Little Gold, Little Light   作:のらもこ

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原作のテゾーロなら迷うことなくスリザリンです(大人だけど)。
少年テゾーロは夢に満ち溢れているので、別の道を進みます。



第4話 ギルド・テゾーロ/入学式

 

 

 

 

 扉の向こうから、エメラルド色のローブを纏った魔女が現れた。マクゴナガル副校長だ。

 

「ホグワーツ入学おめでとう」

 

 規律と厳しさを感じさせるその声に、子どもたちは自然と背筋を伸ばし、静まり返った。

 マクゴナガルは、新入生を迎える歓迎会について語り、寮がこれからの家であり、家族になることを告げた。そして、組分けの儀式の説明へと移った。

 

「寮は四つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。それぞれ輝かしい歴史があり、偉大な魔女や魔法使いを輩出してきました。良い行いをすれば寮の得点となり、規則を破れば減点されます。学年末には最高得点の寮に、名誉ある寮杯が与えられます」

 

 いずれの寮に入っても、一人ひとりが寮の誇りとなることを望みます、とマクゴナガルは締めくくった。

 

「まもなく、組分けの儀式が始まります。できるだけ身なりを整えておきなさい」

 

 マクゴナガルは扉の向こうに姿を消した。途端、ざわざわと小さく声が上がっていく。

 

「組分けってどうやるのかしら?」

「僕も知らない。どうしてか、ママも教えてくれなくて」

「……なにか試験みたいなことでもさせられるのかな」

「ええ!?そんなのどうしよう!」

 

 テゾーロは三人の会話に耳を傾けつつも、生徒たちの顔を見回した。幼さの残る一年生達は、不安と期待の入り混じった表情を浮かべていた。

 その中に、落ち着きなく周囲をきょろきょろ見回している双子を見つけてしまった。

 

「げっ」

「? テゾーロどうかした?」

「あそこの双子」

「双子?……ああ、確かに同じ顔しているね」

「彼らがどうかしたの?」

「汽車に乗る前、絡まれたんだよ」

「えっ!」

 

 リアムの影に隠れながら小声で話す。式が始まるまで、気づかれたくない。

 

 背後で突然、「きゃあっ」と短い悲鳴が上がった。

 何事かと振り返ると、そこには宙に浮いた半透明の男性が、朗らかに笑いながら手を上げていた。

 

「ホグワーツの幽霊だ!本当にいるんだ!!」

「ゆ、幽霊!?!?」

「ほとんど首無しニックだ。グリフィンドール寮の幽霊だよ」

「グリフィンドール寮の幽霊?寮ごとに幽霊がいるのか?」

「ああ。スリザリンは血みどろ男爵、レイブンクローは灰色のレディ。ハッフルパフには、太った修道士と呼ばれる幽霊がいる」

「へえ」

「ず、ずっと幽霊と一緒にいなきゃいけないの……?」

「ホグワーツで過ごすなら、絶対かな」

「大丈夫だよ。すぐに慣れるさ!」

「そうだといいのだけれど……」

 

 ホールに現れた幽霊達は楽しげに一年生の間をすり抜けて驚かしたり、話しかけたりしている。

 いくら半透明だからといって、あそこまでしっかりと姿が見えて会話もできると、人と変わらなくないかと思ってしまう。

 

 幽霊を眺めているうちに、マクゴナガルが戻ってきた。「準備が整いました」と告げて先導し始めた。一年生達が後に続く。

 

「うわあ」

「凄い、綺麗!」

 

 リアムとフィービーが、上を向いたまま歩く。見上げると天井には黒い空が広がり、星が無数に散りばめられていた。これは目を奪われても仕方ないかもしれない。

 正面の長テーブル中央には、ダンブルドアが座っていた。何を考えているのか、読み取れない笑顔を浮かべている。

 

 四つ並んだ長テーブルの前方で、マクゴナガルは足を止めた。一年生達はホール前方で一列に並ばされる。

 

 マクゴナガルは茶色くボロ切れのような帽子を手にすると、前方の椅子の上へと置いた。

 何が始まるのかと、テゾーロは目を向けた。帽子は小さく動きだしたと思うと破れ目が口のように開いた。

 

 

「ほら集まれ、新しき子らよ

 杖もローブもまだ馴染まぬままに

 君たちの歩む道を、わたしは見通す

 心の奥のささやきまで

 

 剣も杖も 振るわぬけれど

 頭にのせれば わかるだろう

 隠した望みも 怖れも全部

 私は逃がさぬ 逃がさない

 被れば 君に教えよう

 君が行くべき寮の名を

 

 炎を掲げる グリフィンドール

 正しさのため 立ち上がり

 恐れを知っても 退かぬ者

 勇気を選ぶ その心

 

 大地に根ざす ハッフルパフ

 派手さはなくとも 誠実に

 仲間を支え 逃げぬ者

 努力を力に 変える寮

 

 風と本棚 レイブンクロー

 なぜだと問う 目を持ち

 知恵は剣より 鋭く

 真実を探す 者の巣

 

 湖の底の スリザリン

 目的のため 道を選ぶ

 狡さもまた 知恵のうち

 成し遂げる意志を 尊ぶ者

 

 さあ頭を差し出せ! 迷わずに!

 君の行き先はもう決まっている!

 ただしそれを選ぶのは 君自身だ

 私は考えを巡らせる帽子!」

 

 

 ホグワーツでは帽子も歌うのか!

 

 つい、歌につられて体を揺らしてしまいそうになるのを我慢する。小さく鼻歌でメロディーを追いかけた。

 

 テゾーロは帽子が歌い終わると、興奮で頬を赤くしたままわっと勢いよく拍手した。

 一歩先んじて拍手し始めてしまったので、隣にいるリアムとサイラスがぎょっとした目でテゾーロを見たが、やがてつられるようにみんなが拍手し始めた。

 ホールが拍手の音で満たされる。ダンブルドアが楽しそうに笑った。

 

 ゴホン、とマクゴナガルが咳をしたことで拍手が収まっていく。

 

「今からアルファベット順に名前を呼びますので、帽子を被って椅子に座りなさい。呼ばれたら前へ出てくるように。……アヴァリン・リヴィアナ!」

 

 長い羊皮紙を手に、マクゴナガルが声を張り上げた。

 新入生の集まりがわずかに割れ、その隙間から一人の子どもが前に歩み出てくる。黒髪の女の子は緊張した様子で、前方の椅子へと座った。

 女の子が帽子を被ると、少しの間をおいて『レイブンクロー!』と帽子が叫んだ。左端から二番目のテーブルから大きな拍手が沸き起こった。

 

 続いて名前の呼ばれた新入生が次々と帽子を被っては、寮名が叫ばれ始める。

 テゾーロが組分けを見ていると、肘の辺りが引っ張られた。目を向けると、リアムが汗ばんだ顔をしてひそひそと話しかけてきた。

 

「ど、どうしよう!もう組分けが始まっちゃう!」

「今更何を言ってんだ」

「だって!いざ始まったら緊張してきちゃって!!」

「リアムとテゾーロは名前からして前半に呼ばれるよ」

「そうだった!テゾーロ置いていかないで!」

「無茶を言うな」

「人が慌ててると自分は落ち着いてきちゃうのね……。落ち着いて、ほら深呼吸、深呼吸」

 

 小声で騒いでいるリアムをなだめていると、テゾーロの名前が呼ばれた。

 

「ギルド・テゾーロ!」

 

 リアムのことはサイラス達に任せて、テゾーロは生徒たちの合間を縫うようにして前方へ抜け出した。

 出てきたテゾーロと目が合ったマクゴナガルは小さく頷いた。

 

 椅子に腰掛け、大きめの帽子をすっぽりと被る。

 

『おや、君は先程一番大きく拍手してくれた子だね』

「メロディーはアンタが考えたのか?」

『いやいや、これはホグワーツに伝わる伝統の曲でね。歌詞だけは毎年わしが考えているんだ』

「じゃあ来年はまた別の歌が聞けるんだ」

『そうだとも。楽しみにしていてくれ。さて、君の組分けじゃが……なるほど、君はここに来るまでに既に多くの経験をして来ているようだ。そして目指すべき夢がある』

「わかるのか? 俺はスターになりたい」

『ウム。……君はどれほど強大な相手でも立ち向かえる勇気と、目的のためならどんな手段を使ってでも成し遂げる執念を持っている。君にはグリフィンドールかスリザリンが合っているだろう』

「どっちでもいい。歌をうたえるなら」

『ふーむ、なるほどなるほど……では』

 

 

『グリフィンドール!』

 

 

 頭上から上がった声に、グリフィンドールのテーブルから拍手と歓声が上がる。

 テゾーロは帽子を置くと、テーブルの空いている席へと向かった。横を通り過ぎた時、マクゴナガルが一際強く拍手していたのがちらりと見えた。

 

「グリフィンドールへようこそ!」

「さあ、こっちの席へ!」

「あ、ああ……」

 

 思いがけないほど明るい歓迎に戸惑う。こんな嬉しげな声にどう応じればいいのかわからず、つい無愛想な顔になってしまう。

 

 隣の女の子に話しかけられそうになり、じわりと焦りが生まれる。身を引きかえたところで「ホーソーン・リアム!」と響いた声に、これ幸いと前を向いた。

 ガチガチに緊張したリアムは、右手と右足、左手と左足、と同じ手足を出して前に出てきた。くすくすと笑い声が密かに上がっている。

 

 リアムが椅子に座り帽子を被らされて、暫し間が空く。帽子と何やら話し込んでいるのか、小さく口が動いているが中々寮が叫ばれない。

 組分けが長引くにつれ、上級生たちが互いに顔を寄せ、小声で何事かを囁き合い始めた。

 

「組分け迷子か?」

「確か2年ぶりじゃなかったか」

「今年は彼だけかな」

 

 前を見据えたまま囁き合うグリフィンドール生の会話が耳に入る。どうやら、組分けが決まりにくい生徒というのは珍しくないようだ。

 

 しばらくの沈黙のあと、帽子が伸び上がった。

 

 

『グリフィンドール!』

 

 

 寮が決まると、リアムは帽子を椅子の上に放るように置いて駆け寄ってきた。

 

「テゾーロ!」

「叫ばなくても聞こえてる」

 

 リアムはいそいそと隣に腰掛け、ほっと息を吐いた。

 

「随分と時間かかってたな」

「そうなんだよ!聞いてよ!あの帽子、僕にはハッフルパフに行くのが一番向いているって言って、僕の話をちっとも聞いてくれないんだ!」

「? ハッフルパフにすれば良かったんじゃないか?」

「テゾーロ酷い!ハッフルパフに行ったら、1人になっちゃうじゃないか!」

「……もしかして、グリフィンドールに来たのは俺がいたからか?」

「当たり前じゃん!」

 

 テゾーロは呆れた視線を隠しもせず、リアムへ向けた。

 そんな視線に気づいていないのか、リアムは次に呼ばれた子がハッフルパフに組み分けられたのを聞いて「あの子ハッフルパフだってー」と呑気に言っている。自分の番が終わってしまえば、緊張は綺麗さっぱりなくなったらしい。

 

「リーヴス・フィービー!」

 

「あっフィーフィだ!」

 

 呼ばれた名前にリアムが声を上げる。前方で、フィービーがゆっくりと椅子に座るのが見えた。帽子が被されると、すぐに『ハッフルパフ!』と叫んだ。

 

「フィーフィはハッフルパフかあ、離れちゃったね」

「……」

 

 俺とフィービーの順番が逆だったら、こいつハッフルパフに行っていたんだろうな。

 

 

 

 その後は、リアムの時とは違い、帽子はほとんど迷う様子もなく次々と寮名を告げていった。

 

「ペニントン・サイラス!」

 

「サイラスだ。サイラスはどこの寮かな」

「さあ」

 

 サイラスが帽子を被る。だが、帽子はすぐには寮を叫ばなかった。破れ目が小さく動いている。「何を話しているのかなー」とリアムは前のめりになって体を伸ばしていた。

 

 帽子が口を開く。

 

 

『スリザリン!』

 

 

「スリザリンか」

「ちぇっ結局テゾーロ以外とは離れ離れになっちゃった」

 

 「ペニントンはスリザリンか」と、背後で誰かが呟いた。

 

「ああ良かった。「呪いのペニントン」が来なくて」

「いくらスリザリンでも、アイツと一緒の寮は同情するよ。可哀想に」

 

 耳に入った小さな会話に、テゾーロは振り返った。話していたのはレイブンクローの上級生だ。

 

「……?」

「どうかした?」

「あ……いや、なんでもない」

 

 リアムには今の会話が聞こえなかったようだ。

 

 「呪いのペニントン」とは何のことだろうか。

 

 

 

 

 

 最後に双子の片割れが組分け帽子を脱ぎ、一年生の組分け儀式は終了した。

 双子は両方ともグリフィンドールだった。席が離れていたので、ひとまずは絡まれなかった――が、がっちりと視線は合ってしまった。

 

 一年生が全員テーブル席に着くと、ダンブルドアが立ち上がった。

 

「新入生諸君、ホグワーツ入学おめでとう!宴を始める前に、少しだけ話させていただきたい。迷ったら右、疲れたら左、そして答えは大抵ご飯の後に見つかるものじゃ!以上!」

 

 言っている意味がわからない。しかし、テゾーロの意識は次の瞬間目の前に移った。

 ダンブルドアが話し終えた途端、テーブルの上に沢山の料理を乗せたお皿がいくつも現れた。わあっと声が上がる。

 

「うわあ!美味しそう!」

「すげえ……これ全部食ってもいいのか?」

 

 目を輝かせるリアムの横で、テゾーロは見開いた目を白黒とさせた。

 

 パリッと焼かれた皮が照り返す肉の塊。山のように盛られたポテトに、色鮮やかな果物の盛り合わせ。どれもこれもが食欲をそそる匂いを漂わせていた。

 リアムが骨付き肉に手を伸ばすのと同時に、テゾーロも手を伸ばした。

 

「んー!美味しい!」

「んぐ、むぐ」

「こっちのポテトも最高だよ!ほら、ベーコンが入ってる!」

「はぐ」

「……テゾーロ聞いてる?」

「ん!」

 

 フォークで突き刺したソーセージに齧り付きながら頷いた。

 

 料理を無言でかき込むテゾーロをよそに、リアムは食事を取りながら近くに座った同級生や先輩と和気藹々と談笑した。ムードメーカーでもある彼は、あっという間に輪に馴染んだ。

 

 

 

 

 

 デザートを食べ終わり、料理がぱっと消えると、再びダンブルドアが立ち上がった。

 禁じられた森には入るな、廊下では魔法を使うな――そんな注意が続いた。

 

 それから、クィディッチ選手になりたければマダム・フーチに申し出るようにと話した。

 クィディッチに参加できるのは二年生からではあるが、今のところ、テゾーロに選手になりたいという気持ちはなかった。

 グリフィンドール生は、隣に座る子と密かに会話を始める者も少なくなかった。体を動かすことを好む生徒が多いのかもしれない。

 

「さて、最後に校歌をみなで歌いましょう!」

 

 ダンブルドアがすっと杖を掲げると、空中に光る文字で校歌の歌詞が現れた。上級生が立ち上がるのに合わせて、テゾーロ達一年生も立ち上がる。

 しかし一度も曲を聞いたことがないのに、いきなり歌えと言われても……。

 

「では、各自好きなメロディーで歌うのじゃ。さん、はい!」

「は?」

 

 間抜けに声を上げたテゾーロを置き去りにして、地獄のような歌が始まった。

 

 てんでバラバラなリズムで、歌う速ささえも違う。何を言っているのか聞き取ることもできない。高音で歌うもの、低音で歌うもの、果てには曲ではなく歌詞をただ読み上げているものさえいる。

 双子は早速このカオスになれたのか、式典の讃美歌のようにやたらと声を伸ばしている。この酷い合唱の中ではまだマシかもしれない。

 

 テゾーロは口を半開きにしたまま、1つの音も奏でることができなかった。

 

「ああ、音楽とは何とも素晴らしい」

 

 早く終われと祈った校歌の時間が、ようやく過ぎ去った後の言葉だった。

 その意見には同意するが、ダンブルドアだけには言われたくない。

 

 毎年この苦痛を味わうのかと思うと、自然と遠い目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 宴が解散となると、各寮は先輩に連れられてホールを列になって出ていく。重くなった腹を抱えてテゾーロとリアムも続いた。

 

「はー食べた食べた。美味しかったね」

「ああ」

 

 テゾーロは口元に笑みを浮かべて答えた。

 じっと横からリアムが覗き込む。

 

「……テゾーロが笑ったところ、初めて見た」

「そうだったか?」

「そうだよー。テゾーロがそんなに食いしん坊だなんて思わなかった」

「別に、食いしん坊ってわけじゃ!」

 

 「えー?」と声を上げるリアムに、熱くなった顔を逸らす。

 夢中になっていた自覚はある。だが、お腹いっぱいに食べるという事自体初めてだったのだ。止まらなくなっても仕方ないじゃないか、と心のなかで言い訳をする。正直、お腹が張って苦しい。

 

 前方で上級生が、動く階段に気をつけるよう声を上げた。リアムは慌てて集団に追いつこうと走り出す一方、テゾーロは遅れない程度に足を進めた。

 

 頭の中で先程のメロディーがよみがえり、なぞるように小さく口を動かした。

 

 

「ほら集まれ、新しき子らよ

 杖もローブもまだ馴染まぬままに

 君たちの歩む道を、わたしは見通す

 心の奥のささやきまで

 

 剣も杖も 振るわぬけれど

 頭にのせれば わかるだろう

 隠した望みも 怖れも全部

 私は逃がさぬ 逃がさない

 被れば 君に教えよう

 君が行くべき寮の名を――」

 

 

 魔法界では生歌を聞く機会はほとんどない。

 

 テゾーロは路地の片隅に捨てられていたラジオを拾って、どうにか修理した。

 音は割れているし、電波はちゃんと拾えていないのか時折途切れるが、それでも齧りつくように流れる曲を聞いた。

 

 

「――さあ頭を差し出せ 迷わずに

 君の行き先はもう決まっている

 ただしそれを選ぶのは 君自身だ

 私は考えを巡らせる帽子」

 

 

 小さく口ずさむように奏でられたメロディは、生徒たちのざわめきにかき消され、誰の耳にも届かなかった

 最後尾を歩いているテゾーロに気がついたリアムが、早くと手招きした。

 

 

 

 グリフィンドールの塔の螺旋階段を登ると、壁に一枚の絵画が飾られていた。前に人が詰まっていてよくは見えないが、どうやら太ったレディと呼ばれる女性が描かれているらしい。

 

「合言葉をどうぞ?」

「スポッティッド・プディング」

「皆!今の合言葉を忘れないように!」

 

 絵画が扉のように開き、上級生の一人が振り返って叫ぶ。

 

「うわー合言葉忘れちゃったらどうしよう」

「そしたら、他のグリフィンドール生についていけばいい」

「そっか!」

 

 明るく答えたリアムに軽く頷いて、二人は絵画の裏から現れた入口をくぐる。

 赤い絨毯と壁紙に囲まれた、暖炉のある部屋が現れた。机やソファも置かれ、随分と豪華な雰囲気だ。

 

「わぁ」

「ここが談話室だ。そして、横にある階段がそれぞれ男子寮と女子寮に繋がっている。男子は女子寮に立ち入れないから、くれぐれも注意するように。荷物は既に部屋に持ち運ばれているから確認してくれ」

 

 石階段の上には、寝室が続いているようだ。

 部屋はだいたい5人組ずつに分かれているらしく、割り振りは既にされている。人と一緒の部屋で寝られるだろうか。

 少し不安が湧いたが、部屋ごとにプレートがついているというので階段を登っていく。

 

「あ!僕だ」

「なら、俺とは別の部屋みたいだな」

「ちぇっ、仕方ないか」

 

 唇を尖らせたリアムは、部屋の扉をくぐり「じゃあね!また明日!」と手を振った。

 テゾーロも軽く手を上げ、再び階段を登り始めた。

 

「俺の部屋は、ここか」

 

 最奥で、自分の名前が書かれたプレートを見つけた。

 これまでの部屋は5つずつのプレートだったが、この部屋だけは4つしかない。人数の関係上、あぶれたのかもしれない。

 

 扉を押し開け、中を覗く。天蓋付きベッドが円形に並ぶ部屋は手狭だが、整然と整えられている。小さなシャンデリアが部屋を明るく照らし、談話室と同じく赤を基調とした家具が並んでいた。

 

「やっと来たのか」「遅かったじゃないか」

「げっ!」

 

 独特の交互に話す喋り方と、並んだ二つの赤毛の頭にテゾーロは声をあげた。

 

「げっ、とは酷いな」

「僕らと同室なんて、きっと、とっても楽しいぞ」

「冗談じゃない……!」

「僕は、フレッド・ウィーズリー!」

「僕は、ジョージ・ウィーズリー!」

「「フレッド&ジョージさ!よろしく!」」

「……テゾーロだ」

 

 左右からそれぞれ手を出されるのを一瞥だけした。避けるようにベッドに近づくと、後ろから「「連れないな、でもそこがいい!」」なんてふざけた声が追ってきた。

 もしかして、7年間こいつらと同室でいなければならないのか?

 

「いやあ、随分賑やかな部屋になりそうだよね。 あ、僕リー・ジョーダン!宜しく!」

 

 空きを一つ挟んだベッドの方から、ドレッドヘアーの男の子が白い歯を見せて話しかけてきた。

 やかましい気配をひしひしと感じながら、どうにか「ああ……」とだけ答えた。

 

 ため息を吐き、気を落ち着けるようにベッド脇の荷物に目をやった。

 

 荷物の中には、テゾーロが持つには豪奢な手のひらサイズの箱が一つある。この中には小鬼(ゴブリン)に渡された銀行の鍵がしまってある。寮生活での保管用に、とマクゴナガルから渡されたものだ。テゾーロ以外には開けないようになっている。

 揺らすとカチャリと金属の当たる音がした。今自分が持っている物の中で一番高価なものだ。慎重に扱わないといけない。

 

 わいわいと双子が話している声を背後に、ベッドへと座る。

 

 これから、ホグワーツ(ここ)での生活が始まる。一体何があり、どんなことを経験していくのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




双子はテゾーロのことを面白がっています。

組分け
グリフィンドール:テゾーロ、リアム
スリザリン:サイラス
ハッフルパフ:フィービー

漸くプロローグが終わりました。
※構成を見直しながら執筆しているため、次回から更新が遅くなります
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