学マス世界にTS転生した一般人のアイドル奮闘記 作:おすとろもふ
桜の花弁が風に乗って飛んでいる。辺りはそんな花弁が踊っているお陰か、賑やかな雰囲気を醸し出しているようだ。
今日は4月1日。そう、待ちに待った入学の日なのだ。
そんな俺の存在を歓迎するように、風が頰を撫で付けて通り過ぎていった。
「……初日から遅刻とか、はぁ」
まあ風からは歓迎されていたとしても、当日に遅刻している俺を学校側が歓迎してくれるのかは、
……こんなはずではなかったのだ。
記念すべき初星学園での寮生活を開始したはいいが、まさかの個人部屋だったこともあり、掃除や家具の配置が中々に大変だった。
昼には台所のキッチン用品や家庭用品を買いに行き、夜は遅くまで整理整頓と新しいPCの設定をいじっていた。
そんなことをしていれば当然、時間は深夜の1時を回る。この世界に来てからは毎日夜の8時に寝る生活を続けていた。これは咲季ねえが決めた生活習慣で、毎日夜の8時に寝て朝の4時に起きてランニングをするのが日常になっていたのだ。
しかし、長らくしていなかった夜更かしに、身体が想像以上に睡眠を要求して
自分のことながら、バレたら咲季ねえと佑芽ねえに怒られそうだ。実際、初日から遅刻していることも二人にはバレバレだろう。
……いや、佑芽ねえは初日に遅刻するんだっけ。今頃は、桜が舞い散る中を走って登校していることだろう。
俺?俺はゆったりとマイペースで歩いている。
こういう時は、急がば回れというやつだ。遅刻が確定した時点で何時に行っても結果は同じ。ならば、体力を温存しながら歩いていくのは合理的な判断である。
「にしても、初星学園かぁ〜。ついにって感じー……」
夢にまで見た初星学園に、アイドル候補の生徒として入学することができたのは超絶嬉しい。
それでも、これから原作キャラ達と渡り合っていくのがまさかの自分だ。燃える心と、不安な気持ちがせめぎ合って虚式が放てそう。
今更ビビっても仕方がないし、自分なりに特訓は続けてきた。それで自信がないのは、外からの評価がなかったからだろう。
俺がアイドルになる為の特訓をしていることは、二人の姉には内緒にしていた。
結局、フィードバックできる材料は、たまにネットに上げていた歌ってみたに付いた少しの感想と、自分自身である。
ちなみに、歌ってみたを30個くらい上げていたが、付いた感想は20件くらいだった。20個の賞賛では、自信に繋がらない。
……なんともまあ、面倒なやつである。
「……ぉ?校舎に着いたぁ〜」
色々と考え事をしながらふらふらと歩いていると、画面越しに何度も見ていた初星学園の校舎が視界に映る。
懐かしいなぁ〜。最初に選んだキャラは花海咲季だった。
感覚に委ねて選んだのだが、運命だったのかもしれないと思うレベルで早々に推しになった。
負けず嫌いという性質が、前世の自分と似通っていたというのもあるかもしれないが。
「ふぁ〜ぁ……まだ眠い。夜更かしは駄目だねぇ〜今日はぐっすり寝ようじゃないかぁ」
「……いやいや、なんでこんな時間に悠然と登校してきてんの!?」
「んー?」
眠気のせいで潤んだ瞳を擦って、声を上げている子を見てみると、そこにはパステルカラーの奇抜なパーカーに、これまた明るい金髪の三つ編みおさげ少女がいた。
……なんか見覚えしかないな?
「え〜と、誰ですか?」
「初対面だからなぁ!?そりゃ聞くよなァー!」
「テンション高いねぇ〜」
「いやまあ、あたしも場違い感感じてるんだよナー?……コホンッ!あたしは
「……??……!?!?うえぇぇえぇえ!?!?」
「え……?そんな驚くん?」
藤田ことねってあの藤田ことねですか!?あのダンス超上手くて世界一可愛いことねさんですか!?
え、まじ!?
自分が驚愕のあまりに語彙力を失ってることをひしひしと感じながらも、目の前の藤田ことねを見る。
……たしかに可愛い。画面越しに見ると全員美少女だから、少し疑問に思っていたが、なんかキラキラしてる。
もちろん咲季ねえも佑芽ねえもキラキラと輝いていた。なので、アイドルになる器というのは案外分かるのかもしれない。
プロデューサーも、そういったキラキラを感じている可能性もある。
それにしても、可愛いな。
「……世界一可愛い」
「……はぁ!?な、今あたしなんか口説かれてんだけどぉ!?」
「……?あっ、口に出てた?」
「超出てましたよー!!」
学マスのゲーム内には、『世界一可愛い私』という藤田ことねのオリジナルソングがあるのだが、本人を見ると毎回その曲が頭によぎるのでつい口に出てしまったのだろう。
まあ、自称でも他称でも世界一可愛いって言っているので問題はない、と思う。
「とりあえずのんびり教室に行かない?」
「いや、マイペースだな……。まあいっか。えーと?そっちの名前は何て言うの?」
「……あー言ってなかったね。私は花海莉種。よろしくねことね」
「お、おーよろしく〜……ん?花海ってどっかで聞いたことあるんだけど」
「それ多分咲季ねえだね。入学式でなんか言ってたはず」
咲季ねえが入学式で新入生代表の挨拶をしてたのは、ゲームで見ていた。まあおそらく原作通りなら咲季ねえが読んでる。
そう考えると、花海ってだけで結構目立つのかもしれない。だとしたら失敗したかもな。入学式に参加していない生徒が二人とも花海姉妹なのだから。
普通に劣等生というレッテルを貼られかねない。というか、咲季ねえの評判が下がりかねない。
「はぁ〜……やっちゃったなぁ」
「んー?どしたの莉種ちゃん」
「いやー、劣等生レッテルを貼られるのも時間の問題だからねぇ。ちょっと憂鬱だー」
「あー、まあ遅刻してきてるしナー。でも、莉種ちゃんすっごい可愛いし大丈夫なんじゃね?」
「可愛いだけでアイドルはなれないぞ?」
「ぐっはァ!?それはそうだなぁー!!」
会話している最中に、ことねがのけ反って血反吐を吐いたような素振りをとる。かなり大袈裟な動きだな……舞台役者とか出来るんじゃないか?
そのまま二人で教室に向かっていると、唐突にことねが話しかけてきた。
「……なんとなく自分の教室に向かってるんだけど、莉種ちゃん何クラスよ?」
「ん?私はアイドル科の1年1クラスだよ」
「お!一緒じゃん!これからもよろしくなー!」
「おぉー……!」
「ぐぅッ!可愛いな!?」
何故か俺の方を見ながら胸を抑えていることね。多分デスノートに描かれてしまったのかもしれない。
そんな冗談は置いておいて、今の俺の心はかなり高鳴っている。まさか入学初日から友達ができるとは思ってなかった。
前世の学校では、友達ができるまで3ヶ月掛かったからな。そういうこともあって結構憂鬱だったのだが、幸先の良いスタートを切れそうだ。
……想像以上に楽しみになってきたな。
「ことね……ずっと友達でいてね?」
「……え、重!?」
そうこうしている間に、1年1組の教室の前に着いた。この先にずっと憧れ、待ち遠くしていた光景がある。
柄にもなくちょっと緊張する。
「おっはよー!!」
「……お、おはよー」
俺の緊張感なんぞ知ったことではない隣のことねが、教室のドアを勢いよく開けて入っていく。
俺もそれに続いて挨拶をしながら入っていく。瞬間、教室中の視線がこちらに向いた。奇異の視線や好意の視線、結構分かりやすい。
そうしてぐるっと教室を見回すと、端っこの方に驚いている表情の咲季ねえがいた。
「あっ……咲季ねえ」
「な、な、な!!遅いわよー!莉種ニウムが不足しちゃうじゃないッ!!」
「……莉種ニウムってなんだよ!」
俺が咲季ねえと目が合うのと同時に、咲季ねえが勢いよく立ち上がってこちらに飛んでくる。比喩ではなく本当に飛んでくるあたり、身体能力の高さが窺える。
そして、そんな咲季ねえの謎発言に勢いよくツッコミを入れることね。
……場が混沌としてきたな。
俺が抱きついて来る咲季ねえを剥がそうとするが、力が強く中々離れない。それどころか、抱きしめる力が強くなっている。
……俺のパワーは咲季ねえに遠く及ばないので、こうなった咲季ねえを引き剥がすのは至難の技なのだ。
かくなる上は、呆れた目で咲季ねえを見ていることねに助けてもらおう。
「う゛ぅー……ことねぇ助けてえー……」
「うぐふぅッ!?……お、お姉ちゃんに任せろぉ!!」
「な、なんですってぇ!!莉種のお姉ちゃんはわたしよッ!!」
「んなこたぁ関係ねぇんだよおーー!!」
騒がしい教室だなぁ。ここに
あっ……
そうだよなぁ。こういう空気をてまりんが嫌っているのは知っている。多分、このままだとてまりんが介入してきて尚更厄介な事態になるだろ。
だったら俺がなんとかするしかない。
「咲季ねえー、そろそろ先生来るから離して」
「……うぅ、分かったわ……」
「おーよかったなー離してもらえて。どーする?今度はことねお姉ちゃんの膝に来るかー?」
「またの機会にするー」
会話にいい感じにキリがついたところで、丁度よく先生が教室に入ってきた。
「おらー席につけー!ホームルーム始めんぞー!そこの花海の姉の方もさっさと席に着け」
「わ、わかりました……」
俺は怒られる咲季ねえを見ながら、ようやく始まった学園生活に想いを馳せるのだった。
プロフィール
名前 花海莉種
学年 1年生
誕生日 4月1日(佑芽の方が先)
年齢 15歳
星座 おひつじ座
血液型 O型
利き手 右
身長 143センチ
体重 36キロ
スリーサイズ 73/54/75
出身地 愛知県
特技 抱き枕(他称)、マッサージ、歌、ギター
趣味 音楽を聴くこと、ソシャゲ、ギター、歌ってみた投稿