エルフの森   作:dwwyakata@2024

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エルフといえば森をよく焼かれるイメージがありますね。まあ色々イメージが飽和しているお約束ではありますからね。

ベルセルクに登場するような妖精的なエルフは少数派になりつつあるような気がします。





1、エルフの森を燃やしてみる

既に一族の者達が手を回して、転生者が出たことは触れ回っている。そのため、ゴブリンもコボルトも、皆姿を消していた。

 

転生者は災厄だ。

 

レットが肩で風を切って歩いている。

 

その後ろからついて行きながら、一族の者達を牽制する。

 

今は手出しするな。

 

「きったね。 なんかの動物のウンコ落ちてる」

 

「この辺りから森が近くなります。 熊やイノシシも出ますので」

 

「ったくよお。 だから田舎は嫌いなんだよ。 まあ俺の王国を作るにはちょうどいいけれどな」

 

「……」

 

しゅっと、動物の糞が消える。

 

こういう糞はやがて大地に帰り、そして再び栄養となるのだが。それについてはもうどうでもいい。

 

今はこのはた迷惑な自称聖剣士とやらが。

 

さっさと消えることを願うばかりである。

 

なお、バルハラントからすれば人間なんて男も女も見分けがつかない。

 

これはレットもオークに対しては同じようで。

 

バルハラントは大きさだけでどうにかわかるようだが。

 

今、周囲にバルハラント以外のどのオークがいるかなど、わかってなどいないようだった。

 

こういったことを補うために、交易の時には特徴的な兜をかぶって出かけたりするのだけれども。

 

異常な力を得て舞い上がっているレットは、そういうことに気づきもしていない。

 

「お、あれか。 でっけえ森だな!」

 

そのでっけえ森が見えてくる。

 

オークの背丈の八十倍はある巨木が多数生えており、みずみずしい活力に満ちている森。

 

エルフ族が森に住むのではなく、多くの場合はエルフ族が森を育てる。

 

森から現れる熊やらイノシシやらは、エルフ族からの恵みと言われている。勿論危険な猛獣なので、殺すのには手間がかかるが。

 

それでも森から現れた動物を仕留めることは、エルフ族も認めている。

 

他にも様々な動物が森からは現れる。

 

鳥などもそうだ。

 

そういった動物を仕留めて、それで食用にする。それが周囲で生きている者達の日常である。

 

森は存在するだけで、周囲に生命をもたらし。

 

周囲で生きている者達の命をつなぐ。

 

そういう大事なものだ。

 

「さあて燃やすか」

 

「お手並み拝見させていただきます。 聖剣士レット様」

 

「おう、見てろや」

 

なんかブツブツ言い始めるレット。

 

よくわからない動作もしている。

 

少し離れるようにバルハラントは指示。

 

どうせろくでもないことをしているのはわかりきっているのだ。

 

直後、凄まじい火球が出現していた。

 

バルハラントの五十倍くらいの体積はありそうだ。しかも、側で見ているだけで、凄まじい熱も感じる。

 

「オラア! ふっとべやあ!」

 

レットが、その火球を森にたたき込む。

 

伏せろ。

 

そうバルハラントは叫ぶ。

 

凄まじい熱と風が吹き付けてくる。

 

それで飛ばされそうになるが、地面に必死にしがみついて耐える。

 

これは、奇襲どころじゃないな。

 

隙だらけなようだったら刺すことも考えていたのだが、こいつは今片手間にこの破壊を引き起こした。

 

人間が使う攻城兵器よりさらに凄まじいかもしれない。

 

とてもではないが、勝てる相手ではない。

 

そして、これで。

 

エルフ族が状況を認識したはずだ。

 

ここに来ているオークは、バルハラント含め老齢の者ばかり。

 

死んでもいいものを募った。

 

皆、覚悟を決めている。

 

だから、最悪の事態が来ても、受け入れることが出来るだろう。

 

「見ろよ、あんなに吹っ飛んだぜ。 ヒャハハハハっ!」

 

レットが喜んでいる。

 

顔を上げると、森の一角が確かに消し飛んでいた。

 

豊かな実りを生み出す木々が無残にえぐれ、折れ、そして一部がちりちりと火を挙げている。

 

だけれども。

 

森そのものは巨大で奥深く、とても延焼する気配はない。

 

とにかく立ち上がり、真っ青になっているオーク達をバルハラントは叱責した。

 

これからが勝負なのだ。

 

そして、またへりくだる。とにかく褒め殺す。

 

「素晴らしい技にございますな」

 

「賢者として炎の魔法を駆使しただけだ。 はっ、エルフの森だかなんだかしらねえが、このまま何発かぶっ込んでやれば燃え始めるだろ」

 

「きっとそうでございましょう」

 

普通、木々はあんなに大きくならない。

 

エルフの森に生えている木は、どうしてかとてもよく育つが、それも百年二百年とかけてあそこまでのサイズになると聞く。

 

こいつは面白半分に、そうやって時間をかけて育ち。

 

多くの生物を育んだ木々を吹き飛ばした。

 

オークも種などから育てた木を、果実などをとるために育てているから、これがどれだけ罪深いことかはよくわかる。

 

本当に転生者は災害なんだな。

 

それがわかったので、ただ青ざめるばかりである。

 

オーク族も神は信仰している。

 

それはゴブリン族やコボルト族も同じだ。

 

神の性質はそれぞれ違うが、基本的に別の種族の神に対してケチをつけないことは基本となっている。

 

それは殺し合いになるからだ。

 

人間だけはそれを守らない。

 

他の種族を鏖殺したり見世物にする。そういうことをするとき、人間の羞恥心はどこを向いているのかよくわからない。

 

人間同士ですら、別の神を巡って殺し合うとバルハラントは聞いたことがあるが。

 

こいつのはそれですらない。

 

自分を神に等しいと信じ込んでいる、本物の異常者だ。

 

「さーて、どんどん森を焼いてやろうかな。 次いくぞ。 そうだ、お前ら。 エルフ族が逃げ出してきても、それは俺のだからな。 もしも手出したりしたら、ぶっ殺すぞ」

 

「勿論聖剣士レット様のものに手を出すほど我らは愚かではございません」

 

「わかってるじゃねえか。 ならいい」

 

「……」

 

言動を見ていてわかったが、こいつは異性を都合のいい道具とみているわけだ。

 

これは転生者全般に共通するらしいのだが。

 

男の転生者も女の転生者も、基本的に都合がいい異性を求める傾向があり。場合によっては無から生やすそうだ。

 

はっきり言って永久に自家発電していてほしいものだが。

 

それを加味すると、奴隷云々というのもわかる。

 

奴隷には何をしてもいい。

 

そういう思想なのだろう。

 

転生者は別の世界から来ているという話がある。

 

転生者が前にいた世界は、少なくとも楽園でも何でもないだろうなと、バルハラントは思う。

 

そんな思想が蔓延すると言うことは。

 

それだけ人心の荒廃が進んでいると言うことだからだ。

 

まあ、バルハラントには文字通りどうでもいいことだ。

 

さっさとこの災厄が死ねばそれだけでいい。

 

それに巻き込まれてもかまわない。

 

一族さえ無事であればそれでいい。

 

調子に乗ったレットが、巨大火球の二発目を作り始める。伏せろ。叫んで、バルハラントは伏せる。

 

レットがケラケラ笑う。

 

「次はもっとでかいぞ! こんなきたねえ森、まとめて吹っ飛ばして……」

 

声が止まった。

 

火球が消し飛んでいる。

 

そして、レットを、矢が貫いていた。

 

レットは平然と立ち尽くしている。

 

恐る恐る立ち上がるオーク達に、待てと合図を送る。転生者は者によっては何をやっても死なないと聞いている。

 

まだ油断するのは早い。

 

レットが平然と、矢を胸から引き抜いた。

 

やはりだめか。

 

この程度では、とても殺すことは出来ないようだった。

 

ただし、今ので火球を消し飛ばしたのだ。

 

エルフ族の恐ろしさがよくわかる。やはり、作戦はこれで良かった。こいつを人間にけしかけでもしたら。

 

それこそとんでもない規模の災害が起きていただろうから。

 

「いってえなあ……俺が気持ちよく無双するところだっただろうが。 空気読めやクソが」

 

「ご無事でございますか聖剣士レット様」

 

「無事に決まってんだろ。 それにしても何だ今の矢。 俺のスキルには絶対防御もあるはずなんだけどなあ。 あの転生神の野郎、いい加減ほざきやがったか?」

 

「よくわかりませんが、同じ手はもう通じないのではありませんか」

 

ここでの攻撃は無駄だ。

 

そう誘導してやる。

 

基本的にエルフ族は森の外には出てこない。

 

たまに変わり者が出てくることはあるらしいが、それも人間に興味を持つとかではないらしい。

 

エルフ族が考えていることは、全くわからない。

 

これについては、人間達もそう口をそろえているらしかった。

 

「森を燃やすの面白そうだからやってみたかったんだけどな。 それで焼け出された森に残されたエルフの幼女を俺好みに調教したりしてよ。 色々やらせてみたかったんだけどなあ」

 

ゲス丸出しの発言をするレットだが。

 

そのいらだちが募っているのがわかる。

 

はっきり言って論外の言動にしか思えないが。こいつにとっては、これがごく当たり前の、かなえられて当然の欲求なのだろう。

 

他の転生者も似たようなものだと聞く。

 

既に生還をバルハラントは諦めている。だから、とにかく今は、こいつをエルフ族に直に誘導するしかない。

 

「燃やすことは不可能でしょうし、その大きな火球も出す前に止められてしまうと思います。 これは直に足をお運びくださるしかないかと」

 

「きたねえ森の中にはいんのかよ。 さっきみたいにウンコ山ほどおちてるんじゃねえのか? 虫とかもいっぱいいるだろ」

 

「それはそうでございましょうが、そうしないとエルフ族と会うことは不可能であるかと思います

 

「ちっ。 虫もウンコもきたねえ動物も、全部ぶち殺し焼き尽くしながら進むか。 はーめんど。 転生させるんなら、何もかも周囲にそろえてからやれよなあのポンコツ神はよ……。 他の転生者はどうせ最初っからハーレム作って、国も全て好きなようにしているのがわかりきってるんだよ。 何で俺だけそもそも手下から作らなければならないのか。 俺、マジで不幸だわ」

 

身勝手な寝言をほざきまくっているが。

 

もうこいつの寝言はどうでもいい。

 

とにかく聞き流し、皆を促す。

 

ただ、覚悟を決めろと視線を送っておく。

 

エルフ族の森に入ると言うことは、いつさっきの矢が飛んできてもおかしくないということだ。

 

森を育てるくらいエルフ族は力がある。

 

こいつの寝言みたいに、森を燃やして簡単に焼き出すとか、そんな程度のことが出来る相手ではない。

 

木を育てるのですら専門的な知識と根気が必要なのだ。

 

これだけの巨大な森を作り上げる相手に喧嘩を売った。

 

それがどういうことであるか、レットは理解できていない。

 

バルハラントは理解できている。

 

だから、森に入った瞬間射貫かれてもそれは運命だろうと諦めていた。

 

森に入り込む。

 

入り口付近から、既にびりびりといやな気配がする。猛獣に囲まれているような気配である。

 

レットは恐れている様子がないが。

 

あれはただ、本当に恐ろしいものを見たことがないだけだとバルハラントは看破していた。

 

転生者は神によって姿を見せるようだが。

 

もしそれが本当だとすると、こいつをこの世界に送り込んできたのは明確な邪神だろう。

 

だとすれば、なおさらエルフ族は相性がいいはずだ。

 

無言で森の中を歩く。

 

はぐれないように、オーク達に号令を飛ばす。

 

大きめのムカデが出たが、即座にレットが粉々に切り裂いて、ついでに焼いてしまった。ばらばらと焦げたムカデが散る。

 

「くっせえし汚ねえ。 エルフを何匹か捕まえたら、まずは洗うところから始めないといけないだろうなコレは。 そうしねえと」

 

おぞましい卑猥な言葉を平然と並べ立てるレット。延々と楽しそうに妄想を口から垂れ流している。

 

反吐が出る。

 

羞恥心も持ち合わせていないらしい。

 

連れてきているオーク達も不快感で渋面を作っているが、とにかくレットには向けるな。そう視線を送っておく。

 

「森の中で歩き回ると迷子になるんじゃねえのかそういえばよ」

 

「はい、そうですね」

 

「だったらやっぱり目印作っておくか」

 

ズバンと、凄まじい音がして。

 

側の木が両断された。

 

オークからしても十抱えはある巨木が、一瞬で殺された。

 

思わず言葉を失う。そのままレットは、大笑いしながら次々に木を切り倒していく。

 

森を燃やすと抜かしていた奴だ。

 

こうやって斬られた木々が、どれだけ他の生物たちのためになっていたのかなど理解できないし、する気もないだろう。

 

とにかく、巻き込まれないように皆に指示。

 

必死に次々切り倒される哀れな巨木に気をつける。

 

本当に災害だ。

 

レットが笑いながら何かするたびに、木が切られていく。剣を持っているようには見えない。

 

というか、剣ではこんなことは出来ない。

 

「おらおらエルフさんよ、だっせえお前らの森がどんどんなくなっていくぞ! 苦労してこの汚くてくっせえ森を作ったんだろ! さっさと出てこいや。 この聖剣士レット様がかわいがってや……」

 

言葉が途切れる。

 

そして、レットが倒れる。

 

仰向けに倒れたレットの全身に、多数の矢が突き刺さっていた。矢の鏃がとんでもなく大きい。

 

それだけじゃない。

 

右腕は狙撃で引きちぎれている。オーク族の使う大弓でもこんな威力は出ない。

 

レットは口を貫かれて、鏃は後頭部に抜けたようだった。

 

黙り込んでいる皆に、バルハラントはしっと注意を促す。

 

案の定である。

 

レットの全身から矢が自動で引き抜かれていく。ちぎれた右腕がつながっていく。傷も修復していく。

 

災厄。

 

完全に化け物だ。

 

この程度で死ぬ相手ではない。

 

それが一目でわからされる。

 

やがて起き上がったレットは、衣服だか鎧だかわからないものまで完全に修復されていた。

 

「ふざけやがって、 俺が優しくかわいがってやろうとしたら、図に乗りやがって……!」

 

「無礼な相手でございますね聖剣士レット様」

 

「何なんだよ! 全部親切でやってやってることだろうが! きったねえ森に引きこもってるアホどもを、俺が躾けてやろうって言ってるんだよォ! その程度のこともわからねえで、何が長命種だ! もう頭にきた。 見栄えがいい二~三匹だけ残して、後は全部ミンチにしてやる!」

 

馬鹿げた寝言である。

 

バルハラントは、今の狙撃で自分が狙われていたら即死だったなと思いながら、レットをなだめる。

 

とにかくこいつを一秒でも早くエルフにぶつけなければならない。

 

こいつを解き放ったら、伝承にある他の転生者のような、とんでもない災害を引き起こすだろう。

 

転生者の中には、癇癪から世界の何割かを焼き払ったような奴まで存在しているという話である。

 

こいつはそれと同類。

 

しかも今までの言動を見る限り、自分の行為を全て正当化している。

 

つまり正義の名の下にやりかねないのだ。

 

ただ、はっきりわかったこともある。

 

こいつはそもそも戦闘経験がないし、油断しているとはいえ。

 

こいつが自慢にしている防御を、エルフ族は簡単に貫通した。

 

それも二度。

 

一度目は完全に油断していたとみていいが、二度目の今度はそうかはわからない。それで完全に通っている。

 

ということは、やはりエルフ族のところに連れて行くのが正解。

 

勿論それでバルハラントが殺されるかもしれないが。

 

一族を守れるのなら本望。

 

それに、バルハラント達だけの被害で、周囲のゴブリン族やコボルト族を守れるのなら安い。

 

癪だが人間だってそれで守れるかもしれない。

 

この手の転生者は、人間を洗脳して自分に都合がいい肉人形へ変えるのも得意としているという。

 

顔などの姿形まで自分好みに弄くって(もっともバルハラントはオークなので、どう人間の顔を弄くったのかなんて全く見分けがつかないが)、それで侍らせて満悦するという話だ。

 

そんなのは尊厳に対する最悪の陵辱であり。

 

それは如何に恨み重なる人間が相手でも、看過できることではなかった。

 

半分あきれながら、しかしながら勝利を少しずつ確信していくバルハラントの前で、何やらずっと意味不明のことをわめき散らしていたレットだが。

 

やがて、さらにでかい魔法を用意し始めた。

 

文字通り、森ごと吹き飛ばすつもりか。

 

皆に下がるよう指示。

 

あれは、バルハラント達を平然と巻き込むつもりだろう。

 

弟子がどうとか言っていた癖に。

 

ちょっと前に自分で言ったことすら覚えていないらしい。

 

「あったま来た! これで焼き尽くしてやらぁ!」

 

それこそ、小山ほどもある火球が放たれる。

 

なんとか魔法なになにとか叫んでいたが。

 

魔法を使うのに詠唱とかいうのは必要らしいが、魔法の名前なんて叫ぶ必要なんぞないはず。

 

だとすると、それが格好いいと思っているのだろう。

 

とことん此奴の美学はわからないな。

 

そう思いつつ、飛び退きながら、地面に伏せる。

 

わめき散らしながらレットが、火球が森を焼いていくのを笑いながら見ていたが。その火が、瞬時にかき消えていた。

 

そして、レットの首から上が、吹っ飛んでいた。

 

大量の鮮血をばらまきながら、レットの体が前のめりにどうと倒れる。やったといおうとした部下を、しっと言って黙らせる。

 

やったかとかいう言葉が不吉であることは、オーク族の間でも伝わっている。

 

この世界には様々な転生者が来て、散々に蹂躙していった歴史がある。

 

そういった歴史の中で、いろいろな伝承が伝わったのだ。

 

レットが案の定、首なしでも立ち上がる。

 

首の切れ口から、肉が盛り上がり。

 

それがやがて頭になり。

 

すぐに元に戻っていった。

 

「大丈夫でございますか、聖剣士レット様」

 

「問題ねえ! 畜生、返す返すふざけやがって! どんな手品を使っていやがる! 今のは一億℃の炎だぞ!」

 

「一億……℃?」

 

熱の単位だと、レットは吐き捨てる。

 

よくわからないが、億というのは万の上の単位だ。これでも交易はするから、数字は知識がある。

 

かなり大きな数字のはずだが。

 

転生者は温度にその単位を利用しているらしい。それだけはわかった。

 

「こうなったら直にぶん殴ってやる!」

 

「それがよろしゅうございましょう」

 

「わかってるじゃねえか。 どんな手品使ったかしらねえが、俺は剣聖のスキルと最強の見えない剣を持っているんだ! 魔法しか使えないエルフなんか、接近戦に持ち込めばカモでしかねえんだよ!」

 

確か此奴大賢者がどうこうとか言っていなかったか。

 

大賢者とやらがなんだかは知らないが。

 

魔法を使う職業だとか称号だとかだとすると。

 

それはつまり、姿も見えない相手から一方的に攻撃を受けて、一方的に負けているのだ。しかも今までで三度。

 

これで多少知恵が回るなら、相手が悪いと判断して撤退すると思うのだが。

 

それができないという時点で、此奴は自分がもらった(自力で手に入れたものだったら、もっと使いこなせているはずだが。 最初にバルハラントの前に来たときもそうだったが、明らかにそうではなかった)能力を明らかに持て余しているし、限界も理解できていないとみていい。

 

要は力だけ強いアホだ。

 

それにも勝てない非力な自分達が悲しくもなるが。

 

ともかく今は、なだめておだてて。

 

一秒でも早く、この災厄の化身を始末することを考えなければならない。

 

他の者達は、顔を青ざめさせている。

 

今更ながら、これから死ぬんだと理解したのだろう。

 

わかりきっている癖に。

 

それでもオーク族の戦士か。

 

様々な種族で連携して、強力な獣を撃ち取るとき。難癖をつけてきた人間の破落戸を撃退するとき。

 

連合となって、それで戦士として最前衛にたつのがオークだ。

 

だからそれを加味して、様々な種族はオーク族に対して、ある程度交易でも便宜を図ってくれる。

 

暴力ですべてを支配していては台無しになる。だからオーク族も、それに戦働きで返す。

 

それくらいのことは、皆わかっているはずなのに。

 

ため息が出るのは、仕方がないことだった。

 

「おい、バルハなんとか」

 

「バルハラントにございます」

 

「なんか磁石がうまく動かねえんだけど」

 

「この森では磁石は働きません」

 

磁石なんてオーク族でも使っているし、こういう場所では働かないことがあることも知っている。

 

舌打ちして、なんだか丸いものを地面にたたきつけて、何度も踏みつけるレット。

 

癇癪を起こす様子は、まんま図体がでかいだけの幼児だった。







※森焼きについて

有名な粉塵爆発ですが、実際に実験をしてみた人はいますでしょうか。自分は昔やったことがあります。

これ、本当はぜんぜん火力が出ないんです。

粉塵はしけってたらまったく爆発しません。火力が大きい石炭とかだとかなり派手に行くこともありますが、小麦粉程度だと見た目は一瞬だけボンと行く程度で、それで終わりです。

しかもこういう世界では、小麦粉は人間が作ってるものであり、オークなんかの狩猟民族とは縁がありません。しかも結構値が張ります。砂糖なんて近年まで税金がかかるほどの高級品で、小麦粉なんて比較にならない高級品。勿論オークなんかとは無縁の物です。

また、油に関する説明も事実です。かの石川五右衛門は油で煮殺された記録が残りますが、これはとても高級なものを贅沢に使った処刑として見物人達は楽しんだものです。それくらい油は昔は貴重だったんですね。

というわけで、簡単に森焼きなんてできません。以上。


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