合同演習が終わり一週間が経つ。
深海棲艦はここ最近動きを見せない中、ここ大本営では今後の対深海棲艦戦略のための会議が行われていた。
『ここ一週間、深海棲艦の目撃事例は極端に減っている。』
『時折艦隊が来るが、戦闘をなるべく避けるように動いている。』
『戦力の温存を図っているのでは…奴らはここで一気に蹴りをつけるつもりなのかも』
『先手を打てるなら打ちたいものだが…』
議論はまとまりを見せない。
『先日の演習でのあの艦息…ヤマトと言ったかね、彼は何者なんだ』
『わからない…しかし味方であるならば心強いというものでは?』
あの場に居合わせた将校の1人が語る。
『それは"味方であるなら"だろう、あれの力が万が一にでも我々に向けられることがあれば我々はなすすべがないのでは?』
『我々に最低限の誠意があるならば彼が叛逆するなど、わしには考えられないがね』
沖田もヤマトの肩を持つが…
『元帥閣下は我々のことを何もわかっていない、あのヤマトとやらは建造された艦ではない…"突如として現れた謎の知的生命体"なのだ…深海棲艦となんら変わりないと考えるものも多いのでは?』
多くの将校はそれに賛同した。
『しかしながら、人類の存続という大義名分がある今、最強の矛を手放すというのはあまりにも惜しいとは思いませんかな』
『予想される深海棲艦の大侵攻…それを阻止できるだけの艦娘艦隊はまだ世界のどこにもいない。艦娘先進国である我々ですらこの体たらくなのだからな』
『資源も海路の寸断により十分とは言えない…現有戦力の維持ですらギリギリだというのに…姫級とは…難儀ですな』
『この際はっきり言います!このままではジリ貧です…私としては一つ賭けに出るしかないと…最強の矛を敵艦隊の本拠地…レイテ湾へと突き刺すのです!』
参謀総長は熱弁した。
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『しかし提督からの呼び出しとは、先週の合同演習のことで何かあったのだろうか…』
心配しつつ、ヤマトは執務室へと向かうと…
『…失礼しました!』
1人の少女が執務室から出てくると、ヤマトに気づいたようだ。
『本日付で呉鎮守府配属となりました…駆逐艦暁よ、よろしくね!』
ピシッと敬礼をして見せた彼女は暁という名前だった。
『呉鎮守府、戦艦ヤマトだ!』
『あなたがヤマトね!私、あなたの指揮下に入るから、これからよろしく!』
挨拶を済ませると暁は去っていった。
『俺の指揮下とは…一体どういうことなんだ?』
ヤマトだ、失礼する、
『来たか…とりあえずそこにかけてくれ』
提督に言われた通り、椅子に座る。
『今日はなぜ俺を呼び出したんだ?』
『大本営で会議があってね…君にも伝えなければいけないことがいくつかあって』
『まず一つ目、君を連合艦隊の一員として准将待遇で迎えることとなった』
『やっとか…しかしなぜ准将なんだ?』
『というのも、君には艦隊を持ってもらうことになったからね』
『艦隊…どういうことだ?』
『それこそが二つ目に伝えなければならないことと深く関係している。』
そうすると提督は書類を取り出し、ヤマトに渡した。
『レイテ湾殴り込み艦隊?』
『現有戦力では予想される深海棲艦の本格侵攻にはおそらく耐えられない…だから大本営は君という希望に一つ大きな賭けをしたのだ。』
レイテ湾殴り込み艦隊
旗艦 ヤマト
重巡 鈴谷
駆逐艦暁
響
『今回の作戦は漸減邀撃作戦…君たちレイテ湾殴り込み艦隊が敵を吊り上げその間敵艦隊を少しでも多く減らしてもらう。そこを主力艦隊が叩く…そういう作戦だ…君は姫級を倒しているからね、いいエサだと思われているんだろう』
提督は語る。
『たった4隻の殴り込み艦隊か…賭け…と言いつつ俺の指揮下に入る艦隊を出し渋っているのはいい気分にはなれないな』
『上層部にも面子がある…ヤマト単艦では気に食わない連中がいるのだろう。これでも精鋭を集めたんだ…わかってくれとは言わないが、ここは飲み込んでくれないか…』
『失っても痛くない程度の戦力しか渡す気はないってか…予想される敵戦力は…?』
『未知数だとしか』
『大本営は俺を舐めているのか?こんな作戦…俺はともかく指揮下の艦隊がついてこられるとは到底思えない…』
『……私としても大事な艦娘たちを危険にさらすのはもちろん嫌だ…だが…』
『"上層部の意向には逆らえない"のか?』
『…すまない…だが勝つためには仕方ないんだ…それに君ならなんとかしてくれるだろう?』
『そんな作戦…俺はみとめたくないな…』
そう言うとヤマトは不満げに執務室から出た。
『おっ、ヤマトじゃーん、うかない顔してどうしたのかな?』
『悪いが鈴谷…今は1人にしてくれ…』
『提督に叱られたとか?』
『違う…それに鈴谷には関係ないだろう!』
『大丈夫?なんか今日のヤマト変だよ、提督と何かあったの?』
『っ!』
ヤマトは走っていってしまう。
『ちょっ!待って!……こりゃ図星かなぁ…』
バタン!
はぁ、はぁ…
ヤマトは逃げ込むように部屋に戻った。
レイテ湾殴り込み艦隊…今後のことを考えると行くしかないのだろうと、わかっている。
わかっているが…こんな危険な作戦、許すわけにはいかない。
そんな相反する感情がヤマトを支配する。
俺は一体どうすればいいんだ…
しかし答えが出るはずもなく時間だけがいたずらに過ぎていく。
コンコンコン
『ヤマトよ、いるか?』
『沖田艦長!?』
意外な訪問者にヤマトは慌てて扉を開ける。
『たまたまこっちで用事があってね…上がってもいいかな?』
『もちろんです』
そういうと、ヤマトは沖田艦長を部屋に招き入れた。
『粗茶ですが…』
『おお、これはこれは、ありがとう』
なかなか美味いな…と沖田は思った。
『最近調子はどうかな』
沖田艦長が問うと
ヤマトは今日あったことについて相談した。
『そうか…ヤマト、殴り込み艦隊の件についてはすまないと思っている…だがな、あの時…イスカンダルへの航海の時とは違う』
『はい、味方を守りながらの戦いになると…』
『それは違うぞヤマトよ…ガミラスと初めてともに戦った時のことは覚えているか?』
『忘れるはずもありません…フォムト・バーガー率いるガミラス艦隊…あれは頼もしかった』
『だが艦娘は頼もしくないと…君はそう言いたいのか』
『……いえ、彼女たちは強い…それはこの前の合同演習でもよくわかりました、ですが今回の作戦はあまりにも危険では…』
『いいかヤマト、艦娘はお前が思っているよりもずっとタフだ…でなければ今頃日本を含め全世界が深海棲艦の手に落ちていると思わないか?』
沖田艦長はそういうと、無造作に置いてあった書類をまとめ、渡した…
『信じるんだ、彼女たちの強さを…大丈夫…お前にならできる』
『………やってみます』
するとヤマトの決意に応えるように、沖田艦長は優しく微笑んだ
『さて、そろそろ時間だしわしは帰るとするよ』
『せっかくきていただいたのに…こんな話しかできず…』
『なぁに、わしとしてはこうしてお前と喋れるだけでも十分楽しいよ…なにせ前は物言わぬ鉄の塊だったからな』
『モノヲイウテツノカタマリダッテイマスヨー』
『そうだったなアナライザー、忘れていてごめんよ…お前は妖精になっても変わらんな…』
『がんばってくれよ…ヤマト…』
そういうと、沖田艦長は鎮守府を後にした。
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『これより明日行われる大規模作戦に関する説明を行う…艦娘は作戦会議室に集まってくれ…』
提督による放送を聞くとヤマトは作戦会議室へと向かった…
『今回みんなに集まってもらったのは明日にある大規模作戦…是号作戦について説明するためだ』
『今回の作戦はヤマト君以下4隻の殴り込み艦隊の面々には厳しいものとなるだろうがら、留意しておいてくれ』
『では続ける』
『明朝0800に全艦隊は艦隊はここ呉から出航、本隊は佐世保で味方艦隊と合流、レイテ湾殴り込み艦隊はそのままレイテ島へと向かい、敵の本拠地に対し攻撃を行ってくれ』
『殴り込み艦隊が敵艦隊と会敵した時点で本隊は出撃、反転した殴り込み艦隊と合流し敵艦隊にとどめを刺す』
『今回の作戦には皇国の荒廃がかかっている、各員気を引き締めてことにあたってほしい』
『これで作戦説明を終わる』
作戦説明が終わると、ヤマトは提督の元へと向かった。
『提督!』
『なんだね』
『先程はすまなかった…提督がどうこうできる問題でもないのに当たり散らしてしまった』
『別に気にしてないよ、でもありがとう…わざわざ謝りに来てくれて…君のそういうところは嫌いじゃないよ』
提督は照れくさそうに言った。
『では、武運を祈っている』
『あぁ、任せてくれ!』
2人は清々しくやり取りをした。
『その様子を見るに、提督とは仲直りできたみたいじゃん?』
『大人のれでぃの実力、見せたげる!』
『はらしょー』
『鈴谷、暁、響…』
『明日からは頼むよ…我らがヤマト隊長?』
『きつい作戦になる…鈴谷こそ後で泣きべそかくなよ?』
そして艦隊は、大規模作戦に向けて動き出した。