阿笠邸のリビングは、もはや「世界最大のテロ組織」の集会所と化していた。ラムを筆頭に、ジン、ベルモット、そして既に命を落としたはずのキュラソーやピンガまでもが、気まずそうに並んでいる。
大人新一は、彼ら全員を指差して溜息をついた。
「だから……ちょっと……お前らは目立ちすぎだ。オレが『烏丸蓮耶』なら、全員処分して人事で入れ替えさせてるぞ」
「なんだと……?」
ジンが殺気を放ちながら銃を抜こうとするが、新一はそれを手で制して続ける。
「特にジン! お前は目立ちすぎだ。今はオリジナルアニメの『エピソードONE』で補完されてるから違和感は少ないが、連載初期のお前とウォッカは、通報した警察に対してかなり焦って逃げてたよな? あの頃の小物感はどこへ行ったんだ?」
志保も横から、ジンの「ファッションセンス」にメスを入れる。
「それと……ポルシェ356A。あなたのこだわりなのは分かるけど、骨董品すぎて都内じゃ逆に目立つのよ。そういうところが『痛い』の」
「貴様の……!」
「黙って聞きなさい」
志保は冷たく一蹴した。
「新さんの推測だと、あなたは私との肉体関係の示唆から、年齢は18歳から27歳くらいのはず。でも、その振る舞いや言動のせいで40、50歳のオジサンっぽく見えてしまうの。もっと若者らしくスマートに動けないのかしら?」
新一がさらに組織の運用体制にダメ出しを食らわせる。
「おまけにアンタら、結構な頻度で全員集合するよな。ラムや烏丸の※¹直接の命令系統があった方が、よっぽど効率的に動けたはずだ。結局、自分たちでワイワイ集まって目立ってしまっているから、読者から『仲良しサークル』なんて揶揄されるんだよ」
組織の面々は、返す言葉もなく黙り込んだ。彼らが「畏怖される悪」ではなく、単なる「集団行動が好きな人々」に見えてしまうという、メタ的な弱点を突かれたのだ。
「特に今の『黒の組織』は弱体化が進んでるしな。幹部候補生とかをしっかり育成していれば、もっとマシだったんだが……」
志保が、ある特撮作品を引き合いに出して提案する。
「それなら※²『仮面ライダーカブト』や『電王』、『キバ』に登場するような、確固たる信念とカリスマ性を持った『悪の秘密結社』感があった方が、よっぽど敵として魅力的だったと思うのだけれど……?」
「…………」
ジンもラムも、もはや「自分たちは仮面ライダーの敵組織よりも組織運営が下手なのか」という事実に打ちのめされていた。
((((((((((((((((((((組織の威厳が、特撮ヒーロー番組との比較で完全崩壊したーーーーー!!))))))))))))))))))))
コナンと灰原は、目の前の「黒の組織」が、新一と志保の説教によってどんどん「改善の余地があるブラック企業」に見えてくる錯覚に陥っていた。
新一の舌鋒は、もはや組織の「危機管理能力の欠如」という根本的な欠陥に向けられた。ジンが愛銃ベレッタを握りしめるが、新一はそれを鼻で笑う。
「しかも……だ。安室さんや赤井さんが潜入していた時点で、キールがCIAのスパイ『水無怜奈』だって気づかないお前たちが悪いんだよ。
あんなに不自然な経歴で日売テレビのアナウンサーやってる奴を放置するなんて、人事部は一体何を見てたんだ?」
「……クソが」
ジンの隣で、キールこと水無怜奈が冷や汗を流しながら、内心(バレてた……!)と戦慄する。志保は冷ややかに追い打ちをかけた。
「だから私が抜けた後は、組織がスパイ天国になってしまったわけね。FBIに公安、CIA……。今や組織の幹部会議は、各国の公務員による『合同捜査本部』の分科会みたいなものじゃない」
新一は呆れたように肩をすくめ、ジンの目を真っ向から見据えた。
「しかも……お前たち、自分でも気づかなかっただろうが……」
「……何だと?」
ジンの低い声が響くが、志保が遮るように言葉を重ねる。
「だいぶ……何か『暗躍』しているっていう感じはしないのよねえー。やってることと言えば、身内のミスを消すための爆破か、裏切り者の掃除ばかり。世界を裏から操る秘密結社のはずが、ただの『社内不祥事の揉み消し部隊』になってるわ」
「そうなんだよ。※³連載初期はもっと、政財界の黒幕と繋がってるとか、世界の歴史を書き換えるとか、そんなスケール感があったはずなんだ」
新一が首を振る。
「なのに今はどうだ? 豪華客船で派手な立ち回りをしたり、リニアを爆破したり……。やってることがテロリストのそれなんだよ。『暗躍』っていうのは、誰にも気づかれずに目的を達成することを言うんだぜ?」
ラムも、ベルモットも、黙り込むしかない。
自分たちが「影の支配者」として君臨しているつもりだったのに、実際は「派手な事件を起こして、毎回コナンに追い詰められる派手な悪役」に成り下がっていた現実を突きつけられたのだ。
((((((((((((((((((((組織のアイデンティティが根底から否定されたーーーーーー!!))))))))))))))))))))
コナンと灰原は、もはや目の前の黒ずくめの集団が怖くなくなっていた。それどころか、「この人たち、30年間も何を目標に頑張ってきたんだろう……」という、ある種の同情さえ芽生え始めている。
「さあ、ジン。お前のその銀髪が、ストレスによる白髪に変わる前に教えてやるよ。1巻から寝坊してない俺から見た、この物語の『本当の終わらせ方』をな」
新一の説教は、もはや組織の「宿敵としての格」を粉々に砕く最終段階に入っていた。
「しかも……実はお前たち、宿敵としては結構面白かったんだけどな。初期のミステリアスな恐怖感はどこへ行ったんだ? 最近じゃコント方面にでも走ったのか、※⁴あんなに近くにいるコナンと毛利探偵を、いつまで経っても別人と確信できないなんて……」
「……ぐっ」
ジンの顔が屈辱に歪む。志保は冷ややかに追い打ちをかけた。
「そうよ。私を探すために※⁵杯戸町界隈を必死に嗅ぎ回っていたのでしょうけど、実際はずっと米花町にいたっていうね……。灯台下暗しにも程があるわ」
「しかもだな……お前たちが※⁶無駄に暗躍(ごっこ)を長引かせたせいで、謎と伏線が増えすぎたのも痛いぞ。風呂敷を広げすぎて、畳み方がわからなくなってるんだ」
志保が、最も触れてはいけない「後付け疑惑」にメスを入れる。
「正直言って、※⁷羽田浩司の事件も後付けっぽく見えてしまうわ。17年前の事件が今になって急にラムの正体に直結するなんて、いかにも『連載を延ばすために掘り起こした設定』という感じが否めないもの」
((((((((((((((((((((((読者が薄々感じていた「引き延ばし」の構造を全否定したーーーーーー!!))))))))))))))))))))
コナンと灰原は、もはや自分の物語の「骨組み」がバラバラに解体されていく音を聞いていた。新一は、放心状態のコナンたちに向き直る。
「次にアニメオリジナルだが……コナンと灰原、お前たちどちらか、あるいは二人揃って一時的に元の姿に戻るエピソードも、視聴者は期待してるんだぜ? 商業的にはそれが一番盛り上がるからな」
志保は、インターネット普及後の「メタ的な受容」についても鋭く分析する。
「しかも困ったことに、今はネットが普及しすぎたわ。そのせいで、『コナンと新一』『灰原と志保』を完全に別人格のペアとして推すファンがほとんどになってしまったの。同一人物だという設定すら、もはやノイズ扱いされている現実……」
そして志保は、自身の「最大の汚点」とも言えるシーンを振り返り、深い溜息をついた。
「おまけに……比護選手への熱狂っぷりで、私……いえ、『灰原哀』のキャラ崩壊を公式が自ら引き起こしてしまったわ。かつてのクールなシェリーはどこへ行ったの? ぬいぐるみ一つで取り乱すあのアニオリのようなノリ、あれはもはや公式による二次創作よ……」
「「…………」」
コナンも灰原も、もはや言い返す言葉がなかった。
あまりに完璧すぎる分析。自分たちが歩んできた30年という歳月の「歪み」が、この大人姿の二人によって次々と白日の下に晒されていく。
大人新一は、絶望したジンたちと、困惑するコナンたちを見渡し、不敵に笑った。
「さて……これだけボロクソに言えば、もう満足だろ? ジン、アンタらは大人しく『1巻からの設定』に戻って、さっさと組織を畳む準備をしろ。
そしてコナン……お前は、このカオスなメタ設定を全部飲み込んだ上で、どう物語を終わらせるか、俺たちと一緒に考えようぜ」
大人新一と志保が、虚空に向かって問いかけた。
「さて……アサシン・零さん? これだけぶちまけておいて、どうしましょう……?」
すると、空間が歪み、原稿用紙の海を割って一人の人影が現れた。この物語の(二次創作的な)創造主、アサシン・零である。
「では……※⁸リブート作品にしましょう! 公式ではないですが、二次創作だからこそ、すべての矛盾をリセットして再構築できる……それがリブートの醍醐味ですからね」
((((((((((何か作者が直接やってきたーーーーー!!!))))))))))
コナンと灰原の絶叫も虚しく、アサシン・零は腕を組み、満足げに頷いた。
「さあ……ちょっとテイクツーということで。原作者先生の描く圧倒的なキャラクターの良さはそのままに、私の『リアルなツッコミ』と『整合性への執着』もスパイスとしてぶち込んで、新たに執筆いたしましょう!」
注釈
※¹現在はラムが色々と命令しているが最初からそうしておけばもっと面白かったと思うし、ラム編に入ってラムは誰だ?という伏線が回収できてスッキリしたと思う
※²私の産まれた世代の仮面ライダーの悪役の方がまだ悪役としてはマシだった。
※³連載開始年の方が返ってテキーラがどういう幹部だったのか...ジンとシェリーはどんな関係性(おそらく肉体関係だと思うが)など...悪役としては謎が多くてよかったが最近ではそれらも回収しきれていないことが多い...また『天国のカウントダウン』の常盤 金成の常盤財閥...時は兼ねなりのラムと関係があるのか...?そういう伏線も期待していた。
※⁴コナンと毛利探偵の盗聴を勘違いし、めちゃくちゃラムと烏丸 蓮耶の泥を塗っている...のにも関わらず許してくれるラムさんの心の広さが伺えれる...
※⁵『黒の組織との再会』にて舞台が杯戸町の杯戸シティホテルだったことからジンの兄貴は杯戸町にいると予想したが普通に的外れであった。ウォッカおまけだけが頼りだぞ...
※⁶板倉卓のソフトウェアのシーン...ハッキリ言って私はいらないと感じた...今更感が強かったから...
※⁷当時、宮野 志保初登場時にリストに書いてあった羽田 浩司...出すならバーボン編で再び名前だけ出して...ラム編で回収されるようにして欲しかった感はあった。
※⁸そもそも当作品はリブート作品として計画したのになぜ私は批評しているのだろうか...おそらく違和感がすごすぎた故に色々と指摘しないといけないという事になったのだと思う...編集社も原作者に「このストーリーどうですか?」と提案するのもいいだろう...原作者だけの想いで書いてしまうと後に矛盾が生じたりするからだ...私の場合は編集をAIに任せているのだが...人としてそれは指摘しないといけない時もある...
私の所見は以上である。