人類滅亡まであと365日…   作:ムジカ

15 / 17
第15話 渚

少女は黄昏た。

 

昨日の話…盗み聞いてしまったことに引け目は感じるが…

というかそれは寝てる鈴谷の前で話し始めたあの2人が悪いんだし…気にするほどでもないし…

『それじゃあヤマトの傷は、コウジ君が?』

一体なぜ…

 

『あの優しいコウジ君が?』

鈴谷は現実を信じたくなかった。

 

 

 

『鈴谷、元気なさそうだがどうしたんだ?』

 

『えっ…ちょっち考え事…』

ヤマト…やっぱり、似ている。

いや、これは似ているとかいう次元じゃないじゃん。

 

 

彼は、私の前からいなくならないだろうか…

 

ここにいるみんなといつまで一緒にいられるのだろうか…

 

コウジのように…

 

『ヤマトはいなくならないよね?』

 

『あぁ、そのつもりだ』

 

『そう…だよね、何言ってんだろ、私』

 

『ここは戦場だ、不安になるのはわかる…だが俺の目が黒いうちはここにいる8人全員を生き残らせてみせる…だから安心してくれ』

 

『信じていい?』

 

『あぁ、こちとら地球を救った英雄だぞ?

大船に乗ったつもりでいてくれ!』

 

そうだ、ヤマトは強い…

それは戦力としてだけではなく

心も…

 

『ありがと、元気でた』

 

『そうか…ならよかった』

 

 

ぐぅぅうう

 

『元気出たらお腹すいたなぁ…最近レーションばっかで味気ないんだよねぇ…補給、大事じゃん?』

 

『そんなこと言っても、オムシスは使わないからな!』

 

『ちぇ…つれないなぁ』

 

『内地に帰ったらいくらでも作ってやるから…落ち込むな』

 

『マジ!?言質とったからねぇ…』

 

パフェとか…いや、素朴にパンケーキとか?

シュークリームとかもいいなぁ…

 

今日も今日とてレーション…

だが楽しみがあるだけで、苦痛は耐え抜けるのだ。

 

『いやぁ、ちょーー楽しみだなぁ』

 

その証拠に鈴谷はすごく幸せそうにレーションを食べている。

 

 

昼食後、ヤマトは作戦の要旨を説明していた。

 

 

『さて、今回はレイテと同じ手を使う…"以前より戦力の増えた我ら第一独立遊撃艦隊なら単独で作戦を遂行できるだろう"とのことだ』

 

『司令部は買い被りすぎじゃん…』

 

『そうだね…やるしかないけど』

 

『そうそう、本気の私たち相手に勝てる艦がいるわけないわ!』

暁は胸を張る。

 

『そやで、うちらは最強や!』

それに呼応するように龍驤もない胸を張った。

 

『そうだ、君たちの練度は素晴らしい…買い被りではないと、俺は思うよ』

ーーーーーーーーーーーーー

『さて…なにから準備するかな』

 

『よう、司令官…出撃か?』

 

『あぁ、あんたは…』

俺を撃った…

 

『名乗るような名はない…おっさんとでも呼んでくれ』

 

『そうか、それで何の用だ?』

 

『大したことじゃない…あんたを見ていると昔の俺を見ているようで不安になる

あれはそう…先の大戦でジャップのジークと戦っていた時のことだ。

自慢するわけじゃないが、俺はエースパイロットでね…愛機のコルセアと共にジークを狩っていた』

 

『そんなある日、手強いジークと遭遇した…

おそらく相手もエースだったんだろうな。

格闘戦は長く続いた。

周りは関係ない…あるのはやつのジークと俺のコルセア…それだけだ。

最終的にケツを取ったのは俺だったよ…

やつは機銃を浴びて堕ちていった…

だがその頃には僚機は全滅していて、大勢はあちらのものだったんだ』

 

『おっさん、あんたもしかして…』

 

『おっと、詮索はよしてくれ…まぁ気をつけることだ…執着すると碌なことにならんからな…年寄りの忠告は黙って聞くもんだぜ?』

 

『わかった…肝に銘じておくよ』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ところ変わって洋上、ヤマトは航空隊を発艦、敵の基地と思しき施設を攻撃した。

現在は補給を行なっているので、偵察は龍驤の艦載機が行なっている。

『さて…同じ手に引っかかってくれるかな?』

 

『敵の主力が出てきたで!』

 

『釣れたか…それで、敵艦隊の内訳は?』

 

『戦艦が12隻…空母が8隻…その他補助艦艇50隻以上!

 

『大漁だな…全艦、艦隊殲滅戦用意!決戦だ、オーストラリアまで…東亜の解放まで後少し…一隻も撃ち漏らすな!』

 

『『了解!』』

 

 

段取りはいつも通り

前衛の水雷戦隊が敵をかき乱し、後衛の艦砲射撃と航空攻撃が火を吹く。

 

『敵補助艦艇群、右舷より接近!』

 

『水雷戦隊の忘れ物か…撃ち方始め!』

 

鈴谷は敵の攻撃を悉く躱し、ヤマトは龍驤に攻撃が当たらぬよう弾受けをする。

無論、波動防壁があるのでダメージはない。

 

その間も深海棲艦は一つ…二つ…と沈んでいく。

 

5分もすれば50隻以上いた敵の補助艦艇はほとんど沈んでいた。

 

残っているのは主力艦隊直掩の数隻だけである。

 

『タッタ7ニンアイテニ…50セキモノカンタイガ…ゼンメツダト…!?』

 

『エエイ!コウクウタイハナニヲシテイルカ!』

 

『コウクウタイソンモウリツ92%…』

そして残りの8%は今撃墜された。

 

『バカナ…8セキダゾ…8セキモノヲ級ノカンサイキヲスベテサバキキッタトイウノカ?』

深海棲艦たちは震撼した。

極東の悪魔…戦場にはよくある与太話と思われていたそれが実在したのだから。

気づいた時にはもう遅い。

見つかった時点でそこはヤマトの間合いの内側だ。

 

18隻の主力艦…そのうちの15隻はヤマトの一斉射撃で撃沈…

残りの3隻の空母ヲ級は鈴谷の砲撃と龍驤の航空攻撃で大破…撃沈は免れないだろう。

 

最後のヲ級が沈む。

 

それは戦闘開始から20分…

たった20分間の出来事であった。

 

そう思ったのも束の間、独特な発砲音と共に火焔直撃砲が鈴谷を掠める。

右足の主砲が溶けて脱落していた。

熱された主砲基部は赤くひしゃげている。

 

『鈴谷!大丈夫か?』

 

『なんとか…海水で冷やしたから…右足上手く動かせないけど』

 

 

空を見上げるとメダルーサ級の艤装…テイトクが現れた。

 

 

『くっ』

ヤマトは踏ん張り、エンジンを噴かす。

波動防壁の展開可能時間を過ぎたいま、メダルーサ級の大砲塔はヤマトに致命傷を与えうる。

回避という選択がベストなのだ。

 

『おっと、動くなよ?君の艦隊の艦娘がそこの足の不自由な巡洋艦から順に沈むことになる…』

 

しかし

『だがヤマト…お前は例外だ』

 

『何故だ…?』

 

『お前が深海棲艦だからだ!』

 

『嘘だ…俺が…深海棲艦なわけ…』

いや、俺が艦娘である証拠も、深海棲艦でない理由もないか。

 

『この独立心…やはり研究対象にはうってつけか』

テイトクは独り言をつぶやく。

 

『ヤマト!そいつらをやられたくなかったらおとなしくこっちに来い…そうすればここは引いてやろう』

 

『俺は…』

 

『コウジ君!なんでこんなことしてんの?らしくないじゃん!』

 

『今は俺とヤマトが話している…邪魔するな!』

 

『でも…おかしいじゃん!渚提督が見たらどう思うか…コウジ君なら…!』

 

『うるさい!邪魔するなと言っているだろう!』

するとメダルーサ級の大砲塔の照準が鈴谷に向く。

『なっ……』

 

この足じゃ避けられない…

 

ここで、死ぬの?

 

やだな…

 

まだヤマトの手料理食べてないし…

 

もっといっぱい…楽しいこと…

 

着弾と同時に蒸発した海水が大きな水柱を作る。

 

 

だがその弾道は僅かにそれていた

なぜならば…

『機銃掃射だと!』

 

テイトクはすぐさま対空戦闘を開始した。

 

『へっ…そいつらはやらせねぇよ』

エンジンが…コルセア…まだ動いてくれよっ!

 

被弾しつつもその戦闘機はテイトクを軸線に捉える。

 

『…おっちゃんか!』

 

『そうだ…おっちゃんだぜ…コウジのバカ野郎!』

まさか俺がカミカゼをやることになるとは…

 

燃え盛り、肉薄する戦闘機。

男の鬼気迫る突撃に、テイトクはたじろいだ。

 

普段ならどうということのない遅い速度の突撃だったが、その時のテイトクは反応できなかった。

 

『ヤ マ ト ニ タ ク ス』

 

すまんな…

俺の呪い…貴様に託すぜ…

 

モールス信号がヤマトに届くと戦闘機とともに男が爆散する。

 

テイトクは無傷だったが、かつての友の特攻に動揺を隠せない。

 

その隙を、命を消費してまで作った隙を見逃すほどヤマトは甘くない。

 

『今だ!』

 

『くっ…くそっ!』

 

ショックカノンがテイトクの腹を貫く。

 

『やるな…ヤマト…だが勝った気にはなるなよ…俺は必ず…』

 

そしてその体を弱々しく海中へと没した。

 

『おっちゃん…ありがとう…』

虚空へと思いを馳せる。

今度は本当に、命を救われた…

名乗らなかった彼に…気づけば敬礼していた。

 

 

 

『終わった…の?』

 

緊張の糸が切れたのか鈴谷も倒れる。

 

『『鈴谷!』』

 

その場にいた全員が駆け寄る。

 

 

『イテテテテ…まって、今立つから…』

 

『無理するな、困ったときは助け合い…だろ?』

そう言うと、ヤマトは鈴谷を持ち上げる。

 

『ちょっ//』

 

『これって…』

 

『お姫様抱っこ…だね』

 

『流石ヤマト…すごいことをさらっとやってのけるわね』

 

『ようわからんけど、そこに痺れる、憧れるぅ…てことやな』

 

なにやら龍驤と矢矧が騒がしい…

というか2人だけではない…これで盛り上がらないものは、ヤマト艦隊にいなかった。

 

『とっ….とにかく帰るのです!』

 

『そうよ!お姫様抱っこを早く辞めさ…鈴谷の傷もあるんだから!大人のレディには分別があるものなのよ?』

 

『暁…本音漏れてるね』

少し慌ただしく…ヤマト艦隊は帰投する。

その雰囲気は明るかった。

 

反面、ヤマトは内心穏やかではなかった。

 

自分が深海棲艦だというテイトクの言葉…

『必ず…あの舟を』

テイトクの捨て台詞も気にかかる。

 

心に暗い影を一つ落としつつ、ヤマトは行く。

帰りを待つ、仲間の元へと。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。