人類滅亡まであと365日…   作:ムジカ

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第9話 鈴谷の特別演習

 翌日、ヤマトは工廠に向かっていた。

というのも大和型の艤装…その動作テストを行うと出撃前に明石と約束していたのだ。

そして工廠に着くとそこにはお世辞にも完成したとは言えない艤装が転がっていた。

 

『本当に完成したんだよな?』

 ヤマトが問うと明石は答える。

『失敬な!現状で大和型の性能は100%出せます!』

 

『防楯がないようだが…』

 

『防楯なんて飾りです!えらい人にはそれがわからんのです!なんてのは流石に冗談ですけど…』

 

『まぁ、動作テストを行う分には問題ないか…』

そしてヤマトは未完成の艤装を取り付ける

 『こいつ、動くぞ!』

 

 『おお、これは!』

動き出した艤装に、明石は涙を流して喜んでいた。

『ヤマトさん…やっぱあんたすごい!すごいよ!天才!』

 

『そこまで言われると…なんだか恥ずかしいな』

 

『そんな天才ヤマトさんにお願いが…』

 

『なんだ?』

 

『防楯つくるの…手伝ってくれませんか?』

 

『…わかった…手伝おう、ただしに午後に予定があるからあまり手伝えないと思うが』

 

『そんなのいいですよ…1人増えるだけでもありがたいんですから!』

 それじゃあまずはここを……

そうしてヤマトは、午前中の間工廠で明石の手伝いをすることになったのだった。

 

 

数時間後…

そこに広がっていたのは完成した大和型の艤装の姿だった。

 

『いやぁ、ありがとうございます…おかげでいつもの3倍は捗りました!』

 

『そうか…なら良かった…』

 

『そうだ!第一独立遊撃艦隊の件でヤマトさんにお話があって…ヤマトさん用に新たに執務室を作ったのですが』

 

『相談もなしに勝手に作ったのか…』

 

『まぁいいじゃないですか…最高の逸品を用意しましたから』

明石の後をついていくと鎮守府の離れにある一軒の小屋に到着した…。

 

『なんだ…これは?』

 

『自動ドアです…この部屋はユーセー爆弾?が来ても大丈夫なように作ったって妖精さんからは聞いてますけど…』

 

『ここ本当に1950年代の地球だよな?』

目の前にあったドアは、ヤマト艦内のものとそっくりだったのだ。

明石が言うには、ヤマトの技術班妖精の力を借りて作ったらしい。

 "こんなこともあろうかと"と工廠に残っていたらしい。

 

『あとこのボタンを押してもらえますか?』

言われるがままにボタンを押すと地下へと続く階段が現れた。

 

『これは!どこへと続いているんだ?』

溢れ出るガジェット感に、流石のヤマトも男心がくすぐられたのか興味津々である。

 

『この先はヤマトさん用の秘密ドックで、シェルターもかねてます…今指紋を登録したので、ヤマトさんしかここには入れません』

まさに秘密基地といった風貌で食糧プラントやオムシス、さらには家具一式が2200年代の技術水準で作られていた。

 

『色々ありがたいが予算や資材はどこから出てるんだ?』

 

『ヤマトさんに執務室をと伝えたら元帥殿から沢山…あと妖精さんがほんっとに頑張っていたので…』

沖田艦長や妖精さんに今度お礼をしなくてはと思うヤマトであった。

そんなヤマトには悩み事があった。

 

『先日はエレメントの回収だけで終わってしまったし…更なる東南アジア進出のためにもインドネシアは取っておきたいが…お行儀のよい艦隊戦ではな』

 艦隊としてはまだまだ経験不足の今、攻勢に出るのは危険だろう。

フィリピンを取ったとはいえ、未だ深海棲艦の勢力圏は東南アジアの各地に及んでいるのだ…侮ることはできない。

 本格攻勢のためには艦娘のフットワークの軽さを活かした機動戦を行えるだけの練度が必須というわけなのだ。

『何より"俺がいなかったから勝てなかった"なんてことになられてはこまるしな』

『とはいえ時間の余裕もない…』

フィリピン防衛にも戦力を割いている今じっくり艦隊を育てる時間の猶予はないのだ…。

『1人で考えても埒が開かないか…』

 ヤマトは執務室を後にすると提督の元へと向かった。

 

『ヤマト君、今日はどうしたんだ?』

 

『少し相談があって…』

ヤマトが相談すると提督は親身になって答えてくれた。

 

『なるほど…そういうことなら次の出撃、呉艦隊で代わろうか?…代わり哨戒活動を行ってもらうことになるが…』

 

『それはありがたい…哨戒任務くらいでへこたれるようではこの先やって行けないだろうし、いい経験になるだろうからちょうどいいくらいだ』

 

『そうか…それならよかった、がんばれよ』

 

『あぁ、第一独立遊撃艦隊…世界一の艦隊に育て上げてみせるさ』

 こうしてヤマト艦隊にはしばらくの猶予があたえられたのだった。

 

 

執務室に戻ると鈴谷がいた。

『ちーっす!お風呂上がりの、鈴谷だよ!』

 

『もう傷は平気なのか?』

 

『もう大丈夫、入渠してたわけだし…ところでヤマトはなにしてきたの?』

 

『提督に頼み事を…来週の出撃、呉艦隊に変わってもらった』

 

『ほほう?それならしばらくひまじゃん…ヤマト最近忙しそうだし、休めるのはいいことじゃん?』

 

『まぁ休むわけではないんだが…というのもこの間の深海棲艦との戦闘で俺たちは少なくない損害を被っただろ?』

 

『確かに…毎回これじゃちょっちつらいかな』

 

『だからなにか手を打たねばならないと思うんだが…解決策が思いつかなくてな』

 

『それなら鈴谷にまかせてよ!あの時艦隊を指揮していたのは鈴谷だしね、ヤマトはゆっくり休んでて!』

 

『本当に任せて大丈夫か?』

 

『鈴谷ね…こう見えて艦娘歴長いし…大船に乗ったつもりで任せてよ』

 

『わかった…ありがとな』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ヤマト相手に大見得を切った鈴谷だったがなにか考えがあるわけではない…つまりノープランである。

『…この間はなんであんなことに…みんな動きは悪くなかったはずだしなぁ』

 

『多分、"悪くない"じゃあの人にはついていけんのやろな』

 

『龍驤、いつからそこに』

 

『さっきからやな、なんせ鈴谷がずぅっっとそこでぶつぶつ独り言を言うてるんでな…気になったんや』

 

『つまり盗み聞き?』

 

『人聞きの悪いこといわんでくれや…それよりも"悪くない"を脱却するために一つアイデアがあるんやがな…うちを庇ってくれた時の鈴谷の動きな、多分他にできるものはいないと思うで…あれどうやったんや?』

 

『あー…あれ?大きく踏み込んで少し飛ぶ事で摩擦を減らして…なんとか間に合ったけど』

 

『そうそう、そういう動き…うちらもできたらヤマトの足手まといにはならないんやないか?』

 

『確かに…龍驤やるじゃん!』

 

 

 鈴谷は執務室にヤマト艦隊を呼び出し説明を始めた。

 

『艦娘は人の形をしている…つまりはそれを活かした動きをしなきゃダメじゃん?』

 

『より高機動な動きをするためには体の使い方が重要…例えば海面を足場として跳ぶことで急な方向転換に対応したりとか、素早く重心を動かす事で回避運動とかにも応用できるってわけ』

 

『なるほど…動きの速さで相手の虚を突く…つまりフェイントをするわけね?』

 

『そうそう、流石は矢矧…よくわかってるじゃん!』

 

『深海棲艦はお行儀の良い艦隊戦しか仕掛けてこない…そこが私たちの勝機ってわけだね…』

 

『でも聞くのは楽し、行うは辛し、とはよくいうわね!』

 

『暁…それを言うなら聞くのは易し、行うは難し…なのです』

 

『そんなに鈴谷の話面白かった?』

 

『ぐぬぬ…今回は流石に認めざるを得ないわね…』

 

『とりあえずはやってみない?まずはそれからよ』

矢矧の言葉もあり、一同は海へと向かった。

 

『さて…艤装も展開した事だし、特別演習…始めようか!』

まず鈴谷は手本を見せた。

 

『流石や…あんなのもう船の動きやないで、まさに洋上のアスリートや』

 

『スケートみたいだね…はらしょー』

 

『本当にあれができるようになるのかしら』

 

『できるようになってもらわなきゃ困るじゃん?』

 

鈴谷は熱心に教えたが1日でどうにかできるほど簡単ではなかったようだ。今日知った新しい概念に1日で慣れるなんて芸当誰もできなかったのだ。

 

 それからというものヤマト艦隊はどんな日でも訓練を欠かさなかった。

互いに得意な部分を教え合い、切磋琢磨した。

一週間もすると艦隊の練度は見違えるほどになった。

 

そしてその日はやってきた…哨戒任務の当番が回ってきたのだ。

今こそヤマトに努力の結果を見せるとき…艦隊は久々の出撃に向けて気合を入れ直した。

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