎」」
突然、の選手交代に俺たち2人は驚きの声をあげた。まさか、入部もしていないのに試合に出るなんて……。
天馬と俺はさっそく雷門のユニフォームを着て先輩たちと交代する。素性も知らない新人と交代ということもあって先輩からの視線は冷たかった。
「い、いきなり試合だなんてどうしよう」
どうやら天馬は緊張しているようだ。
「だ、大丈夫だろ多分。俺たちで雷門がすごいってとこ見せてやろうぜ!」
「……うん、そうだね!きっとなんとかなるさ!」
俺たちはすぐに自分のポジションに向かった。俺のポジションはDFだ。
試合再開のホイッスルが鳴り、すぐに天馬の元にボールが渡ったがすぐに剣城にボールを奪われてしまう。そして、剣城はあっという間にゴール前まで来てしまった。
「させるかよっ!」
俺はゴール前まで来た剣城の前に立ちはだかる。
「懲りないなおまえも……朝の借りは早めに返してやる」
剣城がボールを蹴るとボールが禍々しい黒い炎に包みこまれる。
「デスソード――‼︎」
漆黒の剣と化したシュートが、空気を切り裂きながら襲いかかる。俺はシュートをなんとか止めるため腹に力を込めてシュートを受ける。
「おらぁぁぁ!! 止まれぇぇぇ!!」
ガリガリと、スパイクが地面を削る音が響く。
デスソードの威力を体全体で受け止めるが、そのあまりの威力に耐えきれず俺は大きく吹き飛ばされる。
「ぐ、あああああ……ッ!!」
シュートはそのまま無防備なゴールに突き刺ささり前半は0対11という全く差が縮まらないまま終わってしまった。
*
「キャプテン役に立てなくてすみません……。でも俺サッカーを守りたいんです。どうすればいいですか?キャプテン!」
ベンチに戻るなり、天馬は必死に神童先輩に声をかける。俺もそれに便乗する。
「……そうですよ。あんな奴らに好き勝手させて、俺も黙っていられない!」
「落ち着け2人とも。俺もサッカー部は渡したくないだがあいつらの実力は本物だ」
神童先輩は俺たちとは対照的に冷たくそう答えた。
神童先輩の言う通り名門雷門を軽くあしらうあいつらは異常に強い。
「あのチームはフィフスセクターから送り込まれた」
「「フィフスセクター?」」
俺たちは聞きなれない単語に首を傾げる。それを見た神童はフィフスセクターについて説明する。
フィフスセクターとは「平等なサッカー」を掲げ、すべての試合の勝敗をあらかじめ決定・指示することで、サッカーによる学校の格差をなくそうとしている組織らしい。そんなのただの八百長じゃないか。
「お前だって、サッカーが強いからこの雷門に来たんだろ?」
「強いから・・・? 違います! 俺、雷門でサッカーやるの、ずっと憧れていたんです!」
「俺も幼い頃から雷門のサッカーについて聞いてきた。だから夢にまで見たこの場所に来たんだ」
俺たちは神童先輩の言葉を真っ向に否定した。孤児院にたまにくるおじさん達(雷門出身じゃないらしいけど)に聞かされて小さい頃から憧れていたんだ。強いからなんで理由でここに来たわけじゃない。
「あこがれ?それがなんだ。世間が見るのは結果。サッカーが弱ければ無価値とみなされる。この事態を救済するために作られたのが、サッカー管理組織フィフスセクターだ」
やはり俺たちの熱い想いとは裏腹に神童先輩の言葉は絶望に包まれていた。
*
後半戦のホイッスルが鳴り響く。
だが、神童たちの動きはさらに鈍くなっていた。フィフスセクターの重圧が、彼らの足を文字通り縛り付けている。黒の騎士団は嘲笑いながら、わざとパスを回して雷門をなぶるように攻め上がる。
「……終わりだ、雷門」
剣城が再びゴール前へ。放たれる二度目の『デスソード』。
漆黒の剣が空気を切り裂きゴールへと向かう。俺は必死に食らいつきその軌道上に滑り込んだ。
「――っらぁぁぁあああ!!」
黒い剣を正面から足で迎え撃つ。
だが、デスソードの威力は先ほどよりも増している。スパイクが悲鳴を上げ、後退を余儀なくされる。
「無駄だ」
「……無駄じゃない……!俺達のサッカーは、まだ終わっちゃいない!!」
その瞬間、体から爆発的な熱気が噴き出した。
紅蓮の炎を纏った幻影が、一瞬だけ背後に揺らめく。
「うおぉぉぉ!! ぶっ飛べえぇぇ!!」
咆哮と共に、俺はデスソードを力任せに蹴り返した!
漆黒のシュートが炎を帯び、凄まじい速度で逆流する。だが、剣城は眉一つ動かさずにそれを冷たく見据えた。
「……威勢がいいだけだ。そんな闇雲な一撃、ゴールを捉えることすら――」
「――まだだ! まだ終わってない!!」
どこから現れたのか。フィールドを全力で駆け抜けてきた天馬が、ゴール前へと飛び込んでいた。
「コウの想い、無駄にさせない! 天まで届けぇぇ!!」
天馬が空中で体をひねり、カウンターシュートににダイレクトで合わせる。俺の「力」に、天馬の「風」が加わり、シュートの軌道が鋭角に変化した。
意表を突かれた黒の騎士団のGKは、反応することすらできず、ボールがネットに突き刺さった。
「……入った……一点、取ったぞ!!」
1対11。点差は絶望的だ。だが、グラウンドを支配していた「絶望」は、確かにこの一点で打ち破られた
「……やった、な……」
天馬が駆け寄ってくるのが見える。
神童先輩たちが目を見開いているのがわかる。
だけど、そこまでだった。
全身から力が抜け、視界が急激に暗くなっていく。
俺はそのまま、ピッチの感触も忘れるほどの深い闇へと落ちていった。
ホーリーロード編までの設定集とか欲しいですか?
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いる
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いらない