学マス世界にTS転生した一般人のアイドル奮闘記   作:おすとろもふ

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8.5話 前半

 

 

『ふたりの天使』

 

 

 最近の俺には悩みがある。

 

 人によっては最大の悩みにもなり得るし、逆に全くそんなことが悩みにならない人もいる。しかし、今の俺からしてみれば死活問題だ。

 

……一体何かって?

 

 友達がいません。

 

 いや、ことねとてまりんは友達だ。でも、ことねは他の友達が多くて俺が話すのはかなり少ない。てまりんはそもそも論外だ。

 

 昨日てまりんに話しかけたら、返ってきたのは「……は?」の一言だった。まじつらたんって感じ。

 

 なので、今日の俺は入学早々まだグループが定まっていない内に、話せる友達を数人作ることだ。もちろん最終的には別クラスや、この教室の全員と友達になりたいところではある。

 

 ということで、俺は昼休みの現在教室の机に突っ伏している。

 

 

「……なあ咲季ちゃんよぉ。莉種ちゃんのこと放置していいん?」

 

「いいのよ!莉種は今成長しようとしてるの。それを妨げてはお姉ちゃん失格なのよ!」

 

「あっそう……。いやだけど見てらんねぇって」

 

「耐えるのよ……。わたしだって心が悲鳴をあげているわ。だけど今は見守ってあげるの!そして、成長した暁にはお姉ちゃんがぎゅーっと抱きしめるわ!」

 

「あっそう……。お前が抱きしめたいだけだろ……!

 

 

 おいそこの赤と黄色。聞こえてんだよッ……!?

 

 こんな筈じゃなかったんだ。本当はもっと、華麗にスムーズにクールに話し掛けて和気藹々(わきあいあい)とする予定だったのに。

 

 リアルっていうのはいつでも残酷だ……!

 

 

「……おい咲季。まじで庇護欲が限界突破しそうなんだけど」

 

「わたしもよ」

 

「目の前に寂しそうな子犬(りしゅ)を置かれて、放置できるやつなんていねぇだろ……!!」

 

「そうね」

 

「……?なんかさっきから反応薄くね?……っ!?!?こいつ、オート会話モードにしてやがる!?自分だけ目の前の惨状から目を背けんじゃねェ!!」

 

「分かってるわ」

 

「戻ってこいやおらァ!!」

 

 

……これ程までに二人に殴り込みに行きたいと思った日はない。誰の何が惨状だよ!!

 

 

「……うぅー」

 

『ごっはぁ!?!?(吐血』

 

「た、大変だぁぁーー!?藤田と花海が血溜まりに倒れ伏したァァァ!!」

 

 

 教室が一瞬騒がしくなったが、そんなことは今はどうでもいい。俺の精神状況は非常にネガティブだ。

 

 こんなことなら大人しく冒険せずに、ことねとかてまりんとか咲季ねえに話し掛けていれば……!

 

……もうこうなったら誰かに突撃しよう。

 

 世の中には猪突猛進という言葉があるが、世の中まずは対象に突撃することから始まるのではないか?と思い至った。

 

 そう思い至ったはいいものの、その突撃相手がいないのでどうしよう。

 

 俺は必死に脳を回しながら周りをチラッと見ると、ふと銀髪の女子生徒と目が合った。その女子生徒は、こちらの状態を心配そうに見てくる。

 

……しかし俺は、目があった瞬間顔を腕枕に押し付けた。

 

 言い訳をさせてほしい。そりゃあ美少女と目がバッタリ合ったら心臓が跳ねるよ。そして、その反動を使って目を大胆に逸らしても許されると思う。

 

 でも、せっかく目が合ったのに逸らしてしまったのは勿体無いと感じた。

 

 もうそんな特大チャンス無いというのに……。

 

 誰かが言っていたが、チャンスというのは待つだけではなく掴みにいかなければいけないらしい。そう分かってはいるのに、身体は全然ついて来ないのだから困ったものだ。

 

……仮にもし、もう一度顔を上げた時に目が合ったのなら俺から声を掛けに行こう。

 

 俺はそう決意を固めて顔を上に上げた。

 

 その瞬間に目に飛び込んできたのは、翡翠のように輝く瞳とギャルっぽい明るい髪色ーーー

 

 

「うわぁあ!?」

 

「にゃっはっは!莉種っちもそんな声出すんだ!」

 

「ちょ、ちょっと清夏ちゃんっ!!驚かせちゃ駄目だよ!」

 

「めんごめんご〜!」

 

 

 俺があまりの驚きで荒ぶった心臓を落ち着けている間に、眼前にいる二人は楽しげに会話していた。

 

 そしてそんな仲良さげに話している二人は、このクラス内でもかなり目立っているコンビだ。

 

 片や、その明るい髪色と翡翠色の瞳をもつ学園内屈指のコミュ強ギャル紫雲清夏(しうんすみか)

 

 片や、その透き通るような銀髪をボブカットにして、空色の瞳を輝かせる内気だが強火オタクゲーマーな葛城(かつらぎ)リーリヤ。

 

 二人は異質な性質を持ちながら、この教室の誰よりも仲がいい。たしか原作では、お互いを刺激しながら成長していく姿が描かれていた。

 

 そんな二人なのだが、再び俺の目の前にしゃがみ込み視線を合わせてくる。こ、これで冷やかしとか揶揄(からか)いに来ただけなら俺は死ぬぞ……!

 

 

「……どしたの?」

 

「いんやぁ〜?あたし達さ、莉種っちと話したくてうずうずしてたんだよねぇ〜」

 

「……そ、そうですね。莉種ちゃんさえ良ければわたし達とお話ししませんか?」

 

「……!!いいけど、あの……。お願いしてもいい?」

 

「いいよー!なになに?なにかなー」

 

「清夏ちゃん、テンション高くて怖がられても知らないよ……」

 

 

 この二人は、なんと俺と話したいが為にわざわざ話し掛けてきてくれたらしい。……いや、天使か?

 

 だけど、本来なら勇気を出して俺から話し掛けるべきだった。結局、今のままでは俺は変わらないままだろう。

 

 だから、次こそは俺が勇気を出して突撃する番だ。

 

 俺は二人を伏目がちに見上げながら、意を決して口を開く。

 

 

「わ、私と友達になって、くれませんか……!」

 

「ごふっ……!?い、いいよぉー!!」

 

「……はいこちらこそよろしくお願いします!それと、わたしは少し吐血したいので席を外しますね」

 

「……?うん」

 

 

 そして、次の日から朝の挨拶をしたり、一緒にご飯を食べたりすることになる。

 

……しかし、時々二人が吐血し始めるのは心配になるのでやめてほしい。

 

 

 

 

『佑芽の不満』

 

 

 

 最近のあたしには悩みがあります!!

 

 とは言っても、至急解決したいといった悩みではないのでご心配なさらず!

 

 ですが、やっぱりこの難問を放置したままだとムズムズしてぐわぁー!ってなっちゃいそうなので、やっぱり早急に解決しましょう!

 

 そんなわけで名探偵佑芽と名高いこのあたしが、自分の未解決事件をパパッと解き明かしちゃいます!

 

 

「むむー。むむむーー!!」

 

「今日の花海さんは『む』の数が多いですわね?」

 

「……不思議だね。悩み事?」

 

「そうっ!!そうなんだよ広ちゃん!!」

 

「わひゃぁっ!?い、いきなり大きな声を出さないでくださいまし!?」

 

「あ、ごめんね!……そう!!そうなんだよ広ちゃん!!」

 

「まさかのテイク2でびっくり」

 

 

 あたしは急に大声を上げてしまったことを、驚いた様子の千奈ちゃんに謝りつつ、二人に向かって現在の悩み事を打ち明ける。

 

 

「それがね……。あたし……」

 

「ご、ごくり……!」

 

「もう2日も莉種ちゃんに会えてないんだよっ!!」

 

「ズコー!ですわぁ!?」

 

「これは由々しき事態だよ!!もう少しで莉種ニウムが切れてあたしが破裂しちゃう!!」

 

「……それは本当に由々しき事態。早急に解決の目処を立てよう」

 

「篠澤さんはこのノリに乗るのですね……」

 

「楽しそうだからね」

 

 

 あたし以外の二人は、他人事のように会話を続けている。でも、二人は事の深刻さをまるで理解してないです。

 

 莉種ニウムの不足……これの意味していることを知らないなんて!

 

……莉種ニウムというのは、莉種ちゃんが発している謎エネルギーの総称らしい。そして、その効果は沢山あるけど一番はその依存性の高さです。

 

 お姉ちゃんが言ってたけど、半年吸い続けてしまえばもう元の身体には戻らないらしい。特に、莉種ちゃんに距離が近ければ近いほど、莉種ニウムの影響を強く受けてしまうとかなんとか。

 

 とにかく、超絶危険で最高に可愛い成分だということを伝えたい。

 

 そんなわけで早速会いに行きたいんだけど、いきなり行って迷惑と思われたりしたら嫌なので、何かしらの大義名分を作りたいです!

 

 

「それでどうしたらいいでしょうか!!」

 

「話がいきなりぶっ飛びましたわね」

 

「……それじゃあ教科書を借りる設定でどう?」

 

「……ふむ。アリ、だねッ!!よぉーし早速行こーー!!」

 

「おー!ですわ!」

 

「……お〜」

 

 

 あたしの気合いいっぱいの掛け声にノッて来てくれる二人。これで、絆が生まれて事件解決へ一歩前進だね!

 

 そうして3人で廊下を歩いていると、千奈ちゃんが急に話し掛けて来た。

 

 

「その、花海さんはお姉妹の莉種さんのことを凄く好きでいらっしゃいますよね?何かキッカケがあったんですの?」

 

「わたしも気になる」

 

 

 莉種ちゃんを好きになったキッカケ……。よく考えてみれば、昔からずっと好きだから特にこれと言って無いかも。

 

……でも、本格的に意識し始めた出来事ならある。

 

 

「……昔、お姉ちゃんにいつも通り勝負を仕掛けに行った時があったんだー。でも、案の定負けちゃったんだけど……。ぐぬぬ!今思い出してもくやしぃ!!……こほん。それでね、その時は凄く自信あったのに負けちゃったから部屋で少し落ち込んでたんだー」

 

「は、花海さんが落ち込むなんて相当ですわね……」

 

「ちょっぴり意外だね」

 

「今はもう落ち込まないよ!……だけど、落ち込んでたあたしの部屋に莉種ちゃんが躊躇(ためら)いがちに入って来て、急に抱きついて来たんだ〜」

 

「えぇ!?だ、大胆ですわ!?」

 

「えっちだね」

 

「それで、まさかの事態に混乱いっぱいだったんだけど、そんなあたしに莉種ちゃんがこう言ったんだよ。

『佑芽ねえは凄いよ。負けても負けてもずっと立ち続けてる。……だから、私が佑芽ねえの止まり木になる。ずっとずっと頑張ってる佑芽ねえのこと、私が側で見てるから。えらいえらい』って。それで頭を撫でられながらしばらくは抱き合ってたね!」

 

「……え?魔性すぎませんこと?」

 

「……罪な女。これは擁護できない、ギルティー」

 

 

 あたしが語った莉種ちゃんとの思い出に、千奈ちゃんと広ちゃんは驚きながらも、遠い目をしている。

 

 この思い出は、あたしの中で今でもずっと大切に保管されてる記憶。あの時の莉種ちゃんが言った言葉は一言一句覚えてる。

 

 今のいままで、あたしは莉種ちゃんを支えにして負け続けて来たと言っても過言じゃない。だから、あたしには莉種ちゃんが必要。

 

 あたしはお姉ちゃんが好きだし、莉種ちゃんが好き。

 

……でも、お姉ちゃんは家族として大好きだけど、莉種ちゃんは家族としてともう一つある。

 

ーーー恋愛対象として。

 

 はっきり言っちゃうと、あたしは莉種ちゃんに恋してる。もはや、愛してると言ってもいい。

 

 

「……だから、莉種ちゃんはあたしとずっと一緒にいるべきだと思うんだよね!!」

 

「純粋無垢な心に宿った狂気……今日も世界はままならないね」

 

「奇遇ですわね……。わたくしも今それを感じていますわ」

 

「……!!あっ!いたーー!!!!」

 

「……え、なに?佑芽ねえ?」

 

 

 あたしは二人と会話しながら、1年1組の入口に視線を集中させる。……なんとなく、出てくるような予感がした。

 

 これが、常日頃からお姉ちゃんが言っているお姉ちゃんセンサーってやつかも……?

 

 そして、予感通りに莉種ちゃんは入り口からふわふわとしながら出て来た。今日も見るだけで人を幸せにさせる莉種ニウムを振り撒きながら、てくてくと歩いている姿を見ると、無性に抱きつきたくなってくる。

 

 あたしはやっぱり、お姉ちゃんと莉種ちゃん抜きでは生きられないです!!

 






皆さんは誰の曲が好きですか!?

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