アサシンクリード 実績「示す役目」獲得   作:Calく

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挿絵を挟んでますが、あくまでイメージ図です。ホリスに髭は生えてません。



同胞との会話①

どんな過程を辿るにせよ、未来予知によって一つだけ確かなことがあった。

デズモンド・マイルズは、少なくとも成人するまで生きている。

それは保証だった。

救いでもあり、呪いでもある。

テンプル騎士団との争いは今も水面下で続いているが、全面衝突に至るまでには、まだ猶予がある。

教団が立て直しの時間を稼げる程度には。

 

 

 

 

 

かつて十字軍時代、マスターアサシンのフードには、ワシの嘴を思わせる鋭い意匠が施されてた。

影を深く落とし、顔の輪郭を曖昧にするための形状だ。

彼らのローブは一般のアサシンよりも長く、丈の余った布は動くたびに流れを描く。

強風に晒されれば、その裾はひらめき、まるで猛禽が羽を広げたかのような「尾」を作り出す。

赤い帯と革のベルトは幅広く、そして異様なほど長い。

それは装飾であると同時に、実戦における重心と視線誘導のための工夫でもあった。

だが、ここは現代だ。

高層ビル群が空を切り取り、無数の人々が雑多な流れとなって行き交う。コンクリートとガラスの谷間で、ローブはあまりに異質だった。

 

故に、教団の衣装は時代に伴い改良されていった。

現代風にアレンジされた衣装とはいえ、フード部分だけは意図的に往年の意匠を残している。

深く被れば自然と視線が落ち、鷹の嘴を思わせる鋭いラインが影を作る。

光の加減次第では表情の大半が隠れ、見る者に正確な年齢や感情を悟らせない。

捕食者の輪郭を模したその形は、単なる象徴ではなく、視線を切り、存在感を削ぐための実用的なデザインだった。

かつてマスターアサシンの証であった長い赤い帯や、重厚な革のベルトは、現代では徹底的に主張を抑えられている。

色味は暗く、丈は短く、素材も街に溶け込むものに置き換えられた。

動いたときにわずかに揺れる程度で、風を受けて翻ることはない。

遠目には、少し変わったファッションの一部にしか見えず、観衆の視線は自然と他へ流れるよう計算されていた。

 

高層ビル群と雑多な人波の中では、目立つことそのものが危険だ。

ローブは軽量化され、シルエットも細身に調整されている。

かつて「尾」と呼ばれた布の名残は、コートの内側に巧妙に隠され、走れば邪魔にならず、立ち止まれば存在を消す。

伝統と機能、象徴と隠蔽。

そのすべてを両立させるために、この衣装は作られていた。

 

それは誇示のための装束ではない。群衆に紛れ、誰にも記憶されず、必要な時だけ刃となるための皮膚だ。

現代という舞台に適応したアサシンの姿は、派手さを失う代わりに、より冷徹で、より完成されたものへと変わっていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

強風に煽られたローブの裾は一瞬、鳥が羽を広げたような「尾」を描き、すぐにビルの影へと消えていく。

 

接触地点は、かつて放棄された教団の拠点の一つだった。

都市の再開発計画からも外れ、地図上では空白として扱われている区画。

外観は打ち捨てられた倉庫群の一角に過ぎず、壁面には古い企業ロゴと落書きが重なっている。

窓という窓は埃と鉄格子で塞がれているが内部は違った。

大粛清で壊滅的な被害を受けた後、教団は水面下で再建を進め、この場所も静かに息を吹き返していた。

 

地下へ続く階段は補強され、照明は最小限に抑えられている。

光量は足りないが、アサシンの目には十分だった。

通路には古い配線と新しい通信機器が混在し、即席ながらも機能的な拠点であることが分かる。

再利用というより、必要に迫られて縫い合わせた場所――それが、この拠点の正確な表現だった。

 

ホリスは壁際に立ち、周囲の気配を確認する。

ここは表向きには「過去の遺物」だが、だからこそ敵の警戒は薄い。

「鷹の目」を使い、壁に書かれた伝言を読み取る。

 

「――やぁ。待ったかい?」

 

不意に、軽やかな声が落ちた。

 

「……待たせたのはお前だろう、ジェイムズ」

 

フードの影から投げられた低い声に、男――ジェイムズは肩をすくめてみせた。

軽口とともに両手を上げる仕草は、敵意がないことを示すための癖のようなものだ。

「相変わらず愛想がないね、マスターアサシン殿。こっちは命懸けで情報を掘ってきたってのに」

 

Jと名乗るその男も、かつては教団に属していた。

刃を持ち、信条を唱え、影を歩いた過去がある。だが今は違う。

彼は前線を降り、血の代わりに情報を売る存在となっていた。

裏社会の噂、企業の資金の流れ、テンプル騎士団のフロント――そうしたものを繋ぎ合わせ、価値へと変える情報屋だ。

 

「で、伝言は読んだか?」

ジェイムズは壁の方へ顎をしゃくる。

そこには一見すれば落書きにしか見えない文字列が残されていた。

だがホリスはすでに鷹の目でそれを読み解いている。

塗料の重なり、筆圧の癖、意図的に崩された文字――すべてが暗号だった。

 

「場所と時刻、それに……“鍵”の移送記録か」

ホリスが淡々と告げると、ジェイムズは口笛を吹いた。

「ご名答。さすがだ。テンプル騎士団のフロント企業が、近々“新しい人材”を確保するらしい」

 

その言葉に、ホリスの視線が僅かに鋭くなる。

「人材、か」

 

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