というわけで、全ての種明かしの後は。
全ての罠が、それぞれの情報交換をする様子です。
ナーフェが会合に出る。
各地のエルフ族の賢人と、それに人間社会に潜伏している対転生者の特務。今はメイドが主流だが。
それらの一族との会合だ。
ちなみに魔法を使ってやるので、別に直接足を運ぶことはない。
これは地球で神々が見たテクノロジーであるテレビ会議とかいうものを魔法で再現したものである。
「転生者の初期消火に成功。 現地のオーク族の対応が早かったこともあり、森に被害は出たが死者は出なかった」
「さすがだ賢老どの」
「確かそちらではようやく事態の収束が始まったところか」
「ああ。 王室に入り込んでいた「悪役令嬢」を名乗る転生者が、国そのものを自分好みにめちゃくちゃにしてくれたからな。 今、総出で洗脳を解いて回っている。 悪役令嬢そのものは隙を突いて殺したが、非現実的な政策を強引に実行したせいで、国が乱れて、各地で反乱が起きている。 これらの対処は、軍に任せるしかない」
苦々しげにいうのは、ある国で展開しているメイドの組織の長だ。
ちなみに転生者の前に出るときは、神々の力を借りて姿も性別すらも変える。
王宮に入り込んで好き勝手するような転生者は、自分好みのメイドがいると喜ぶ場合もあるが。
その中身は、実は老爺だったりするのだ。
彼らは転生者が何を喜ぶか、神々が地球で調べた「テンプレ」から分析した知識を展開されている。
それ故に、年をとった者ほど、それらに対応できる行動幅が大きくなるのだ。
相手がどれだけ邪神ソク=ウロナから力をもらっているか解析できれば、後はそれを中和して倒すだけ。
能力同士の戦いなんて馬鹿なことはしない。
そもそも言った者勝ちの都合が良い能力を振り回している連中だ。
そんなものにこちらも乗る必要はなく。
足下をひっくり返すだけで十分なのである。
与えられている能力が強力であればあるほど、中身の転生者は心身ともにお粗末なケースが多く。
それは要するに。
どれだけ地球という世界で、抑圧されていたかの鏡のようだと。
こういう場では、怒りとも諦観とも言いがたい言葉が上がるのだった。
「魔王、そちらは」
「最近は自称勇者はほとんどこないな。 テンプレのブームが去ったのかもしれぬ」
魔王。
昔はエルフ族よりも転生者を引きつけた存在だ。
よくわからないが、神々の敵として、魔族なる存在を引き連れているというテンプレがあるらしい。
それでいながら人間好みの若い女の姿をしていたり。
見目麗しい青年の姿をしていたりするというのだからわからない。
神々の敵には普通に邪神ソクがいる。
それに勇者というのなら、転生者は論外である。
そもそもとして借り物の力でイキり散らしている時点で、矛盾だらけなことに気づかないような者達だ。
勇者というのは、そもそもとしてどれだけの悪逆にでも心折れずに立ち向かう存在であるだろうに。
馬鹿みたいな能力を与えられて、暴力を嬉々として振るうような輩が。
どこが勇者なものか。
「ただ、魔王を侍らせてそれで世界に好き勝手をしたいと考える転生者は時々来るな。 そういう連中には、適当に合わせて飽きたところで片付けている」
「面倒な話だな」
「テンプレも地球の流行によって変わるようだからな。 いずれにしてもテンプレとか言う情報の川に流されているだけの意志薄弱な存在を、ソクは喜んでこちらに連れてきているのだろうよ」
魔王が吐き捨てた。
まあ、相当に鬱憤がたまっているのもわかる。
以前はひどいときには毎日のように勇者に殺されたフリをしていたらしい。
魔族の損耗もその頃はひどく。
神々になんとかしてくれと毎日愚痴を言っていたらしいのだから。
今では自称勇者の性欲処理相手にされたりもする。
まあはっきり言って、たまったものではないだろう。
メイド組織の長が咳払い。
「それはそうと、我々の世界の人間の技術力が上がりすぎている。 そろそろ制御した方が良いのではないのか」
「神々は基本的に不干渉だが、それほどか」
「ああ。 転生者の中には、ある程度専門的な知識を持つ者もいてな。 そういうのが考えなしにばらまいた知識が、ろくでもない方向で拡散することが時々ある。 何しろ転生者はたくさん来る。 だから、いびつな形で技術が展開されやすい」
「わかった。 儂から神々へ今度祈りを捧げておこう。 おそらく、ある程度の緩和策をとってくれるはずだ」
神々の緩和策が記憶やらの消去か、それとも天変地異かはわからない。
いずれにしてもソクが作り出した人間は、地球の人間を元にしているらしく。他のどのような種族よりも残忍で獰猛だ。
メイドの一族は、ソクの束縛から解放された一族であるのだが。
だからこそ、人間世界の監視の仕事も担っている。
ちなみに対転生者の仕事をしていない集団もいて。それらは地球の文化に沿って忍者と言われているらしい。
会議に出てきたことがないのであったことはないが。
基本的にダーティーワークしかしない上に、見かけは全く普通の人間と変わらないらしい。
ただ連携はしっかりとれていることもあり。
エルフ族や魔族と衝突することもないようだが。
「では、会議は解散とする。 とにかくこれ以上問題が起こらないと良いのだが」
「テンプレの複雑化に伴って、悪辣な転生者も増えているからな。 昔みたいにせせこましい欲望だけ満たして、すぐに飽きるような輩も多いが」
「それに付き合わされる身としてはたまったものではない……」
「この世界の人間もそうだが、世界は全部人間のものと考えている傲慢さが、全ての問題の元なのであろう」
それぞれ、会議を抜ける。
ナーフェも会議を抜けると、大きくため息をついていた。
またどうせ転生者が現れる。
神々は転生者の出現場所は制御してくれているが。
逆に言うと、鮮やかな対応をした今回の件が評価され、どうせ森が修復されたことにはすぐ次が来るだろう。
この世界は地球とやらよりずっと大きいという話だが、それでもソクの悪意の受け皿としては小さすぎるくらいなのだ。
背伸び。
そして、森の修復の仕事に戻る。
その後には転生者が来るだろう。
油断もなにもできない。
結局、神々のくだらない争いに巻き込まれているのはエルフ族も終わりだ。
できるだけ早く、邪神ソクを倒してほしいものだが。
神々もそれは難しいのだろう。
淡々と仕事をしながら、ふと一瞥。
レットは農作業をきちんとこなしている。きちんと管理された労働とうまい食事、それに娯楽。
それもなかったことがわかる。
まあ、少なくとも一人は救われたか。
ふっと、ナーフェは笑っていた。
それだけだった。
(終)
はい、いかがだったでしょうか。
個人的に神様転生というものに対する思いを綴った短編となります。
まあ世の中、そう都合がいい話はないということですね。
何か心に残ったのなら幸いです。
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